« 番外編 バイエルン国立歌劇場「ロベルト・デヴェリュー」 | Main | 冬のプラター »

February 20, 2007

フォルクスオパーの「魔弾の射手」

Img_5232b
ウェーバーのオペラ「魔弾の射手」は、日本では序曲が非常に有名ですが、実はオペラそのものは、意外と上演されることがありません。

この「魔弾の射手」が、フォルクスオパーで、久しぶりに上演されることになりました。最近、フォルクスオパーで新しく上演されるオペラは、様々な趣向を凝らしたものが多く、話題には事欠きません。

私は、まだ観たことはないのですが、「トゥーランドット」では、出演者一同が虫に扮しているそうです(どんな展開なのか、想像がつきません。虫の衣装で「誰も寝てはならぬ」を歌うのでしょうか?)。まぁ、中途半端な演出よりは、思い切った方が良いでしょう。

それにしても「魔弾の射手」は、オペラ、オペレッタのタイトルでは数少ない名和訳と言えるでしょう。何しろ原題を直訳すると「自由射撃」となりますから…

指揮者はLeopoldHager、射撃の名手マックス役がJurgenMüller、マックスの恋人であるアガーテ役がKristianeKaiser、マックスの同僚で悪魔ザミエルに魂を売っているカスパール役がLarsWoldt、アガーテの父で森林保護官クーノー役がStefanCerny、アガーテのいとこエンヒェン役がAndreaBogner、ボヘミア領主のオットカール侯爵役がMarkusBrück、森の隠者役がAlbartPesendorfer、豪農のキリアン役がDanielSchmutzhard、 悪魔のザミエル役がRonaldKusteというメンバーでした。

演出は「ツゥーランドット」と異なり、衣装も含めて極めてオーソドックスなものでしたが、舞台装置は、最近流行の抽象的なものでした(実は予算の関係があるのかもしれません。こちらの方が、お金がかからないのでしょうかね)。個人的には、同じフォルクスオパーのオペラ「売られた花嫁」や「マルタ」の舞台装置の方が好きです。まぁ、歌手の服装が、狩人と農民の服装(でもは普通に皆さんが来ている民族衣装ですよね)だったこと救いですが。

さて、序曲の演奏前にいったん、オーケストラピットを含めて全体の照明が消えます。そして、舞台の幕が上がり、「悪魔のザミエル」と「森の隠者」が舞台上に登場します。その後、序曲というパターンでした。第一幕では、キリアンが射撃の予行演習でマックスに勝ち、農民と喜び合うシーンが象徴的です。一方、キリアンに破れて、落ち込むマックス(落ち込み方がリアル)。そして、そのマックスを農民が取り囲んでからかいますが、この合唱シーンはなかなかの見所でしょう。その後、マックスが一人で落ち込むシーンが続き、自分の銃で自殺しようとするシーンがあります。結局、思いとどまって、カスパールの誘いに乗る訳ですが…

Img_5570b

また、カスパールですが、いかにも悪魔に魂を売った「うさんくさい奴」という雰囲気のメイクと衣装で、まじめなそうなマックス(とはいっても土壇場では、魔弾の誘惑にかられてしまう訳ですが)と好対照といった感じでした。
第二幕は、二場から構成されており、合唱が少ない幕になります。第一場はアガーテの部屋で、エンヒェンとのやり取りから始まります。エンヒェン役のAndreaBognerは、かわいらしい妹役を見事に演じていました。「りりしい若者が来る時は」はなかなか良い歌いぶりでした。雰囲気もぴったりでしたね。また、アガーテが歌う「まどろみが近寄るように」も、なかなか聴かせるシーンでした。この二人は、なかなかレベルが高いという印象を受けました。
その後、マックスがアガーテの部屋を訪れ、マックスが、狼谷へ行くことを彼女に告げて、出かけます。

第二場(実際は4場以降になりますが)は、狼谷のシーンになります。ここは、怪しげな雰囲気を出すような舞台装置と演出でした。また、カルパースが魔弾を鋳造するシーンは、一発鋳造する事に、怪奇現象が起こるという設定になっており、プロジェクターによる映像を舞台上のスクリーンに映し出す手法が使われていました。後半は、狼の扮装をした兵士(狼谷の住人でしょうかね。狼のお面をつけてヘルメットをかぶっていました)が登場し、二人を取り囲みます。このシーンが、第二幕では数少ない合唱シーンとなります。まぁ、怪しげな雰囲気は十分でていましたが、「子供だまし」といった声が聞かれそうな演出ではあります。いわゆる「音楽性で、真っ向勝負」という感じはしませんでした。

