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June 15, 2009

「メリーウィドウ」の聴き比べ

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ウィーンにいたらしいのに、なぜ、オペレッタの話題が出ないの?”という声が天から聞こえてきた…という訳ではないのですが、今日は久しぶりにフォルクスオーパーの「オペレッタの話題」です

今回、5月31日と6月5日に「メリーウィドウ」を観ました。同じ演目を一週間以内に観るのは「好き者」以外の何者でもないのですが(事実、好き者ですが )、実は色々な発見がありました。

まず31日の方は、先日、80歳のお誕生日を迎えたルドルフ・ビーブルが指揮をつとめました。

歌手陣は、ヴェランシェンヌ役がRenée Schüttengruber、ハンナ役がEdith Lienbacher、ゼータ男爵役がSándor Németh、ダニロ役がMorten Frank Larsen、ニグシュ役がGerhard Ernst、カミュ・ド・ロシュ役がSebastian Reinthallerといった面々でした。

ルドルフ・ビーブルさんは、一見すると大ざっぱなようで、意外と細かいところまで気を配っていることがよくわかります。特に舞台の状況に合わせて、演奏を調整するという「状況対応力」は抜群です。これは、長年、オペレッタを指揮してきた「」というものでしょう

とは言っても、オーケストラメンバーがのびのびと演奏できるような配慮も見事で、実力を遺憾なく発揮させていたように思います

Feriの大好きな歌手Sándor Némethは、歌唱力こそ落ちたものの、お芝居は上手で、俳優のニグシュ役Gerhard Ernstとともに舞台を引き締めていました。

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ダニロ役のMorten Frank Larsenは、以前は、歌はまずまずだったものの、お芝居があまり上手でない歌手だったのですが、ずいぶんとお芝居が上手になってきました。元々、押しの強いタイプの歌手なので、お芝居が上手になるとダニロに最適かもしれません。

また、ハンナ役のEdith Lienbacherも歌が安定しており、安心して聴くことができました。ただ、もう少し、アクが強い方がハンナには合うような気がします。逆に「ヴァリアの歌」では清楚な感じがぴったりでした。

注目していたヴェランシェンヌ役のRenée Schüttengruberですが、マルティナ・ドラークに負けず劣らず良い演技と歌唱力でした。三幕のカンカンでは、見事な踊りを披露していましたが、踊り単独ではMartina Dorakの方がこなれているかもしれません。

Renée Schüttengruberはお芝居も上手で、カミュ・ド・ロシュ役のSebastian Reinthallerとの息もぴったりでした。なお、Renée Schüttengruberは、今後「微笑みの国」でミーを演じる予定になっています。

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一方、5日はエリザベス・アットル(Elisabeth Attl)が指揮をつとめました。女性ながらダイナミックな指揮ぶりが印象的で、Feriの好きな指揮者の一人です

歌手陣は、ヴェランシェンヌ役はMartina Dorak、ハンナ役がUrsula Pfitzner、ゼータ男爵役がSándor Németh、ダニロ役がDietmar Kerschbaum、ニグシュ役がGerhard Ernst、カミュ・ド・ロシュ役がSebastian Reinthallerといった面々でした。

エリザベス・アットルですが、今回、同じ演目で指揮を担当したルドルフ・ビーブルと比べると、演奏スタイルに明らかな違いがあることがわかりました。

彼女の場合、メリハリのついた演奏を心がけているようです(その結果、オケはかなり賑やかな演奏ですね)。一方、ルドルフ・ビーブルの方は、極端にメリハリのついた演奏ではなく、全体的に角が取れたまろやかな響を重視しているように感じました。そのため、エリザベス・アットルの場合、長時間聴いていると、正直、疲れることがわかりました。

また、ルドルフ・ビーブルが、歌手の呼吸を読んで、状況対応をする演奏スタイルであるのに対し、エリザベス・アットルは、歌手に対する気配りより、自分の演奏スタイルを貫き通すような感じでした(良い意味で我が道を行く… といった雰囲気でしたね)。おそらく、歌手の皆さんが協力しているから舞台が成り立っているのかもしれません。

よく考えてみると、こういったあうんの呼吸を読み、瞬時に演奏に反映させる感性というものは、簡単には培われないのかもしれませんね。とにかく、指揮者で同じカンパニーでの演目(奏者はかなり違っていましたが)が、こんなに違うとは思ってもみませんでした

歌手の方では、ハンナ役のUrsula Pfitznerは、二幕前半の山場「ヴァリアの歌」が全然声が通らず、がっかりしました 。そのためか、定番のリフレイン(アンコール)も行われませんでした。

このままの状態が続いてしまうのか”と、かなり落ち込んだのです が、二幕後半からは別人のように声が出るようになり、三幕ではダニロ役のDietmar Kerschbaumを上回る声量と迫力ある演技で、存在感を示していました。しかし、「メリーウィドウ」の場合、二幕スタート時の「ヴァリアの歌」がある種、肝なので、ここが良くないと好印象が残りません。残念。

