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June 02, 2008

フォルクスオーパー日本公演「ボッカチオ」(後編)

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さて、昨日に引き続き、「ボッカチオ」の模様をお伝えしましょう。

○演出は基本的に現地と同じですが…
昨日にも書きましたが、「ボッカチオ」では、現在も基本的にはプルミエの時の演出を継承しているようです。ただし、日本公演では、会場の事情と時間短縮(現地では20分の休憩を挟んで3時間。日本公演は、20分の休憩を入れて、2時間40分)のため、一部変更されているようです。

どてら親父さまから、ご指摘いただいた3幕はじめのランベルトッチョの風刺歌が、短かったのも時間短縮の影響だと思います。特に、6月1日は前日以上に、あっさりしていました(全体の時間が押していたためだと、思います)。ただ、ここはおもしろい場面だったので、できれば省略せず、オリジナル通りにやってもらったところです

また、冒頭、ボッカチオが空を飛ぶシーンは、やはり省略されており、オーケストラピット脇の舞台袖からボッカチオが歩いて出てくる展開になっていました。

二幕でロンギッテがイザベラの安眠を妨害するため、街の仲間と大きな樽を自宅前に転がしてきて、歌いながら樽を叩きまくるシーンがあります。

ロンギッテが主役となる数少ない場面です。オモシロイにはサンドール・メネスとクルト・シュライブマイヤーでは、演技に違いがあることです。クルト・シュライブマイヤーは大柄な人なので、体の大きさを生かした演技(例えば、ジャンプして樽の上に乗るなど)が光りました。
一方、サンドール・メネスは、比較的小柄な人なのですが、かつてブッフ役でならした人らしく、ユーモアたっぷりの演技で、観客を引きつけていました。

また、同じ二幕では、奥様連中三人が浮気相手の訪問を手紙で知り、盛り上がる場面(実際には、フィアメッタも含めた四人)があります。この四重唱も見所の一つでしょう。

また、その後、ボッカチオ、レオネット、ピエトロの三人が奥様連中のところにやってくるのですが、ベロネラだけは「特定のお相手」がいません。そこで、ボッカチオがレオネットにベアトリーチェとベロネラの相手を指示する訳です。

渋々引き受けたレオネット。若い男が言い寄ってきてハイテンションになるベロネラ。このシーンは、ベロネラとベアトリーチェの演技力が注目される場面です。1日は舞台正面だったので、この演技がよく見えたのですが、レオネットはズボンを脱がされて、ベロネラの家に連れ込まれていましたね。完全にジークリット・マルティッケがトーマス・ジクヴァルトを圧倒していました。

ところで、今回の日本公演では、従来見られた「日本語のギャグ」がなくなり、現地の演出が忠実に再現されています。これは、本公演を企画したベルガー前総裁と、招へい元の日本舞台芸術振興会の総合プロデューサー佐々木忠次氏が、「フォルクスオーパーは音劇的水準も極めて高いので、親しみやすさを“低俗さ”とはき違えたような理解を払拭するため、本物の音楽を庶民のものに取り戻そう」というコンセプトの元で実現したもののようです。

日本語のギャグが入った方が確かにお客さまは沸くのですが、Feri個人としては、フォルクスオーパーの実力を遺憾なく発揮し、ウィーン情緒を再現した今回のスタイルは高く評価しております。

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○お客さまの反応は…
実は、「ボッカチオ」は、「こうもり」などに比べると、お芝居の部分が少なく、オペラのように歌が多いオペレッタです。また、歌が続く場面も多々あります。そのため、拍手のタイミングが難しいようです。

また、舞台上では、結構、お色気ムード満点の演技があったのですが(ちょっと、お子さまには解説できませんね )、Njegusさまや、どてら親父さまのコメントにもあったように、お客さまの反応は今一歩でしたね。フォルクスオーパーでしたら、天井桟敷から口笛でもでそうな場面です。

とくに、二幕でジークリット・マルティッケ扮するペロネラがレオネット(トーマス・ジクヴァルトが演じていましたが)に迫る場面は、おばさま心理を生かした大胆な演技で、レオネットがタジタジでした(さすが、ベテランです)。

また、ピエトロとイザベラが樽の上で、からむシーン があるのですが、あきらかに○○○をしている雰囲気を存分に出していましたね。ただ、下品になる直前でとめているところが、フォルクスオーパー・クォリティ 。さすがです 。やはり、日本のお客さまは、この手の場面で、どう反応したらよいのか、判断に迷うのでしょう

