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December 21, 2008

速報 「愉快なニーベルンゲン」プルミエ・レポート

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12月恒例のフォルクスオーパーのプルミエですが、今年はオスカー・シュトラウスのオペレッタ「愉快なニーベルンゲン」(Die lustigen Nibelungen)が取り上げられました。

このオペレッタですが、最近では、ほとんど上演されない「珍品」の部類ですが、ちゃんとダイジェスト版のCDは販売していました。12月にプルミエは、毎回参上している好き者Feriとしては、見逃すわけにはいきません。

しかも、今回はロベルト・マイヤー自身が演出を担当しています。そのため、事前にかなりPRをしていました(下の写真は、フォルクスオーパー屋上の特設広告です)。また、異例のことがもう一つ。開演前、エントランスでグリュヴァインなどを無料で振る舞っていたのです

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さて、本作品ですが、オスカー・シュトラウス初期の作品で、表題からもわかる通り、ワーグナー超大作「ニーベルングの指輪」のパロテイなのですよ(三幕構成)。

なぜ、今年、これが取り上げられたのか。そう、当ブログをご覧の皆さまならば、すぐにわかる通り、2008/2009シーズン、国立歌劇場では大々的に「ニーベルングの指輪」4部作が上演されます(DIE RING-ZYKLEN DER SAISON 2008/2009)。これへの「当てつけ」であることは言うまでもありません。

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やるねぇ。ロベルト・マイヤー。実際、音楽的には高い評価が得られていないオペレッタなのですが、「ニーベルングの指輪」の上演に引っかけると、おもしろさ倍増です(何しろ、一部のモチーフをオリジナルから引用していますので…)。

実際、CDで事前に曲を聴き込んでいたのですが、メロディー・ラインは、なぜかカール・ミレッカーの名作「乞食学生」に似ています。また、レハールやカールマンのように変化に富んだ曲が使われておらず、同じような感じの曲(実際に同じ曲も多いのですが)が多用されています。その関係で、お芝居の部分が比較的多いのですが、単純なお話なので、「あらすじ」さえ頭にいれておけば、十分楽しめます。

さて、結論から申し上げると、最近のフォルクスオーパーのオペレッタでは、いわゆる定番をのぞけば「最高の仕上がり」と言って良いでしょう 。これは、キャスティングと演出の勝利と言えます。

さて、プルミエですが、指揮はAndreas Schüllerが務めました(今シーズンは「トスカ」や「マックスとモーリッツ」などを振っています)。キャストは、グンター(Gunther、国王、バリトン)役がMichael Kraus、ウーテ(Ute、グンターの母、アルト)役がRegula Rosin、ダンクヴァルト(Dankwart、グンターの父、バス)役がKurt Schreibmayer(待っていました。Feriの好きな歌手です)、フォルカー(Volker、王子、あだ名は「英雄」、テノール)役はKarl-Michael Ebner、キゼルハー(Giselher、王子、あだ名「巨人」、ソプラノ)役はMartina Dorak(こちらも「メリーウィドウ」に続いての登板。本演目では彼女としては珍しい「ズボン役」です)、クリームヒルト(Kriemhild、王女、あだ名「小令嬢」、ソプラノ)役はRenée Schüttengruber、ハーゲン(Hagen、叔父、あだ名「残忍ハーゲン」、バス)役はLars Woldt、ジークフリート(Sigfried、ネデルランドの英雄、あだ名「龍殺し」、テノール)役はRobert Wörle、ブリュンヒルデ(Brunhild、アイスランドの女王、ソプラノ)役はBirgid Steinberger、小鳥(Ein Vogel、ソプラノ)役はJohanna Arrouas(「彼の地から来た従兄弟」のハイファン役)、若い二匹の竜テイッツエル(Tizel)役とタッツェル(Tatzel)役はKellyとJosephine(ともにフォルクスオーパー初出演)でした。

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さて、お話の詳細は、後日お届けしますが、国王グンターとアイスランドの女王ブリュンヒルデの決闘に助太刀としてやってきた「竜殺しの英雄」ジークフリートを中心に物語は展開します。ただし、オペレッタのをジークフリートは、腕力に長けているだけでなく、「ラインの黄金」を銀行に預けて運用しているトレーダーなのです。

