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June 04, 2008

「ザ・サウンド・オブ・ミュージック」余話

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2008/2009シーズンのプログラムから外れたフォルクスオーパーのミュージカル「ザ・サウンド・オブ・ミュージック」は、6月10日に「千秋楽」を迎える予定です。Feriは、5月に都合3回目を観ましたが、その感想を含めて、今日は「ザ・サウンド・オブ・ミュージック」の話題をお届けしましょう

写真を追加しました。

○戸惑う映画との違い
Feriは、20世紀フォックス提供の名作ミュージカル映画「ザ・サウンド・オブ・ミュージック」世代(もちろん、最初の日本上演時に映画館で見たわけではありません。リバイバル上演とビデオで見た口です)なので、どうしてもフォルクスオーパーの舞台を 映画版と比べてしまいがちです。

しかし、映画版は、「編集」という都合の良い手法が使えるため、短時間での場面転換が可能で、物理的な制約が多い舞台と比較しては、気の毒でしょう。例えば、映画版では「My Favorite Things(私のお気に入り)」が、雷鳴が轟き、雷を怖がる子供たちを勇気づける歌として使われていますが、ミュージカル版では、トラップ家に向かう前にマリア自身が時分を勇気づけるために歌っています。さて、どちらが「オリジナルの演出」なのでしょうね?

この他、クライマックスシーンである修道院に逃げ込んだフォントラップファミリーが、ロルフに見つかってしまうところですが、映画版ではフォン・トラップ男爵に挑発されて、“いたぞ!”と呼子を鳴らしてリーズルを裏切る展開になっていますね。しかし、フォルクスオーパーのミュージカルでは、ロフルは“ここにはいないぞ!”と叫んで、一家をあっさり見逃してしまうようになっています。本来は、状況がさらに緊迫するところなのですが、時間節約のためとはいえ、緊張感が今ひとつですね。

という訳で、どなたか、ブロードウェイで上演されたオリジナルの「舞台版 ザ・サウンド・オブ・ミュージック」の演出をご存じでしたら、ぜひ、お話を伺いたいものです。

○実在の人物との違いは…
さて、ミュージカルも映画も、当事者である「マリアの自伝」(前半のオーストリア編)を元にした創作です。そのため、基本的なストーリー以外、大きく変更されていること(例えばトラップ男爵の人物像)、現実離れしたストーリーであること(ザルツブルクから徒歩で山越えをしてスイスに亡命するなど)などに、1959年の上演当時、本物のフォン・トラップ一家は大きなショックを受けたと言われています。

ところで、フォルクスオーパー版、映画版とも、フォン・トラップ男爵は「大佐」と呼ばれています。本物のトラップ男爵は、第一次世界大戦中に多くの戦果をあげて、そして、オーストリア海軍の潜水艦隊司令官を勤めたそうです。なお、大戦中の功績により、勲章と准男爵の爵位を得ています。で、気になる階級ですが、実際には「大佐」ではなく、「少佐」止まりだったと言われています。ちなみにミュージカルでは、艦長を意味するキャプテン (Captain)と呼ばれていることが多かったですね。ご存じの方も多いと思いますが、英語圏の軍隊では、キャプテンは少佐よりも下の階級である大尉を指します。しかし、ドイツ軍では、海軍大佐を「Kapitän zur See」と呼ぶので、問題はないのでしょう(ちなみにドイツでは海軍大尉は「Kapitänleutnant」と言うそうです)。

このほか、フォン・トラップ男爵は、ミュージカル、映画とも「規律に厳格で、横暴な人物」のように描かれていますが、本物は逆で、優しい人物だったようです。そのため、伝記がミュージカル化される際、マリアは、亡き夫が横暴に描かれるシーンにだけは納得しなかったという逸話が残っています。ちなみに、実在の人物では、マリアの方が気性が激しく、フォン・トラップ男爵がなだめる役だったとか…まぁ、お芝居(フィクション)ですからね。

ちなみに、5月にFeriが観た時には、クルト・シュライブマイヤーがフォン・トラップ男爵役で出ていましたが、なかなか、決まっていましたね。なお、当日のマリア役は、Johanna Arrouasでした。Feriが観たフォルクスオーパーの「サウンド・オブ・ミュージック」では、マルティナ・ドラークとクルト・シュライブマイヤーのペアが最高でしたね。

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○エーデルワイスはオーストリア民謡?
Feriも含む多くの日本人が誤解しているのが、かの有名な歌「エーデルワイス」(Edelweiss)でしょう。「エーデルワイスの小さな白い花を愛で、永遠に祖国を見守るように願う」というこの歌、劇中では、オーストリアの愛国歌または国民歌のように、象徴的に扱われていますが、実はロジャースとハマースタイン2世の創作曲なのですね。だから、オーストリア人にとっては、外国から来た「故郷の歌」なのですね。

ところで、前回はウィーン在住のSさんとご一緒したのですが、そのとき、「エーデルワイス」のドイツ語訳をちょっと教えていただきました。

「エーデルワイス」の中の”Bless my homeland for ever”が、ドイツ語版では、“祝福し給え”ではなく、“わが祖国を守りたまえ”と、より真に迫った言葉になっているそうです。

