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November 26, 2007

番外編 東京二期会 「天国と地獄」公演

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11月22日から25日にかけて、東京二期会によるオペレッタ「天国と地獄」が東京の日生劇場で上演されました。オペレッタで、同一演目4公演というのは、日本では珍しいと思います。私事で恐縮ですが、日生劇場は、大昔、都内の公立学校に通っているとき、学校の行事で何かの公演を見に行った記憶があります。それ以来、行ったことがありませんでした。ご存じの方も多いと思いますが、日本生命さんが運営している、演劇、オペラ、演奏会などが可能な多目的劇場です。

さて、最終日の11月25日に、同公演を観る機会を得ましたので、その模様をご紹介しましょう。今年、フォルクスオパーでも「天国と地獄」を観ていますので、その違いにも注目していました(そんな、変な見方をするのは私だけでしょうが…)。本当は、この記事以降も上演していれば、少しはお役に立つとは思うのですが、寂しいかな、すでに公演は終了しています。

という訳で、多少「ネタバレ」的なところもありますが、ご容赦下さいませ。

なお、同公演は、平成19年度文化庁芸術創造活動重点支援事業およびNISSAY OPERA 2007提携として、行われています。

指揮は阪 哲朗、演奏は新国立劇場のオペラ公演も手がける東京交響楽団でした。劇場のオーケストラピットが狭いため、楽団の人数を絞り込まざるを得ない点が、惜しまれます。

歌手陣ですが、ジュピター役は久保和範(22日、24日)と田辺とおる(23日と25日、以下同じ)、オルフェウス役は近藤政伸と大野徹也、その妻ウリディース役は澤畑恵美と腰越 満美、プルート役は高橋 淳と青柳素晴、キューピット役は赤星啓子と里中トヨコ、酒の神バッカス役は峰 茂樹と境 信博、 ジュピターの妻ジュノー役は竹村靖子と 佐々木弐奈、 ダイアナ役は小林菜美と新垣有希子、 ヴィーナス役は菊地美奈と翠 千賀、マルス役は吉川健一と北川辰彦、 プルートの召使ハンス・スティックス役は羽山晃生と大野光彦、マーキュリー役は岡本泰寛と中原雅彦、ミネルヴァ役は松尾香世子と松井美路子、 世論役は岩森美里と押見朋子という、完全ダブルキャストで上演されました。

なお、同カンパニー定番の完全日本語版での上演でした(日本語原訳詞:小林一夫、台詞:佐藤 信)。

まず、基本的な展開はオリジナルに近いものでした。序曲では、フォルクスオパー版のように「天国と地獄のギャロップ」を入れることなく、オーソドックスなスタートでした。ただし、序曲の演奏が終わったところで、世論が出てきて、「世論の役割」を説明するシーンが加わっていました。これは、初めて、「天国と地獄」をご覧になる方への配慮だと思います。
その関係から、序曲は、舞台の幕を開けない状態で演奏されました。

第一幕ですが、冒頭、度肝を抜いたのが、ウリディースが日本の着物姿で現れたことです(日本人が着ているので、欧米のオペラのような妙な着方ではありません。すごく決まっていました)。舞台装置は、抽象的なのですが、どうやら現代劇風です。期せずして、フォルクスオパー版と同じような展開でした。オルフェウスは音楽学校の校長という設定は同じですが、オリジナル通り、自分でバイオリンを弾く展開になっていました(もちろん、歌手さんなので、バイオリンを弾くシーンでは、オーケストラのソリストが演奏していました)。なお、服装は、和服ではなく、普通の洋服で登場しています。

で、プルートですが、一応、オリジナル通り、羊飼いという設定で、バレリーナが扮する羊を従えて、歌う場面が設定されていました(何で、和服のウリディースに、洋風の羊飼いなのかという突っ込みはなし)。

ウリディースがオルフェウスが仕掛けた蛇にかまれて死ぬところは一緒ですが、地獄の王に変身したプルートの格好が、中国風です。うぅーん。天国は欧風、現世は日本、地獄は中国なのでしょうか?
中国の方がご覧になったら、余りよい感じはしないでしょうね。

ウリディースが死んで、内心喜ぶオルフェウスですが、結局、世論に諭されて(本当にそういう雰囲気でした)、渋々、オリンポスに行くことに同意します。

第二場のオリンポスの舞台装置は、シンプルなものですが、明るいイメージでまとめられています。服装は、いわゆるギリシャの神々風の服装ではなく、女神系はドレス、男の神様は軍服調か普通のスーツでした。キューピットですが、後ろに小さな羽根がついていましたが、前からは見えません。しかし、フォルクスオパーのキューピットは、歌手ではなく、役者さん(男性)でかなり癖があったのですが、今回の公演では、かわいらしい感じでしたので、皆さん、安心して見ることができたと思います。また、その他大勢の出演者はセーターという軽装でした。
ここで、オリンポスの神々からジュピターがつるし上げられる展開は、同じでしたが、合唱を中心にテンポの良い展開に仕上がっていました。

