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May 06, 2007

“DER KUHHANDEL”プルミエ・レポート

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5月5日、ルドルフ・ベルガー氏が、フォルクスオパーのディレクターに就任してから力を入れている「退廃音楽の復権」の最後を飾る、クルト・ヴァイル作曲による異色のオペレッタ“Der Kuhhandel”がプルミエを迎えました。
“DER KUHHANDEL”(“クーハンデル”という読みで良いのか、自信がないので原語のまま紹介します)ですが、最近は上演される機会が少ないようで、実際、プルミエ前に調べましたが、資料が少なく、あんだんてさんから助言を戴きました。

さて、本作品は、1935年にロンドンのサヴォイ劇場で、英語版(英語版の題名は“A Kingdom for a Cow”)として初演されたそうです。

当時の世相を反映してか、当初は1934年にパリかチューリヒで上演を予定していたようですが、「ファシズムを風刺した内容」であるところから、イギリスでの初演となったのでしょう。

“DER KUHHNDEL”は、カリブ海にある「架空の国」、サンタマリアに住んでいるファン(牛を飼っています)と、その恋人ファニータの結婚にまつわるお話です(いかにもオペレッタ的な話です)。
冒頭、舞台上に大きな地図が出てきますが、サンタマリアとウクアという二つの国が、ひとつの島に存在しています(実は、この地図が女性のシルエットになっています)。

サンタマリアとウクアの住人は、今まで平和に暮らしているという設定です。オープニングでは、両国の国民が出てくる場面(合唱団によるコーラス)があるのですが、帽子(赤と緑)を取り替えながら歌い、友好的な雰囲気を演出しています(ちなみにカリブ海の国なのに、国民は皆、チロル風のコスチュームです。さすがに「架空の国」です)。

平和主義の大統領も、国を統治する意識はないようで、いつもソファーで寝ています。
そこへ、隣国のウクアに武器を売った武器商人(アメリカ人という想定のようです)ジョーンズが登場します。彼は、サンタマリアの新聞社を買収し、軍事的脅威が高まっているとあおります(おーっと、マスコミを買収して、世論操作を画策するとは、今でも当てはまりそうなシチュエーションですね)。

結局、サンタマリアの大統領は、側近(お金に目がなく、ジョーンズからリベートを要求します)に唆されて、ジョーンズから武器を購入する契約を交わします。
ただし、どこかの国のようにサンタマリアは財政破綻しているため兵器を買うお金がないため、新しい税金をかけて、庶民を苦しめるという筋書きです。新しい税金の代わりに、ファンの牛が差し押さえらます。

ファンとファニータは結婚直前に牛を差し押さえられたため、結婚を延期し、牛を取り戻すため、ファンは港湾労働者として働くことになります。

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皮肉なことに、ファンが港で運ぶ荷物が、実はジョーンズから購入したミサイルという「落ち」があります。ファンは、荷役の仕事でお金を貯めて、村に戻ってきます。そして、牛を買い戻して、ファニータと結婚式を挙げようとします。ここへ、大統領の側近がやってきて、軍事的脅威が高まっているため、男性には軍事教練のため、徴兵を指示します。また、女性には新たな税金を払うように申し渡します。ファニータは、お金がないため、キャバレー(オリジナルでは売春宿だそうです)で働くことになります。

そのころ、街では平和を願う大統領が、ウクアの外務大臣を招いて晩餐会を開くのですが、武器を売りたいジョーンズと大統領側近に唆されて、将軍がクーデターを起こし、政権を奪取してしまいます(ちなみに将軍は「手腕の党」とういう政党に所属しています。そのため、クーデター後は、「手腕の党」のロゴがたくさん出てきますが、形は違うものの、ハーケンクロイツのパロディであることは明白です)。

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ここで、休憩となります。休憩後は、ファニータが働くキャバレーのシーンから始まります。このキャバレーで、政権を奪取した将軍の就任祝いのパーティーが開催されるという想定です(クーデターがあると国民がすぐに宗旨替えするところが、どこかの国のようです)。
そこで、将軍がファニータを見初めるという、「オペレッタの定番的な」展開です。

キャバレーのシーンは、後半の見所ですが、ネタばらしをすると、これから見る方の興味がそがれるので、見てのお楽しみにしておきましょう。

キャバレーの皆さんが、二日酔いで酔いつぶれている時、軍事教練中のファンが出てきます。なにやらランボーを思わせる出で立ちです。そこで、ファニータへの思いを歌います。
そのころ、街では将軍への忠誠を誓うため軍事パレードを元大統領側近のヒメネスが、将軍に進言します。
この軍事パレードに、ファンも招集されるのですが、将軍に反感を持っているファンが、将軍を殴り、死刑を宣告されます。

死刑は、ジョーンズが提供した武器で行われるのですが、この武器が、いずれも不良品で、弾が出ません。その結果、ファンは助かります。売った武器が不良品だったジョーンズは、ヘリコプターでサンタマリアを脱出します。将軍も、「使えない武器ならば、戦争もできない」という決断をし、再び、両国に平和が訪れるという、調子の良い話です。最後は、もちろんファンとファニータが結ばれます(実は、大統領とキャバレーのマダムもできているようです。これはフィナーレの場面でわかります)。

