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October 24, 2008

番外編 ウィーン国立歌劇場来日公演「コシ・ファン・トゥッテ」

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さて、いよいよウィーン国立歌劇場来日公演が始まりました。初っぱなの公演は、定番モーツァルトの「コシ・ファン・トゥッテ」です。

ところで、来日公演のキャッチコピーは、「皇帝ムーティー(いつから皇帝:カイザーになったのでしょうねぇ)の指揮とドリーム・キャスト」…気後れしそうです。

Feriは、同じ料金で比較的良い席が確保できそうな23日のマチネを選びました。平日の午後ということで、男性のお客さまが少ないのではないか…と思っていましたが、さにあらず。逆にいつもの公演よりも男性の割合が多いような気がしました。

当日のキャストですが、指揮は、“皇帝”リッカルド・ムーティー、フィオルディリージ役がバルバラ・フリットリ(Barbara Frittoli)、ドラベッラ役がアンゲリカ・キルヒシュラーガー(Angelika Kircheschlager Feriが好きな歌手の一人ですが、最近ご無沙汰でした)、グリエルモ役がイルデブランド・ダルカンジェロ(Ildebrando D’Arcangelo)、フェッランド役がミヒャエル・シャーデ(Micael Schade)、デスピーナ役がラウラ・タトゥレスク(Laura Tatulescu)、ドン・アルフォンソ役がナターレ・デ・カローリス(Natale De Carolis)でした(21日の初日と一緒ですね)。

今回上演される「コシ・ファン・トゥッテ」は、ロベルト・デ・シモーネの演出によるもので、現地、ウィーンでも評判が良かったとか。残念ながら、Feriは現地では観ておりませんので、現地との比較ができないのが残念です。

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ところで、「コシ・ファン・トゥッテ」(正式なタイトルは「Così fan tutte, ossia La scuola degli amanti」 女は皆こうしたもの…オペレッタみたいな中身ですね)は、オペラ・ブッファですから、オペレッタのような喜劇的な内容なので、楽しみにしておりました。

ところで、「コシ・ファン・トゥッテ」が初演された19世紀は、“内容が不道徳である”として評価が低かったようです(本当かどうかは知りませんが、ベートーベンが“軽薄だ”と言ったとか)。まぁ、確かにシリアスで、お上品な作品ではありませんが、人間の本質を突いた作品出あることには違いありません。

さて、東京文化会館とは言え、さすがウィーン国立歌劇場、オーケストラはモーツァルトの「こぶし」を十二分に堪能させてくれる見事なものでした。当たり前かもしれませんが、バイエルン国立歌劇場のモーツァルトとは、明らかに一線を画す仕上がりですね。ただ、以前、フォルクスオーパー来日公演でも書きましたが、東京文化会館は残響特性が特殊なようで(特にオーケストラピットを使ったオペラの場合)、現地のような響きは感じられませんでした。このような会場によるハンデキャップを抱えながら、観客を魅了する演奏をするのは、大変でしょうね。

指揮のムーティですが、今回は、日本のファンがお好きな情熱的な指揮ぶりではなく、比較的淡々とした流れるような指揮ぶりでした。これは「コシ・ファン・トゥッテ」が比較的同じような調子の曲が続くためだと思われます。それでも、最後に出演者全員が、歌い上げる場面ではムーティらしいダイナミックな指揮ぶりを観ることができました。

実は、ムーティがウィーン国立歌劇場と一緒に来日するのは、今回が初めてだそうですが、さすがにツボを押さえた指揮ぶりは見事です(オーケストラを信頼して任せている感じが伝わってきました)。

ご存知の方も多いと思いますが、「コシ・ファン・トゥッテ」は、全体を通じて二重唱から六重唱まで、様々な組み合わせで作られたアンサンブルで進行します。いわゆる名アリアは、一幕と二幕に各一曲ずつあるフィオルディリージが歌うものだけです。アンサンブルが中心となっているだけに、出演者6名のバランスが大切な作品です。今回、起用された6名ですが、なかなか見事なキャスティングでした。

まず、全員の息が良く合っており、安心して聴くことができました。また、皆さん歌だけではなく、お芝居も上手でしたね。フィオルディリージ役のバルバラ・フリットリは、イタリア人歌手らしい見事な演技でした。ただ、私が観た時は数少ない二幕のアリアで、コロラトゥーラが今ひとつだったように感じましたね(実は、フィオルディリージ役のアリア部分は、意外と難しいようです)。

