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October 23, 2008

番外編 日伊合作映画「蝶々夫人」

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日本人におなじみのオペラに「マダム・バタフライ」がありますね。しかし、どこのオペラ座で上演されても、日本人から観ると???という演出です。しかも、本来は10台少女である蝶々さんを、存在感抜群の堂々たるソプラノ歌手が演じるケースが多いので、余計日本人には納得がいかないのだと思います

ところで、「マダム・バタフライ」のタイトルロールは、「ソプラノ泣かせ」としても知られています。というのは、ご存じのように、出番が多く、かつオペラの後半に、感情豊かに歌う場面があるため、体力がないとお話になりません(後半、声が出なくなってしまいます)。そのため、設定は重々承知の上で、堂々たる体格の方が起用されているようです。なにしろ、オペラでタイトルロールのソプラノ歌手が、上手でなかったら話になりませんからねぇ

また、演出に日本人が関わっているケースが少ないためか、日本人役出演者の仕草や舞台装置も疑問符が付くケースが多く、日本人には引っかかってしまうケースがありますね。冒頭の写真は、国立歌劇場の「マダム・バタフライ」ですが、舞台装置は比較的「まとも」です。が、出演者の方は…やむを得ないでしょう。

ところで、皆さんは「映画 蝶々夫人」をご存じでしょうか。実は、日本文化の描かれ方に業を煮やした日本映画界が、イタリアと協同で制作した画期的な「映画」です。

作品は、日本の東宝が、イタリアのリッツォーリ・フィルムおよびガローネ・プロと協同で製作したもので、撮影は1954年10月から3ヵ月、ローマのチネチッタで行われたそうです。

脚本は、伊映画界の古参カルミネ・ガローネ氏と、東宝製作本部長森岩雄氏が共同で執筆し、ガローネ氏が監督を務めました。撮影はクロード・ルノアール氏、美術は三林亮太郎氏が担当し、メークアップ、結髪、衣裳等には日本側のスタッフが参加しています。すさまじいのは、戦後の復興がやっと軌道に乗った時期にもかかわらず、日本文化を正しく伝えるという崇高な使命感から、日本家屋のセットはすべて日本から運び込み、現地チネチッタで、イタリアに渡った東宝の日本人スタッフの手により、組み立てられたそうです。作品は、テクニカラー、そうカラー映画なのですよ

さて、出演者ですが、蝶々さんが八千草薫(当時、宝塚歌劇団に所属していました。ヒロイン像にふさわしい「日本人女性の象徴」としてのキャスティングだそうです)、ピンカートンがNicola Filacuridi( ニコラ・フィラクリディ)、すずきが田中路子、シャープレスがFerdinando Lidonni (フェルディナンド・リドンニ)、やまどりが中村 哲となっています。さらに脇を固める女性陣には宝塚歌劇の団員が参加しています。ただ、歌手ではない方も多いので、歌はオペラ歌手のオリエッタ・モスクッチィ、ジュゼッペ・カンポーラ、アンナ・マリア・カナーリなどが受け持ったそうです。

また、演奏はローマ歌劇場交響楽団が務めたという記録があります。実際にご覧になった方のお話では、時代考証がしっかりしており、日本文化を正しく伝えるすばらしい作品だそうです。

しかし、この映画、なぜかビデオやDVDなどになっていないため、簡単に観ることができません (おそらく合作映画である上に、役者と歌手の両方がかかわっているため、各種の権利調整が大変なのだと思います)。ただ、東京国立近代美術館フィルムセンターには、オリジナルのフィルムが保管されており、ごくまれに上演される機会があるようです。過去、日本の新国立劇場の舞台装置を保管してある新国立劇場舞台芸術センター資料館(千葉県銚子市)で上演されたこともあるようです。

実は、Feriはまだ観る機会に恵まれていないのですが、たまたま、ウィーン在住の方から、雑談中に“八千草薫さんが出ている蝶々夫人の映画があるらしいよ”というお話を聴き、調べた結果が「今日の記事」です。それにしても、このような名作オペラ映画を埋もれさせてしまうのは、もったいないですね

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Comments

日伊合作の「蝶々夫人」私は観ております。(年が知れますね)実に昔のことなので殆ど忘れましたが、何か中途半端な印象が残っております。オペラを映画に作り変えるのはとても難しいことだと思います。
98年11月ウイーンで佐藤しのぶさんの「蝶々夫人」を観ました。一晩限りの出演でした。彼女はウイーンではミカエラ(カルメン)を演じたことはありますが主役は初めてだったと思います。(間違ってたらごめんなさい)日本人としては出演者の演技に違和感を多々感じる演目ですが、さすがに佐藤さんの演技は小さな所作の一つ一つに紅毛碧眼族には真似できない優雅さがあり魅了されました。因みに当夜の指揮者は準メルクルさんでした。彼の人気の出始めた頃でした。

Posted by: Unicorn(ユニコーン) | October 23, 2008 11:23

ユニコーンさま コメントありがとうございます。

確かにオペラを映画にするのは難しいですようですね。

ところで、私は現地で日本人ソプラノが蝶々さんを演じた舞台を観たことがありません。

今年の夏にシュタイヤーで中嶋さんが出ていたので観たかったのですが、スケジュールが合いませんでした。

Posted by: Feri | October 23, 2008 12:35

たまたまオペラ映画の話題を載せたところ、面白い情報が入ってきました。

今、ウィーンではアンナ・ネトレプコとローランド・ヴィラソン主演の「ラ・ボエーム」の映画が話題を呼んでいるそうです。
ちなみに監督はルーマニア出身でオーストリアに帰化したドルンヘルム氏だそうです。どんな仕上がりなのでしょうか、気になりますね。

Posted by: Feri | October 24, 2008 09:38

Aristotleさま、DVD発売の情報、ありがとうございます。
待っていたファンも多いことでしょう。

Posted by: Feri | August 29, 2010 23:12

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