隠れた世界シェアの工業製品は何か?
実は、世界的に高いシェアを誇っている工業製品とは、鉄道関連の機械なのです。
鉄道の線路は、列車による振動を吸収するため、通常、レールの下にはバラストと呼ばれる砂利を敷いています。列車が走行すると列車の重さで枕木が沈みし、レールがわずかにゆがみます。このゆがみは、列車の乗り心地を悪化させる上に、高速走行を阻害する原因にもなるため、定期的なメンテナンス(これを「保線」と言います)が必要になってきます。
そこで、軌道の狂いを測定した上で、定期的にバラストを突き固める作業が必要になってきます。昔は、「つるはし」などの工具を使い、作業員が人海戦術で保線作業を行っていました。しかし、作業効率が悪いため、電動の工具に進化していきました。いくら機械が進化しても、大量の人員が必要なことには代わりはありません。また、作業中は列車を運行できないため、鉄道会社にとっては作業時間の短縮がテーマになっていました。そこで、登場したのが、マルチプルタイタンパー(Multiple Tie Tamper)と呼ばれる「保線用軌の機械」です。
最新のマルチプルタイタンパーは、機械操作に2人その他監視等に2~3人で作業でき、一般軌道では100メートルを10~15分程度でつき固めることができるようです。
マルチプルタイタンパーは、一般の鉄道車両と同様、レール上を自車の車輪で自走して、作業を行います。作業内容は、機械がレールを掴んで、ミリ単位で持ち上げ、枕木下に隙間を設ける特殊なツールで砂利を突き固め、枕木下に砕石を入れ、予定の高さに線路を直していきます。
さて、このマルチプルタイタンパーの世界的メーカーが、何とオーストリアに存在します。
それがウィーン(本社)とリンツ(工場)に拠点を持つプラッサー&トイラー社(英語 Plasser & Theurer)です。同社は、1953年に線路工事の重機メーカーとしてオーストリアで設立されました。ヨーロッパでは他に、スペノ社とマチサ社(共にスイス)がありますが、世界の鉄道会社の大半が、この三社の製品を使っています。
プラッサー&トイラー社製のマルチプルタイタンパーは、ヨーロッパ各国はもちろんのこと、ロシア、アフリカ、中南米、アジア、そして日本にも輸出されています。同社のWebサイトによると、世界103カ国へ輸出されており、13000台以上が活躍しているそうです。
なお、1971年、プラッサー・グループの日本法人(日本プラッサー株式会社)が設立されており、JR各社(旧国鉄)、私鉄各社でも多数が活躍しています。
線路を閉鎖して作業を行う関係で、マルチプルタイタンパーの活躍は、営業運転が終わった深夜になるのが一般的です。そのため、普通のお客様は稼働中の姿を見ることは少ないと思いますが、同社製のマルチプルタイタンパーが駅構内などに、留置されている姿はよく見かけます。
なお、同社はマルチプルタイタンパー以外にも、バラストのクリーニング機械、枕木およびレールの交換機械、レール溶接および修正機械などの保線用重機を製造しています。
私たちが、日本で快適に鉄道を利用できるのも、実はオーストリアの隠れた技術があるからなのですね。
ところで、トップの写真は、ウィーンのおもちゃ屋さんで見かけたマルチプルタイタンパーの「HOゲージの模型」です。こういった製品が発売されているところも、ヨーロッパらしいところでしょう。




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