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August 22, 2007

メルビッシュの「ウィーン気質」

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オペレッタファンの皆さん、お待たせしました。メルビッシュで上演された「ウィーン気質」の模様をご紹介しましょう。

2007年はメルビッシュ50周年の「記念公演」となりました。1956年の第1回公演の演目は「ジプシー男爵」だったようです。

「ウィーン気質」はご存じのように、カール劇場のヤウナー氏が、多忙なシュトラウスに、過去の楽曲を集めてオペレッタを作って欲しいと依頼し、制作がはじまったものです。途中で、シュトラウスが亡くなってしまったため、アドルフ・ミューラーが仕事を受け継ぎ、完成させたものです。

このような経緯で作成されたオペレッタであるため、「お芝居」の部分が多いという特徴があります。つまり、「セリフ」が多いのです。そのため、「ドイツ語が理解できないから、おもしろくない」という感想を持つ方も多いようです。反面、オーストリアの方は、「会議は踊る」のウィーン会議頃のウィーンを舞台にした「ウィーン情緒あふれるお話」(というか、女性に目のない男のお話)なので、セリフの部分で、異様な盛り上がりを見せる場合があります。

さて、今回の配役ですが、ギルデルバッハ侯爵(架空の小国、ロイス・シュライツ・グライツ国の首相)がHarald Serafin/Fritz Hille、ツェドラウ伯爵(ロイス・シュライツ・グライツ国のウィーン大使)がRainer Trost/Christina Zenker/Sebastian Reinthaller、伯爵夫人ガブリエーレがNoëmi Nadelmann/Ursula Pfitzner/Jessica Glatte、フランツィスカ(ケルントナートール劇場の踊り子)はMargareta Klobucar/Cornelia Zink、ペーピ(洋装店のお針子)がRenée Schüttengruber/Iva Mihanovic、ヨーゼフ(ツェドラウ伯爵の従僕)がDaniel Serafin(息子さん)/Wolfgang Gratschmaier、カグラー(フランツェスカの父親)がAlexander Grill、メッテルニッヒがFriedrich-W.Schwardtmannといったところです。ほとんどの役が、ダブルキャスト(一部はトリプル)になっているのが、特徴です。
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第一幕は「伯爵が愛人フランツィスカを住まわせている別邸」です。
舞台装置ですが、向かって左側に別邸建物が建っています。右側は庭という想定で、彫刻などが並んでいます。お話は、この庭で進められます。

何と、「美しき青きドナウ」が序曲の代わりに使われています。が、美しいメロディーとは裏腹に、冒頭から、いかにもウィーンらしいお話なのです。というのは、主役のツェドラウ伯爵はロイス・シュライツ・グライツ人(何となく、ドイツ人みたいな雰囲気ですが…なおプロイセン人と解説している資料もあります)ですが、堅物として有名です。そのため、華やかなハプスブルグの帝都ウィーン人の軽やかさ、洒脱さを一朝一夕で、真似できるものではありません。

ウィーン子の伯爵夫人ガブリエーレは、旦那さまの堅物なところが不満で、何と、実家に帰ってしまったという想定なのです。奥様が、実家に帰っている間、「堅物」のツェドラウ伯爵は、踊り子のフランツィスカを愛人にして、別邸に住まわせてしまったのです。このあたりの前提条件が、見えていないと、訳がわからなくなってしまいます。

「国家の大事件が起きた」と、従僕のヨーゼフが別荘に伯爵を探しに来ますが、伯爵は不在です。何日も別邸に帰ってこないと、フランツィスカもご不満。ヨーゼフに当たります(ここも、なかなかおもしろい場面です)。その後、フランツィスカの父カグラーもやって来た所に、伯爵が、意気揚々と馬に乗って帰ってきます。ここでは、カグラーと伯爵が、庭でワインを飲みながら歓談する訳ですが、お互い本音を隠した話をするので、観客は爆笑です。娘に気を利かしたカグラーは、引き上げます。

昔は堅物だったツェドラウ伯爵ですが、今ではすっかり浮気グセがついてしまい、今は、洋装店で出会ったお針子のペーピに夢中です。

そこで、ペーピにラブレターを出そうと、庭でヨーゼフに口実筆記を頼みます(本人が書くわけには行かないので…)。これが終わると、ツェドラウ伯爵は、また出かけていってしまいます。

そこへペーピが、足こぎスクーターに乗り、フランツィスカのドレスを届けに別邸にやってきます。実は、彼女はヨーゼフの恋人なので、ヨーゼフとペーピが楽しいに二重唱を繰り広げます(ポルカ:浮気心)。その後、このドレスを巡って、フランツィスカとペーピが、一悶着するのですが、これがまた、楽しいシーンです。ドレスの一件が終わると、また歌いながらスクーターで、消えていきます(乗り物が派手なのが、メルビッシュ風)。

ロイス・シュライツ・グライツ国の首相ギルデルバッハ侯爵が、馬車に乗って搭乗します(当然、本物の白馬、二頭立てです)。ここも、馭者と一悶着あるのですが、このやり取りで、地元の皆さんは、爆笑です。とくにSerafinさん(お父さんの方)が、出演したときは、この瞬間、舞台が華やかになりましたね。

