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February 06, 2006

映像でよみがえる、すばらしい“こうもり”

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さて、今日はDVDの話題です。
最近はオペラのDVDが、数多く発売されるようになってきました。特に最近録画したものは高画質で、劇場の雰囲気が伝わってきます。しかし、「オペレッタもの」となると、ぐっと数が減ってしまいます。シリーズで出ているメルビッシュのオペレッタものでは、最も楽しめる映像かもしれません。

そんな中で、最近、オペレッタファンにとって、「すばらしい一本」が発売されました。演目は、ご存じ“こうもり”ですが、1980年12月31日のウィーン国立歌劇場公演のライブ版です。当時、オーストリア放送協会がテレビ中継した映像とのことです。まず、出演している歌手陣がすばらしい。

指揮はウィーン生まれのデオドール・グシュルバウアー、アイゼンシュタインがベルント・ヴァイクル、ロザリンデがルチア・ポップ、アデーレがエディタ・グルベローヴァ、オルロフスキーがブリギッテ・ファスベンダー、ファルケがワルター・ベリー、フランクがエーリッヒ・クンツ、フロッシュがオーストリアを代表する役者のヘルムート・ローナーという顔ぶれです。この中で、現役で活躍している人は、エディタ・グルベローヴァなど、ごくわずか。すでにお亡くなりになっている方も多いので、「幻の名盤」と言っても良いでしょう。

演出はオットー・シェンクですが、本公演の映像監督も行っているため、カット割りやアングルも演出者の意向が的確に反映されており、すばらしい映像作品になっています。解説によると、オットー・シェンク演出による“こうもり”は1979年にプルミエを迎えたそうです。つまり、プルミエから1年後の公演…ということになります。
ここまでですと、「当たり前」の情報なので、「オペレッタにはまっている男」的な視点で、ご紹介しましょう。

○舞台装置が今と同じで、びっくり
最近は、新演出が多くなり、舞台装置も簡素化される傾向にあります。これは、ドイツオペラでは顕著ですが、ウィーンでも例外ではありません。しかし、現在でも“こうもり”は、オーソドックスな舞台装置で、雰囲気を盛り上げてくれます。実は、今年も1月に見たのですが、この映像を見て、びっくり仰天。何と、今とほとんど同じ舞台装置なのです。さすがに25年も立っているわけですから、今の舞台装置は、当時のものではないと思いますが、デザインが一緒というのは、感慨深いものがあります。第2幕のオルロフスキー邸の回り舞台を今と同じです。また、歌手の衣装、小道具なども、ほぼ同じようです。

これだけ変化の激しい劇場で、「25年間変わらぬ舞台」といのも、珍しいのではないでしょうか。ただ、国立歌劇場の場合、“こうもり”は年末年始に限定されていますから、そいうい意味では、分かりきった舞台・演出を期待するお客様も多いのでしょう(まぁ、「忠臣蔵」みたいなものでしょうかね)。

○「お芝居」が今よりもエキサイティング
オペレッタの場合、歌わない「お芝居」の部分があります。そのため、オペラ以上に歌手の力量が問われる訳で、かのグルヴェローヴァさんも、“オペレッタを歌えない歌手は、オペラも歌うことはできない”と言っているようです。私も何度か国立歌劇場で“こうもり”を見ていますが、最近はお芝居がおとなしくなっているという印象を持っています。とくにフォルスクオパーに比べると、オペレッタらしい「ばかばかしさ」があまり表現されていないように感じていました。

しかし、この映像を見て、正直、「滝に打たれた」ようなショックを受けました(大げさですが)。というのは、ベルント・ヴァイクル、ルチア・ポップ、アデーレ、エディタ・グルベローヴァ、エーリッヒ・クンツなど、皆、お芝居が見事です。役に「はまっている」という感じがします。

極めつけは、フロッシュ役のヘルムート・ローナーでしょう。さすがに役者さんだけあって、こんなに見事なフロッシュは見たことがありません(映像なので、表情や仕草をアップで映していることも影響しているとは思います)。第3幕冒頭の一人芝居や、刑務所長フランク(エーリッヒ・クンツ)との掛け合いは、見事の一言につきます。うぅーん、見たかった。

このほか、皆さん、「楽しんで舞台をやっている」という雰囲気が映像からも伝わってきます。「まじめに演技や歌を歌いながら、楽しむ」。最高に難しいのでしょうが、オペレッタは、これでなくっちゃ。

