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May 08, 2006

オペレッタ番外編 ドレスデン・オペレッタ劇場(StaatsOperetteDRESDEN) その2

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さぁ、いよいよオペレッタの内容についてのご紹介です。
○現代劇“メリーウィドウ”
最初に、公演プログラムを見る限りでは、「かなり奇抜な演出らしい」という印象を受けました。というのは、写真がプログラムに掲載されていますが、登場人物が、皆「現代的な服装」なのです。最近のドイツオペラは、古典でも新演出では、スーツにワンピースといった姿で歌手が登場するケースが圧倒的に増えています(この前、日本のテレビで“ナクソス島のアリアドネ”を観ましたが、まるっきり雰囲気が異なり、最初は何のオペラかわかりませんでした)。この流れをくんでいるように感じます。

しかし、フォルクスオパーのように、中途半端な近代化よりは、ある意味、ドイツオペラの流行に乗り、完全な「現代劇」にしてしまったので、無理がない感じがしました。お話の中身が、時代を問わず通用する「男女の恋物語」なので、演出はそれなりに成功していると思います。「陽気な未亡人」というコンセプトは変わっていません。
さて、想定は、「今」ではなく、東西冷戦時代末期、旧東側の弱小国大使館でのお話という形式をとっています。そのため、出演者の服もスーツ姿にドレスになっています。さらに、党の政治将校や、旧ソ連風の軍服を着た軍人(オルガの旦那さん)、武器の密輸人(財政危機のため、軍人から核物質をヤミで買いに来た)、スパイなどが出てきて、ユーモアのセンスがあります(旧東ドイツを知っている人が見たら、これだけで、笑えます)。また、第1幕の「ハンナ登場」の場面では、ハンナが、シャネルの買い物袋をたくさん下げて登場し、これだけで、「パリの設定」、「ハンナがお金持ち」というのがすぐわかる「粋な演出」も行われていました。

舞台装置も、うらぶれた旧東側の大使館という雰囲気を出しており、最後まで、小物だけで舞台を作っていました。なお、後日鑑賞した“Can-Can”では、逆に当時の時代設定にこだわっていましたので、すべてが現代劇…という訳ではないようです。
ただし、舞台が狭い点はどうしようもなく、舞台の袖や花道を活用した演出を行っています。

見所の多い、第二幕ですが、「ヴァリアの歌」では、大使館内でのパーティーという設定(屋内)になっていました。舞台の広さなどから考えて、無理のない設定と言えるでしょう。また、「ヴァリアの歌」に合わせて、ハンナと同じ、赤いドレスを着たバレリーナが登場し、ダニロを誘惑するバレエを披露するという演出でした。

バレエに関しては、演出上、余り重視していないように感じました。当初、バレリーナの質が低いかのかと思ったのですが、後日、鑑賞した“Can-Can”では、見事なバレエやダンスを披露していましたので、演出上の問題だと思います。、この点に関しては、「踊り命」のブダペスト・オペレッタ劇場や、ワルツの本場、ウィーン・フォルクスオパーの演出に比べると、正直、物足りない感じがしました。これは、第三幕の「グリゼッティンの歌」でも同様でした。個人的には、オペレッタは、歌、お芝居、バレエ(ダンス)、が三位一体となって初めて、楽しい舞台になるだけに、この点だけはちょっと残念です。

さて、第二幕のお楽しみ、「女、女、女のマーチ」は、通常とは異なりニグシュを除くメンバー7名で実施されました。案の定、「花道」を上手に使い、見事なコーラスを披露してくれた。
第二幕、後半の山場となる「あずまや」のシーンですが、実は「あずまや」を「タンスの奥の隠し部屋」に置き換えた演出でした。舞台の広さや設定を考えると、ここに「あずまや」をもってくるのは無理があるので、逆に「タンスの奥の隠し部屋」の方が、ミステリアスで良いかもしれません。この「隠し部屋」は、何回か、場面転換や演出者の入れ替えで使っていました。ベラシェンヌとカミーュの歌がうまいので、この場面は大変盛り上がりました。

