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March 11, 2009

バレエ版「こうもり」は…

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ヨハン・シュトラウスの「こうもり」と言えば、「オペレッタの名作」ですが、なんとびっくりバレエ版があるのです。以前、日本の新国立劇場でも2006年に草刈民代さんが出演して、上演されたことがありました。Feriも観たかったのですが、残念ながらチケットが入手できませんでした。

さて、今回、ウィーン国立歌劇場でバレエ版「こうもり」が上演されることになり、駆けつけた次第です。ちなみにウィーン国立歌劇場で上演されているのも現代バレエの巨匠ローラン・プティ(Roland Petit)の作品です。バレエ版「こうもり」はローラン・プティの作品だけのようで、各国の歌劇場が同氏の作品を上演しています(日本の新国立劇場で上演された際もローラン・プティの作品でした)。

まず、Feriが観た当日のキャストですが、指揮はMichael Halász、Bella役はOlga Esina、Johann役はKirill Kourlaev、Ulrich役はMihail Sosnovschi、Dienstmädchen役はRafaella Sant'Anna、Drei Kellner役がDenys Cherevychko、Alexis Forabosco、András Lukács、Cáarsás-Solist役がAlexandru Tcaxenco、Polizeikommissar役がTohmas MayerhoferTenorという面々でした。なお、当然のことながら、群舞には多くの男女メンバーが出演します。まず、配役から違うところがバレエ版らしいですね

初物なのでプログラムを購入し、「あらすじ」を見ると、オリジナルのオペレッタ版「こうもり」とは、「お話の筋」が違います。現代バレエなので、ここまでやらないと中途半端な作品になってしまうでしょうね。この思い切りの良さは、オーストリア人では難しいかもしれません。

実際に観てわかったことは、ベラはロザリンデ、ヨハンはアイゼンシュタイン、ウルリヒはファルケをモチーフにしているようです。ヨハンは女好きで、ベラそっちのけで夜な夜な町のキャバレーなどに繰り出していますし、ウルリヒはベラの悩みを解決するための秘策を授ける…頭脳派なところがファルケに似ています(もちろん、ウルリヒも女性好きです)。

序曲は当然、オペレッタ版と同じですが、途中で幕が開くと、主人公のベラが華麗な姿で登場します。その後、暗転で一幕一場のヨハン邸(オーストリアあたりのどこかにある邸宅)となります。なんとびっくり。ロザリンデの子供はオペレッタには出てこないのですが、ベラは若いながらも5人の子持ち 。リッチな家庭なので女中さん(オペレッタ版ならばさしずめアデーレ)を雇っているものの、子供の世話や家事で大変。

にも関わらず、夫ヨハンは子供にも関心がないばかりか、妻のベラにも冷たい(要するに飽きてしまった)という展開。オペレッタを意識してか、振り付けが結構コミカルなものになっていました。ネタバレになるので、詳細はご紹介しませんが、家族そろって食事をするシーンの振り付けは見物です。

そこへウルリヒが登場します(なにやらファルケが最初にやってくるタイミングに近いですね。でも目的は違いますよ)。ウルリヒは子供や奥様にプレゼントを持ってきて、なぜか家族と一緒に食事をとり、いったんヨハン邸を後にします。ウルリヒがベラの味方という設定が興味深いですね。

食事が終わって、お休みの時間。ヨハンが休んでいるベッドにベラがくると、なぜか女好きのヨハンはこうもりの扮装で、ベッドを抜け出し夜の町へ飛び立っていくのです(ワイヤーで吊していました)。まさに「本当のこうもり」。そこで、ベラは、どうすればヨハンが自分に対して愛情を持ってくれるかをウルリヒに相談するのです。

ウルリヒは、ベラを「子持ちの疲れた妻(母)」から、「夜の社交界を魅了する華麗な謎の女性」に変身させ、ヨハンを誘惑しようという計画を立て、その準備を始めます。ところが、ウルリヒも結構女好きのようで、ベラへの「指導」の途中、危ない場面が…

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一幕の最後は、マキシム風のキャバレーが舞台(オーストリアにマキシムがあるのか…という突っ込みはなし)。多くの男女で賑わっており、グリゼッティンもしっかり登場し、カンカンを踊ります。まるでメリーウィドウの世界です。当然、そこには夜の主役ヨハンが登場。女性たちをはべらかしています。そこへ、華麗に変身したベラが登場し、一瞬にして男たちを魅了します。言い寄る男たちを遠ざけようとするヨハン。