ジークフリートの助太刀で、グンターはブリュンヒルデとの結婚に勝利しますが、その後、ちょっとした行き違いから、グンターとジークフリートが決闘をする羽目になります。本来ならば圧倒的な実力があるジークフリートが勝つのですが、唯一のウィークポイントをついて、グンターが勝利してしまいます。

その後、ジークフリートの資産を狙って王一族が、彼の殺害を計画します(ということは、この国は財政破綻寸前なのでしょうかね)。しかし、株の大暴落で資産は目減り。ジークフリートを殺害すると、もっと株価が下がることから、皆さん和解してハッピーエンドになるというものです。

おデブで、一見英雄に見えないジークフリートですが、最後はブリュンヒルデとクリームヒルトとう美女を両脇に抱えて嬉しそうでした

さて、Feriの独断と偏見による本オペレッタのポイントは以下の通りです。

○実力派歌役者の登用
ワーグナー作品のパロディですから、歌唱力のある歌手が出てこなかったら、面白くありません(曲の感じは違いますが、ワーグナー作品を連想させる歌いぶりが大切)。その点、今回のキャスティングは見事でした。

まず、ジークフリート役のRobert Wörleは、なかなか見事な体格の歌手(たとえは悪いですが、お相撲さんのような感じ。ワーグナー歌手ともちょっと違う雰囲気)で、迫力ある歌を披露してくれました。

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ちなみにRobert Wörleは、その体型から、どう考えても「竜殺しの英雄」には見えません。そのため、クリームヒルトが一目惚れするという設定が、実はジークフリートが持っている「ラインの黄金」を目当てにしているのでは…すぐに観客にわかるようになっています。キャスティングの妙ですね。

ブリュンヒルデ役のBirgid Steinbergerは、Robert Wörleとは対照的に細身の歌手ですが、しっかりと声が出ていました。また、戦に強い勝ち気な女性の演技は上手ですね。

また、「愉快なニーベルンゲン」は、グンター一家による合唱が比較的多いという特徴があります。今回、グンター一家7名には歌唱力のある歌手(単独でも十分役を演じられる歌手の皆さん)が起用されていたので、迫力ある合唱や重唱を楽しむことができました。

とくに良かったのはクリームヒルト役のRenée Schüttengruber、ハーゲン役のLars Woldtでしょうかね。もちろん、おなじみのKurt Schreibmayer、Martina Dorakなどは、お芝居も含めて、安心して観ることができました。Martina Dorakの「ズボン役」は初めて見ましたが、なかなかかわいらしい感じですね。

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さて、フォルクスオーパー初登場となった、テイッツエル役とタッツェル役のKellyとJosephineは、実は小型のブルドッグなのです。 犬の名前を出演者リストに平然とのせてしまうところが、えらい(フォルクスオーパー初出演なのは当たり前です)。このユーモアセンスが光りますね。

○しっかりとしたお芝居と演出
今回、フォルクスオーパーのオペレッタとしては、初めてロベルト・マイヤーが演出を担当しています。元々、役者さんなので、演技の部分に関するこだわりは強いようで、各場面ともお芝居がしっかりとしていました。

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また、本オペレッタは登場人物が多いだけに焦点がぼけやすいのですが、グンター(女性のお尻にひかれるような気の弱い感じが見事)、ジークフリート(体型からユーモラスな感じが全面に出ています)、ブリューンヒルト、クリームヒルトという四人を際だたせる演出をとっているため、観ていて非常にわかりやすいオペレッタに仕上がっています。

この他、途中、合唱団メンバーが多数参加しての大合唱シーンがあるのですが、明らかにワーグナー作品を意識した展開になっています(Feri自身は、フォルクスオーパーで、ここまで迫力のある合唱は聴いたことがありません。本当に見事でした)。

また、ウィンナ・オペレッタらしい「お色気ムード」も下品にならない程度に、ちりばめられている点も評価できるでしょう。とにかく、「笑いの壷」を押さえている見事な演出でした。

