
フランツ・レハールのオペレッタ、“ルクセンブルク伯”が10月1日にフォルクスオパーでプルミエを迎えました。
前シーズン、“メリーウィドウ”のリニューアルで大ひんしゅくを買ってしまったフルクスオパーの雪辱なるかという、注目の初演です。と言っても、“ルクセンブルク伯”自体、上演頻度が少なく、何を持って「定番」というのかという、判断基準がはっきりしません。来年のメルビッシュでも“ルクセンブルク伯”を上演しますので、来年になると、違った意味で演出の優劣がつくかもしれません。実は、以前、ブダペストオペレッタ劇場で、“ルクセンブルク伯”を見る予定だったのですが、諸般の事情で、見ることができませんでした。私にとっては初めての演目です。
また、通常、フォルクスオパーの場合、ここ数年、オペレッタのプルミエは12月(クリスマスシーズン前)が多かっただけに、10月1日という期日も興味があります。
さて、プルミエですが、当初予定されていた出演者が大幅に変更されました。まず、タイトルロールのルクセンブルク伯がMehrzadMontazenからMiljienkoTurkに、相手役のアンゲリカがRenatePitscheiderから、AkikoNakazima(中嶋彰子さん)に、それぞれ変更されました。中嶋さんは当初、3日に出演する予定でした。なお、広告用の大型ポスターや月刊プログラムではMehrzadMontazenとRenatePitscheiderの写真が掲載されているので、予定外の変更だと思います(写真は月刊プログラムの表紙ですが、このお二人はプルミエには登場しませんでした)。いずれにしても主役2人の変更というのは、かなり珍しいことでしょう。
なお、指揮者はヨハン・シュトラウスⅡ世に似た風貌のAlfredEschwéでした。AlfredEschwéはオペレッタ指揮には定評があるので、期待が持てます。
1幕は、カーニバルの狂騒がクライマックスを迎える「薔薇の月曜日」という設定です。町の広場でルクセンブルク伯こと、ルネー・グラーフが仲間と騒いでいるシーンで始まりました。軽快な音楽で、テンポの良い展開です。その後、ルネー・グラーフの親友であるマンフレッド(EugernAmesmann)と、その彼女であるジュリーとのやりとりが、部屋の中で続きます。広場から部屋への転換は、フォルクスオパー得意の回り舞台を上手に使い、スピーディーに行われました。ジュリーは本来「スプレッド」と呼ばれる役のようで、今回はNatalieKarlが担当しました。おもしろい役なのですが、歌だけではなく表現力(特に身体表現)が問われるので、難しい役でもあります(個人的な感想では、ちょっとお上品かな…といった感じです)。ちなみにブダペストオペレッタ劇場が「ルクセンブルク伯」を上演している理由がわかる気がしました(ブタペストオペレッタ劇場は、オズワルド・マーリカをはじめ、スプレッド役の宝庫です)。
そこへ、ドラマのキーマンであるロシア領事バジール(HeinzZednik)が登場します。HeinzZednikは、演技、歌ともに良い味を出していました。バジールは、自分が愛人にしたい女性を、ルネーと偽装結婚させる企みです。高額な報酬に目を奪われたルネーは謎の女性(アポロ劇場の歌手アンゲリカ、中嶋彰子)との偽装結婚を承諾するのですが、このあたりはオペレッタらし、楽しい台詞のやりとりがあります。また、偽装結婚のシーンも、なかなか笑わせる演出になっていました。
第2幕は「カーニバルの火曜日」で、アンゲリカが出演しているアポロ劇場のホワイエが舞台となります。ここでアンゲリカを見たルネーは、彼女の魅了されるのですが、2人のデュエットが聞き所です。レハールらしい美しいメロディが雰囲気を盛り上げます。やはりレハールはワルツを基本としているので、フォルクスオパーは得意なのかもしれません。また、2幕でもマンフレッドとジュリー(アポロ劇場のバレリーナという想定)との「恋のやりとり」がありますが、ここではメリーウィドウの3幕で良く使われる「Ich hol dir vom Himmel das Blau」が、マンフレッドとジュリーのデュエットで歌われました。これは結構、良い演出だと思います。
ところで“ルクセンブルク伯”は3幕もののオペレッタですが、1幕と2幕が短いため、休憩を入れるタイミングが難しいようです。2回の休憩では多すぎるし、かといって1幕終了時では、早すぎる…といったところでしょう。そこで、今回はオリジナルの2幕を分割して、途中で休憩を入れるという方式をとったようです。具体的には、アンゲリカとルネーが、お互いを愛し合っていることを認め、そこへバジールが介入してきて、離ればなれになるシーンで休憩を入れていました。
休憩後の再開も、ちょっと前に戻ってからスタートしました。ちょうどテレビでコマーシャルの後に、前のシーンをちょっと流す手法と同じです。まぁ、そうしないと不自然な感じになってしまうからでしょう。
アポロ劇場のホワイエで、最終的にルネーがアンゲリカを愛していることを、集まった仲間の前で再度告白し、バジールを振り切り、2人でホテルへ出かけるシーンで2幕は終わります。
2幕から3幕へは暗転ではなく、回り舞台を上手に活用し、ホテルのシーンへと転換させていました。その際、バジールの妻、アナスタシア(RegulaRois)がタクシーに乗って登場するという形をとっていました。このタクシー(舞台には超小型車が登場します)には色々と仕掛けがあり、舞台を盛り上げてくれます。
3幕のスタートはアナスタシアがホテルに到着するシーンから始まります。気性の荒い女性という想定で、オーバーな演技で観客の笑いを誘います(これくらいが、ぎりぎりという感じ)。
ところで、最近のフォルクスオパーは3幕でこけるケースが多いので心配していましたが、今回はウィットに富んだ台詞が多いものの、比較的オーソドックスな演出でした。アナスタシアはホテルの従業員を部屋に連れ込んで、さっそくお楽しみ…という演出もありました。そこへマンフレッドとジュリーがやってきて、盛り上がりながら部屋へ入っていきます。さらにバジールがホテルへ戻ってきて、妻が来ていることを知り、びっくり仰天するという筋書きになっています。
これから先は、バジールが愛人の契約を解除し、軽快なエンディングに乗って、3組のカップル(ルネーとアンゲリカ、マンフレッドとジュリー、バジールとアナスタシア)の誕生を仲間が祝福するというストーリーでした。最後はオペレッタらしい楽しいエンディングでした。個人的にはフォルクスオパーの新演出では、久しぶりに「まともなオペレッタ」に仕上がっていると感じました。特に変にひねった演出ではなく、オリジナルのストーリーと音楽を大切にしながら、台詞で味付けをするといった感じです。
現地新聞評は月曜日になると思うので、そちらも楽しみです。
それにしても、タイトルロールではありませんが、中嶋さんのすばらしさが光った舞台でした。個人的には歌、演技とも申し分ありません。また、ルクセンブルク伯ことルネー役のMiljienkoTurkはフォルクスオパー初出演とのことですが、まずまずの出来だったと思います。今後、なれてくるとさらに良くなるでしょう。今日は席が中央ではなかったので、歌手の力量は必ずしも正確に把握することができませんでした。
久しぶりに、本来のフォルクスオパーらしいオペレッタに仕上がっていますので、機会があったら皆さんも是非、ご覧になったらいかがでしょうか。
なお、EMIで全曲版CDも販売されていますので、事前に予行演習をすることもできます。
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