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February 12, 2007

オペレッタ番外編 日本オペレッタ協会「ルクセンブルク伯爵」公演

Luxem07
今日はオペレッタ番外編です。2月9日から11日にかけて、今年、創立30周年を迎える日本オペレッタ協会による「ルクセンブルク伯爵」(平成18年度文化庁芸術創造活動重点支援事業)が、東京都(北とぴあ・つつじホール)で上演されました。今回、鑑賞する機会がありましたので、その模様をご紹介しましょう。

「ルクセンブルク伯爵」は、昨年、メルビッシュやフォルクスオパーでも上演され、ちょっとしたブームになっているのですかね。

スタッフですが、芸術監督・台本・演出は寺崎 裕則、音楽監督・指揮は上垣 聡の両氏です。また、出演者は、タイトルロールのルネ・ルクセンブル伯爵は田代 誠、アンジェール・ディディエは宇佐美瑠璃(9日昼と10日)と柳澤涼子(9日夜と11日)、アルマン・ブリサールは坂本秀明(9日と10日)と平田孝二(9日夜と11日)、ジュリエット・ヴェルモンが針生美智子(9日と10日)と森 美代子(9日夜と11日)、 バジール・バジロヴィチ侯爵が小栗純一、メンチコフが村田芳高、スターシャ・ココゾフが西尾祥恵、マダム・カンベールが木月京子、ベレグラン/パラソルが阿部六郎という、おなじみのメンバーでした(ある種の安心感があります)。また、同協会公演の定番である、歌も含めた完全日本語上演でした。

さて、東京都北区にある北とぴあ・つつじホールで上演されたのですが、この会場は客席数400ほどの小劇場です。私は初めて行ったホールだったのですが、入ってびっくり、オーケストラピットはありません(大劇場のさくらホールはオーケストラピットがあります)。
演奏は日本オペレッタ管弦楽団アンサンブルとなっていましたが、実は、楽団はピアノ(浜川 潮)とバイオリン(西田史朗)の二人(デュオ)で、舞台上で演奏していました。ただし、客席から向かって右側に仕切りを入れて、その奥で演奏を行う方式でした。まさにアンサンブルです。

「ルクセンブルク伯爵」は、本来三幕のオペレッタですが、三幕目が短いこともあり、最近では、二幕を分割して、「二幕もの」で上演されることが多いようです。今回の公演でも、一幕と二幕の前半で一時間、二幕の後半と三幕で50分といった時間配分になっていました。

さて、演出ですがウィンナ・オペレッタに造詣の深い寺崎氏らしく、オリジナルを尊重したものになっていました。
具体的には、第一幕、ルネとアンジェールが偽装結婚するシーンでは、お互いの顔を見せないようにするため、アルマンの画いている絵を衝立代わりに使い、花婿は右に、花嫁は左に立ち、結婚契約書にサインし、顔も見ないまま手を出して指輪を交換します(これは、オーソドックスな演出です)。

なお、また、アンジェールの設定は、パリオペラ座の歌手が一般的ですが、メルビッシュではムーランルージュの歌手にしているところもあります。今回の公演では、パリオペラ座の歌手になっていました。

第二幕は、アンジェールの引退公演後のパーティ会場です。ここの設定もフォルクスオパーでは劇場のホワイエ、メルビッシュでは劇場の楽屋(バックステージ)と様々です。今回の公演では、ジュリエットにパトロンが提供した邸宅がパーティ会場になっていました(ちなみに最後の公演は「ラ・ボエーム」という想定。やりますね)。

休憩に入るタイミングは、フォルクスオパー版に近く、アンジェールとルネがお互いの素性を明かさないまま、惹かれ合うシーンの後でした。

休憩後は、ルネが偽装結婚の相手であったことを明かし、アンジェールが偽装結婚の相手を罵倒したことを後悔するという有名なシーンが山場です。そして、明日までアンジェールを守るという約束で、ルネがアンジェールと街へ消えていく場面で、三幕へと転換します。このあたりは、合唱団やバレエ団が参加していないことを除けば、極めてオーソドックスな演出でした。

