« 侮れない狭軌鉄道 | Main | Hauptbanhof Wienができます »

November 05, 2007

番外編 「熱狂の浅草オペラ」

2007_11_04

日本では11月3日は「文化の日」です。別にそれにちなんだわけではありませんが、東京都千代田区の紀尾井ホールで、「熱狂の浅草オペラ-大正デモクラシーの華咲く浅草で生まれ、熱狂的な人気を博した“浅草オペラ”の世界-」と題した、ちょっとユニークなコンサートが11月4日に開催されました。

出演は、塩田美奈子(ソプラノ)、水船桂太郎(テノール)、平野忠彦(バリトン、いずれも二期会の会員)、山田武彦(ピアノ) です。また、東京芸術大学客員教授の瀧井敬子さんが、案内と構成をつとめました。公演は、二部構成で、第一部は、「独特の日本語歌詞で歌われる浅草オペラヒット・ナンバー」が披露されました。ちなみに曲目は、「乾杯の歌」(ヴェルディ:歌劇「椿姫」。ただし、これは原語)、「女心の歌」(ヴェルディ:歌劇「リゴレット」、これも原語)、「大将閣下の名前はブンブン」(オッフェンバック:喜歌劇「ブン大将」)、「コロッケーの唄(益田太郎冠者:ミュージカル「カフェーの夜」)」、「ハバネラ」(ビゼー:歌劇「カルメン」)、「岩にもたれた」(オーベール:歌劇「フラ・ディアボロ」)、「ベアトリ姐ちゃん」(スッペ:喜歌劇「ボッカチオ」)でした。それにしても、当時の訳詞家は、本当に創造力が豊かだったことがわかります。

第一部の歌が終わったところで、瀧井さんと平野さんによる、ミニトークショーが開催されました。ここでは、浅草オペラの名テノール田谷力三、藤原義江の歌を流しながら、写真を交えて“熱狂の浅草オペラ現象”が紹介されました。大正時代の熱気が伝わってきました。これを聴いて思ったことは、田谷力三は、いわゆる正当はテノールではなかったようですが、彼の音域や歌い方にあわせて歌の方をアレンジメントしたことが、大衆に受け入れられた要因だと思います。

浅草オペラは、流行歌やなじみのメロディを巧みに取り入れ、わかりやすい日本語の歌詞、独特のストーリー構成、曲の省略などが行われており、いわゆる「正当派のオペラ」一線を画すものです。しかし、逆に、現在の日本でポピュラーミュージックの制作手法に似ているのではないかと感じました。最近のポピュラーミュージックは、ある程度、カラオケで歌う(歌える)ことを前提に音程やメロディを考えている…と聴いたことがあります。浅草オペラの工夫も、実はそれと同じ考えではないのでしょうか。しかも、大衆娯楽が少なかった時代だったため、一挙にブレイクしたのでしょう。

さて、第二部は、当時、浅草サオペラで一番人気の演目であったオペレッタ「ボッカチオ」が、原語ダイジェスト版(コンサート形式ですが)で披露されました。当日の曲目は、 “Holde Schöne,hör ’diese Töne”(ベアトリ姐ちゃん)、“Hab’ich nur deine Liebe”(恋はやさし野辺の花よ)、“Mia bella fiorentina”(フィレンツェには美しい婦人たちが) などです。ボッカッチョ役は水船桂太郎、フィアメッタ役は塩田美奈子がつとめ、それ以外は東京芸術大学(大学院を含む)の学生さんがつとめました。皆さん、楽しそうに歌っていましたね。

ところで、オペレッタの場合、「お芝居」が大きなウェイトを占めています。今回、どのように行うのかと思っていたところ、平野忠彦氏をストーリーテラーに起用し、曲の合間に、絶妙なおしゃべりを入れていました。これは、大正解で、約40分のダイジェスト版ですが、「ボッカッチョ」の楽しさが十分伝わってきました。

惜しかったのは、「浅草オペラ時代」の浅草オリジナル楽曲が少なかったことです。第二部は十分楽しめましたが、今回の趣旨を考えると、第一部で、浅草オペラ風の歌い方、節回しを披露していただければ、大正時代の熱狂がさらに伝わったと思います。写真は、会場に展示されていた当時のプログラム(写真)です。

Img_0486b

ただし、現役のオペラ歌手の皆さんに、浅草オペラ風の崩した歌い方をしてもらうのは、歌手としてのキャリアにも影響するし、プライドもあるので、難しいのかな…いずれにしても、楽しい一時を過ごすことができました。

個人的には、是非、浅草オペラ・オリジナルの「天国と地獄」を、フル・バージョンで観てみたい気がします。今の時代だと、逆に新鮮にうつり、お客様に受けそうな気がしますが、どなたか企画しませんかね。

なお、今回は臨時の記事なので、明日も一本記事をアップします。

|

« 侮れない狭軌鉄道 | Main | Hauptbanhof Wienができます »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




« 侮れない狭軌鉄道 | Main | Hauptbanhof Wienができます »