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January 09, 2008

フォルクスオーパーの「オペラ舞踏会」(続き)

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先日の速報版に続いて、「オペラ舞踏会」の詳細版をお届けします。

主な登場人物は、パリに住んでいるデュメニール夫妻(夫がジョルジュ、妻がマルゲリーテ)と、デュメニール夫妻に誘われてパリにやってくるオービエ夫婦(夫がポール、妻がアンジェル。アンジェルはボービュイッソン夫人の姪)、ボービュイッソン夫妻(年金生活者という設定もあるようです)、そしてデュメニール家のお手伝いオルタンスと、その恋人アンリ(海軍士官候補生で、ボービュイッソン夫婦の甥)です。この四組のカップルを巡る恋物語です。

当日の配役ですが、ボービュイッソン役(ジョルジュの叔父)にRudolf Wasserlof、ボービュイッソンの妻パルミラ役にRegula Rosin、ポール・オービエ役がJörg Schneider(12月の「こうもり」ではアルフレードを演じた歌手。今回は出番が多い役回りです)、ポールの妻アンジェル役がRenate Pitscheider、ジョルジュ・デメニール役がDietmar Kerschbaum(昨年12月にフォルクスオーパーの「こうもり」でアイゼンシュタインを演じた歌手。またまた似たような役が回ってきました)、ジョルジュの妻マルゲリーテ役がUrsula Pfitzner、オルタンス役がAndrea Bogner、アンリ役がRoxana Constantinescu(役柄は男ですが、オペレッタでは通常、メゾソプラノの女性歌手が起用されます。「こうもり」のオルロフスキーと同じですね)、オペラ座の給仕長フィリップ役がGerhard Ernstでした。

まず、「オペラ舞踏会」は、今回のフォルクスオーパー版では、オペレッタとしては珍しく合唱団が、全く参加しません。バレエ団については、二幕の最後にちょっとだけ出演しますが、派手な仮面舞踏会シーンを期待している向きには、肩すかし…といった感じです(実際には、二幕の最後は、オペラ舞踏会が佳境に入り、狂ったようなギャロップのテンポで幕となるのですが…)。

なお、演出が古いため、舞台装置は最近のフォルクスオーパーのオペレッタでは少なくなった立派なもの(写実的なもの)です。
ところで、「オペラ舞踏会」の原作は「ばら色のドミノ」というタイトルで、この「ドミノ」とは、フード付きの外套のことで、「ドミノ服」は仮面舞踏会用のフード付き外套を意味します。劇中、「ドミノ」という言葉がキーワードとして何回か出てきます。

それでは、フォルクスオーパー版のあらすじと、見所のご紹介です。

第一幕は、デュメニール家のサロン(いわゆる居間)です。

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恋人同士のオルタンスとアンリがふざけ合っている場面から始まります。そこへ、ボービュイッソン、パルミラ、ポール、アンジェル、ジョルジュ、マルゲリーテなど、主だった出演者が、三々五々集まってきます。

ボービュイッソンは、ご年配ですが若い女性には目が無く、一幕でもさっそくオルタンスにちょっかいを出しています(向かって右側に、二階への螺旋階段があるのですが、その下で、ボービュイッソンが、オルタンスが降りてくるのを待ち受けており、スカートの中に手を入れるなどのちょっかいを出します)。Rudolf Wasserlofが、「好色じいさん」(失礼な言い方ですが)を見事に演じていました。Rudolf Wasserlofは今まで、こういった役を観たことがなかったので、新鮮な感じがしましたね。また、サロンに置いてある雑誌を見て、「おっ、いい女が写っているぞ」と、男性同士で話をする場面もあります。その後、その雑誌を後で、女性が見て、あきれていましたが…

男達が出かけたところで、マルゲリーテが、アンジェルに「男はみんな浮気者なのよ」といった話をして、それを確かめるための「仕掛け」を提案します。この仕掛けは「今晩、オペラ舞踏会会場のロジェ前で12時に待っているわ。二人だけの時を過ごしたいの」という怪しげな手紙(差出人は、匿名の女性です)を、ジョルジュとポールへ出して、二人の反応を確かめよう…というものです。ただし、奥様方だと筆跡がばれてしまうため、女中のオルタンスに手紙の代筆をさせます(ここで歌われる「あなたの美しい筆跡でお書きなさい」は、なかなか魅力的です)。オルタンスもしっかりしており、自分の恋人アンリにも同じ手紙を準備します。

男達が帰ってきて、次々と手紙を渡されると、浮気願望の強い男達は、そわそわしだします(「こうもり」でアイゼンシュタインが、オルロフスキー邸の夜会へ行く前のような雰囲気でしょうか)。ポールはアンジェルを置いて舞踏会でかける訳にいかないので、「仕事で急用が出来て、オルレアンに戻らなければならない」といった言い訳をつくり、出張の準備(鞄の中に燕尾服が入っているようです)をして、意気揚々とデュメニール家を後にします(なにやら日本でも、よくある話のような…)。ここで、第一幕が終わります。