なお、休憩は第二幕終了後に入りますが、ここまで、1時間30分以上かかります。したがって、観客の皆さんは、あらかじめ心得ておかないと、ちょっと厳しいかもしれません。

第三幕は、射撃大会の当日です。ここは三場構成になっており、第一場は、射撃大会にマックスが意気揚々と登場するシーンになります。当然、合唱も入り、盛り上がるシーンです。第二場は、アガーテの部屋で、アガーテは花嫁衣裳を着て、マックスとの結婚に備えています。婚礼の花冠が届けられますが、それは葬儀用の冠で、皆が驚くシーンが象徴的です。そこで、エンヒェンが森の隠者から貰った白いバラで花冠を編み(というか、花束の中をさぐる花冠が出てくるようになっており、会場から笑いが漏れました)、それを代わりにかぶります。また、ここでは、4名の女性が出てきて、合唱をするシーンがあります。

第三場はクライマックスの射撃大会です。狩人に扮した合唱団が多数出演します。
領主が、マックスに最後の1発で鳩を撃つように命令しますが、その弾は飛び出してきたアガーテに向かって発射してしまいます。ところが、アガーテはバラの花冠がお守りになって弾をそらし、間一髪命中をまぬがれます(でも、ショックで倒れてしまうのですが)。それた魔弾はカスパールに命中するのですが、すぐには死なず、アガーテの首を絞めるというシーンが設定されています(事なきを得るようになっていますが)。

不審に思った領主オットカールはマックスにその理由を問い、マックスは正直に全てを答えるという設定は、オリジナルどおりのようです。領主はマックスに追放を宣告しますが、そこに「森の隠者」が登場し、マックスの過ちを許すように領主に諭します。領主はそれに従い、1年の執行猶予の後マックスとアガーテとの結婚を許すのですが、このあたりのソロ、合唱の組み合わせは、本オペラ最大の見所と言えるでしょう。

全般的にフォルクスオパーの合唱団が、これだけ実力を発揮する演目は少ないように感じました。その迫力には圧倒されましたね。また、森の隠者役のAlbartPesendorferは、大柄な方で、存在感を示していました(役にぴったり)。

Img_5562b

舞台装置が、ちょっとチープな点と、演出が「子供だまし」のようなところを除けば、歌手陣のレベルも高く、十分楽しめるオペラに仕上がっていたと思います。「魔弾の射手」は、オペラでは珍しく、最後に死ぬのは悪魔に魂を売ったカスパールだけです。そういう意味では、フォルクスオパー向けのオペラと言えるかもしれません(「マルタ」「売られた花嫁」ともに人は死にませんから)。

この他、演奏ではホルンが重要な役割を果たします。ホルンの出来だけは、当日になってみないとわかりません。仕上がり具合は、当日のお楽しみといったところでしょう。

フォルクスオパーのプルミエにしては、カーテンコールも多く、お客様が一定以上の満足度だったことがうかがわれます(ただし、ご祝儀もあるのかもしれません。というのは花束が投げ込まれませんでしたので…)。

なお、19日には二公演目が行われましたが、出演者はがらりと変わっています。マックス役のJurgenMüllerと、エンヒェン役のAndreaBogner、悪魔ザミエル役のRonaldKusteはプルミエと同じでしたが、アガーテ役がJessicaMuirhead、カスパール役がSebastianHolecek、森林保護官クーノー役がRupertBermann、オットカール侯爵役がMathiasHausmann、森の隠者役がSorinColiban、キリアン役がChristianDrescherというメンバーになっていました。総じて、プルミエのメンバーの方が良かった気がしますが、カスパール役はSebastianHolecekも歌唱力があり、良い味を出していました。

なお、本公演は、舞台の両端を使う場面があるので、できるだけ中央の席で見た方が良いでしょう。また、舞台の手前を使った演出も多いので、1階よりも、二階バルコンの方が舞台上で何が行われているかは、良くわかると思います。

純粋に芸術作品として考えた場合、どのような評価になるかは存じませんが、フォルクスオパーはチケットのお値段もお手頃なので、機会があったら一度ご覧になるのも良いでしょう。

|

« 番外編 バイエルン国立歌劇場「ロベルト・デヴェリュー」 | Main | 冬のプラター »

Comments

The comments to this entry are closed.