最後は、皆で平和の到来を祝して、踊って、歌って盛り上がって、フィナーレを迎えます。

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お話の筋は、上記のようなものですが、プルミエでの観客の反応は、近年になく良いものでした。ルドルフ・ベルガー氏に対するねぎらいもあるのかもしれませんが、全体的にテンポも良く、コミカルな演出が受けたのでしょう。
さて、歌手ですが、主役のファニータ役がUrsulaPfitzner、ファン役がDietmarKerschbaumでした。二人とも歌唱力があり、歌は聴かせます。

それ以上に人気を集めていたのが、大統領役のCarloHartmannと、将軍役のRolfHaunsteinでしょう。この脇役が舞台を、より魅力的にしています。
この他、大統領側近のヒメネス役はWolfgangGratschmaier、武器商人ジョーンズ役はMichaelKrausも、個性的な演技が光りました。

ルドルフ・ベルガー氏としては、溜飲の下がる作品に仕上がったのではないでしょうか。

今回は、久々に歌唱力のある歌手が登用されており、見応えのある舞台に仕上がっていました。また、合唱団の出番も比較的多いのも特徴です(特にフィナーレは、「合唱団が主役」といった感じです)。

余談になりますが、今、オーストリアでは、次期主力戦闘機ユーロファイターの導入にまつわる疑惑が浮上しています。今回の選挙で、第一党となった社会党が、疑惑解明を公約に掲げていたため、最近になって、騒がしくなっています。ロビーストが、当時の空軍参謀長など、導入のキーマンに働きかけていたことが、明らかになっているようです。なにやら、“DER KUHHNDEL”の世界が、現実のオーストリアで起こっている訳で、地元の皆さんにとっては、政治の世界を風刺しているようにも見えて、身近な話題なのでしょう。それだけに、お客様の反応が良かったのかもしれません。

なお、新ディレクターのマイヤー氏を始め、フォルクスオパーに出演する歌手の皆様も、いらっしゃっていたようです。

このところ、何回かフォルクスオパーのプルミエを観る機会がありましたが、同劇場の場合、批判の矢面に立ちやすいウィンナ・オペレッタよりも、思い切って新しい演出を試すことができる「この手の作品」の方が、まとめ方がうまいような気がしました。

さて、地元紙の評価が気になるところですが、恐らく7日当たりに掲載されると思います。
今のところ、2006/2007シーズンだけの上演ですが、「オペレッタにはまっている男」としては機会があったら、是非ご覧になることをお勧めする一品です。

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Comments

ブログに「力作」と言う表現を用いて良ければ当「DER KUHHANDEL」鑑賞記は正に力作と思います。我が国でもクルト・ヴァイルおたくは結構居るようですが何分にも情報が極めて少なくこのウイーンからの速報はとても有難かったです。成功だったようでなによりです。フォルクスオーパーの活力剤になるでしょうか。残念なのは來シーズンのレパートリーに入っていないことですね。
演出のD・パウントニーは写実的な舞台つくりをする人ではないので好みが分かれやすいのですがその点は如何でしたか? また巨大な人形が出てきたりしませんでしたか?

題名の「DER KUHHANDEL」は直訳では「不正取引」・・・オペレッタの題名として不似合いですがストーリーを知りますと満更外れてもいないような気がします。音楽の友5月号では「牛売買」とありました。KUH(牛♀)+HANDEL(売買取引)の単純直訳ですね。一方フォルクスオーパーのパンフレットの英語文では「ARMS AND THE COW」とあります。ARMSを武器と訳せばこのオペレッタの雰囲気に合って来ます。ロンドンの初演では「A KINGDOM FOR A COW」だったとの事ですが、いずれにしてもKUH(COW)はなにやら「平和」を象徴している雰囲気なので出来たらその線で日本語の題名も決まればと思います。

Posted by: Unicorn(ユニコーン) | May 07, 2007 13:48

ユニコーンさま、早速のコメント、ありがとうございます。

さて、おたずねの「D・パウントニーの演出」についてですが、ご存じのように、フォルクスオパーは、正直、資金難にあえいでおります。

そのため、舞台装置も正直お金をかけることができません(特に新しく作るもの)。そのため、今回も基本は同じセット(大統領府とキャバレーが兼用)で、それに幕(スクリーン)と照明で変化をつける方式でした。

最初は、カリブ海の国を象徴するように、南国風の樹木が描かれたスクリーンで雰囲気を作っています。巨大なものといえば、オープニングの「旗」(サンタマリアの旗)でしょうかね。これは舞台中央、上下一杯に掲げられました。

最近のプルミエ、ほぼ共通の造りと言ってもよいでしょう。

今回のお話の場合、伝統的なウィンナ・オペレッタではないので、まぁ、これでもいいかな(架空の国のお話ですし)という感じです。

Posted by: オペレッタにはまっている男 | May 07, 2007 15:42

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