第二幕は、本オペレッタの山場、パリ・オペラ座舞踏会会場です。
ただし、舞台装置は、おなじみの舞踏会会場の方ではなく、ロジェの入り口が並ぶ、廊下側です(ウィーン国利歌劇場のロジェ前の廊下のような雰囲気です)。今日のロジェの使用目的は、ズバリ密会用の個室です。

そのため、給仕長のフィリップが、逢い引きのカップルが、バッティングしないように仕切っています(フィリップのお芝居がなかなか面白いところです。一見さんを断って、常連さんを優遇するなど、面白い場面が観られます)。最初に、ばら色の仮面舞踏会用のドレスを着たオルタンスがやってきますが、早々にアンリとロジェにしけ込みます(ただし、オルタンスは仮面を付けているので、アンリは相手がオルタンスだとはわかりません)。ここで、オルタンスが有名な「シャンブル・セパレへ行きましょう」を歌います(本来は脇役のオルタンスが、最も有名なアリアを歌ってしまうというのが、ホイベルガーのサプライズ)。

その後、ボービュイッソンが、踊り子のフェオドーラ(ここで初めて登場します。ボービュイッソンは、この時だけは独身)をつれてやってきます。このカップルも、さっそくロジェにしけ込むのですが、フェオドーラが高価な飲食物をたくさんオーダーし、ボービュイッソンの懐が寂しくなります。ここで、ボービュイッソン、が代金の質草に渡した「あるもの」(貴金属品です)が原因で、奥様に内緒で仮面舞踏会に行っていたことが、三幕でばれるという仕掛けになっています。

マルゲリーテとアンジェルも、仮面舞踏会のドレスでやってくるのですが、髪型も含めて衣装がまったく同じなので、誰が誰だかよくわかりません(ただし、仮面だけはデザインが違います。これから見る人は仮面に注目)。まさに、男女が入り乱れて怪しい雰囲気になっていきます。最初は浮気の証拠を押さえるため、友人夫婦がパートナーを交換する形で、ポールとマルゲリーテ、ジョルジュとアンジェルがカップルを組み、ロジェにしけ込みます(実際には、同じ格好なので、観ている方もよくわかりません)。

しかし、ロジェで「あわや」というタイミングで、ジョルジュとポールが給仕長フィリップに呼び出されてしまいます(あらかじめ、きわどいタイミングで、男性陣を呼び出して欲しいという「根回し」ができている訳です)。呼び出されて、別の場所に行っている間に、マルゲリーテとアンジェルが入れ替わり、本来の夫婦になります。しかし、男達は服装が同じなので、相手が入れ替わったことの気づかず、自分の妻に、熱烈な求愛します(なお、舞踏会会場でオルタンスが、ポールとジョルジュの相手をするというストーリーもあるようです)。

二幕の最後は、バレエ団も登場し、ロジェの廊下で、仮面舞踏会の参加者全員がギャロップを楽しく踊って幕となります。個人的は、最後のダンスは、もう少し長い時間やってもらった方が盛り上がるような気がしています。
このオペラ座舞踏会で、ロジェにしけ込むカップルがたくさんでてくる訳ですが、あの個室の「別の利用方法」(もちろん昔の話ですが)がよくわかります。ところで、ウィーン国立歌劇場のロジェをご利用になった方は、おわかりのように、なぜか舞台側に厚いカーテンが取り付けられています。カーテンを閉めてしまったら舞台は見えない…その通りなのですが、「密会」をする時には、このカーテンが大切なアイテムになる…という訳です。なお、このオペレッタによってシャンブル・セパレが、パリ・オペラ座のロジェを指すことが、ウィーンの人々に広く知られるようになったと言われています。

また、密会中のロジェに飲食物を届ける時、ボーイは、中の様子を直接見ては行けないという掟があるようです。では、どうするか?。実は銀のお盆を鏡代わりにして、後ろ向きに出入りするのです。この様子も、二幕では、別の意味で見所と言えるでしょう(うまくいかない間抜けなボーイも出てきます)。
19世紀末のパリの舞踏会は、実際にも優雅な女性達とダンディな男性との間で繰り広げられる恋愛ゲームの場であったようです。

第三幕は、オペラ座舞踏会翌朝のデュメニール家のサロンです。
冒頭、二日酔いでサロンのソファーに寝てしまったオルタンスが出てきて、歌いながら見事な演技(酔っぱらいの演技)を見せてくれます。その後、男達が三々五々戻ってくるのですが、ジョルジュとポールに加えてボービュイッソンの浮気もばれて、サロンは大混乱になります。アンリは恋人のオルタンスと舞踏会にいたのですが、男達はオルタンスだとは気づいていないため、「おまえも舞踏会に来て、他の女といちゃついていただろう」と詰め寄られたりします(ここで、落ち込むアンリ。かわいい!)。