第三幕のポピュラーな演出では、パリのホテルが舞台になります。まず、ここにバジーロヴィッチ公爵との結婚を望む、未亡人のココゾフ伯爵夫人がロシアからやってきます。そして、バジーロヴィッチ公爵のと間で一悶着あるのですが、今回は、この場面がパリのカフェ・プランタンに変更されていました。そして、カフェのオーナーが、偽装結婚の立会人であるペレグランと双子の兄弟という設定になっていました(実際、一人二役)。

また、カフェのマダムであるカンペール(歌手という想定)も第三幕から登場し、今回は何と同じレハールの「ジュディッタ」の名曲を歌うという“サプライズ”が用意されていました。

今回の演出で一番興味深かったのは、第三幕にココゾフ伯爵夫人ではなく、バジーロヴィッチ公爵の娘スターシャを登場させたことでしょうか。そして、スターシャが離婚した母が病気で、ぜひ会いたがっているから、ロシアへ戻って欲しいと、最後に懇願し、バジーロヴィッチ公爵が女遊びから目が覚めるといった展開になっていました。そのため、フォルクスオパー版やメルビッシュ版よりも上品なエンディングになっていました(前者の場合、バジーロヴィッチ公爵が、ココゾフ伯爵夫人に、事実上やり込められる形になっています)。
なお、最後にルネとアンジェール、アルマンとジュリエットという二組のカップルが誕生するという、おなじみの展開でした。

さて、今回は小劇場であることから、客席の通路を花道に見立てた演出も効果的でした。
さらに、演奏がピアノとバイオリンということで、歌手の声が、気持ちとともにストレートに伝わってくる公演でした。さらに、歌手の皆さんも観客に近いこともあってか、のびのびと、しかも、いつも以上に気合いが入っているように感じました。
このほか、普通の公演では合唱団、バレエ団などが加わるため、ソリストの印象が薄れてしまうことがありますが、今回は事実上、ソリストだけでの上演だったので、物語が非常にわかりやいという印象を持ちました。

また、日本語の歌についても、かなり工夫されており、比較的歌詞の内容が理解しやすくなっていました。
今回は、小劇場でのオペレッタの面白さを再発見した公演でした。大劇場による公演もおもしろいですが、スタッフや費用に制限があることを考えると、逆にこのような公演形態も日本には合っているように感じました。

なお、日本オペレッタ協会では2005年1月に新国立劇場で、フルキャストによる「ルクセンブルク伯爵」を上演していますが、私は、その時、ウィーンに行っていたため、鑑賞する機会がありませんでした。同協会の次回公演は、オペレッタ・フェスティバル「喜歌劇の祭典」(6月8日~10日)、「微笑みの国」(10月13日~14日)がリリースされています。

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Comments

日本オペレッタ協会「ルクセンブルク伯爵」の公演情報を興味深く読ませていただきました。花の都を遠く離れた辺境の地に住んでおります私にとっては外に情報獲得手段が無いものですからとても有り難いことです。
この公演は(率直に言って予算の関係でしょうが)昨年のメルビッシュ版とは対極的な「手作りオペレッタ」としてそれなりの面白さがあったようですね。合唱団もバレー団も登場せず、伴奏もミニマムとあればサロンミュージックのような雰囲気だったかと想像します。色々ある中でも「ルクセンブルク伯爵」はこのような作り方の似合う数少ないオペレッタではないかと思います。この甘美でノスタルジックで親しみ深い作品の本質が上手く表現されていたとすればそれは Doktor Operette 寺崎裕則さんの功績でしょう。

寺崎裕則さんと言えばこんなことを思い出します。1979年フォルクスオーパーの日本初公演で私たちの多くがオペレッタにはまってしまいましたが、寺崎さんがオペレッタにはまったのは75年以降(ウイーン在住時代)とのことで私たちとは以外に時期が離れておりません。私はその後80年代にこの方の著書「魅惑のウインナオペレッタ」やNHK/FM放送クラシック枠での「オペレッタの楽しみ」連続シリーズ(かなり長時間)などで大いに影響を受けました。この録音(カセットテープ)を改めて聴きなおしてみようかと思っております。

