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March 10, 2009

ヴェッセリーナ・カサロヴァの「カルメン」

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チューリヒ歌劇場を中心活躍するブルガリア出身のメゾソプラノのヴェッセリーナ・カサロヴァが、この2月、ウィーン国立歌劇場で「カルメン」のタイトルロールに起用されました(2月25日から3月8日までの4公演)。

ちなみに日本では、“今をときめくメゾ女王”として紹介されています。ところが、このカサロヴァの「カルメン」、現地ウィーンの評価と日本国内の評価がずいぶんと違うのです。というわけで、ちょっと興味があったのでFeriも出かけてきました。

当日は指揮は、Asher Fischが務めた(以前、フォルクスオーパーで活躍していた人ですね。初演の時は結構厳しい評価だったとか… )。主なキャストですが、Carmen役はVesselina Kasarova、Don José役はJosé Cura、Escamillo、 Toreador役はIldebrando D`Arcangelo、Micaela役はGenia Kühmeierという面々だった。また、甲斐 栄次郎さんが、1幕だけ軍人役で登場していました。

さて、ヴェッセリーナ・カサロヴァは、2000年、グルベローヴァとのデュオ・リサイタルで来日しています。また、3月には、コンサート形式ながら日本のサントリーホールで「カルメン」の上演が予定されています(3月14日と17日)。

さて、カサロヴァのカルメンですが、地元ウィーンの新聞では酷評されているので、実際に観るのが楽しみでした。ちなみにプレッセでは評論家のシンコヴィッツ氏が、“カサロヴァが歌えないと言ってるわけではない。楽譜にない高音まで出したが、それがドラマツルギー上、全く何の効果もない。舞台で、何のかかわりもない人物像が、それぞれに関係なく動いているだけ。ハバネラにおける声の質の均等性は評価する”などと厳しい評価です。 

一方、日本では“大成功!”と絶賛。さて、どちらが、実際にお金を払っているお客さまの心にフィットするのでしょうか

まず、第1幕、ハバネラの歌い方にFeriは違和感を感じました。カサロヴァは独特の歌い方をするようで、慣れ親しんだ曲だけに、すっと入ってきませんでした。ただし、声量は十分にあるので、この点は安心して観ることができます。
一般的にカルメンに抱くイメージは、「攻撃的な女性」だと思うので、個性的な歌手(カルメン以外は当たり役が少ないという歌手が出ることもありますよね)が起用されることが多いようです(アグネス・バルツアの全盛期が、攻撃的なカルメンを体現していたように思います)。その点、カサロヴァは、意外と押し出しが弱く、気をつけないと群衆に埋没してしまうことがありました。

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このカサロヴァの演技を「意図的に非常に抑えた演技で、心理的深層を表現する」という見方もあるようですが、そのあたりは、お客さまの好みがはっきり出そうな感じがします。Feri個人としては、カサロヴァは、ちょっとカルメンのイメージには合わないような気がしましたね(本来、スペインのお話ですから、情熱を全面に出さないと盛り上がらないような気がするのですがねぇ。とくにドン・ホセを袖にする場面など )。なお、同じメゾソプラノでもガランチャの方が、癖のないオーソドックスな演技なので、万人受けするかもしれません。言うまでもありませんが、これらは好みの問題もありますから、その点はお含み置きください

実際、カーテンコールでもカサロヴァに対するブラヴァは意外に少なく、ミカエラ役のゲニヤ・キューマイヤーの方が人気があったようです。お相手役のホセ・クーラは、舞台上で、自分が一番キャリアがある場合は、のびのびと演じることができるようで、なかなかいい味を出していました。

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たまたま楽屋口で、カサロヴァを発見。もっと大柄な人かと思ったが、楽屋口で見てびっくり。予想以上に小柄な歌手でした。やはりステージに立つと別人というのがよくわかります。ファンサービスも熱心で、きっとファンが増えることでしょう。カサロヴァは、この後、 日本へすぐ向かうそうです。

なお、日本ではコンサート形式なので、また違ったカルメンを披露してくれると思います。所詮、評論家は評論家。後は、ご自分の目と耳で確かめてくださいね

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Comments

Feriさん、saraiです。

今年の7月、チューリッヒ歌劇場でカサロヴァのカルメンを聴くので、参考にFeriさんのご意見を読ませていただきました。

saraiもグルベローヴァとやったコンサート形式の「ノルマ」も含め、生聴きしています。メゾとしてはかなり異質な歌い方で正直、あまり好みではありません。

で、先日、NHKで放映されたチューリッヒ歌劇場でのカサロヴァのカルメンを聴きました。
ところが、どうしてです。かなり、くせの強いカルメンですが、その個性がぴったりとカルメンにあっているように感じ、カサロヴァを初めて、評価してしまいました。Feriさんが違和感を感じられたハバネラは、逆に素晴らしい個性を感じました。ウィーンでは、バルツァの定評あるカルメンも聴きましたが、もうひとつに感じていました。カサロヴァはこれまでのカルメンのベストです。
今をときめくガランチャのカルメンはまだ聴いていないので、なんとも言えませんが・・・。