○オルロフスキーは、やはりメゾソプラノだった
ウィーン国立歌劇場で現在上演されている“こうもり”でも、ロシア貴族オルロフスキーはメゾソプラノの歌手が担当していますが、当時も同じでした。この映像では男装が似合うブリギッテ・ファスベンダー(ベルリン生まれ)が担当しています。小柄な方ですが、役作りは見事で、アイゼンシュタインやファルケとの掛け合いも見所です。ところで、最近では私の好きな歌手の一人であるアンゲリカ・キルヒシュラーガーさんがよく出ていますね。

○今も変わらぬグルベローヴァの美声
今や当代きってのコロラトゥーラ・ソプラノ歌手であるグルベローヴァさんの、「若き日」を見ることができる貴重な映像です。この映像は、ウィーンでデビューしてから10年目です。30代半ばという、歌手として調子の出てくる頃でしょう。今でもオペラで舞台に立つときは、役に没入し、役になりきる彼女ですが、当時のお芝居も、またすばらしい。意外とお茶目な一面が合ったりして、興味深いものがあります。歌は当然のことながら、見事です。特に音域の広さは、当時から一流歌手の片鱗を伺わせます。そして、25年経過した今も、当時と変わらぬ(技術が向上している分だけ、当時よりもすごいところもあります)美声は、まさに驚きです。
私は音楽の専門家ではありませんが、オペラは非常に体力を消耗する舞台芸術だと言われています。しかし、25年間、この美声を保っているグルベローヴァさんには、頭が下がります(日常から、非常に節制しているとのことですが)。
また、1980年当時、すでにウィーンにデビューして10年経過している時期に、グルベローヴァさんがアデーレ役というのも、興味深いものがあります。どのような経緯でオファーがあったのか…今よりも舞台へ立つためのハードルが高かったのでしょうか。このあたりは、識者に伺いたいものです(ただ、グルベローヴァさんを紹介した書籍などからは、今の方がタイトルロールへの抜擢などは、全体的にハードルが低くなっていることが読み取れます)。

しかし、こんな“こうもり”を今見たら、さぞかし興奮のるつぼと化していたでしょう。ちなみに、不思議なもので、1980年は私が初めて本格的にウィーンを訪問した年でもあります。私が訪問したのは、夏でしたが、この年の大晦日、国立歌劇場ではこんなすごい舞台をやっていた…感慨深いものがあります。

なお、本DVDはTDKコアから発売されており、国内ではキングレコードが販売しています。国内版なので、ちゃんと日本語解説書と日本語字幕もついており、どなたでも「オペレッタの世界」に浸ることができる一品です(品番はTDBA-0089)。しかし、オーストリア放送協会は、このような名演を数多くアーカイブスとして保管しているのでしょうね。

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Comments

お久しぶりです。

TDKコアのDVDではカラヤン指揮の「トロヴォトーレ」を先日買いました。画質もよくて、とても30年ほど前のものとは思えません。演奏も素晴らしく、ウィーンではこの水準が日常茶飯事だと思うとちょっと羨ましいです。これからもこういう埋もれた名盤をどんどん市販して欲しいです。

さて、この「こうもり」もCDショップで視聴しました。「こうもり」の雰囲気はクライバーが指揮したバイエルン国立歌劇場のものとよく似ています。演出も同じ人ですね。それからファスベンダーも同じ役です。声もそうですが、雰囲気も貴族にあっていると思います。

グルベローヴァはウィーンで生を聴いたことがあります。「ルチア」でした。言うことなし。素晴らしかったです。

Posted by: コロンビー | February 06, 2006 18:16

ご無沙汰いたしております。
キルヒシュラーガーさんの名を見て懐かしくコメントを書かせていただきます。
彼女の舞台は、3年余前ザルツブルクに数日滞在したとき、彼女に対するまったく何の知識も先入観も持たずに偶然「ドイツリートの夕べ」を聞きましたが、すばらしい夕べでした。女性のリートを聴いて面白いと思ったのは初めての経験で(宗教音楽の女性の声は好きですが、リートはどうも好きになれませんでした)、珍しく名前がしっかりとインプットされました。数日後ウィーンの楽友協会に行ったら、そこのカレンダーのトップページを飾っていたのが彼女でした。
来日時の舞台は見ていませんが、新聞などで名前を目にするたびに、あの夕べが思い出されてうれしくなります。是非また聞きたい人です。

Posted by: セバ工房 檜山 | February 09, 2006 18:35

檜山さま、ご無沙汰しております。
キルシュラーガーさんですが、「ソフィーの選択」という重いオペラで大変高い評価を得ていらっしゃいますね。以前、国立歌劇場の楽屋口で待っていてサインを頂いたことがあるのですが、普段は飾らない気さくな女性です。
お子さんもいらっしゃるお母様なのですが、これからも頑張ってもらいたいものです。

Posted by: オペレッタにはまっている男 | February 09, 2006 18:43

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