« 給食列車が走るウィーンの老人ホーム | Main | 接待オペラ・オペレッタが花盛り »

December 10, 2007

朗報 復活、フォルクスオパーの「メリーウィドウ」(修正版)

Img_0793_b
2005年の大改訂で魅力が、半減、どころかなくなってしまったフォルクスオパー「メリーウィドウ」ですが、その後も、小規模な手直しは行われていました。

1年ぶりに観ることになったのですが、大規模なリニューアルを行ったという話も聴きませんし、上演時間も2時間30分と短いままなので、正直、あまり期待していませんでした。

が、フタを開けてみると…何と、演出、舞台装置とも全面的にリニューアルされて、魅力あふれる「メリーウィドウ」が復活しました。まさに、「ガンツ、グート!! おっちゃんは、このメリーウィドウを待っていました」。これは新ディレクターのRobertMeyerの功績でしょう。なお、その後、私自身の「記憶違い」等がありましたので、一部修正の上、再度、記事を掲載しました。

ポイント1:時間短縮にもかかわらずお芝居の工夫でストーリーがわかりやすくなった

ポイント2:歌だけではなく、お芝居、踊りも重視した

ポイント3:後半に盛り上げるポイントを入れる演出になった

ポイント4:無理のない時間短縮になった(今の時代に合わせて、テンポの良い展開になった)

では、さっそく、詳細をご紹介しましょう。

指揮者は、何とびっくり仰天。ルドルフ・ビーブルが、「こうもり」に続き担当しました。当然、全編、暗譜で指揮をしていましたが、このおじいちゃんは、何て人なのでしょうね(2005年にメルビッシュでも「メリーウィドウ」を担当していますが、おじいちゃんの割には、テンポの良い演奏でした。さすが…)。

出演者ですが、ダニロ役はMorten Frank Larsen(プルミエから担当)、ハンナ役はUrsula Pfitznerです。Morten Frank Larsenはプルミエの頃に比べると、演技がずいぶんと上手になった感じがしました。さすがに「ウィーンの伊達男」には、まだ開きがあるのですが、以前に比べると役の勘所をつかんできたような感じがします。

また、ゼータ男爵役に初めてJosef Luftensteinerが起用されました。今まで、ルドルフ・バッサーロフなどが担当していたことを考えると、時代の流れを感じます。正直、Josef Luftensteinerは声量は十分ではないのですが、演技がうまいので、そういう意味では存在感がありました。

さらに、ヴェラシェンヌ役はMartina Dorak、ニグシュ役はRobert Meyer(ディレクターご本人が乱入です)、カミュ役はPavel Ĉernoch、Praskowia役には個性的なベテランMirjana Irosch(二幕でダニロの絡む場面が見所)が起用されていました。

また、新ディレクターRobert Meyerの方針なのか、お芝居を重視するようになった気がする。これは、今回観た「伯爵令嬢マリッツア」、「こうもり」にも共通する部分でもあり、大きな変化と言って良いでしょう。ここしばらく、フォルクスオパーは、歌が第一で、第二、第三がなくて第四でお芝居、第五で踊りというような雰囲気でした。私は、本来、歌、お芝居、踊りが三位一体となって、初めて魅力的なオペレッタが実現できると信じています。今回、お芝居と踊りを重視されたことは、私にとって、うれしいことです。

ただし、リニューアルされたとは言え、舞台装置は、予算の関係から、よく言えば抽象的(要するにチープな感じがする)な点が惜しまれます。しかし、一応、雰囲気は出していた。最近のフォルクスオパーは、とにかくオペラも含めて、舞台装置が簡易化されているだけに、ちょっと残念です。オペレッタの場合、豪華な舞台で、実は「ばかばかしいお話を展開する」というところに魅力があると思っています。それだけにお客様の入りが大切になってくるのでしょう。

以下、幕ごとにポイントをご紹介しましょう。

○一幕(お芝居の充実で、魅力が復活)
全般的に一幕では、お芝居の充実ぶりが光ります。

たとえば、2005年のプルミエでは、ダニロがマキシムから大使館に戻った後、ニグシュとの掛け合いが省略され、寂しかったのですが、これも見事に復活しました。例えば、ニグシュがダニロの靴を脱がせる場面では、ニグシュがダニロを抱きかかえるなど、楽しい演出が観られました。なおRobert Meyerは役者さんなので、台詞の発声が、他の歌手と明らかに次元が異なり、それだけでも存在感が違います(目立ちすぎの間がありますが)。