チューリッヒでの生聴きを楽しみにしています。

まあ、音楽の感じ方は人それぞれですね。それにしても、どちらかといえば、嫌っていたカサロヴァの、普通でないカルメンを気にいるとは自分でも驚きです。ほかの人のカルメンでは満足できなくなるかも知れません。

saraiの勝手な感想でした。

Posted by: sarai | February 15, 2010 13:04

saraiさま、コメント、ありがとうございます。

カサロヴァさんですが、私も一回しか聴いていませんし、その時の調子や演出家や指揮者の指示によっても、歌手の持っている歌唱力の出方が違うと思います。

チューリヒ歌劇場の映像はあいにく見ていませんが、場合によるとそういった要素も加わり、ご本人の力が十分開花した可能性もあると思います。

実際、プロのクラシック歌手の方にうかがうと、演出家や指揮者の指導方針によってずいぶん違うそうです。グルベローヴァさんのような大歌手になると、自分の意向を強く出せるかもしれませんが、普通は難しいようです。

そのように考えると、同じ歌手でも、色々な演目を見ると意外な発見があると思います(ただ、お金がかかりますよねぇ)。

あと、日本では、外来歌手の評価は公式にはみんなヨイショですから、参考になりませんよね。

Posted by: Feri | February 15, 2010 15:41

Feriさん、saraiさん、こんばんは。Steppkeです。

Vesselina Kasarovaは、10日ほど前、パリのオペラ座で聴きました。Idomeneo(Mozart)でIdamanteを歌いましたが、正直、駄目でした。
ガルニエ宮の方だったので劇場空間は大きくなく、しかも平土間の4列目と近かったにも拘わらず、中低音が全く響いて来ませんでした。確かに高音部は力強く輝かしい声かも知れません。しかし、メゾソプラノとして中低音部に豊かさが無いのでは、お話になりません。
残念ながら第2幕で帰らざるを得なかった(日曜日のマチネで、最後まで居ると帰りの飛行機に間に合わなくなる可能性が高く、泣く泣く出て来ました)ので、カーテンコールでどのような反応だったのかは分かりません。

昨年6月には新国立劇場で、La Cenerentola(Rossini)のタイトルロールを聴きましたが、その際にも全く感心しませんでした。
『音楽の友』では、巻頭のカラーページでは、ヨイショに近いもの(それでも手放しという訳ではありません)でしたが、レヴュー&レポートでは、かなりきつい批評でした。(アンジェリーナにはふさわしくない音色や表現、さらにはその声の扱いのためか、ロッシーニの音楽的フォルムを崩してしまうほどの恣意なテンポとアゴーギグに終始する。(國土潤一氏))

CarmenのTVは私も観ましたが、Kasarova云々の前に演出で拒否反応を起こしたので、あまり歌の印象が残っていません。
チューリヒ歌劇場には、一度行きました。非常に小さな空間で、親しさが感じられる劇場でした。
しかし、最近映像に接することも結構あるのですが、演出はかなり変わったものが多いようです。(生で接したAidaもそうでした)

GarančaのCarmenは、メトロポリタン歌劇場のHDライヴで観ましたが、良いですよ。
機会があったら、是非、ご覧になることをおすすめします。

saraiさん、
どうしてもGaranča贔屓になってしまうので、レパートリーが重なるKasarovaには良い印象を抱けないのかも知れません。
あくまで個人的な感想ということで、チューリヒでは楽しんできて下さい。
スイスは、景色も最高ですし..

Posted by: Steppke | February 17, 2010 00:00

Steppkeさま、コメント、ありがとうございます。

パリですか。色々なところへお出かけになっているようですね。いずれにしても「生」を見ないことには、何とも言えないと思います。

以前、「レコーディングのお話」をお届けしたときにも書きましたが、「生」と「録音」というのは全く別の作品ですからね。

私も色々と顔を出したいところはあるのですが、これ以上、間口を広げると収拾がつかなくなるので、当面はウィーン中心に活動するつもりです。

Posted by: Feri | February 17, 2010 08:40

Feriさん、Steppkeさん

saraiです。
やはり、カサロヴァはあまり評価されていないですね。カサロヴァをお好きなかたもいらっしゃるのですが・・・

sarai自身、生でも映像でも、カサロヴァがいいと思ったことは残念ながら一度もありません。
今回の映像が唯一の例外です。
ですから、みなさんのご意見はよく分かります。

カサロヴァが育ってきたホームグラウンドとも言っていいチューリッヒ歌劇場でもう一度、じっくりとカサロヴァの真価を生で確かめてきます。

で、その前に2003年のザルツブルグ音楽祭の「皇帝ティートの慈悲」のDVDを入手したので、これも見てみましょう。問題のカサロヴァもガランチャも両方出ています。比較?しやすいですね。結果は明白かもしれません。バーバラ・ボニーも出ているので楽しみです。こんなのは本当は生で見たかったですね。

では。

Posted by: sarai | February 17, 2010 10:57

saraiさま、コメント、ありがとうございます。

チューリヒでの「生のご感想」をお待ちしております

Posted by: Feri | February 17, 2010 13:40

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