○シンプルながら雰囲気を出している舞台装置
いわゆる「伝説の世界」のお話ですから、舞台装置は抽象的なものになります。最近は制作予算削減のあおりを受けて、チープな感じの舞台装置が増えているのですが、今回は限られた予算内で、うまくまとめたという感じがします。

例によって、回り舞台を上手に活用しているのですが、今回は場面が「お城の中」だけなので、角度を変えることで、大広間や中庭に切り替えると行った仕掛けになっていました。

なお、衣装デザインはそれなりの雰囲気が出ており、ムードを盛り上げていましたね。ところで、ブリュンヒルデは「アイスランドの女王」という想定なのですが、家来ともども、なぜかバイエルン地方の民族衣装で登場しました(スカートに青と白のおなじみの模様が… )。

これは、ワーグナーに心酔していた心酔していたバイエルン国王ルートヴィヒ2世にあやかっているのでしょうかね。しかし、女性兵士の帽子に羽がついているのですが、まさしくワルキューレですね。

よくよく考えてみると、ドイツ人をバカにしきったオペレッタですね 。ドイツの皆さん、ごめんなさい。

なお、プルミエだけだと思うのですが、カーテンコールの際、回り舞台を上手に使っていました。というのは、出演者が多いので、回り舞台に主な歌手、合唱団、オーケストラを配し、回転させながら披露するという方式がとられていました。このアイデアは最高ですね。

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ロベルト・マイヤーとしても、自分自身が演出を担当しているだけあって、非常に力が入っていたと思います。オペレッタファンの皆さま、是非、機会があったら、「愉快なニーベルンゲン」をご覧ください。決して期待を裏切りませんよ。

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Comments

私のお気に入りのオペレッタのひとつに愛らしくて親しみやすい「ワルツの夢」があります。その作曲者のオスカー・シュトラウスが作曲した「愉快なニーベルンゲン」はまったく初耳の作品でとても気になっておりました。この度とても詳しいプレミエレポートを頂き本当に有難く思いました。なにせオスカー・シュトラウスの作品といったら「ワルツの夢」以外では「チョコレートの兵隊」(浅草オペレッタでやった?)といった題名を聞いたことがある位で素敵な作曲家なのに余りにも情報がありません。
「愉快なニーベルンゲン」は Feriさんによると作曲者の初期の作品とのことですが、と言うことは「ワルツの夢」以前の1900年代初頭、彼がキャバレー華やかなりし頃のベルリンで次々とヒットソングを飛ばしていたと言われる時代の(世評は如何だったかは別としても)彼の野心作であったろうと思われます。
いずれにしてもこの Burleske Operette ~おふざけオペレッタはどのような笑いを客席にもたらしたのでしょうか。爆笑ですか?クスクス?にやにや? もっとも時代を21世紀に置き換えられて作曲者自身がお墓の中でのけぞっているかも分かりませんね。
今思い出したのですが、古い映画「輪舞」(マックス・オフュルス監督、アントン・ウォルブリュック主演)の音楽はオスカー・シュトラウスの手になるものでした。作曲者の名前は知らなくてもあのワルツを聴いて覚えておいでの方が結構いらっしゃると思います。
彼は若い頃マーラーやブルッフとも交流があり指揮者として活躍したり、キャバレーで作曲者兼ピアニストを務めたり、第2次大戦中はハリウッドで映画音楽を作曲した等、結構波乱に富んだ人生を送ったようでドラマが一つ出来そうです。

Posted by: Unicorn(ユニコーン) | December 21, 2008 17:42

ユニコーンさま、コメント、ありがとうございます。

オリジナルのストーリーとは若干、改編してあるようです。ただ、メロディーが比較的単調なので、レハールやカールマンに比べると、評価が低いのかもしれません。

地元の新聞評は、22日に当たりに掲載されると思うのですが、こちらは、またお知らせしたいと思います。ただ、個人的には良く仕上がっている思います。また、気づいたことがいくつかあるので、続報でお伝えする予定です。

Posted by: Feri | December 22, 2008 09:42

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