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March 27, 2008

オペラ「エヴァンゲリマン」

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今日は、オペラの話題です。
フォルクスオーパーで上演されているオペラの中には、珍しい演目もあります。今日ご紹介する「エヴァンゲリマン」(宣教師)も、珍品オペラの一つでしょう。

本演目はオーストリアの作曲家キーンツル(リストの弟子)の作品で、以前は、よく上演されていたようです。しかし、しばらく上演されず、埋もれていたものを、前のディレクターであるルドフル・ベルガー氏が、「シカゴの公爵夫人」などとともに再演を実現したものです。Feriは二回目の鑑賞です。

内容は、兄弟間の一人の女性を巡る確執を、当時の時代背景とともにまとめたものです。第一幕は第一次世界大戦前のオーストリア(1900年となっています)。サンクト・オトマーという村でのお話です。帝国の威光にかげりが見えてきたとは言え、まだまだ村民の皆さん、平和に暮らしています。教師をしている兄ヨハネスと、書記官をしている弟マティアスは、二人ともマルタという女性に恋をしてしまいます。しかし、マルタはマティアスを愛しており、ヨハネスにはそっけありません。

嫉妬心を頂いたヨハネスは、マルタの叔父に告げ口をして、マティアスを村から追い出そうと画策します。マティアスは村を去る前夜、修道院の中庭でマルタと密会をし、愛を確かめます。この場面を目撃したヨハネスは、嫉妬心から修道院に放火し、マティアスを犯人に仕立て上げてしまいます(今風に言えば、ヨハネスはストーカーで、弟をえん罪で刑務所におくりこんでしまうのですから、とんでもない兄ですね。ワイドショーが盛り上がりそう…)。

この間、話の本編とは関係がないのですが、村に住むユダヤ人をいじめる場面なども盛り込まれており、当時の時代背景が反映されています。

第二幕は、1930年のウィーン。第一次世界大戦に敗れ、国も荒廃しているオーストリアが舞台です。ヨハネスは、良心の呵責から重い病の身です(結核のようです)。マグダレーナの介護を受けながら、ウィーンで療養生活を送っています。冒頭、ウィーンの住宅街が登場し、アパート前では貧しい子供達が遊んでいます。第一次世界大戦ではありますが、貧しかった戦後のイメージがよく出ています(きっと、第二次世界大戦後の記憶がある地元民の皆様にとっては、ジーンと来る場面でしょうね)。そこへ、刑期を終えたマティアスが現れます。劇中、収監期間が20年と言っていたので、青春を刑務所内で過ごしたことになります。

当然、刑期を終えても、戦争に敗れたため、仕事はありません。マティアスは、聖書の福音書を朗読しながら施しを受けるという生活を送っています(そのため、舞台の外側には福音書の一節が画かれています。ちなみに、この仕事がエヴァンゲリマン:宣教師と言うそうです)。

さらに、マティアスにとってショックだったのは、愛していたマルタがドナウ川の洪水で死亡していたことです(絶望的な状況ですね)。

一方、病床に横たわるヨハネスは、マティアスが福音書を朗読する声を聴き、懺悔の告白をするため、弟とは知らずにマティアスを病棟に呼び寄せます。そこで、無実の弟に放火の罪をかぶせたことを告白します。マティアスは、相手が兄だと気づき、飛びかかりたい衝動に駆られるのですが、兄ヨハネスは告白の後、息を引き取るという話です。

指揮は女性のElisabeth Attl(ボーイッシュな感じの指揮者。ちょっと見ると少年のようです)、主な出演者は、ヨハネス役はSebastian Holecek、マティアス役はMicael Baba、法律顧問エンゲル役(マルタの叔父)はValter Fink、マルタ役はKristiane Kaiser、マグダレーナ役はAndrea Bönigした。また、いつもはオペレッタで活躍するJosef Luftensteinerが第一幕に出ていました(Anton Schnappauf役)。

ヨハネス役のSebastian Holecekは体格がよろしくて、とても結核で亡くなりそうには見えませんが、これは仕方ないですね。

マルタ役のKristiane Kaiserは雰囲気が役にぴったりなのですが、一幕でお役ご免となってしまいます。残念。

逆にマグダレーナ役はAndrea Bönig(メゾソプラノ)は、一幕では歌う場面はほとんどないのですが、二幕では結構重要な役になります。いい雰囲気を出していましたね。

マティアス役のMicael Babaは、一幕では颯爽としたホワイトカラーの青年なのですが、二幕では20年も収監され、かつ仕事もないため、雰囲気がずいぶん変わります。これくらい主役のイメージが変わるオペラも珍しいでしょう。

本オペラは、第一幕と第二幕で出演者が大きく変わるために、第一幕のカーテンコールがしっかり行われます(写真は一幕のカーテンコールです)。

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また、曲の感じも、時代背景を反映して一幕は美しいメロディーラインの曲が多いのですが(放火のシーンを除きますが)、二幕は、逆に悲しい感じの曲が多くなります

また、二幕では、結構声量の要求される部分があるため、声量のある歌手が投入されているようです。いわゆる珍品オペラですが、当時のオーストリア情勢を踏まえて、聴くと、また趣のあるオペラです。何しろ、オーストリア人作曲家による、オーストリアを舞台にしたオペラですから。ある意味、フォルクスオーパーにはぴったりのオペラでしょう。また、演出に関してもオーストリア人の庶民生活を細かく反映しており、外国人にはピンと来なくとも、地元の皆様には郷愁を誘う仕上がりになっています。

イタリアオペラのように王様や貴族が出てくる華やかなオペラとは、一線を画す庶民派の内容ですが、ちょっと、普通のオペラに飽きたかには、お勧めの一品です

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