ドラベッラ役を演じた アンゲリカ・キルヒシュラーガーは、今回のようなコミカルな役からシリアスな役までこなすことのできる器用な歌手であることを、改めて実感しました。ところで、キルヒシュラーガーは、おでこにシワが出やすい方なので、時々、結構老けて見える場合がありますね(もう、ベテランですからねぇ )。

意外と言っては失礼ですが、良かったのがデスピーナ役を演じたラウラ・タオゥレスクでした。一幕では医者に、二幕では公証人にそれぞれ変奏して出てくるのですが、小柄な方なので、このコミカルな役がぴたりとはまるのですね。もちろん、声も良く出ていました(今シーズン、現地では「ラ・ボエーム」のミミ役で出ているようですが、かわいらしいので似合いそうです)。

イルデブランド・ダルカンジェロミヒャエル・シャーデナターレ・デ・カローリスの男性歌手陣については、歌はもちろんのこと、お芝居が上手でしたね。軍人役のイルデブランド・ダルカンジェロとナターレ・デ・カローリスは、イタリア人らしい演技で、役にぴったりとはまっていました。

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さて、舞台装置に関しては、当時のナポリの雰囲気を良く醸し出していました。特に、背景画が意外とリアルで、良かったですね。舞台装置そのものは、円弧状の衝立を上手に回転させ、場面転換を図るという仕組みでした。最近は抽象的な(というか訳のわからない)舞台装置が多いだけに、これはなかなか良かったですね。このほか、国立歌劇場の演目としては、舞台小振りなので、東京文化会館でも、十分現地の舞台を再現できたという点も大きいでしょう。そいういう意味で、良い演目を持ってきたのかもしれません。

Feriは、どちらかと言うとイタリア・オペラの方が好みなので、モーツァルトはウィーンでもあまり観ません。しかし、今度、機会があれば、ぜひ、現地で「コシ・ファン・トゥッテ」を観て、比べてみたいと思っています。

全体的には、良い意味で「そつなくまとめた舞台」という印象を受けました。とは言っても、安定したレベルで上演するというのは、一件簡単なようで、実は難しいのですけれどもね。

それにしても、お話の内容は、正にオペレッタ的な内容。それを見事な曲で、至高の芸術にしてしまうのですから、モーツァルトはすごい作曲家ですね

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Comments

こんにちは、イタリア在住です。
とてもよいレポートでした。観に行きたくても行かれない人もこんなレポートを読むと行った気分になれていいと思います。私、オペラ大好きなんですが、今はあまり通える状況ではないのでこういうレポートを読めるのは嬉しいです。また遊びに来ますね。

Posted by: Omuro | October 24, 2008 16:25

Omuroさま、イタリアからお越し頂き、ありがとうございます。

どうぞ、これからもお気軽にお立ち寄り下さい。オーストリアとイタリアは隣組ですしね

また、私もイタリア・オペラは大好きです。来週のグルベローヴァ主演「ロベルト・デヴェリュー」が楽しみです。

Posted by: Feri | October 24, 2008 22:42

Feriさん、ご無沙汰しています。saraiです。
ウィーンの来日公演は行かないつもりでしたが、コシのキャストが魅力的過ぎて、ついその気になりましたが、遅かったので、席は1階席の最後列で、昨日の最後のコシの公演を見てきました。
期待通りのウィーンのレベルを保ったほぼパーフェクトな公演でした。何がいいって、オケの自由自在の表現がモーツァルトにぴったりで、これぞ、コシ・ファン・トゥッテって感じですね。
もちろん、歌手のアンサンブルとオケのバランスが絶妙。
特に初めて聴いたフリットリが期待通りの出来で1,2幕のアリアにはうっとりと聴きほれてしまいました。是非、イタリアオペラを聴いてみたいものです。来年来日するミラノ・スカラ座で聴けるようですね。
あと、もちろん、キルヒシュラーガーはチャーミングでよかったですね。saraiもファンです。
最後にムーティの健在ぶりもうれしいことです。確かに力の抜けた指揮ぶりで、オケとの息もぴったりでした。さすがです。
このオペラはルチアとか、薔薇の騎士のような感動はありませんが、大人の音楽の楽しみに満ちており、大満足のうち、帰路に着きました。
では、また、お邪魔します。

Posted by: sarai | October 28, 2008 12:29

saraiさま、こんにちは。コメントありがとうございます。

私もムーティと国立歌劇場のコンビは初めてだったのですが、オケの力を上手に活かしていた点が印象的でした。日本ではムーティというと、どちらかというと力の入った指揮ぶりが印象的ですが、こういった指揮も魅力的ですね。

Posted by: Feri | October 28, 2008 17:12

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