この雰囲気は、メリーウィドウの一幕にそっくりです。一方、作戦を練ったウルリヒは、変装をしてキャバレーで二人の様子を観察しています。ヨハンを魅了したベラは、ウルリヒが操る馬車で次の会場へ。当然、ヨハンも馬車の屋根につかまって、後を追います。

とにかく、曲順はオリジナルを完全に無視。また、オリジナルを彷彿させる場面でも、必ずしもオリジナルの曲を使わず、テンポや雰囲気に合わせて選曲(かつ編曲)しているようです。ただ、この選挙と編曲がなかなかいいのですよ。ここで、休憩となります。

二幕は、仮面舞踏会の会場から始まります。これは、明らかにオリジナルのオルロフスキー邸の夜会をモチーフにしています。しかし、オルロフスキーに当たる人物はいません。ここでは、「チャールダーシュ」が披露されますが、ベラが踊るのではなく、ハンガリー風のコスチュームに身を包んだ男女の群舞となります。途中から、男性の踊り子に変奏したウルリヒが登場し、なぜか男性二名になって会場は大騒ぎとなります(このあたりのコミカルさはオペレッタに通じるものがありますね)。

ここでもベラは華麗なコスチュームで登場し、参加している男性陣を虜にします 。当然、ヨハンも妻のベラとは知らずに、何とかものにしようと言い寄ってきます。ところが、この混乱に乗じて、ウルリヒが手を回した警察がやってきて、ヨハンを暴力容疑で逮捕してしまうのですよ。ちなみにこの場面では、ワイヤーでヨハンがつり下げられるのですが、あっと驚く演出があります。

やはり「こうもり」と言えば刑務所。ヨハンはあえなく刑務所に収監されてしまいます。刑務所に場面では、オリジナル「こうもり」の三幕冒頭と同じ曲が使われています。さすがにポイントは外していませんね。おもしろいのは看守が変装したウルリヒであるということ。つまりヨハンの様子を観察しているのです。ここで、バレエ版ならが、突然、歌が…刑務所の歌といえば、そうアルフレードの歌なのですが、なぜかヨハンが歌っている想定になっていました(もちろん、別にテノール役がいます)。

そこへ、謎の女性に扮したベラが登場し、ヨハンの釈放を依頼します。釈放を喜ぶヨハン。このタイミングで、ベラはヨハンの羽根(こうもりの羽根)をはさみで切り落とし、夜な夜な遊びに飛び出せないようにしてしまいます 。実は、ここで種明かし。謎の女性は実は自分の妻だったという訳です。

最後は、再びヨハン邸。すっかりおとなしく従順になったヨハンと、元の妻の姿に戻ったベラがウルリヒの前で、関係を修復し、ハッピーエンドとなります。フィナーレは、全員が盛装して華麗な踊りを披露してお開きとなりました。

さすがにフランス人の作品だけあって、小粋なエスプリのきいた展開になっています。とにかくテンポが良いので、観ていて飽きることがありません。なんと言っても、休憩時間20分を含めて、上演時間2時間ですから… オペレッタ版を知らないお客さまが観ても楽しめる内容に仕上がっているのはさすがですね。

しかし、「こうもり」をよく知っているオペレッタファンが観ると、楽しさが倍増することは言うまでもありません。つまり、オリジナルの曲が、どのような使われ方をしているかという発見が多いからです。また、ツボの押さえ方を観るのも楽しいですよ。

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バレエなので、振り付けもオペレッタを意識したコミカルな点も見逃せません。しかし、このストーリーでオペレッタを作ったら、結構おもしろいかもしれないね。

さて、キャストの中で、一番人気があったのは、再三の変装、かつコミカルなバレエを披露するウルリヒ役のMihail Sosnovschiでした。カーテンコールでは 花束がかなり投げ込まれていました。 ベラ役のOlga Esinaは華麗な姿が絵になりますね(奥様役と謎の女性役のギャップが見事。きれいな人です )。また、ヨハン役のKirill Kourlaevは身長が高いだけあって、女性を魅了する踊りが決まっていました。当プログラムでは、複数のキャストがいるようで、別のメンバーの舞台も観てみたいところです。

ただ、熱心のバレエファンの評価は、どうなのかはFeriにはわかりません。とは言っても、当ブログをご覧のオペレッタファンの皆様には、是非お勧めしたい作品です。ちなみに楽譜は、フランス版らしく表紙のタイトルは「La Cbauve Souris」となっていました。

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