実は、この言葉、1938年に時のオーストリア首相Schuschniggがラジオ放送で、最後を結んだ言葉だったそうで、オーストリア人にとっては感慨深いフレーズなのでしょう。うーん、奥が深い。

○ナチスドイツは大丈夫なの?
なお、ドイツではナチスの象徴であるハーケンクロイツを掲げることは禁止されていますが、オーストリアでは平気なようで、フォルクスオーパーの「サウンド・オブ・ミュージック」でも、音楽祭の場面で、バックの巨大なハーケンクロイツが下がっていました。

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当然、ナチスの将校や、ナチスに寝返った行政官の腕にも、ハーケンクロイツの腕章が巻かれています。ドイツ人が観たら、どんな感じを持つのでしょうかね。

ところで、私が観た時、行政官役はGernot Krannerが演じていましたが、カーテンコールの際に腕に巻いていたハーケンクロイツの腕章をむしり取って、いったん舞台の上に投げ捨てていました。ただ、まずかったのか、その後、すぐに拾ってズボンのポケットに入れていました。よほどお嫌いなのでしょうね。

どうでもいい話ですが、本ミュージカルのように、ザルツブルクから徒歩で山越えをしたら、スイスではなく、ドイツに出てしまいますよね。実際のお話では、トラップファミリーは列車でスイスに脱出しています。

最後に通常、フォルクスオーパーの公演では、カーテンコールで、「アンコールの歌」を歌うことはありませんが、「サウンド・オブ・ミュージック」では、例外的に「エーデルワイス」を出演者全員で歌うという展開になっています。でも、日本だったら盛り上がるパターンなのですが、現地では「エーデルワイス」の知名度が低いためか、今ひとつ、盛り上がりに欠けているように感じています

さて、フォルクスオーパーのさ「サウンド・オブ・ミュージック」ですが、今後、改めて復活するのかどうか、興味あるところです

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Comments

もう10年位前のことですが、比較的ゆっくりしたスケジュールでのオーストリア周遊ツアーに参加したことがあります。ハイライトはザルツカンマーグート。そこでガイドさんは当然米映画「サウンド・オブ・ミュージック」の話題を盛んに取り上げました。その時の観光バスの運転手さんが現地(フシュル)の方でしたのでこの映画のことを尋ねてみました。特に現地の方達が如何感じていらっしゃるかという点に興味があったのです。すると意外や「観ていない。当地での評判は良くない」との事、理由は「脳天気である」と言う意味のことを言っておりました。なるほど傑作の呼び声高く世界中の人を楽しませてくれた名画とはいえ、現地の方達の現実的な視点から見ると荒唐無稽で受け入れがたいものだったようです。私たちもこの映画は事実を描いたものではなく、事実にヒントを得て作られたフィクションであるということを充分認識する必要があると思います。もちろんFeriさんご指摘の通りミュージカル版もそうです。
不朽の名作「第三の男」もウイーンの人達はあまり快く思っていないとか聞きました。「サウンド・オブ・ミュージック」の場合とは一寸違う理由のようですが・・・。
いずれにしても作る人と、見る人の立場によって評価のまったく変わってしまう(映画に限らず)メディアの「光と影」について考えさせられる問題ではあります。
とは言いましても「サウンド・オブ・ミュージック」が観光に果たした役割や経済効果は計り知れぬものがあり私達としてはご同慶の至りと申し上げるのが妥当でしょう。


Posted by: Unicorn(ユニコーン) | June 05, 2008 11:53

ユニコーンさま
コメントありがとうございます。確かに、「ザ・サウンド・オブ・ミュージック」の映画によってザルツブルクやオーストリアへ来訪する観光客が増えたのは、事実でしょうね。

そういう意味では、経済には寄与したと思います。ただし、地元の皆さんは、ナチスドイツを一方的な悪役にしている点も含めて、複雑な感情があるようです。また、ファミリーが地元に残らず、アメリカに行ってしまったということに、心理的な抵抗のある人もいらっしゃるようです。

Posted by: Feri | June 05, 2008 21:51

興味深いこぼれ話を書いてくださってありがとうございます、とても面白かったです!気になったのですが、シュシュニック首相のラジオ放送でのBless my homeland forever.と結んだというのは、どこかで全文を見つけたのでしょうか?今後の勉強のために、よろしければ元の記事などが見たいと思いコメントしました><

Posted by: Alice | October 22, 2015 17:52

Aliceさま、古い記事にコメントをいただき、ありがとうございます。

ご質問の件ですが、オーストリアに古くから住んでいる友人から聞いた話です。という訳で、Feriはオリジナルの出典は把握しておりません。

もし、わかりましたら、またご紹介します。

Posted by: Feri | October 23, 2015 00:20

コメント返しありがとうございます!Ferilさんのご友人から聞いた話だったのですね!はい、もし分かりましたら紹介していただけると嬉しいです!自分でも探してみます><

この記事を読んでいると、ミュージカル版のサウンドオブミュージックを観てみたくなりました^^

Posted by: Alice | October 23, 2015 10:45

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