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November 01, 2008

番外編 ウィーン国立歌劇場来日公演「ロベルト・デヴェリュー」

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ウィーン国立歌劇場来日公演、3演目目は、「ベルカントの女王」グルベローヴァ主演の「ロベルト・デヴェリュー」です 。エリザベッタ役に高度な歌唱力が要求されるため、現地でもあまり上演されない演目です。従って、今回、初めてご覧になったというお客さまも多かったと思います。グルベローヴァの実力を遺憾なく発揮できる演目なのですが、馴染みがないためか、チケットの売れ行きが思わしくなかったのが残念です。

最もFeriも、現地で観るまでは、どんなお話かも知りませんでした(ちなみに、「ロベルト・デヴェリュー」は今までウィーンで4回、ミュンヘンで1回、いずれもグルベローヴァ主演で見ております。好きですねぇ )。

また、もう一つ、マイナス要素が「コンサート形式」による上演であったことでしょう。馴染みがない演目に加えて、コンサート形式ということで、足が遠のいてしまったオペラファンもいらっしゃるかもしれません。本当に、残念です。

ところで、なぜ、コンサート形式にせざるを得なかったのかは、現地の舞台をご覧になった方ならばすぐにわかると思います。

というのは、ウィーン国立歌劇場で上演されていた「ロベルト・デヴェリュー」は、同劇場の舞台を存分に活かした巨大な舞台装置が特徴なのです。第一幕と第二幕は、宮殿の内部という想定で、天井まで届く宮殿の構造物(オブジェ風ですが)が設置されており、その中を実際に人が左右に移動するようになっていました。

また、等身大の人形(口の悪い人は、蝋人形と表現していましたが)なども設置されており、なかなか印象深い舞台装置でした(ただ、評判は良くなかったようです)。

そして、第三幕、エリザベッタが処刑したロベルト・デヴェリューに思いをはせる場面が、最大の山場なのですが、ここで巨大な亡霊が突然、奈落から上がってきます(アクリル製のような感じです。もちろん、ロベルトの亡霊らしいので、首から上はありません。最初に見たときは、虫かと見間違えました )。これらの巨大な舞台装置に日本の劇場が対応できないため、コンサート形式になった模様です。ちなみに、現地の舞台のフィナーレは、下の写真のような感じです。ちなみに、巨大な亡霊の前で、悲しみにうちひしがれているのが、グルベローヴァ扮するエリザベッタです。すごく、ドラマチックなエンディングでしたね。

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事実、招聘が発表された際には、「東京(会場未定)」となっており、招聘サイドでも、この舞台装置が再現できる劇場を探したものと思われます。仮に再現したとしても、ダウンサイジングは必要になるのですが、舞台装置付きでなかったことが、悔やまれてなりません。もし、舞台装置つきで上演されたならば、お客さまの印象もずいぶん違ったと思います。

コンサート形式なので、オーケストラピットは使用せず、舞台後方に合唱団、その前にオーケストラ、そして、歌手陣は最前列で歌うというスタイルでした。

また、今回は、第一幕と第二幕が連続して上演され(上演時間1時間30分)、その後、休憩、第三幕(40分)という方式でした。通常よりも上演時間が短いのは、コンサート形式で、舞台装置の移動や人の動きが少ないためだからでしょう。ところで、当初は、2回休憩を含む、総演奏時間3時間で計画されていたようです(NBSのリーフレットのは、このように記述されていました)。恐らく、実際に練習して、一幕と二幕を通して上演できるという判断が働いたのでしょう。

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さて、初演となった31日のキャストですが、指揮は、フリードリツヒ・ハイター(Friedrich Haider)、エリザベッタ役がエディタ・クルベローヴァ(Edita Gruberova)、ノッティンガム公爵役がロベルト・フロンクーリ(Roberto Frontali)、サラ役がナディア・クラステヴァ(Nadia Krasteva)、ロベルト・デヴェリュー役がホセ・ブロス(Jose Bros)、セシル卿役がペーター・イェロシッツ(Peter Jelosits)、グアルティエロ・ローリ卿役が甲斐栄次郎(Eijiro Kai)、執事役が伊地知宏幸(Hiroyuki Ijichi)、ノッティンガム公爵の親友役がマリオ・スチッラー(Mario Steller)という面々でした。