第三幕は通常、暗転で行われるケースが多いのですが、今回は、暗転なしで、マキシムに行こうとするダニロをハンナやゼータ、ニグシュが引き留めて、いきなり「グリゼッティンの歌」となりました。
「グリゼッティンの歌」では、ベラシェンヌはダンスをほとんど踊らず、歌に専念していましたが、歌がうまいだけに、観客を引きつけるものがありました。このタイミングで、今風の衣装を身につけたバレリーナが登場し、ダンスを披露しますが、「天国と地獄」プラス「カンカン」は行わず、「グリゼッティンの歌」一本で攻めるブダペスト・オペレッタ劇場スタイルでした。ただし、ブダペストの場合、このシーンの踊りは、最も盛り上がる場面なのですが、シュタットオペレッタ・ドレスデンでは、あっさりとしていて、ちょっと物足りなさを感じました。
フィナーレは、ほぼ定番の終わり方です。最後は、出演者全員で「女、女、女のマーチ」を合唱してお開きとなりました。

○演奏と歌手は予想以上
演奏ですが、オーケストラは少人数なのですが、予想以上に良い演奏をしていました。また、劇場が狭いため、迫力不足といった感じは受けませんでした。ただし、ワルツに関しては、独特の「こぶし」の部分は、フォルクスオパーにはかないません(当たり前の話ですが)。このあたりは、オペラでも共通することなので、やむを得ないでしょう。逆に言えば、「ワルツのこぶし」がウィーンの誇りということになります。今回は、“Can-Can”も見ましたが、こちらの演奏もリズム感あふれる見事なものでした。他の演目も聴いてみないと、実力を判断することはできませんが、劇場の規模を考えると、この水準は立派であると言えるでしょう。
一方歌手ですが、全般的に歌手の実力は高く、歌唱力には光るものがありました。ベラシェンヌ(Martina Haeger)やカミュ(Michael Nowak)の歌は見事でした。

ニグシュ(Wolfgang Amberger)は白衣を着た「トイレの番人」(しかし、ちゃんと大使の秘書としても活躍しています)として常時、登場していました。また、ゼータ男爵(Hilmar Meier)は演技力が高い、歌手でした。
主役のハンナ(Ingeborg Schöpf)も歌唱力はあるのですが、若干、高音域での迫力に欠ける感じがしまいSた。もう一人の主役、ダニロ(Christina Grygas)は粋なスーツ姿で登場しまいSたが、こちらは声量もあり、歌唱力は水準以上でしょう。

全般的な印象としては、歌のレベルは高く、演技力も一定水準以上だと感じました。これは、人選の方針だと思われます。ただし、舞台が狭いこともあり、合唱団の人数などを多くすることができず、気の毒な感じがした。実際、後半では、舞台の袖まで使っていました。

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○最後に
お客様の多くは、ドイツ人のようでしたが、全体的に乗りが悪い感じがしました。これは、ドイツ人気質なのでしょうかね。
一言で表現すると、トータルバランスを重視するウィーン・フォルクスオパー、「楽しさ第一」で娯楽の頂点を目指すブダペスト・オペレッタ劇場、風刺を効かせた演出と歌唱力で勝負するドレスデン・オペレッタ劇場といった感じでしょうか。

ただし、オペレッタは一公演しか見ていませんので、これだけで、同カンパニーの実量を決めることはできません。後日観た“Can-Can”では、同劇場は、舞台転換も含めて、全く違った一面を見せてくれました。
これだけは言えるのは、ウィンナ・オペレッタではない、「ドイツのオペレッタが存在する」ということでしょう。もう一つ興味があるのは、旧東ドイツ時代は、どのような演目を、どう演出していたか…ということです。25年前、ドレスデンを訪問していますが、当時は、ピリピリした雰囲気が町中に漂っており、共産圏らしい企画化された建物とともに、一見すると人間味が感じられない街でした。当時は、「東側の優等生」と言われた東ドイツですから、演出や演目にも、ある程度の制限があったことでしょう。

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今後も機会があれば、是非、ウィーンやブダペストで上演される機会の少ない演目を鑑賞してみたいものです(写真は同劇場のロビーに流れていた“ローマの謝肉祭”のPR画像です)。

なお、同劇場のWebサイトアドレスは、http://www.staatsoperette-dresden.de/ となっており、こちらからチケットの予約も可能です。

最後に、同劇場へ訪問するきかっけを作って頂いた「あんだんてさん」に深く感謝いたします。「あんだんてさん」のご紹介記事がなければ、恐らく、同劇場を訪問する機会はなかったと思います。

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