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February 10, 2008

番外編 日本オペレッタ協会公演「あなたが大将」

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まず、7万ヒットのお礼から。皆さまのお陰で、昨年からアクセス数が増えており、昨日7万ヒットを達成しました。どちらかというと、ディープな話題が多いブログにもかかわらず、多くの方にご覧いただき、感謝しております。また、皆さまからのご質問やリクエストに対しても、可能な範囲でお答えしたいと考えております。
今後ともよろしくお願いITAします。

さて、2月8日から10日の3日間、ジャック・オッフェンバックの作品である「ジェルロシュタイン大公殿下」が、日本オペレッタ協会により上演されました(同協会30周年記念公演)。最終日の10日に観る機会がありましたので、その模様を「番外編」としてご紹介しましょう。

会場は、東京都北区の北とぴあ つづじホール(小ホール)でしたので、いわゆるフルオーケストラによるオペレッタではなく、アンサンブル編成による演奏でした。

指揮は角 岳史、ジェロルシュタイン大公役は針生美智子、ブン大将役は女屋哲郎、フリッツ役は武井基治、ワンダ役は里中トヨコ、ロカピック伯爵夫人役は木月京子、プック内務大臣役は坂本秀明、ポール皇太子役は澤村翔子(通常はテノールが担当します)、グロッグ大使役は飯田裕之でした。十分準備を積んだようで、皆さん、歌も演技も見事でした。
また、演奏はピアノ(浜川 潮)とバイオリン(坂田知香)の二名編成でした。

ご存じのように「ジェルロシュタイン大公殿下」は、その昔、浅草オペラでは「ブン大将」という名前で上演されていた演目です。

さて、今回の上演では、同協会としては珍しい「新しい演出手法」が導入されました。演出・脚本は劇団NLT(コメディを中心に上演している劇団のようです)の主宰者である川端槇二氏(ご自身も役者として活躍中)が、初めて担当されました。

すでに公演が終了してしまっているので、ネタバレになりますが、ご紹介しましょう。

「オッフェンバックが宇宙に飛び出した」という副題があるように、宇宙人が地球を調査するために宇宙船でやってきます。その時、サンプルとして確保した人間が、たまたまオペレッタのリハーサル中の人物4名(指揮者とピアニスト、バイオリニスト、そしてフリッツ役の武井基治)でした。そのメンバーが持っていた「ブン大将」の台本と楽譜を見た宇宙人が、地球人を研究するため、この台本を元に宇宙船の中でオペレッタをやってみようと相談します。ここから、人間と宇宙人のコラボレーションによる「ジェルロシュタイン大公殿下」が「劇中劇ならぬ劇中オペレッタ」として上演されるという展開です。

そのため、ジェロルシュタイン大公役の針生美智子、ブン大将役の女屋哲郎、ワンダ役の里中トヨコ、ロカピック伯爵夫人役の木月京子、プック内務大臣役の坂本秀明、ポール皇太子役の澤村翔子、グロッグ大使役の飯田裕之は、いずれも遠い星雲からやってきた宇宙人という想定で始まります(そのため、最初は妙な衣装で出てきました)。ちなみに宇宙船の船長は木月京子(宇宙人らしい正式な名前があったのですが、忘れました)が務めていました。

第一幕は45分、15分の休憩を挟んで、第二幕は70分での上演です(オリジナルでは三幕構成ですが、本公演では劇中オペレッタの三幕は暗転で行われました)。

本場のオペレッタを知り尽くした寺崎氏らしく、随所に「時事ネタ」を入れて、観客の笑いを誘っていました。
実は、私は「ジェルロシュタイン大公殿下」のオリジナル版オペレッタを観たことがありません(なかなか上演されませんから…)。そこで、永竹由幸著「オペレッタ名曲百科」の解説を参考にさせて頂きました。さて、「劇中オペレッタ」の部分は、意外にもオリジナルの忠実なストーリーでした。ただし、ロカピック伯爵夫人だけは、新しく設けた役のようです。

第一幕は、オリジナルに忠実な演出でした。出兵前の野営地に閲兵でやってきたジェルロシュタイン大公殿下が、イケメンの新兵フリッツを気に入り、彼を兵士から、一足飛びに将校へ昇格させてしまいます。一方、フリッツにはワンダという婚約者(村の娘)がいるのですが、ブン大将はワンダにぞっこん(ワンダはブン大将が嫌い)という、オペレッタらしい展開です。第一幕の聴き所は、ジェルロシュタイン大公殿下が歌うロンド「私は軍人が好き」と、皆で歌う「連隊の歌 名高き大公殿下の連隊」でしょう。このあたりは、本オペレッタでも聴かせどころでした。
そこへ、ポール皇太子とグロッグ大使(オリジナルでは、ポール皇太子の宮廷男爵で、第三幕で登場します)が登場し、ジェルロシュタイン大公殿下に結婚を迫りますが、フリッツを気に入っている大公殿下は「戦争が終わったら…」と、こちらもつれない返事…