出番は少ないながらも、日本人歌手が二人登場したのは、嬉しい限りです。

「ロベルト・デヴェリュー」は、序曲でイギリス国歌「God save the queen」の一部が演奏されるので、一度聴くと忘れられません。

オペラがコンサート形式で上演される場合、プロンプターを置かないため、万が一に備えて歌手用にも譜面を準備するのが一般的です(これは、現地の公演でも同じです)。しかし、今回の出演者は、万全の準備をしてきたようで、譜面は一切準備されていませんでした。

歌手陣では、タイトルロールのロベルト・デヴェリュー役ホセ・ブロスは、このところグルベローヴァとの競演が多く、Feriも2007年9月の「清教徒」のアルトゥーロ役でも観ています。

また、ノッティンガム公爵役のロベルト・フロンクーリと、サラ役のナディア・クラステヴァは、2005/2006シーズンに現地で上演された「ロベルト・デヴェリュー」で、いずれも同じ役を担当しています。このように見ると、グルベローヴァと「あうんの呼吸」で歌うことができる歌手が起用されていることがわかります。実際、皆さん、安定した歌い振りで、安心して見ることができました。

コンサート形式でしたが、グルベローヴァやクラスでヴァ、ブロス、フロンクーリなどは、ちゃんと演技もしており、服装がコンサート用だったのが逆に違和感を感じるほどでした。特にグルベローヴァの演技は、例によって真に迫るものがあり、完全に役に入りきっていましたね。ちなみに下の写真は、現地のカーテンコールの模様ですが、こんな衣装でやっています。日本でも、せめてホールオペラのように、舞台装置はなくとも衣装付きでできなかったものでしょうかねぇ。これだけでもずいぶん雰囲気が違うと思うのですが

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「ロベルト・デヴェリュー」の場合、第三幕の最後にエリザベッタの「聴かせどころ」が残っているため、極めて印象深い舞台になります(歌手にとっては、最後に聴かせる場面があるのは、ものすごい負担だと思いますが)。

ロベルトの刑執行を知り、絶望に打ちひしがれてエリザベッタが歌う「裏切り者よ、彼女のそばで生きればよいのです(女王の涙)」から「あの流された血は」は、エリザベッタの苦悩と絶望が表現するため、高い表現力と高度なテクニックが求められます。当日のグルベローヴァは、熟達した演技で、お客さまを魅了していましたね。

惜しかったのは、コンサート形式故に、エリザベッタの苦悩をドラマチックに演じることができなかったことでしょうか。と言うのは、現地では、ここで亡霊のオブジェがバックにそそり立ち、最後にエリザベッタは髪の毛をむしり取り、床に投げつけて幕になるという、印象深い演出になっているのです。もちろん、31日の演技も、すばらしかったのですが、舞台が明るい分、何となく妙な印象を受けてしまいました。

さて、今回、一つ注目していたのが、舞台に上がったオーケストラの演奏が、オーケストラピットの時とは、どのくらい違うか…という点です。

実際、オーケストラピットよりは響いていましたが、残念ながら現地のウィーン国立歌劇場で聴くのとでは、響きに大きな開きがあることを改めて実感しました。このあたりは、多目的ホールの限界なのかもしれません。オーケストラメンバーも、実際はもっと良い音を届けることができることを知っているだけに、さぞや残念なことでしょう。

と言うわけで、グルベローヴァの為の「ロベルト・デヴェリュー」でしたので、カーテンコールは、すさまじいものがありました。

毎回感じますが、失礼ながら、このお歳で、これだけの声量と仮称技術を維持していることには、驚かされます。
ただ、現地だと、揃ってカーテンコールに応えた後、グルベローヴァ一人を引っ張り出すために、熱心なファンの拍手(実際は、途中から手拍子状態になるのですが)が鳴り止まないのですが、昨日は、なぜか、全員のカーテンコールが終わったところで、お客さまの拍手を辞めてしまい、一斉に帰りはじめてしまいました。