また、その後、寝入ってしまったダニロとハンナが、大広間で出会うシーンにも、楽しいお芝居があります。
ハンナにまとわりつく男達を追っ払って、ソファーにかけようと思ったら、実はダニロが寝ており、その上にハンナが乗ってしまう…そこで、ダニロが飛び起きて、お互いが出会うという展開です。

時間は短いままなのですが、ポイントとなるお芝居を丁寧に入れているため、物語が良くわかるようになっています。逆にテンポが良くなっているように感じました。

○二幕(オリジナルに近いオーソドックスな演出でムードを盛り上げる)
オリジナルでは、ハンナが故郷のポンテヴェドロ国を再現したガーデンパーティを開催した…という設定です。

2005年版では、ハンナの聴かせどころである「ヴァリアの歌」の演出が最悪でした。何しろ、「歌の世界」を舞台に再現してしまい、歌っているバックを妖精や森の動物(いずれもバレエ団が担当)が動いている…という信じられない演出でした。しかし、今回観た新バージョンでは、ハンナが、「今の自分の気持ち」を重ねて歌うスタイルに戻りました。従って、パーティーの参加者や民族衣装をまとった踊り子も、ハンナの歌をしみじみと鑑賞しながら、ハンナの心模様を感じ取る…という構図になっています。

しかも、ハンナは、歌だけに集中するのではなく、踊り子や参加者の手を取りながら歌うなど、お芝居も見事になりました。ただし、丁寧に歌っている分、リフレイン(アンコール)は省略され、一回で、踊り子の踊りに移ります。本当は、アンコールがあった方が盛り上がるのですが、全体のテンポを大切にしたのだと思います。もちろん、前の演出で出てきた不自然なブランコや半透明のスクリーンもなくなり、普通の庭園風景になりました。

二幕の見所、「女、女、女」のマーチですが、アンコールも一回組み込まれていました。また、昨年の改訂版と同じく、最後に女性陣が登場して、女性をけなしていた男性陣が、「やばい」という雰囲気で、三回目を歌うのをやめるという演出です。このあたりも、男女の微妙な心理を反映している点が評価できます。なお、ニグシュは、最初は舞台の袖で見ているのですが、アンコールの際には、メンバーに加わって歌っていました(やるねぇ、RobertMeyer)。

そして、前の演出では、ゼータ男爵、ダニロ、ニグシュが「8時から東屋で密談をする」という打ち合わせが省略されていたので、「なぜ、三人が東屋の前に集まってきたのか」が、わかりませんでした。しかし、今回は、ちゃんと密談打ち合わせが再現され、三人が東屋に集まる必然性が観客に理解できるようになりました。こういった細かいお芝居を省略しないことが、物語の流れを良くしています。

東屋でカミュと逢い引き中のヴェラシェンヌを、ニグシュの機転でハンナと入れ替える場面も、ちゃんと観客に見えるように(しかも、ゼータ男爵に見えないように)誘導するなど、丁寧な演出が光りました。

○三幕(天国と地獄のギャロップが復活 楽しい舞台へ)
時簡短縮のため、暗転で三幕に入ります。ただし、暗転中、オーケストラにより「メリーウィドウのメドレー」が演奏され、雰囲気を盛り上げます。これは、良いアイデアですね。

三幕も、前の演出とは大きく変わりましたよ。皆さん!!

Img_0803_b

まず、場面設定がガーデンパーティの会場になりました(ただし、夜になっていることに加えて、マキシム風にするため、照明が工夫されています)。そして、感動的だったのは、MaritinaDorak扮するヴェラシェンヌが「グリゼッティンの歌」を歌いながら、他の合唱団メンバーと一緒にカンカンを披露するところです。