首相は、ヨーゼフに伯爵が不在だと告げられ、「では、夫人にでも会っておこう」という時に、フランツェスカが登場します。で、首相はフランツェスカを伯爵夫人だと勘違いしてしまいます(本物の伯爵夫人ガブリエーレとは会ったことがないのです)。しかも、フランツェスカも、夫は浮気者で困ると嘆きます。このあたりのやり取りは、オペレッタらしく軽妙ですね。

男女の関係が入り乱れて、事態が、錯綜したたころ、今度は、本物の伯爵夫人ガブリエーレが馬に乗って登場し、さらに物語はややこしくなります。最近、夫の様子がおかしいことに気づいたガブリエーレが、怪しいと睨んだ別邸に乗り込んできたのです。しかし、青筋を立ててやってきたら、それこそ某国のドラマです。「あの堅物のダンナに、愛人がいるってうわさだけど、それが本当なら、どうやっているんでしょうね」といった感じです。何せ、ウィーンっ子の血(Wiener Blut)を引く「ウィーン気質の奥様」ですから…奥様の方が、一枚上手です。

別邸では、愛人と本妻が鉢合わせ(昼ドラみたいですね)となりますが、慌てるのは帰ってきた伯爵。うろたえた伯爵は、たまたま居た首相に助けを求めます。で、ガブリエーレを「伯爵の愛人の踊り子だ」と勘違いしている首相は、本物の伯爵夫人を、とっさに「私の家内です」と一同に紹介し、皆あっけにとられるという筋です。

とにかく、人間関係が複雑なので、これを頭に入れておかないと、一幕だけで混乱してしまいます。一幕は、メルビッシュとしては、比較的おとなしい舞台装置でした。

メルビッシュでは、暗転で第二幕に入ります。
第二幕は「ビドヴスキー伯爵の舞踏会場」です。
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本来は、いきなり舞踏会となるのですが、メルビッシュでは、ここで仕掛けがあります。

何と、冒頭、ウィーン会議をイメージしたシーンとなります。最初は、各国の国旗をもった人たちが登場し、音楽に乗って国旗を使ったドリルを披露します。そのため、舞台装置も、舞台中央の両側ポール上に巨大な「鷲の紋章」が取り付けられ、「ハプスブルク帝国、ここにあり」といった雰囲気になります。また、街灯が舞台上にたくさん設置され、華やかな雰囲気になります。今までは、宝塚も真っ青な、大階段の電飾が多かったのですが、今回は、普通の街灯を上手に使い、舞踏会のシーンを演出していました。そして、舞台中央の奥には、ウィーンの旧市街を模した電飾が登場します。

舞台の方では、舞踏会の前に、各国の首脳に扮したバレエダンサーが登場し、領土問題を話し合うというシーンが再現されます。巨大な地図が、立ち上がって、結構、派手な演出になっています。いずれ、NHKで放送されると思うので、それまでお待ち下さい。
このウィーン会議に続いて、本来の第二幕、華やかな舞踏会シーンとなりますが、ここで、20分間の休憩が入ります。

休憩の後、登場人物が、みなが集まる舞踏会のシーンから始まります。フランツェスカが、余興の素人バレエの振り付けをしています。そこへ出演予定のお嬢さんが一人、出られなくなったという知らせが入り、衣装がぴったりだったお針子のペーピをピンチヒッターにしたてます。何しろ準備をしないで、いきなり踊る羽目になったペーピ。周りと会わずに、最後は泣き出してしまいます。このあたりは、「こうもり」の第二幕、イーダのバレエシーンを思い出します。

舞踏会の最中、伯爵と伯爵夫人は、別荘にいた女性をめぐって、もめます。夫の見えすいた言訳を聞き流しながら、夫人と伯爵は「ウィーン気質」を歌います。最初は堅物すぎた夫が、ドン・ファン顔負けの浮気三昧をしている訳ですが、生粋のウィーン子である夫人は、逆に楽しんでいるようです。「あなたに欠けているものはウィーン気質」と歌う場面は見所でした。

伯爵はペーピにラブレターを渡し、ヒーツィングに誘います。最初は伯爵の誘いに乗り気ではなかったペーピですが、恋人ヨーゼフから「今夜は急用でヒーツィングに行けなくなった」と言われ、一転、伯爵の誘いに乗ることを耳打ちします。一方、伯爵夫人は、夫をヒーツィングに誘うのですが、ペーピとの約束が成立しているため、断られてしまい、首相を誘います。鼻の下を伸ばした首相は、伯爵の恋人を横取りしようと、今夜の逢い引きを約束しちゃうんですね。いぁー、凄いお話になってきました。

という訳で、第三幕のヒーツィングでは、何組かの珍カップルが鉢合せすることになる訳です。
そこへ、フランツェスカが来るので、首相は、来場者に彼女を伯爵夫人だと紹介します。ところが、伯爵夫人は、「私は踊り子のフランツェスカではありません」と言い、その場にいたペーピがフランツィスカではないかと言います。一同、だれが「伯爵の愛人」なのかわからず、大混乱となります。