また、ジョルジュが、昨夜の匿名招待状の便せんが、サロンにあることを発見し、「女性陣の悪だくみだった」ことに気づきます。そこで、偽の出張から帰ってきたポールにも、そのことを伝え、女性陣への反撃体制を整えます。
ただ、三幕は、歌がほとんど無く、お芝居中心の展開です。ちょうど、「伯爵令嬢マリッツア」の三幕に近い展開です(実際には、「オペラ舞踏会」の方が、話が複雑なので、お芝居が長いようです)。当然、浮気がらみの話なので、ギャグが連発されるので、言葉のわかる地元のお客様にとっては大受けです。ただし、演技は派手なので、全体のストーリーと人物の相関関係を押さえておけば、言葉がわからなくても、十分楽しむことができます。日本のオペレッタ・ファンの皆さん、ご安心ください。

当初、女性陣に押されぎみだった男性陣も、途中から「俺たちは、悪だくみにわざと引っかかってやったんだ。それに、結構、その気になっていたじゃないか。」と反撃に出ますが、如何せん、仕掛けたのは女性陣なので、反撃も尻すぼみになってしまいます。結局、ボービュイッソンを前面に立てて、女性陣の顔を立てることになります。最後は、ウィンナ・オペレッタの定番である、四組のカップルが元の鞘に収まって、ハッピーエンドとなります。最後は、「パリは神々の都」を合唱したフィナーレとなります。

なお、今回、Feriは一回しか観ていないので、もれている箇所があるかもしれません。まぁ、このあたりは、アドリブが多いオペレッタと言うことで、お許し下さい。また、ご覧になって、お気づきの方がいらっしゃれば、コメントをいただければ、幸いです。

今回、観た中で、良かった歌手は、歌う場面はほとんどありませんが、ボービュイッソン役のRudolf Wasserlofが、最高にいい味を出していました。彼の演技で、舞台が、しまったような感じがしました。また、男性陣ではポール・オービエ役のJörg Schneider(ワーグナー歌手のような立派な体格の方、12月の「こうもり」ではアルフレードを演じていました)、ジョルジュ役のDietmar Kerschbaum(先にもご紹介しましたが、12月に「こうもり」でアイゼンシュタインを演じた歌手です)とも、なかなかいい演技をしていました。ただし、私が観た時にはJörg Schneiderの歌がちょっと変なところがありましたが…(意図的なものではなく、間違えてしまったような雰囲気でした)。一方、Dietmar Kerschbaumは、「こうもり」のアイゼンシュタインと同じような「ノリ」で、ジョルジュを演じていました。
さらに、オペラ座の給仕長フィリップ役のGerhard Ernstも、お芝居で二幕を引き締めていました(三幕にも、質草の貴金属を持って、代金回収のためデュメニール家にやってきます)。

女性陣では、オルタンス役がAndrea Bogneが歌、演技とも良かったですね。もちろん、パルミラ役にRegula Rosin、、アンジェル役のRenate Pitscheider、マルゲリーテ役のUrsula Pfitznerも各キャラクターの個性を前面に出した演技で、引きつけられました。
全体的に、歌以上に、演技を重視した配役になっているような感じを受けました。「オペラ舞踏会」の場合、聴かせどころのアリアが少なく、逆に演技力が問われる場面が多いだけに、演技を重視した人選は重要かもしれません。
「ウィーン気質」にも通じるものがあるウィンナ・オペレッタらしい仕上がりになっています。オペレッタ・ファンにはお勧めの一品と言えるでしょう。

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Comments

Feri さま、

詳しく記述していただいて、ありがとうございます。
2月のチケット買いましたので、観劇してきます (^^)v
事前情報があると、全く違うので、本当にこのサイト、現地にいる者には有り難くて役に立ちます。

さて、落ち込みからも立ち直って頑張りますっ!

Posted by: はっぱ | January 09, 2008 23:43

はっぱさん、こんにちは。嵐が去った?後のウィーンはいかがですか。

さて、通常、私が初めて見るオペレッタの場合、二回続けて見ているので、細かいチェックが可能なのですが、今回は諸般の事情から、一回になってしまいました。

しかも、三幕については、お芝居中心だったので、今ひとつ、自信がありません(もちろん、基本的な展開は違っていないと思いますが)。

「こうもり」のアデーレよろしく、女中さんのオルタンスの関わり方に注目です。また、ボービュイッソン役にRudolf Wasserlofが出たら、好色じいさん振りが見物ですよ。2月になったら、こなれてきていると思うので、ご感想をお寄せ下さいませ(今回「オペラ舞踏会」には初登場の歌手の皆さんが多かったので…)。

しかし、パリを舞台にしているものの、「ウィーン気質」に通じるものがありますね。

あと、私が見たときは、ORFが録音していたので、いずれ、この前の「地獄のオルフェウス」みたいに放送されるのかな? もし放送されたら、インターネットラジオで録音しなくっちゃ。何しろ全曲版のCDが極端に少ないので…

Posted by: Feri | January 10, 2008 00:26

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