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October 22, 2004

ウィーンの「ダフ屋さん」

日本でも、有名な公演やスポーツイベントではヤミでチケットを販売する「ダフ屋」が出没します。実はウィーンでもダフ屋の皆さんが活躍しています。以前は国立劇場連盟のブッキングオフィスの中庭に、結構いましたね。
また、ウィーンでは民間のチケットオフィスでも、結構チケットを売っているので、ダフ屋の皆さんも大変でしょう。

さて、私はチケットを事前に手配してからウィーン入りするので、ダフ屋のお世話になることはないのですが、一度だけお世話になったことがあります。
2001年1月、その日はフォルクスオパー公演を見る予定でチケットを手配していたのですが、同じ日の午後(つまり、フォルクスオパー公演の前)に、シュタットオパーで「メリーウィドウ」の公演があることがわかりました(マチネですね)。日本を発つ前は、てっきり時間が重なっていると思っていたので、気にしていなかったのですが、「物理的に両方観ることができる」となると、つい、「何とかしたい」という気持ちがわいてきます(オペレッタに関しては欲張りな私…)。
しかし、さすがに前日ともなると、国立劇場連盟のブッキングオフィスでもチケットは売り切れです。「まぁ、あきらめるか」とブッキングオフィスを出ようとすると、中年の紳士がウィーンなまりのドイツ語で声を掛けてきました。

以下、その時のやり取りです。
中年紳士:「あなたは、今日、シュターツオパーで上演されるメリーウィドウを観たいのかい?」
私:「そうだけれども…」
中年紳士:「あなたはラッキーだ。私は、良い席のチケットを持っている(ここで、チケットを見せる)」
私:「ほーっ」
私:「この席で、この金額(実は、前日に発売される残券で、400シリングと書いてあった)ならお得だ! ラッキー!」(心の声)
中年紳士:「私は、このチケットを850シリングであなたに譲ることができる」
私:「えっ、400シリングじゃないの?」
中年紳士:「券面は400シリングだけれども、これは本来、1600シリングの席だ」
私:「うぅーん、400シリングなら手持ちのお金があるけれど、1600シリングだと足りないなぁ。残念」
中年紳士:「あそこに銀行のATMがあるから、引き出したら…」(粘る)
私:「うぅーん。じゃぁ、買おうか」

一緒に隣のATMへ移動中の会話。
中年紳士:「今日は、アンゲリカ・キルヒシュラーガーが出演するし、良い公演だよ」
私:「それは、私も知っている。キルヒシュラーガーは私も好きな歌手だよ」
中年紳士:「それは良かった。楽しみだね」
その後、ATMでシリングを引き出して、中年紳士にお金を渡して、チケットを受け取りました。
この中年紳士、再び、国立劇場連盟の方へ戻っていきました。

よくよく考えてみると、この人は、日本で言うところの「ダフ屋さん」なのでしょうね。
しかし、「残券を“ディスカウントの定価”で購入し、その倍の値段で売る。それでも、良い席の場合、オリジナルの値段よりも安いので、お客様は喜んで買う」。「国立劇場連盟のチケット販売システムを活用した商売だなぁ」と感じた次第です。

もあた、日本の「ダフ屋」が、いかにも「その手の人」という雰囲気で、近づくのをためらってしまいますが、ウィーンのダフ屋さんは、一見すると「親切な中年のおじさん」という感じでした。ウィーンらしく、公演内容や出演者もご存じのようで、日本のダフ屋とは、かなり違います。

公演チケットは、もちろん本物で、楽しく鑑賞できました(シュタットオパーの「メリーウィドウ」については、色々なご意見があるようですが…)。
さて、「メリーウィドウ」の鑑賞終了後、カーテンコールの途中で、劇場を飛び出しました。そして、シュタットオパー前から、タクシーに飛び乗り、フォルクスオパーへと直行です。このときのドライバーさんは、インド系の方(ターバンを巻いていた)でしたが、急いでいる理由をよくご存じのようで、開演10分前にフォルクスオパーに到着しました(当日の公演は「カルメン」でしたが…)。オペレッタとオペラの「はしご」は、さすがに疲れましたが、「ダフ屋さん」とともに、ウィーンの楽しい思い出になりました。

ところで、その後も、旧国立劇場連盟ブッキングオフィスに何度も行く機会がありましたが、この中年紳士はもちろんのこと、同業者の皆さんが、チケットを買いに来るお客様に声を掛けているシーンを何度も見かけました。
さて、彼は今でも、同じような「商売」をしているのでしょうか?

※ダフ屋さんからの購入をお勧めするものではありません。

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