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June 23, 2006

オペレッタ番外編 新国立劇場“こうもり”

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日本では、残念ながらオペレッタを常時、上演している歌劇場はありません(そもそも、常設の歌劇場すら、少ないのが現実ですが)。
その中で、オペレッタの普及に尽力しているのが、寺崎裕則氏が率いる財団法人日本オペレッタ協会でしょう。しかし、資金的な問題もあり、小規模な公演にならざるを得ないようです。
さて、そんな中、新国立劇場(東京都渋谷区)2005/2006シーズンの最後に、同劇場では珍しくオペレッタ“こうもり”が上演されました。そこで、今日は番外編として、同公演のレポートをお伝えします。

さて、新国立劇場は、色々なごたごたがあったのですが、結局、新オペラ監督(トーマス・ノヴォラツスキー氏)の就任に伴って、出演者選抜方式が、「日本人歌手育成優先」から、いわば「興行優先」に変わりました。そのため、今回の“こうもり”でも、主演クラスは、皆、外国人歌手です。唯一、アデーレ役で起用された中嶋彰子さんが、第一幕から第三幕まで通して搭乗した日本人でした(しかし、中嶋さんは、フォルスクオパーでタイトルロールをつとめたくらいの歌手ですから、実質的には日本人歌手ではないですね)。
<下に続きます>

今回の演出は、ウィーンで“こうもり”にも、色々な役で出演していたハインツ・ツェドニクさんでした。何でも演出家としてのは、本公演がデビューらしいのですが、比較的オーソドックスな演出でした。新国立歌劇場の趣旨としては、「ユーゲント・シュティールを再現した演出」と言っていますが、今ひとつ、イメージがわかりませんでした(別に舞台装置もユーゲント・シュティールが強く反映されていなかったと思います)。

なお基本的な構成は、第二幕に「雷鳴と電光」が使われるウィーン国立歌劇場版に近いものでした。この他、第二幕の聞かせどころであるロザリンデが歌うチャールダーシュの後に、男性バレエ団による「ハンガリー万歳」が上演されました。
ただ、本来、年末のお話(つまり寒い時期のお話)なのに、第一幕が、アイゼンシュタイン邸の中庭という設定でした。第一幕は、終始、お話が、この中庭で進みます。オリジナルを知っていると、「こんな寒い時期に、中庭で食事をしたら、我慢大会になってしまう」という突っ込みを入れたくなります。では、陽気の良い時期の話で最後までいくのかと思ったら、第三幕の刑務所事務所では、しっかり大型ストーブが設置されており、これにさわって、大騒ぎするシーンがありましたので、冬なのでしょうか? ただ、第三幕の「見せ場」である「12月32日のカレンダー」はありませんでした。まぁ、細かいところにこだわってはいけないのでしょうかね。

日本らしく、終演時間を考慮して、休憩一回(第一幕後)での上演となりました。通常、フォルクスオパー、国立歌劇場とも“こうもり”は二回休憩を入れるのが、一般的です(オルロフスキー邸と刑務所の舞台装置転換に時間がかかるためだと思います)。はじめは、第二幕と第三幕を暗転で行うのは、無謀だと思っていましたが、さすがハイテク日本。見事な工夫により短時間で転換が完了しました。お開きの場面でわかったのですが、上から下ろすスクリーンを上手に使って刑務所を演出していました。
ただし、通常、何回か場面転換がある第二幕ですが、ここは終始、同じ舞台装置で行われました(ちょっと残念)。

さて、主演のアイゼンシュタイン役はヴォルフガング・ブレンデルでしたが、歌唱力、演技力ともに、見事で、この役にぴったりでした。一方、相手役のロザリンデ役はナンシー・グスタフソンでしたが、あくが弱い感じで、物足りなさを感じました。
このほか、ファルケ役はポール・アルミン・エーデルマン、オルロフスキーは、ロシア出身のエレナ・ツィトコーワでした。エレナ・ツィトコーワは、オルロフスキー役に求められる退廃的な雰囲気をよく出していました。また、第三幕を盛り上げるフロシュには、ハンス・クレマーでしたが、なかなか芸達者で、楽しませてくれました。