ちょっと拍子抜け…といった感じを受けましたね

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Comments

初めましてFeriさん、Claraと申します。いつも楽しく拝見しております。31日の公演レポート、ありがとうございました!!今回のウィーン国立歌劇場来日公演、とても楽しみにしていたのです。やっとグルベ様の生歌が聴ける☆と!私はオペラを好きになってまだ1年なのですが、その好きになったきっかけがグルベ様を聴いたからなのです。まずは夜の女王、高音がまるで鈴を鳴らしているようでこれでも人間の声か?!と思ってびっくりしました。それまで歌には全く興味が無かったのですが、一気に火がつきました。次にアデーレ、・・・夜の女王とのあまりのギャップに少し時間がかかりました(あ、夜の女王って、・・人間だったのね、みたいな、、→でも今はアデーレが一番好きなキャラです!!この時の演技は本当に笑えます)。そしてジルダ、最初はいくらポネルの演出でもあの髪型はさすがにどうかな、とも思ったものですが、Caro nomeのカデンツァを聴いたらもうそんなのどうでもよくなってしまって、あのフルートのような、それでいて甘美な歌声にもうとろけそうになりました。極めつけは、ドンナ・アンナです。Non mi dirのあのピアニッシッモ!!息もできないほど聞き入りました。もうこの時点ですでに他の歌手は受け付けなくなっていました。グルベ様はこれまで何度か来日されていたようですが、もっと早くグルベ様を知っていたら絶対に行っていたのにと思うと悔しくて・・・。そんなこともあり、31日の公演は、もの凄く期待していた(むしろ半年以上も前からこの日のために全てを賭けていたという方が現実に近いです)のですが、本当に、本当に凄かったです。行って良かったです、感動しました、泣きました、幸せでした!!
Feriさんは頻繁にグルベ様の公演をご覧になっていらっしゃるようで本当に羨ましいです。
ところで、31日の公演には、小泉元総理もいらっしゃっていましたね。終始上機嫌で、ぴょんぴょん跳ねていらっしゃったように見えました。
あと、パンフレットに「KS Edita Gruberova」となっています。少し調べたところ、この「KS」とは宮廷歌手のことを意味するらしいのですが、Gruberovaがいつ宮廷歌手になったのかご存じでしょうか?また、この宮廷歌手はどのような方がなれるのでしょうか?さらにGruberovaはウィーン国立歌劇場名誉会員でもあるとのことですが、この名誉会員というのもどのような方がなれるのかご存じでしたら教えていただけないでしょうか?

Posted by: Clara | November 02, 2008 21:24

Claraさま、コメント、ありがとうございます。
正直、グルベローヴァさんの「生オペラ」に間に合って良かったですね。

私もオペラを観だしたのが遅いので、正直、初来日時のツェルビネッタ(ベーム指揮)を観ることができなかったのが、残念でなりません。

さすがに、グルベローヴァさんの若い頃をご覧になっている方からすると、声の艶は薄れているそうですが、それをテクニックでカバーできるところが、すごいの一言です。

なお、ご存知かもしれませんが、以前、ご本人が60歳を過ぎたら、オペラには出ない旨の発言をしています。すでに、このラインを越えていますので、いつ、オペラから降板してもおかしくない状況です。とくにグルベローヴァさんは完璧主義なので、自分で満足できる(高いレベルで)歌を歌えなくなったら、オファーが入っていても、さっさと下りてしまうと思います。

それだけに「今のうちに観ておく」ことが大切かと思います。

ぜひ、本場ウィーン(バイエルン国立歌劇場も良いですが、近代演出なので、好みが分かれますね)で、観ることをお勧めします。全く違う次元の感動を味わうことができます。

なお、ご質問の件は、後日、ブログでご紹介することにしましょう。

なお、本日、ウィーン・クラシックスのコンサートがサントリーホールで行われましたが、グルベローヴァさんとハイダーさんのご夫婦がプライベートでいらっしゃっていました。

