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December 03, 2004

オペレッタ“白馬亭にて”の不思議

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今日は、私が大好きなオペレッタのお話です。
オペレッタの名作とは言えないかもしれませんが、私の好きな作品にラルフ・ベナツキーの「白馬亭にて」があります。お話自身は、「白馬亭」の女主人ヨーゼファーと、給仕長のレオポルトの恋愛模様を中心に、別の複数のカップルがからんだ「たわいないお話」です。

財団法人日本オペレッタ協会を主催している寺崎裕則氏によると、「白馬亭にて」は、1930年にベルリンのグローセン・シュウシュピール(5000名収容の大劇場)で初演されました。その後、ベルリンでは7年間ロングランで4000回以上、ロンドンで600回、パリでは4年間、ニューヨーク(1年間に昼夜2回公演で300万人の観客が訪れたと言われています)等でも上演されているオペレッタとしては大ヒットした作品です。

寺崎氏によると、「白馬亭にて」の作者のラルフ・ベナツキー(チェコ出身)になっていますが、“生みの親”は、オペレッタ映画の名作「会議は踊る」のプロデューサー、エリック・シャレルだそうです。これに、ベナツキーやローベルト・シュトルツ、ブルーノ・グラニッヒシュテッテン、キュンネッケ、ハンス・フランコウスキー、ローベルト・ギルベルト(作詞・作曲)らが、加わり創り上げられたオペレッタとのことです。ある意味で、今日のミュージカルなどにも通じる“プロジェクト”による制作方法であることが、うかがわれます。このあたりも、レハールやカールマンの時代とは、明らかに違っています。

また、ドラマの原作は、18世紀にイタリアの劇作家カルロ・ゴルドーニの性格喜劇「ミランドリーナ」だそうです。それを1897年に、ベルリンのレッシング劇場で、舞台をザルツカンマーグートに移し変え、同劇場の支配人 O.ブルメンタールと、ハンガリーの作家 G,カーデルブルクが脚色・上演して以降、人気を博していたお芝居が元になっているそうです。このお芝居を、ハンス・ミュラーとローベルト・ギルベルト(作詞)が、オペレッタの台本にし、それを、上記のメンバーたちが、オペレッタに仕上げたもののようです。

ところで、普通、この手のオペレッタでは、架空の国や、組織名を使うケースが一般的だと思います。例えば、有名な「メリーウィドウ」では、舞台はフランス・パリにあるポンテヴェドロ(Pontevedro)という架空の国の大使館です(バルカン半島の小国モンテネグロであるのは、見え見えですが)。まぁ、実名で登場するケースとしては、「チャールダーシュの女王」で出てくるウィーンのグランドホテル(これは、以前、某日系航空会社が所有していたことがありましたが、今は売却し、元のグランドホテルに戻っていますが…)くらいでしょうか。ただし、このケースでも、第3幕のフィナーレに近いところに出てくるだけで、物語の流れとは直接関係はありません(別に、ウィーンのホテルならば、どこでも良いわけです。事実、ホテル名を変えて上演しているケースもあります)。

しかし、「白馬亭にて」の場合、メインキャストのヨーゼファーとレオポルトは、白馬亭の関係者ですし、お話自体、基本的には「白馬亭」の中を中心に進みます。
ベルリンでの上演にあたって、舞台にザルツカンマーグートを選んだのは、当時から有名な観光地であったので、何となく理解できます。今でもそうですが、避暑のためオーストリアに訪れるドイツ人は多いので、ドイツ人にも、ピンとくる場所です(ドイツに比べて物価が安いことなどもあり、訪れる人が多い)。
しかも、オペレッタの舞台装置を見るとわかるように、「本物の白馬亭」で使われているホテルのロゴが、そのまま登場します。これを見ていると「白馬亭のPRオペレッタ」の様相です。
オリジナルは、先にご紹介したようにドイツのお芝居ですが、この時、「白馬亭」から、何らかの援助でもあったのでしょうか?

余談ですが、日本では私企業の名称がついた鉄道駅(○○前というものです)がありますが、この場合、駅名を付けた企業が資金提供をしているケースが圧倒的です。

なお、ご存じの方も多いかもしれませんが、白馬亭には、作者であるベナツキーのレリーフが掲げられています。しかし、今では観光客もあまり気づかないようです。
(日本オペレッタ協会発行の同協会公演「白馬亭にて」のプログラムを参考にさせていただきました)。

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