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September 18, 2004

クーフシュタイン音頭

チロル州にクーフシュタインという小さな街があります。スキーファンならば、「クナイスルチロル社(Kneissl Tirol GmbH)の本社工場がある場所」といった方が、わかりやすいかもしれません。

実は、この街の名前がついた歌があります。日本では、「カッコウワルツ」という名称で演奏されることがありますが、オリジナルは「KUFSTEINLIED」(KariGanzer作曲、私は「クーフシュタイン音頭」と勝手に名前を付けています)という名称です。
かつてドイツ国鉄に「ガラス電車」と呼ばれる団体専用観光電車がありました(その後、事故で大破し、修理されることなく廃車になってしまいました)。ミュンヘンに基地があり、ここから主に車窓からの眺めの良い、アルプス方面に運行されていました。ただし、団体専用なので、あらかじめツアーに申し込まないと乗ることはできませんでした。

一度、この電車にコネで乗ったことがあります(コネと言っても料金は払いましたが)。当たり前ですが、お客様は全員ドイツ人で、ガイドが沿線の案内をしながら、電車は進みます。ミュンヘンからインスブルックまでの日帰り旅行だったのですが、その帰り道、ドイツとの国境の町、クーフシュタインを通過しました。そのとき、突然、ガイドが、“それでは皆さん、ご存じの「クーフシュタインリート」を歌いましょう”と音頭をとって、老若男女、全員で大合唱が始まりました。うぅーん、うらやましい。歌えない自分が寂しい…

それ以来、こんな「名曲」があるクーフシュタインとはどんな街なのか、無性に知りたくなりました(ちなみに、この歌、ウィーンのホイリゲでも、よく演奏されます)。
さて、街の中心は、国鉄のクーフシュタイン駅からイン川を渡ったところにあります。街を見下ろす城塞には巨大な屋外パイプオルガンがあり、毎日、演奏されることでも知られています(周囲6キロまで届くとか)。演奏する鍵盤は、麓の小屋の中にあり、ここから城塞の中にあるパイプにつながっています。ちなみに、「第一次世界大戦で戦死したドイツ・オーストリア兵士追悼のため1931年に制作されたものである」という悲しい歴史を知ったのは、かなり後になってのことでした。

ここ、クーフシュタインには、もう一つ観光ガイドにも出ている、有名なワイン酒場が並んだレーマホフガッセ(Römerhofgasse)という路地(本当に油断していると入るところを見逃してしまいます)があります。この路地、たいした距離がないのですが、左右の家を2階で結ぶ渡り廊下が二箇所あります。有名なのは、樽の上に酔っぱらいが座っている看板のあるお店。夜になると連日、多くの観光客が訪れます。当然、夏のシーズン中は民族音楽(VOLKMUSIK)を演奏するバンド(チロル風の民族衣装をまとっています)が入り、夜遅くまで盛り上がります。

この酒場でのひとときが楽しく、若い頃、親友S氏とオーストリア旅行をしていた時代は、毎年、ここで騒ぎまくるのが恒例行事になっておりました。日によって違うバンドが入っており、個性豊かな演奏を繰り広げています。観光客相手なので、とにかくお客様を乗せないと、ワインの消費量も増えないため、やたら「乗りの良い曲」を演奏します。当然、リクエストもOK。夜遅くまで、各国の観光客が入り乱れて大騒ぎになることも、多々ありました。

ある年、某ワイン酒場で盛り上がった翌日、クーフシュタインの街を歩いていたら、何と、昨晩演奏していたおじさんにばったり…。私たちが、「グリュス・ゴット!」と声を掛けたら、目を丸くして、びっくりしていました。その日以来、例のワイン酒場に行っても、このおじさんを見かけることはなくなりました。まさか、異様に盛り上がった日本人に恐れをなしたわけではないでしょうが…
実は、私のオーストリアと音楽の接点は、この手の「VOLKMUSIK」なのです。
なお、後に日本でスキー板を買う時、クーフシュタインに敬意を表して、クナイスルの板を選んだのは言うまでもありません。

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