Posted by: Feri | November 02, 2008 23:41

Feri様、コメントありがとうございます。「今のうちに観ておく」ことが大切・・・、ですよね!!
正直、私も、グルベ様のことだから自分で満足できなくなったら引退してしまうのではないか、もしかしたらこれが最後の来日公演になってしまうのではないか、と危機感を覚え、焦って11月8日の公演のチケットと、新潟および大阪のリサイタルのチケットも買ったのです!ほとんど清水の舞台から飛び降りる気持ちだったのですが、無理してでも買って良かったと思います。あのご年齢ですから、本当に歌えるの?!と初日はかなり心配だったのですが、あの高音の美声を聴いたら一気に不安は吹き飛びました。
私はまだ海外のオペラハウスへは一度も行ったことがないので、絶対に行きたいと思っています。バイエルンなら7月の「ノルマ」か「ルクレツィア・ボルジア」、ウィーンなら「ルチア」か「清教徒」あたりを狙っていますが有給休暇取れるかどうか・・。流石にヨーロッパとなると、4日くらい休みがないときついですよね・・?(また上司に白い目で見られそう・・・)。

Posted by: Clara | November 03, 2008 09:27

Claraさま

また、グルベローヴァさんの魅力に「はまった方」が増えて、嬉しい限りです

過去の鑑賞記録は、バックナンバーにありますので、探してみて下さい。海外鑑賞のご参考になるかもしれません。

私としては、グルベローヴァさんの演技力が光る「ルチア」(グルベローヴァさん迫真の「狂乱の場」を観ることができます)をお勧めします。

ところで、ウィーン国立歌劇場では、終演後、楽屋口で待っていると、かなりの高確率でサインをもらえます。また、余り公にはできませんが、あちらでは、歌手本人の了解を得れば、楽屋口で写真撮影もOKです。とくにグルベローヴァさんはファンを大切にする大歌手なので、終演後、特別な事情(公式パーティーがあるとか)がある場合をのぞいて、ファン一人ひとりにサインをしてくれます。このような姿に接すると、またまたファンになってしまうのですよ。

Posted by: Feri | November 03, 2008 23:05

初めまして。
11/8のロベルト・デヴェリューで、初めて生のグルベローヴァを聴きました。感激してしまいました。
コンサート形式での鑑賞も初めてだったのですが、こんなに迫力があるんですね。これもグルベローヴァだからでしょうか。

Feriさんは本場ウィーンでこの演目をご覧になっていらっしゃるんですね。羨ましい限りです。
舞台装置の詳細や、衣装のお写真など、とても興味深く拝見しました。
コンサート形式は音楽に集中できるのが長所ですが、出演者の方々みなさん迫真の演技でとても緊迫感がありましたから、これを通常の演出付きで鑑賞したらどんなに素晴らしいでしょう。

自分のブログで今回の感想を書いたのですが、ウィーンでの舞台の様子の参考に、こちらの記事にリンクをさせていただきました。事後報告で申し訳ありません。問題等ありましたら仰ってくださいませ。

Posted by: しま | November 09, 2008 03:10

しま様、コメントありがとうございます。

11月8日は、千秋楽でしたから、盛り上がりましたね。
たしかにコンサート形式は歌と演奏に集中できるというメリットはありますが、オペラはお芝居の部分も、また魅力的なところもありますから、難しいところですね。

ちなみに現地ウィーンでは「ロベルト・デヴェリュー」はしばらく上演されていません。バイエルン国立歌劇場では上演されているのですが、こちらは近代演出(エリザベッタが英国大企業の社長)なので、今ひとつ好きになれません。

グルベローヴァがオペラにフル出場しているうちに、ぜひ、一度、現地でご覧になることをお勧めします(ベルにグルベローヴァの回し者ではありませんが)。私も、現地で観なければ、ここまでグルベローヴァのファンにはならなかったかもしれません

Posted by: Feri | November 09, 2008 08:39

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