しかし、舞踏会を主催したビトウスキー伯爵が現れ、本物の伯爵夫人に挨拶するので、首相は真っ青になってしまいます。ここで、第二幕が終わりますが、今回は、暗転で第三幕に入ります。

第三幕は「ウィーン市の遊興地ヒーツィングのカジノの庭園」です。
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舞台装置は暗転なので、二幕の応用ですが、第三幕で重大な役割を果たす「あずまや」が三棟舞台に登場します。そして、舞台中央の上には、メリーゴーラウンドが出てきます。なぜ、メリーゴーラウンドかと言えば、フランツィスカの父親カグラーが、メリーゴーラウンドを経営しているからです。

さて、登場人物がヒーツィングに集まります。フランツィスカも、ヨーゼフにエスコートを頼んでやってきます。そのため、三棟の「あずまや」は不倫カップルで満員御礼。その一つには首相と伯爵夫人、もう一つには伯爵とペーピ、もう一つにはフランツィスカとヨーゼフが、入っています。

なお、この三幕でも、背景の噴水が活躍します。
最初に、動くのが忠実な従者のヨーゼフです。となりの「あずまや」でご主人のツェドラウ伯爵の声を聞きつけます。「旦那さまが、別の女と来ているのが、フランツィスカに見つかってはまずい」と考えたヨーゼフは、男同士でこっそり席を代わります。

そこでペーピとヨーゼフが鉢合わせをしてしまいます。一方、フランツィスカは、伯爵夫人と鉢合わせです。今度は、お互いに愛人と奥様だと正しく認識しました。

「旦那さまは、あなたと一緒なの?」「え~違いますよ。奥様とじゃなかったんですか~」「え~じゃ誰なの?」といった会話が交わされ、一瞬にして女同士で結託したフランツィスカと伯爵夫人。女性は怖いですね。そこで、二人は「第三の女」を探り当てるべく、席を取りかえます。
フランツィスカの「あずまや」に来たつもりの、伯爵は、隣に奥様のガブリエーレがいるのを見て、びっくり仰天。
そこへペーピが駆け込んできて、「伯爵と何も関係がないとヨーゼフに言ってください」と懇願します。
その結果、ペーピとヨーゼフは仲直りします。

フランツィスカは首相に見そめられて、「それも、いいかな」いう気持ちになりつつあるようです。当然、伯爵夫人と伯爵は、よりを戻し、もつれていた糸がほぐれて、三組のカップルが誕生します。しかし、ウィーンでは、恋をめぐるもめ事は野暮なこと。何はともあれ、これはウィーンの血のせい、ウィーン気質のせいだと全員が唱和して、お開きとなります。
最後は、例によってメドレーと観客の手拍子に乗って、出演者一同が登場します。バックでは噴水と電飾が盛り上げます。
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全員が出そろったところで、会場の照明が消え、「ウィーン気質」のメロディーに乗って、恒例の花火大会となりました。

私は、メルビッシュでは原則として2日間続けてみるようにしています。というのは、出演者が異なるからです。今回は、初日はギルデルバッハ侯爵がFritz Hilleでしたが、2日目はHarald Serafinでした。Fritz Hilleも、結構良い味を出していたのですが、Harald Serafinと比べてしまうと、方や「メルビッシュの主」(看板役者)ですから、見劣りしてしまいます。ツェドラウ伯爵は初日がRainer Trost、2日目はChristina Zenkerでした。

両者はほとんど差がありませんでしたが、個人的にはRainer Trostの方が良い味を出していたように感じました。
伯爵夫人ガブリエーレは、初日がJessica Glatte、2日目がUrsula Pfitzner でした。こちらは、Ursula Pfitznerの方が、ウィーン気質の伯爵夫人を見事に演じていたように思います。

フランツィスカは、両日ともMargareta Klobucar、ペーピも両日ともRenée Schüttengruberでした。ヨーゼフは、初日がDaniel Serafin、2日目がWolfgang Gratschmaierでしたが、息子さんのDaniel Serafinもずいぶん上手になりましたね。今回は、ヨーゼフを見事に演じていました。
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なお、ORFでは、今回、初めて生中継を行ったようです。ところが、現地との連携が悪く、テレビのコマーシャル中に、現地では後半が始まってしまいました。そこで、急きょ、ORFの中継再開に合わせて後半を、やり直したという話を聞きました。
やはり生中継はリスクがありますから、時間差中継などの方が無難でしょうね。

さて、来年のメルビッシュは、私が好きなオペレッタの一つ、ベナツキー作曲の「白馬亭にて」(IM WISSEN RÖSSL)が、7月10日から8月24日まで開催されます。こちらは、アウトドアでのお話が多く、かつ、大人数の場面が多いので、メルビッシュ向きだと思います。しかも、本当のHOTEL WISSEN RÖSSLもSt.Wolfgang Seeの湖畔にありますから、ロケーションもピッタリ。楽しみです。
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