合唱団のカンカンを踊らせることには、異論もあるのですが、今回は、その後、本格的にバレエ団が登場して、見事なカンカンを踊るので、違和感は少ないように感じました。

そして、本格的にバレエ団が登場してカンカンが披露される場面で、「天国と地獄のギャロップ」が復活しました。
今回、すごかったのはカンカンソリストを入れず、MaritinaDorak自身がソリストを務めたことでしょう。彼女は、踊りもできるフォルクスオパーでは希有な歌手なので、抜群の配役と言えます。「天国と地獄のギャロップ」は、当然アンコール付きです。客席の興奮も一気に最高潮に達しました。舞台装置は違いますが、昔の「三幕の勢い」が復活した感じがしました。
前は変な花の中から踊り子が出てきたのですが、今回の演出の方が、絶対に良いと思います。なお、このときのコスチュームは、もちろん、定番のカンカン用に戻りました!!
その後、ハンナとダニロが「唇は語らずとも」を歌う山場では、ギャロップで酔いつぶれた一部の参加者が、舞台後ろで寝ていますが、大多数の参加者は舞台から去るという演出に変わりました。当然、照明も二人にスポットライトが当たるように工夫されており、雰囲気が良くなりました。。
2005年6月の改訂(改悪という)で、正直、ボロボロになってしまったフォルクスオパーの「メリーウィドウ」ですが、今回のリニューアルで、見事な復活を果たしました。ディレクターのRobert Meyerが、どの程度関与したのかは、定かではなありませんが、時間を短縮しながらも、オペレッタならではの軽妙なお芝居が復活したことを、高く評価したいと思います。

なお、今回はニグシュ役をRobert Meyerは、単なるおどけ役から、一見、真面目そうだが、実は抜けている…という役所を見事に演じきっていました。新しいニグシュ像を創り上げたことで、お芝居が締まった感じがします(なお、フィナーレでは、Robert Meyerの大サービスがありますが、ネタバレになるので、お楽しみにとっておきましょう)。

しかし、通常、新演出に切り替えて2シーズンで、さらにリニューアルを行うというケースは少ないと思います(「伯爵令嬢マリッツア」が例外的にありますが、こちらは、新演出は1シーズンで終わりでした)。これだけに規模のリニューアルを、こっそり行ってしまった…これは新ディレクターRobertMeyerをはじめとするスタッフの大英断と言えるでしょう。

この調子だと、2008年に予定されている「オペラ舞踏会」や「微笑みの国」も大いに期待できそうです。ウキ、ウキ(^^)/

なお、私にとって、本公演が「本年最後のオペレッタ鑑賞」になる予定です。最後に、本当にすばらしいオペレッタを見せてくれたフォルクスオパーの皆さんに乾杯!!

|

« 給食列車が走るウィーンの老人ホーム | Main | 接待オペラ・オペレッタが花盛り »

Comments

"オペレッタにはまっている男”さん
いつも待ち遠しく貴ブログを拝見しております。
今年のVolksoperの「メリーウイド」を早速ご覧になられうらやましい限りです。貴評価も高いし、”はっぱ”さんも”大変ほめておられますね。
VolkoperのSpielplanを見ましたら、来年6月下旬に「メリーウイドウ」と「天国と地獄」を続けてやるようですので、是非行って見てこようと計画しています。
「天国と地獄」も”はっぱ”の評価は高かったですね。
5月の日本公演ではどちらもやらないようで、残念ですがウイーンまで久しぶりに出かけることにします。

Posted by: Njegus | December 10, 2007 at 10:01 PM

先ほど送った私のメールの下から3行目、”はっぱ”さんと書いたつもりが、”はっぱ”だけになっていましたので謹んで訂正させていただきます。 失礼しました。

Posted by: Niegus | December 10, 2007 at 10:05 PM

Niegusさん、こんにちは。

今度の「メリーウィドウ」は、オススメです。ただし、舞台装置が貧弱な点は、以前のメリーウィドウを見ている方にとっては、物足りないと思います。

なお、Robert Meyer氏が、「ニグシュ」役で出るかによって、舞台はずいぶん変わると思います。ご覧になる時に、出るといいですね。

「天国と地獄」は、私は、「オリジナル」を見たことがないのですが、現在の公演では、役者さんを投入しているため、見応えのあるお芝居になっています。こちらも、オススメです。

個人的に期待しているのが、来年1月から久しぶりに上演される「オペラ舞踏会」です。

Posted by: オペレッタにはまっている男 | December 10, 2007 at 10:29 PM

Njegus さま
ハンナです・・・じゃなかった、"はっぱ"です。
ヨビツケ、全然平気ですよ~。お気になさらずどうぞ。

天国と地獄は、地のドイツ語の冗談部分が、かなり際どくて、こちらの方々は大笑い。
地下鉄の中でも笑い続けていて、2人乗っていた警官まで、釣られて笑っていました。
18歳未満禁止(笑)ですが、ぜひ、観て下さい。本当にコミカルで楽しいオペレッタに仕上がっています。

Posted by: はっぱ | December 12, 2007 at 02:19 AM

Post a comment



(Not displayed with comment.)




« 給食列車が走るウィーンの老人ホーム | Main | 接待オペラ・オペレッタが花盛り »