Posted by: Unicorn(ユニコーン) | February 13, 2007 00:24

ユニコーンさま、コメントありがとうございます。

正に「サロンミュージック」のような雰囲気でした。良い意味で客席と一体感のある舞台で、新鮮な体験でした。

同協会のパンフレットによると、このような小編成オペレッタを各地の学校で上演しているようです。実際に鑑賞して、この形態ならば可能だと思います。

このような上演が、オペレッタファンづくりにつながれば、嬉しいところです。

Posted by: オペレッタにはまっている男 | February 13, 2007 08:25

またオジャマしてスミマセン。

当ブログの読者なら既にご存知の方も多いかと思いますが、未だご存じない方のためにお節介ながらDVD情報をひとつ。

 ユニテル・オペレッタシリーズBOX (レーベル:ドリームライフ)
 組枚数:18枚   定価49350円(税込)**
 発売予定日:4月25日(予約受付中・限定400組)

総枚数18枚ですが「こうもり」がクライバー/バイエルン国立歌劇場版とべーム/ウイーン国立歌劇場版とあり演目数では17タイトルとなります。
内容的には独ユニテル社が1970年代前半に集中的に製作したオペレッタ映画が中心となっているようですが、「メリーウイドウ」はメルビッシュ版(93年)です。
数年前、幾つかはNHK・BSクラシックロイヤルシートで放映されましたのでご覧になった方も居られるでしょう。私もその内8演目は録画保存しております。演目等詳細はインターネットで「ユニテル」を検索してみてください。歌手陣の名前を見てるだけでも楽しくなりますよ。
**価格は Tower や Amazon サイトのオンラインセールで37013円(税込、25%引き)ですがお暇なら外も当たって見られると良いでしょう。この価格帯であれば1枚当たりの単価は2000円ちょっとなのでCD並みです。同単価で分売が有れば我が家のビデオライブラリー(ベータ、VHS)とダブらなくて済むのですが・・・。まあDVDの時代だし、この機会に思い切ってワンセット購入しようかなと気持ちが傾いているところです。

上記の通りユニテルがオペレッタ映画を集中的に作ったのは70年代前半ですが、この頃は未だカラーテレビも初期段階で民生用のビデオデッキも余り出回ってなく、ましてやレンタルビデオ店など無かったように思います(私の思い違いかもわかりませんが)。であれば一連のオペレッタ映画はどの方面向けに作られたのでしょう。私は案外映画館向けに作られたのではないかと想像しております。私たちがアメリカのミュージカル映画に熱中していた当時、ヨーロッパではオペレッタ映画の上映がポピュラーだったのではないでしょうか。オペレッタにはまっている男さん、ウイーンのはっぱさんならその辺りのことをご存知ではないかと、あるいはこのブログの読者の中に物知り博士が居られると思いますので是非教えてください。


Posted by: Unicorn(ユニコーン) | February 13, 2007 17:06

ユニコーンさま、コメントありがとうございます。

ユニテルのオペレッタ・シリーズは、ちょっと食指が伸びますよね。

実は、私は例のユニテル・シリーズが国内発売になった時、試しに1本買ってみました。「チャールダーシュの女王」でしたが、はじめはオペレッタ映画だとは知らず、正直びっくりしました。
どうもカバーの写真を見ると大多数がオペレッタ映画のようですね。

ところで、ウィーンで朝、テレビを見ていると、時々、この手のオペレッタ映画を放送していることがあります(当然、ORF)。
今までも、「メリーウィドウ」などを偶然見て、出かけるのをやめて、ホテルで見ていたこともあります。いずれも、1960年代の作品(当然、劇場映画)のようです。

実は私もユニテルの「チャールダーシュの女王」を見たとき、1971年に、このような古い感じの作品は作るのだろうか?という疑問を感じました(アメリカ製の「サウンド・オブ・ミュージック」が1965年制作なので)。仮に作ったとしても、テレビ向けの番組かもしれません。制作経緯については、DVDのリーフレットにも記述がありませんので、現時点では不明です。

また、調べてみましょう。宿題が一つ増えましたね(^_^)

Posted by: オペレッタにはまっている男 | February 13, 2007 20:37

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