日本の歌手では、第一幕と第三幕だけにちょっと顔を出すアフルレーには水口 聡さんがつとめましたが、オペラ歌手という役なので、地でやっている感じでした。ただ、セリフはちょっと苦戦していた感じがします。

ご存じのように、オペレッタの場合、お芝居の場面で、セリフが多いので、言語上演は日本人にとって、かなりハードルが高くなります。また、お客様に喜んでもらうためか、第二幕ではアデーレとイーダ(中村理恵さん)が日本語で会話をするシーンがありましたが、正直、完全に浮いていました。単語で、日本語が出てくるのは、ご愛敬だと思うのですが、セリフだけは言語で上演していただきたかったところです。

ところで、新国立劇場には専属オーケストラがありません。現在は、東京フィルハーモニー交響楽団がつとめています。同楽団は、オペラ公演が多いだけに、国内のオーケストラとしては、オペラ演奏には慣れていると思います。今回、改めて聴いてみて、やはりウィンナ・ワルツ独特の「こぶし」を再現することは難しいと感じました。
いわゆる音符では表現できない、微妙なニュアンスだと思います。指揮は、オーストリア出身のヨハネス・ビルトナー氏でしたが、練習中、かなり悩んだのではないかと推察されます。

色々と考えさせられる公演でしたが、現在の日本を考えると、まずまず、合格レベルのオペレッタだったと思います。それにしても、オペレッタは難しいですね。

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Comments

かなり以前の事ですがフォルクスオーパーでツェドニックがアイゼンシュタインを楽しそうに演じていたのを観たことがあります。まさに歌役者の本領発揮でとても印象に残っております。フォルクスオーパーの來シーズンの「こうもり」新校訂版が彼の演出とのことですが、新国立劇場の「こうもり」は謂わば試作品だったとも言えますね。フォルクスオーパーの「こうもり」は縁あって何度も観ていますが毎回演出が少しずつ変わって居りました。”はまった男”さん程の観察力はありませんが、永年のオペレッタファンの私としては新「こうもり」に大いに期待して居り、亦ウイーンに行かなくちゃと思っているところです。

Posted by: N.Saiki | June 25, 2006 00:12

コメント、ありがとうございます。
ツェドニックさんは、歌役者としては、すばらしい方ですね。最近は、このような方が現地でも減っているのが、正直残念です。

さて、フォルクスオパーの“こうもり”ですが、来シーズンは若干の手直し程度にとどまるようです。
というのは、プルミエ設定がありませんので。来シーズン最初の上演は、恒例の年末(12月29日)になっていますね。
私も、どの程度、変更されるのか、興味のあるところです。

Posted by: オペレッタには待っている男 | June 25, 2006 08:02

私も6/23の公演を楽しみました(オペレッタ協会の寺崎さんもいらっしゃたようですが)。本場のオーケストラの音に比べると何か音がきつい感じがしましたが、指揮者の方の一生懸命な演奏の姿を見て日本での日本のこうもりを堪能できたので、私的には良い公演でした。
いろいろな演出が出来るのがこうもりだと思いますが、1999年シュトラウス没後100年の時のフォルクスオーパーの公演は舞台の設定等が回り舞台でたしかアールデコ調だったと記憶しています。
今回の新国立劇場の舞台使いなんかも、1幕と2幕の途中までは、窮屈な感じがしていましたが、宴会のシーンで広さを感じさせる演出なんかも良かった(雷鳴と電光のシーンで一番後ろでファルケ博士とイーダが軽やかな踊りを踊っていたのがちょっと粋かなぁ~)
兎にも角にも新国立劇場でも頻繁にオペレッタを上演してもらえればいいなと思いますし今後も鋭い含蓄のあるコメントをお願いします。

Posted by: 鈴木 秀明 | July 01, 2006 16:25

鈴木様、コメント、ありがとうございます。
第2幕、宴会のシーンは奥行きがあって、なかなか雰囲気が良かったですね。
そう言えば、ご本家の国立歌劇場では、このシーン、回り舞台を上手に使い、宴会場に場面転換させていますね。
個人的には、オペレッタも、新国立劇場でやってもらいたいと思っていますが、現実的には「歌役者」が少ないこともあり、難しいと思います。

Posted by: オペレッタにはまっている男 | July 01, 2006 20:37

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