○指揮者による違い
31日はアンドレアス・シュラー、1日はミヒャエル・トマシェックが振りました。Feriが好きな指揮者の一人が、ミヒャエル・トマシェックです。いつもは、合唱指揮を行っているため、普通の公演ではあまり出番がありませんが、めがねをちょこんと載せて、振るスタイルは、好きですね。合唱指揮を担当しているだけあって、コーラスのタイミングやメリハリのついた歌い方の指示などは上手なようです。結構、細かい指示を出す指揮者だと思います。なお、現地で開演前にカフェで一休みしているとミヒャエル・トマシェックがふらっと立ち寄る場面を何回か見ています(さすが、ウィーン)。

で、違いはあるのか…ということですが、聴いた場所も違いますので、一概に言えませんが、ミヒャエル・トマシェックの方が、合唱団も含めて、歌手の実力を十分引き出しているように感じました。

○劇場の問題
東京文化会館は収容人数が多いこともあり、オペラ公演でも良く使われますが、基本設計が古いため、サービス施設が不十分な点が、惜しまれます。
例えば、オペレッタやオペラの場合、ご高齢のお客さまが多いにもかかわらず、エレベーターやエスカレーターがありません。そのため、2階から上への移動は本当に大変です

また、 化粧室が少ないため、休憩時間は長蛇の列になります。まぁ、これはどこの劇場でも事情は似ているのですが(フォルクスオーパーの化粧室が、少ないのは有名)、何とかしてもらいたいですね。

あとは、収容人数の割にバーやビュフェが少ないことです。そのため、すぐに行列が…オペレッタやオペラの鑑賞は、舞台だけではなく、こういったインフラでも印象が違ってきます。本来は、非日常的な空間が劇場ですから、あまりにも現実的な行列大会に、Feriは興ざめです

ところで、新国立劇場は、オペラ上演を主眼に建設された新しい劇場なので、設備は申し分ありません。個人的には、ウィーン国立劇場やフォルクスオーパーに、ぜひ一度、新国立劇場で上演してもらいたいと思っています。きっと、音響も含めて、印象が全く変わると思います。

余談ですが、タイトルロールのボッカチオは、女性歌手が担当するのが一般的ですね。そのため、フィアメッタと愛を語る場面は、何やら「宝塚」を思い起こしてしまいます。しかし、男性版のボッカチオもあるらしく、その場合は、バリトンが担当するとか…かなり雰囲気が違うでしょうね。ちょっと見てみたい気がします。また、この内容だったら「宝塚」が上演しても、おもしろいかと思います。

さて、三公演目は、期待のコミック・オペラ「マルタ」です

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Comments

Feriさま
どてら親父です

6月1日のボッカチオは素晴らしかったですね、31日と同じ4階の今度はRで観ましたが、Feriさまがそれとなく云っておられますように、31日よりも1日のほうがオケも合唱もずいぶん良く響いていました。
それにチェドニクやマルティッケの大御所が入ると周囲の者の演技や表情が非常に良くなるんですね、何気ないしぐさや動作が常に行われていますし、グラスで見る表情も驚くほど良く出ていました。オケも相当調子にも乗っていたような気がします。何が違うのか、具体的にはわからないのですが・・・・

また拍手が入れ難いというお話、私もそのように感じました。ウィーンではこれという曲の切れ目にほんの僅かですが拍手を期待しての?ポーズが入っていたと思うのですが、今回は拍手入れるタイミングがほとんど無かったような気がします。

それにFeriさまのお話で初めてわかりましたが、今回の公演はおふざけを極力排して芸術的なものを目指す方針だったのですね。
しかし日本ではひんしゅくを買う品の無さといっても、現地ではこれが笑いでありジョークであるわけです。やはり文化の相違による壁は大きいことがわかりました。
ランベルトウッチョが第三幕冒頭で歌う歌は現地では相当くすぐりの強い歌詞だったと思いますが、今回は日本バージョンだったのでしょう。

でも舞台は楽しかったです。イザベラが投げるニンジンも31日よりも勢い良く飛んでいました。(これが何故ニンジンなのかというと多分何か意味があるんでしょうね) バレルモの王子が最初はプレスリーもどきで出てくるのも何か皮肉っているんだろうと思います。
それと、幕開き冒頭に出てくる物乞いの親分の演出は初演当時もっとおどろおどろしいものだったような気がします。
フォルクスオーパーも日本でやるには、やはり日本バージョンになるのはやむを得ないんでしょうね。
次は金曜日のマルタですが、これはもともとおぶざけは無しですから、真面目に聞いてみたいと思います。

Posted by: どてら親父 | June 02, 2008 19:32

どてら親父さま

ブログのメンテナンスに引っかかってしまいお返事が遅れて申し訳ございません。

1日は、本当に見事でしたねぇ。それにしても、ボッカチオは三日連続で、本当に大変だったと思いますが、極端に崩れることなく、見事でした。

ブログの本編にも書きましたが、フォルクスオーパーのすごいところは、下品になる直前で止めるという演出だと思います。このバランス感覚が、ウィーン風なのでしょうかね。

ただ、「ボッカチオ」は、今回、初めて観たというお客さまが大多数だと思うので(私たちは、特殊な観客でしょうね)、拍手のタイミングを掴みかねていたのだと思います。これを言い出すと、怒られるかもしれませんが、日本には、私たちのようなオペレッタファンが少ないのかなぁ…と思うこともあります(私の周りにいたお客さまも、普通の反応でしたね)。

