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February 24, 2008

フォルクスオーパー「微笑みの国」プルミエレポート

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世界のオペレッタファンの皆さん、お待たせしました(大げさだね)

2007/2008シーズンのフォルクスオーパーで、注目の新作がレハールの名作「微笑みの国」でしょう。2月23日にプルミエが行われましたので、その模様をご紹介しましょう。

まず、プルミエの出演者ですが、指揮はSascha Goetzelでした。リーザ役はUrsula Pfitzner、リヒテンフェルス伯爵役はHeinrich Schweiger(スー・チョン王子の伯父チャンと二役です)、グスタフ役はThomas Sigwald(「地獄のオルフェウス」でオルフェウス役をやっていました)、スー・チョン王子役はKi-Chum Park、ミー役はJohanna Artouas(「地獄のオルフェウス」ではダイアナ役で出ていました)、リヒテンフェルス伯爵の友人にあたる将軍役(二幕以降は、宮殿の宦官長役、二役)でGerald Pichowetzが出ていました(この人は、「地獄のオルフェウス」でキューピット役を演じていた役者さん。元々、キャバレティストなので、オペレッタのお芝居はお手の物です)という顔ぶれでした。
総じて、スー・チョン役のKi-Chum Park以外は、手慣れたメンバーで固めた感じがしました。

なんと言っても今回、最も注目されるのはスー・チョン役に東洋系の歌手を起用したことでしょう。通常、ヨーロッパのカンパニーでは、歌唱力重視で、ヨーロッパ人歌手を起用するケースが圧倒的に多かったと思います。
これは、フォルクスオーパーの大英断と言えるでしょう。実際、お芝居を含む役の雰囲気は、ヨーロッパ人歌手が演じた場合に比べ、格段に良くなっていました。さて、歌唱力の方は…後半をご覧ください。

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さて、内容の方ですが、一言で表現すれば「ウィーンの皆さんが思い描くチャイナのてんこ盛り」といったところでしょう。したがって、東洋人のFeriから観ると、首をかしげるようなシーンがたくさんあるのですが、ウィーンの皆さんにとっては、異国情緒を強く感じることができる楽しいオペレッタに仕上がっていました。

まず、今回の演出は、オリジナルに沿った三幕構成なのですが、一幕と二幕が中途半端な長さであるため、休憩を入れるタイミングが難しいオペレッタです。理想的には二回入れると良いのですが、最近では、諸般の事情から短時間上演の傾向があるため、二幕を実質的に二つに割って、二幕前半終了時点で、休憩を入れていました。これは、「ルクセンブルク伯」の時と同じパターンです。その関係で、二幕の内容が、オリジナルとは若干異なっていました。

以下、ポイントをご紹介しましょう。

○一幕 ウィーンのリヒテンフェルス伯爵邸のサロン
オリジナルと同じ設定ですが、中央にピアノが置いてあるだけという非常にシンプルな舞台装置です。ただ、サロンなので、庭(これも抽象的なデザイン)が見えるような設定になっていました。リーザが馬術大会で優勝したことを記念する祝賀パーティという設定は、オリジナルどおりです。幼なじみの竜騎兵中尉グスタフ(でも服装はタキシード)が、リヒテンフェルス伯爵や将軍の強い後押しで、リーザに結婚を申し出ます。しかし、スー・チョン王子に気のあるリーサは、乗り気ではありません。

このあたり、リーザとグスタフのやり取りが、面白く展開します。また、スー・チョン王子が、リーザを諦めるようにリヒテンフェルス伯爵と将軍が、5人組の若い女性を唆して、スー・チョン王子に色仕掛けで迫るシーンが入っています。また、この5人組は、二幕以降もちょっと変わった役柄で登場します。スー・チョン王子が、首相に任命されることになり、リーザと一緒に中国に戻る場面でお開きとなります。第一幕では、スー・チョンが歌うアリア「リンゴの花冠」が聴かせどころなのですが、Ki-Chum Parkは、お芝居はなかなか魅せるものの、歌の方は今ひとつという感じでした。

○二幕前半 中国にあるスー・チョンの宮殿
一幕から、二幕へは暗転です。二幕は、スー・チョン王子とリーザが中国(本来は北京の宮殿)に到着するところから始まります。ここから、「チャイナてんこ盛り」といった感じになります。まず、前奏曲の途中、天上からぶら下がった天女が舞います。で、背景は本来、北京では考えられない山々が…ずばり、水墨画の世界です。
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二人が到着すると、まずは蛇踊りでお出迎え。さらに、バレエ団による中国風の踊りが披露されます(衣装のデザインや色遣いも、ヨーロッパ人がイメージするチャイナ風です)。また、兵士も出てきますが、世界遺産に指定されている「秦始皇帝陵及び兵馬俑坑」にある武士俑そっくりな格好です(実際に歩き方も、埴輪のようなぎこちないユーモラスな動きを見せます)。

さらにスー・チョンを迎える伯父のチャン(一族の長)は、仙人のような格好で登場します。一応、オリジナルの設定は1912年ですから、さすがに仙人はいないでしょう(という突っ込みは、オペレッタには無粋かな)。宮殿の宦官長はなにやら着流し風の衣装でしたが、怪しげな雰囲気が良く出ていました(Gerald Pichowetzの雰囲気にはぴったりでした)。

