« 実は観ていた 驚きの組み合わせ | Main | オペラのお値段 »

February 19, 2008

オーストラリアのオペレッタ

Img_1962_b
今日はオペレッタものに関する臨時更新です。「オーストリアもの」でないのは、ご容赦下さい

デジタル教育テレビのサブチャンネルで、時々、「こっそり、ひっそり、目立たず」にオペラやオペレッタを放送しているNHKさんですが、2月18日、最近ではほとんど上演されないサリヴァン作曲のオペレッタ「軍艦ピナフォア」と「陪審裁判」が放送されました(アメリカの「メリーウィドウ」もこの枠で放送されました)。

オペラ・オーストラリアによる上演で、演奏はビクトリア管弦楽団、合唱はオペラ・オーストラリア・メルボルン合唱団、指揮アンドリュー・グリーンという、オーストラリア(カンガルーが居る方ですね)のカンパニーです(オーストラリア メルボルン・アーツ・センターで2005年5月に録画)。

ご存じの方も多いと思いますが、アーサー・サリヴァンはイギリスの作曲家です。かつて、フォルクスオーパーでも「ペンザンスの海賊」を上演していた時期がありました(これにまつわる珍エピソードがあるので、いずれご紹介しましょう)。
まず、番組作りから。序曲の時に、舞台裏のカットを流していました(ちょっぴりメイキング風)。また、全般的にアップを多用し、かつカット割りが細かい今風の撮影なので、せわしい感じがしました。なお、歌手はワイヤレスマイクをつけているようでした。

戦艦ピナフォア」(HMS Pinafore 別名は「水夫を愛した娘」The Lass that Lovedだそうです)は、1878年初演の作品で、オペラ「トロヴァトーレ」の赤子取り違え事件のオペレッタ版と言われています。台本は名コンビのウィリアム・シュウェンク・ギルバートです。二幕もののオペレッタですが、舞台が船上で、出演者全員が英海軍の士官か、水夫というお話です。

出演者ですが、海軍大臣ボーダー卿役にジョン・ボルトン・ウッド(この人も個性的な歌手ですね)、コーコラン艦長役にアンソニー・ウォーロー(この人は、出てきただけで客席から拍手が送られたところを見ると有名な方なのでしょうかね)、水夫のラックストロウ役にデーヴィッド・ホブソン(なかなかのイケメン歌手)、艦長の娘ジョセフィン役にティファニー・スペイト(第一幕ではセーラー服で出てきます)、ポーツマス港の物売り船の女クリップス役(通称リトル・バターカップ)にコレット・マン(この人はしゃべり方にすごく個性のある歌手でした。スプレッドですね)、ひねくれ者の水夫ディック・デットアイ役にリチャード・アレクサンダーという面々でした。

Img_1957_b

お話ですが、艦長と水夫が赤ちゃんの頃、保育所で取り違えられ、名門の家の赤ちゃんが貧しい家庭に、貧しい家庭の赤ちゃんが名門の家でそれぞれ育てられてしまいます。それが、成人して同じ軍艦に勤務することで起こるドタバタ劇という訳です。当然、オペレッタですから、身分違いの恋愛が絡んできます。また、イギリスらしい階級社会を皮肉ったお話です。二幕では、ボーダー卿とコーコラン艦長、それに艦長の娘ジョセフィンが三人で歌いながら、踊るシーンが印象的です。オペレッタらしく、最後は、身分がわかり突然艦長になったラックストロウとジョセフィンが、水兵に降格したコーコランとクリップスが、さらにボーダー卿と別の女性と結ばれ、3組のカップルが誕生し、「イギリス万歳」といった雰囲気でお開きになります。

元々が英語版ですから、英語圏のオーストラリアではお手のもの…といったところでしょう。曲は、サリヴァンらしいリズミカルで、テンポの良いものです(「ペンザンスの海賊」を思い出しました)。振り付けはミュージカル調ですね。短いオペレッタなので、幕間の休憩なしで、上演されていました(上演時間は1時間30分ほどのようです)。
余談ですが、タイトルの「HMS」とは、イギリス海軍艦艇の名前につけられるもので、国王陛下の艦(His Majesty's Ship)もしくは女王陛下(Her Majesty's Ship)艦の略です。