で、ここに現れるプルートは完全に中国の伝統的な服装でした(写真をご紹介できないのが、残念ですが、ちゃんと帽子もかぶっており、後ろに編み込んだ髪の毛が垂れ下がっていました)。
世論と一緒にオルフェウスを引き連れて、オリンポスに現れ、グルックのアリア「私はウリディースを失った」が引用されますが、この部分だけはパロディを強調するため、あえてイタリア語で歌っていました。なお、場面転換の際は、CGによるスライドを舞台前におろしたスクリーンに映すという、演出がとられていました。これは、結構、効果的でしたね。

第二幕は、定番通り、地獄の設定です。最初(第三場)は、プルートの居室ですが、舞台装置は、完全な中国風です。おっと、ツゥーランドットかと思ってしまいました。そして、第一幕では着物姿で登場したウリディースが今度は、真っ赤なチャイナドレスで現れます。

ここで、注目されるのは、ハエに扮したジュピターが登場する場面の仕掛けでしょう。もちろん、ジュピターご本人もハエの扮装で出てくるのですが、その前にラジコンカーの上に乗ったミニチュアが舞台を、所狭しと走り回ります。ハイテク日本、ここに有り…といった感じですね。

ジュピターは身分を明かして、オリンポスヘと誘う場面は同じなのですが、隣の部屋からジュノーが、その模様を見ているという場面は割愛されていました(おそらく、人間関係を複雑にしすぎないための配慮だと思います)。

第四場は、「地獄の大宴会場」ですが、舞台装置は、オリンポスと基本的には同じで、若干配色が違うとった程度でした。そのため、地獄のおどろおどろしい雰囲気は、出ていませんでした(予算の関係でしょうかね)。天上の神様も地獄の住人も入り乱れて、飲めや歌えの大酒宴となり、おなじみの「天国と地獄のギャロップ」が盛大に演奏されます。ギャロップの場面では、バレエ団がカンカンを踊りますが、ちょっと上品すぎるような感じがしました(まぁ、日本だからやむを得ませんかね)。

なお、この大宴会の場面では、最初から「バッカスの巫女姿」が出てきます。また、フォルクスオパー版では、「バッカスの巫女」が、実は二人登場して、大騒ぎになるのですが、本公演では「バッカスの巫女」はウリディースだけになっていました(フォルクスオパー版では、もう一人の「バッカスの巫女」が、ウリディースに嫉妬しジュピテールだった…という「落ち」は、いかにも人間劇、オペレッタという感じで、笑えるんですがねぇ)。

その後の展開は、フォルクスオパー版と基本的には一緒ですが、「世論」が、ジョン・スティックスに惚れてしまい、追いかけ回すというサイドストーリーはありませんでした。

最後は、地獄で天上の神々、地獄の住人がそろって大合唱の後、「天国と地獄」のギャロップが演奏され、フィナーレを迎える展開でした。ジュピターが時々、電撃(雷)を使う場面があるのですが、本公演では、このあたりが少なく、ちょっと寂しい感じがしました(フォルクスオパー版では、火を使ったりしていました)。

さて、「天国と地獄」は、ご存じのように登場人物が多数にわたり、かつ人間関係が複雑なので、初めて見る人は戸惑うと思います。そこで、余計なサイドストーリーを割愛したのだと思います。日本語上演だったので、初めてご覧になった方も、おおむね、お話の展開はわかったと思います。

歌手の皆さんも、楽しそうに演じており、楽しい舞台に仕上がっていました。ただし、全編日本語上演の場合、どうしても日本語では無理のある歌が出てきてしまいます。実際、聴いていても、何をうたっているのか、歌詞がわからない部分もありました。

これは、言葉からくる発音の違いでやむを得ないそうです。以前、東京二期会では、歌は言語、お芝居の部分は日本語でオペレッタを上演したケースもあるようなので、そのような方法も考えたらいかがでしょうか。私も、言葉がすべてわかるわけではありませんが、雰囲気を味わうのであれば、歌だけは原語でも良いような気がします(毎回、指摘していて、しつこいような気もしますが…)。

さて、皆様のご意見はいかがでしょう?

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