物語の方は、通常は、二幕の早い段階で、中国駐在武官になったグスタフが出てくるのですが、今回は、二幕を二つに割っている関係で、前半はグスタフの出番はなし。

なお、スー・チョンと一緒にウィーンに行っていたミーが、西洋風のテニスルックで登場し、チャンに戒められるシーン(足が見えてはいけない)はちゃんと入っていました。

そして、チャンはリーザやミーが西洋風の服装や態度を見つけると、一族の長らしく、やたらに“当家には3000年の歴史が…”というフレーズを連発し、戒めます。また、例の兵隊がリーザやミーを担いで、舞台袖に連れて行ってしまいます。このあたりのお芝居は良く練り込まれていますね。

脚本により、スー・チョンが首相になるパターンと、国王になるパターンがあるのですが、今回は首相パターンのようでした。そのため、宮殿到着後、スー・チョンは、きらびやかなガウンをまとっておしまいという感じでした(国王パターンでは、戴冠式を入れるケースが多いようです)。

スー・チョンは叔父のチャンに、四人の妻をめとるように言われ、渋々承諾し、派手な結婚式を挙げる場面で、二幕前半が終了となり、休憩が入ります。

○二幕後半 中国にあるスー・チョンの宮殿
二幕後半は、グスタフが登場する場面から始まる。宮殿内で、リーザとすれ違うが、グスタフは気づかないという設定になっているようでした。このとき、スー・チョンと四人の妻とのからみがバレエで披露されるのですが、しっかりスー・チョン役は、このときだけはバレエ団が代役を務めていました(同じ服装をしている上に、暗いですから、よく見ないとわかりませんが)。

また、グスタフが、リーザとの逃亡に向けて宦官長を買収するあたりのお芝居は、相手が相手だけに面白く仕上がっていました。リーザを探すグスタフは、途中でミーと出会い、有名なデュエットを歌います。ここは、お二人ともオペレッタの常連なので、なかなか良い出来でした。また、お芝居も二人が服を途中まで脱ぎ出すというストレートな演出でした。

その後、グスタフはリーザを会い、いったんは連れ出そうとするが、スー・チョンに見つかり、リーザに軟禁されてしまうことになります。ここで、名アリア「君はわが心のすべて」が歌われます。当オペレッタ中、最高の聴かせどころなのですが、Ki-Chum Parkは、一生懸命やっている姿勢は伝わってくるのですが、歌自体はもの足りませんでした。とくに、このアリアは、単独で有名なテノール歌手が取り上げているので、比較されやすいだけに、厳しかったかもしれません。

ところで、例の5人組ですが、二幕では、リーザの心の声(ウィーンに帰りたい、ウィーンは良かった)を代弁するように、チョロチョロ出てきては、リーザを冷やかします。

○三幕 リーザが軟禁されている後宮
暗転で三幕に入ります。舞台装置は、軟禁されていることを象徴するように、赤い格子が舞台手前に降りています。そして、なぜか、巨大な仏像風のオブジェが(ラッキーチャイナなのか、黄金の仏像の胸元には「福」の文字が…軟禁されている場所には似合わないような気がしますが…)。

軟禁されているリーザのところへ、グスタフがミーの案内でやってきます。ミーと宦官長がグスタフとリーザの逃亡を手助けします。途中、埴輪の兵隊の捜索に引っかかり、二人はスー・チョンに見つかってしまいます。
ここで、お互いが愛し合う故に、スー・チョンはリーザの幸せを願って、彼女を解放するという場面は、定番とは言え、ドラマチックな演出が光りました。
ひねってあるのは、スー・チョンが「私たちはただ微笑むだけ、それがみほとけの教え」を歌う場面で、ウィーンに戻ったリーザがバックに出てくるようになっているところです。

つまり、スー・チョンのイメージを表現したという展開なのでしょう。
演出は非常にドラマチックに仕上げられており、このオペレッタならではのホロリとくる演出が見事でした。ただ、スー・チョン役はKi-Chum Parkの歌唱力が唯一残念なところでしょうか。

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ロベルト・マイヤーになってから、お芝居を重視した演出と歌手起用になっているため、見応えは十分あります。また、ウィーンのお客さまが期待するチャイナをしっかりとイメージして、その要素をてんこ盛りにするあたりは、センスが光ります(しかし、日本人が観ると、突っ込みたくなります)。まぁ、作家の方も仏教と回教を取り違えているようですから、当時のヨーロッパ人がイメージしたチャイナのお話…と考えれば、楽しめると思います。

フォルクスオーパーの楽団は、レハールの演奏が本当に上手なので、Feriも舞台にぐいぐい引き込まれました。ところで、今回、プルミエだけかもしれませんが、カーテンコールの際、楽団員全員が舞台に上がって、指揮者と挨拶をするという演出がありました。ドイツのオペラは良くやるんですよね。このパターン。指揮者の気遣いかもしれません。

「微笑みの国」ですが、チャンスがあったら、是非ご覧になることをお勧めします。ただし、日本人的な視点で観ないでね。

なお、従来、スー・ホンと記載するケースが多かったのですが、最近はスー・チョンと標記するようなので、そちらに合わせました(個人的には、慣れの問題で、しっくりこないのですがね)。

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