Img_1960_b
さて、もう一本の「陪審裁判」(Trial by Jury)は、ギルバートとサリヴァンが協同で創作した最初の作品で、1875年に初演されました。ギルバートは、作家になる前に初弁護士として活躍していた時代があり、その時の経験を元にした作品です。なお、この作品は、通常のオペレッタのように話すセリフはなく、音楽が全セリフにつけられています。一幕もので、上演時間が30分強です。そのため、他の作品と一緒に上演されるケースが多いとのことです。

お話ですが、オリジナルは、19世紀終わりのイギリス・ロンドンの法廷(ギルバートが実際に立ったことのあるクラークンウエェルの裁判所を想定しているとか)が舞台です。

出演者は、何と一部は同時上演の「戦艦ピナフォア」と兼任です。まず、博学な判事役にはアンソニー・ウォーロー(艦長役とは全く違った雰囲気で、ちょっと見ただけでは同じ歌手とはわかりせん)、」被告のエドウィン役はデーヴィッド・ホブソン(さっきはイケメン水兵さん)、アンジェリーナ役はアリ・マクレガー(ピンクのジャケットがよく似合う華のある歌手ですね)、弁護士役はジョン・ボルトン・ウッド(先ほどは海軍大臣)、廷吏役はリチャード・アレグザンダー(先ほどはひねくれ者の水夫ディック・デットアイ)でした。

裁判の中身は婚約破棄(被告のエドウィンが、別の女性を好きになり、一方的にアンジェリーナとの婚約を解消した)に関するものです。廷吏が“法廷では静粛に”とか言いつつ、皆で歌っているのですから、笑ってしまいます。
オリジナルは「19世紀の終わり」なのですが、英国の大衆紙SUNを持って、被告が出てくるなど、現代劇に作り替えています。というわけで、服装は、男女ともスーツ姿(ただし裁判長は法服ですが)でした。被告のエドウィンですが、いかにも女好きのプレイボーイといった雰囲気をよく出しています。判事はすごい格好(一見するとホームレスみたいなだらしない格好)で客席から舞台に上がってきます。独特の歌い方をする役ですね(先ほどの艦長役とは、全く違う歌い方です。器用な方です)。

また、記者団(女性合唱団)が、時々被告や原告を取り囲んで、ぶら下がりインタビューをする場面があります(当然、コーラスが入るのですが)。タイトルのように陪審員のいる裁判なので、原告、被告とも、陪審員に働きかけをします。

アンジェリーナは、華のある女性といった雰囲気(ちょっと乙女という雰囲気ではないですね。「メリーウィドウ」のハンナのような雰囲気)で、何と生きた犬を抱いて客席から登場します。判事は、アンジェリーナの色気に当たって一目惚れしてしまいます。裁判中も、判事は、裁判の中身よりもアンジェリーナの一挙手一投足に釘付けというオペレッタらしい展開です。

一方、陪審員(男性合唱団)の方ですが、最初は、被告の話(歌)を聴いて、同じ男性として理解を示すのですが、魅力的なアンジェリーナが登場すると、陪審員は一斉に一斉に彼女の味方に… エドウィンとアンジェリーナが法廷で、それぞれの主張を歌で競い合う場面は、山場でしょうか。

結局、最後は判事が、“最良の解決策は、私が原告の花嫁と結婚することだ”という「とんでもない調停案」を出し、何と花嫁も“この辺が落としどころね”(実は判事は、前の奥さんのお陰で今は資産家)といった感じで判事のプロポーズを受け入れて、お開きになると言うシナリオです(すごい話ですね)。なお、このエンディングの伏線として、途中、判事が“今は夫人と離婚して、晴れて独身”という歌を歌う場面があります。時間が短いため、テンポが良く、イギリスらしいユーモア精神満載のオペレッタです。

びっくり仰天だったのは、「陪審裁判」のカーテンコールに「戦艦ピナフォア」の出演者が乱入し(「戦艦ピナフォア」はカーテンコールがありませんでした)、合同のエンディングにしている点です。最後は、判事とポーツマス港の物売り船の女クリップスが、一緒に酒を酌み交わす場面で幕となります(「戦艦ピナフォア」では、結ばれたカップルですから、当然と言えば当然か)。

Img_1961_b

オーストラリアのオペレッタというのは始めてみましたが、演目が「イギリスもの」だったこともあり、意外と楽しい仕上がりでした。まだまだ、私の知らないおもしろいオペレッタがあることを痛感した一夜でした

|

« 実は観ていた 驚きの組み合わせ | Main | オペラのお値段 »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




« 実は観ていた 驚きの組み合わせ | Main | オペラのお値段 »