敵軍に対処するための作戦会議の席で、ブン大将が発表した作戦にフリッツが異議を唱え、ブン大将がフリッツをののしります。しかし、大公殿下がフリッツを総司令官に任命してしまい、落ち込むブン大将。大公殿下はフリッツに父君のサーベルを授け、フリッツは意気揚々と戦線へ向かっていきます。

さて、劇中オペレッタの一幕は、ここでお開きになるのですが、宇宙船に隕石が接近する緊急事態が発生したので、オペレッタはいったん中断といったお話で、本編の第一幕が終わります。

第二幕では、隕石が宇宙船に衝突することなく通り過ぎたことから、オペレッタを再会しようという話から、劇中オペレッタが始まります。

フリッツが敵を蹴散らし、意気揚々と凱旋するとの報に接し、ブン大将とプック内務大臣は不機嫌になります。ここへ、フリッツに結婚を邪魔されている皇太子が加わり、フリッツの抹殺を計画します。

凱旋したフリッツは、戦いの模様を大公殿下に説明します(ここはなかなか楽しい歌でした)。その後、大公殿下はフリッツを自室へ招き、「宮廷にはあなたに夢中な女官がいる」と思わせぶりに話します。しかし、フリッツは、その女官が大公殿下であるとは気づかず、ワンダという婚約者がいるので…とはねつけてしまいます。

ここからオペレッタ協会版となります。未亡人のロカピック伯爵夫人が登場します。実は、この未亡人にはブン大将と内務大臣というふたりの愛人がいます。今までは、ブン大将が戦争に行っていることが多かったので、ふたりが伯爵夫人邸で鉢合わせすることはありませんでしたが、今回はばったり…ブン大将と内務大臣はここで意気投合し、フリッツの抹殺に伯爵夫人を巻き込むことを計画します。そこへ、フリッツにふられて頭にきている大公殿下が登場し、「私も陰謀に加わる。ただし、殺さない程度に復習せよ」とブン大将に命じます。

ここから劇中オペレッタの三幕になります。オリジナルでは、結婚式の直後、フリッツは戦場へ呼び出され、ここで復讐を受けるのですが、今回の公演では、「ロカピック伯爵夫人邸にテロリストが侵入し、夫人を人質にして立てこもっている。フリッツは、夫人を救出せよ」という「今風」のシュチュエーションになっていました。伯爵夫人邸では、テロリストに変装したブン大将、内務大臣、皇太子、大使が待ち構えていて、フリッツと一戦を交えます。この時、オッフェンバックの名作、「地獄のオルフェウス」のギャロップが演奏されました。

この騒動の後、ジェルロシュタイン大公殿下は皇太子との結婚を宣言します。そこへ、ボロボロになったフリッツが戻ってきます。フリッツへの気持ちがさめた大公殿下は、降格を命じます。フリッツも、兵士をやめてワンダと一緒に田舎に戻ることを決めます。ところが、髭を剃ったグロッグ大使が意外にイケメンだったため、大公殿下は心変わりして、グロッグに軍務大臣職を与えるように命令します。

しかし、グロッグが既婚者だとわかると、軍務大臣職を解いてしまいます。ジェルロシュタイン大公殿下も最後は、何でも自分の欲しいものが手に入るとは限らないことに気づき、参加者全員で「欲しいものが手に入らない時は、手持ちのもので我慢しましょう」を歌い、劇中オペレッタはお開きとなりました。

本編は、もう少し続きます。サンプリング調査が終わった宇宙人一行は、地球人を地球に戻して、故郷に戻ることになります。しかし、本当にフリッツに恋をしてしまったワンダは、規定を無視して、地球に行ってしまいます。そこで、オペレッタ協会のオーディションを受ける…というお話です。さらに、他の宇宙人も、オペレッタの魅力に取り憑かれてしまい、結局、全員、地球に戻ってきてしまった…というオチでお開きとなりました。

オペレッタ協会は、とにかく厳しい状況の中で、公演を行っています。そのため、最後の「欲しいものが手に入らない時は、手持ちのもので我慢しましょう」という歌は、何やらオペレッタ協会の今を象徴しているように感じてしまいました(演出側はそのような意図はないかもしれません)。

比較的小さな劇場を使い、アンサンブル形式で上演するオペレッタというのは、今の日本オペレッタ協会にフィットした上演方式だと思います。もちろん、フルオーケストラに、立派な舞台装置、大人数のコーラス、バレエなどが加わった本格的なオペレッタは魅力的です。しかし、「欲しいものが手に入らない時は、手持ちのもので我慢しましょう」の精神で、協会の体力にあったアンサンブル形式で、定期的にオペレッタを上演することも一つの選択だと感じました。

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