それから、全体で20分短縮しているため、どてら親父さまがご指摘のように、若干、内容を変更せざるを得なかったのだと思います。

何しろ、日本ではウィーンのように10時40分終演というのは、無理ですからねぇ(マチネばかりだったら、3時間バージョンも可能だったと思いますが…)。

Feriは、今回の来日公演の最終日に「マルタ」を観る予定です。「マルタ」は、オペレッタではありませんが、オペレッタ的要素の強いオペラですから、フォルクスオーパーの本領を十二分に発揮できる演目です。ぜひ、楽しんでください。予定では、日曜日と金曜日は同じキャストなので、初日のご感想をお寄せいただければ幸いです。

Posted by: Feri | June 03, 2008 12:02

Feriさま
三連投のボッカチオは大変だったでしょうね、31日のパポウルカスさんはよく声も出て舞台を引っ張っていましたが、さすがに三日目になると少しお疲れのようでした。1日は周りがよく歌っていたのでそう感じたのかもしれませんが。
しかし、終演時間を気にしながらのオペラやコンサートはつらいですね、ウィーンのように30分くらいで行ける環境がうらやましいです。私なんぞ9時半にハネたら午前様です。
31日は近くにニェゴッシュさまも居られたようですね、L1の一番遠いブロックに黒い服のスマートな方が居られたのは見ておりますが、舞台に近い方は覚えておりません。私は旧日フィルの定期や都民劇場の頃から上野は4階席専門です。

Posted by: どてら親父 | June 03, 2008 18:24

どてら親父さま

私も夜の公演では、終演後、急いで帰らないと、大変なことになってしまいます 余韻を楽しむことができないのが残念でなりません。

実は、私がウィーンでのオペレッタ、オペラ鑑賞にはまった一つの要素が、終演後に余韻を楽しむことができる…という点です。

23時前に舞台がはねても、路面電車や徒歩でホテルまで、戻ることができますし、途中で、ちょっと一杯も楽しめます。

以前は、「無言の行」状態だったのですが、最近では、ウィーン在住の音楽友達と行くこともあり、そのときは、時間があれば、終演後、音楽談義に花が咲きます。何しろ、観た直後ですから、盛り上がること。しかも、近くのカフェで話をしていると、その横をクルト・シュライブマイヤーが歩いていたり…

最高です。私のブログにお立ち寄りいただくオペレッタファンの皆様と、フォルクスオーパーoffができたら、最高に楽しいと思う今日この頃です。

どうぞ、これからも、楽しいコメントをよろしくお願いいたします。

Posted by: Feri | June 03, 2008 20:25

そうですね、Volksoper近くのCaffeでoffでも出来ればいいですね。
Feriさまの記事を読み直して、今回は招聘元の意向が働いたらしいことを遅ればせながら理解しました。
しかし・・・・ウィーンには「低俗」とか「下品」とかいう文化は無いんじゃないでしょうか。どこまで落ちても優雅さとダンディズムとユーモア(皮肉とブラックジョークも含む)を忘れない文化、私はそこが好きです。ハハハハハ
そうするとあちらの出し物の大半は、お下劣、不道徳、不健全、非教育的ということになりますね、向うでは小学生でも天井桟敷に連れて来られて喜んで見ていますのに・・・フォルクスオーパーからそれを無くしたのでは気の抜けたシャンパン以下です。フォルクスオーパーはフォルクスオーパーであって、シュターツオーパーではないとよく云われましたが・・・

Posted by: | June 04, 2008 15:42

コメントありがとうございます。

以前、現地にお住まいの日本人と話をしたとき、オーストリア人のメンタリティの違い…という話になったことがあります。

当然、「低俗」「下品」という概念もあるのでしょうが、日本とは視点が違うということだと思います。

例えば、フォルクスオーパーのバレエ「Max und Moritz」は子供向けの内容ですが、日本の親御さんが観たら、卒倒しそうな内容です。日本人から見ると、どぎつい悪戯の連続…「子供に見せたくない番組」になりそうな内容です。

で、オーストリアでは、親子が楽しく大笑いしながら見ています。まぁ、感覚の違いなのでしょうね。

まさに「文化」の違いだと思います。この「文化」の染まってしまうと、フォルクスオーパー通いが辞められなくなるんですね。

Posted by: Feri | June 04, 2008 18:24

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