« オーストリアの消防士さんが全国から集合! | Main | テラス席の秘密兵器 »

September 16, 2008

「ユダヤの女」(La Junive)

Img_8247_01

平素はオペレッタを中心に鑑賞予定を立てるFeriですが、どうしてもオペレッタ公演がない時などは、オペラを観ることもあります。

国立歌劇場で上演中の「ユダヤの女」ですが、当初はあまり関心がなかったプログラムでした。が、“Neil Shicoffがすばらしい”との情報が色々と入ってきたため、観ることにしました(節操のないFeri) 。実際、上演時間が長い(18時30分開演、22時終演)上に、十分な予習が間に合わなかったので“きついかなぁ”と思っていましたが、良い意味で予想を裏切る「見事な舞台」でした。

言葉は悪いかもしれませんが、Feriにとっては「拾いものの一品」でした(考えてみるとHalévyの代表作ですね)。

さて、当日の出演者ですが、指揮はMichael Halász、エルアザル役がNeil Shicoff、エルアザルの娘ラケル役がSoile Isokoski、公女エウドグシー役がJane Archibald、ブローニ枢機卿役がWalter Fink、レオポルト役がHo-yoon Chung、ルッジェロ市長役がEijjiro Kaiといった面々でした。

五幕から成る大作オペラなので、一幕終了後、三幕終了後に休憩が入るという構成になっていました。

オペラファンの皆さまでしたら、お話はご存じだと思うのですが、カトリック教徒とユダヤ教徒の確執が根底にあるので、日本人のメンタリティでは理解できないところがあるかもしれません。

Shicoff演じるユダヤ人金細工師エルアザルは、以前、異端者だと言うことでカトリック教徒に迫害を受け、息子を殺害された挙げ句、ローマから追放され、スイスに移住します。その途中、盗賊に襲われた家で赤ん坊を助けるのですが、この家は自分を追放したブローニ枢機卿の家だったという訳です。この赤ん坊がラルケで、エルアザルはブローニ枢機卿に復讐の機会を狙っている…という前段があります(ここは、オペラには出てきませんが、重要な伏線です)。

一幕はカトリック教徒が戦勝祝賀会を開催している場面が中心です。ここで、エルアザルとブローニ枢機卿が久しぶりに出会うのですが、復讐心に燃えるエルアザルは和解を断固拒否します。一方、レオポルトは妻子(公女エウドクシーが奥さん、生まれたばかりの子供を含む三人の子持ち)がいるにも関わらず、ラルケと密会しているというお話です。レオポルトは、きっと公女エウドクシーに頭が上がらないのでしょうね(スイスのマスオさん状態でしょうか)。だから、気軽につきあえる女性が欲しいのでしょう。

二幕はエルアザル家での祝宴が中心になります。ユダヤ人になりすましたレオポルトも出席しているのですが、ここで、レオポルトはユダヤ教徒ではなくカトリック教徒であることがわかります。エルアザルは悩んだ末、ラルケとの結婚を前提に、レオポルトを逃亡させようとするのですが、レオポルトは「ユダヤ人を妻にすることはできない」という身勝手なことを言い出して、家に戻ってしまいます(遊んでおいて、いざとなったら、ユダヤ人は嫌だ…ずいぶんと身勝手な男ですなぁ:Feriの感想)。

Img_8240_01

三幕は、エウドクシー公女の城での祝宴です。ここで、武勲を立てたレオポルトにエルアザルが作った金の鎖が授与されるのですが、ここにラルケが乱入し、レオポルトの素行を暴露します。この結果、ブローニ枢機卿によって、エルアザル、ラルケ、レオポルトが逮捕・収監されてしまいます(当時はキリスト教徒とユダヤ人の交際は禁止されており、違反者は死刑というすごい前提)。

四幕は獄中のお話です。エウドクシー公女がラルケを訪ねて、証言を撤回すればレオポルトは救われると、話を持ちかけます。入れ替わりにブローニ枢機卿が来て、キリスト教に入信すれば処刑を免れると話を持ちかけますが、この話を聞いてエルアザルは激怒。その際、かつて盗賊に襲われた際行方不明になったブローニ枢機卿の子供は、ユダヤ人に助けられて、生きているという話をします(ただし、今は何という名前は出しません…復讐の伏線)。エルアザルがラルケを道連れにするか悩む場面があるのですが、ここが本オペラ最大の聴き所でしょう。Shicoffが悩み抜く「育ての親」の気持ちを見事に歌い上げます。ここだけは、歌い終わった後、一時お芝居が中断し、拍手とブラヴァの嵐になりました。結局、ラルケとエルアザルだけが、処刑されることになります。

五幕は処刑の場面ですが、ラルケが処刑される直前にエルアザルが、「ラルケは、ユダヤ人ではなく、真に父親はブローニ枢機卿である」と明かして、復讐を果たします。まぁ、すごい終わり方ですが。エルアザルは怨念の固まりですね。

さて、歌手の皆さんですが、エルアザル役のNeil Shicoffは文句なし。さすがです。自分を失脚させたカトリック教徒(とくにブローニ枢機卿)に対する強い怨念と、娘ラルケに対する深い愛情を見事に表現していました。とくにラルケに接する場面では、良い味を出していましたね。

ラケル役がSoile Isokoskiはさすがに歌はうまいのですが、演技を観ているとおばさまのイメージがあります。そのため、「なぜ、このおばさまにレオポルトが惚れるのか」という変な疑問が出てきてしまいます。これは仕草などから、若い女性らしさが感じられないからかもしれません。

逆に、公女エウドグシー役のJane Archibaldは綺麗な方なので「こんな綺麗な奥さんがいるんだったら、おばさまに走らないだろう」とも思ってしまいます(こんなつまらないことを考えるのはFeriだけかもしれませんが…)。なお、Jane Archibaldは声は十分出ていて、公女らしい演技も光りましたが、コロラツゥーラが今ひとつでした。ちょっと残念。

この他、ブローニ枢機卿役のWalter Fink、レオポルト役のHo-yoon Chung、ルッジェロ市長役のEijjiro Kaiも良い味を出していました。皆さん、声がしっかり出ていたので、その点は安心して聴くことができました。この他、合唱も多く、なかなか変化に富んだ舞台でした。

演出は、キリスト教徒は白、ユダヤ人は黒という色による明確な区分をしており(衣装、舞台装置とも)、お客さまにわかりやすい演出でした。そのため、両方を渡り歩くレオポルトだけは、白の上着に黒のズボンといった服装で登場しています。

実は、当日、二箇所面白い場面がありました。一つは、二幕の祝宴に子供達が多数出てくるのですが、出てくるときに一人コケてしまいました。実は、キリスト教徒側の舞台は傾斜しているため、転びやすいのです。幸い、下まで転げ落ちなかったので、事なきを得ました

また、四幕で公女エウドクシーと入れ替わりにブローニ枢機卿が登場する場面で、ブローニ枢機卿が誤ってエウドクシーのドレスの裾を踏んでしまいました。そのため、公女エウドクシーが舞台の奥に移動できなかったのですが、幸いブローニ枢機卿が踏んでいることに気づいて、足をどけたので、ドレスが破れることはありませんでした。シリアスな場面で、ドレスの裾が破れたらオペレッタになってしまいます。

なお、Neil Shicoffも楽屋口の守衛所で、一人ひとりのファンにサインをしていたようです。

|

« オーストリアの消防士さんが全国から集合! | Main | テラス席の秘密兵器 »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




« オーストリアの消防士さんが全国から集合! | Main | テラス席の秘密兵器 »