ダニロ役のDietmar Kerschbaumについては、お芝居はなかなかこなれていましたが、歌い方が単調で、際だった存在にはなっていませんでした。これは、完全にMorten Frank Larsenに軍配が上がりますね
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ヴェランシェンヌ役のMartina Dorakは、当日、一番、生き生きと演じていたように感じました(雰囲気がぴったり )。やはり彼女は歌以上に踊りが本当に上手ですねぇ。バレエ団と遜色のない見事な踊りを披露していました。ただ、歌そのものは31日に出演したRenée Schüttengruberの方が上かもしれません。ただ、残念だったのは「カンカン」のリフレインが省略されてしまったことですここのリフレインが盛り上がるポイントになるだけに、残念です。ちなみに31日は、しっかりリフレインが行われ、客席が一気に盛り上がりました。

このように、同じ演目でも指揮者が違うと「作品の解釈が違い、舞台の雰囲気がかわる」ということを、改めて実感しました。決してエリザベル・アットルが、「オペレッタ指揮者として失格」という訳ではなく、今の彼女がルドルフ・ビーブルの真似をしたら、それこそおかしくなってしまいます。事実、メリハリのついた演奏が、功を奏している演目も多々あります。

彼女も、最近ではフォルクスオーパーで振ることが多いので、試行錯誤を重ねながら、ウィンナオペレッタの良き伝統を継承してくれることでしょう。大いに期待したいものです

それにしても、同じ演目を続けてみると、色々な発見があるものですね。だからオペレッタは辞められません

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Comments

Feriさん、saraiです。こんにちは。
「メリー・ウィドウ」の詳細な聴き比べ、面白く拝見しました。
saraiの聴いた5月8日の「メリー・ウィドウ」のキャストはツェータ男爵がネメス、ヴァランシェンヌがシュッテングルーバー、ハンナがプフィツナー、ダニロがケルシュバウム、ニェグシュがロベルト・マイヤー、カミーユがラインターラー、そして指揮はもちろん、その日が誕生日だったビーブルでした。
丁度、Feriさんの2回の公演でほぼ尽くされている顔ぶれですね。
プフィツナーは前々日の「微笑みの国」でも歌ってましたが、歌はもう一つって印象でした。「ヴィリアの歌」も高い音が苦しそうで、聴く方も辛いという感じ。ハンナ役は誰にとってもなかなか難しいですね。
シュッテングルーバーも「微笑みの国」でミーを歌いましたが、断然、こちらのヴァランシェンヌがよかったです。フレンチカンカンは大いに盛り上がりました。でも、さらにDorakのほうが踊りはうまいのですね。それは見たかった! でも、リフレインは必須ですね。
ケルシュバウムはまあまあというところでしたね。
ラインターラーがなかなかよかったというのは以前、お伝えしたとおり。
ところで指揮者ですが、アットルは「微笑みの国」を振りました。演目が違うのでビーブルと比較はできませんが、指揮ぶりはなかなか好感を持ちましたが、確かにメリハリのあるダイナミックな指揮でsaraiには時として、うるさ過ぎる感じでした。ビーブルはもちろん、つぼを押さえた指揮で安心して聴けました。
なお、saraiはオペレッタ初心者なので、あまり、意見は信用できないので、そのおつもりで・・・

Posted by: sarai | June 15, 2009 12:18

saraiさま、コメント、ありがとうございます。

最近、フォルクスオーパーでは、ハンナ役に色々な人を投入する傾向があるので、正直、「ハズレ」もあります。

逆に、この手のポピュラーな演目でテストして、良ければ、他の演目へ入れるという考えなのかもしれません。マイナーなオペレッタで、いきなり歌が良くないと、最悪の結果が )。

いずれ、Feriが観た今までのハンナやダニロをまとめてみたいと思いますが、前のプロダクションの頃の方が良い歌手が入っていたように思います。Feriはアットルの一生懸命さにはひかれるのですが、やはり、もう少し肩の力が抜けた方が、良い演奏ができるような気がします(偉そうですが)。

アットルはsaraiさまご指摘のように「時にはうるさく感じること」があります(演目によりますが…

Posted by: フェリ | June 15, 2009 15:17

突然の投稿失礼致します。

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Posted by: ヨーロッパカラー | June 15, 2009 19:09

Feriさん、こんばんは。Steppkeです。
少々遅くなりましたが、6月下旬にWienに行きましたので、コメントさせて頂きます。

私も、Elisabeth Attlの指揮で、Die lustige Witweを聴いて来ました。
Feriさんの言われるように、Attlの指揮は「かたい」感じですね。Biblさんの自在な草書に比べて、楷書というか..
台詞の場面にオケを入れるタイミングも微妙に遅い時があり、歌手がアレ?という顔をした(ように感じられた)こともありました。
まあ、Biblさんと比べるのはかわいそうです。

今回、Volksoperには5回行きましたが、Ariadne auf Naxosを除き、他はみなAttlの指揮でした。
オペレッタだけでなく、Fra Diavoloもです。(ただ、これはオペレッタみたいな曲ですけど..)
それだけ、Attlは期待されていて、信頼もされているということでしょう。
Das Land des Lächelnsの翌日にFra Diavoloと、Volksoperの指揮者は大変です。

歌手も同じく、続けて違う曲を歌わねばなりません。
Thomas Sigwaldは、Das Land des LächelnsでGustlを歌った翌日、Fra Diavoloに出演していました。
Feriさんが行かれた時と同じ端役ですが..でも、いろいろと演技しなければならない役で、よく間違えずに憶えていますね。
Klemens Sanderは、Ariadne auf NaxosでHarlekinという重要な役の翌々日に、Fra DiavoloのLord Cockburnという、これも重要な役..その翌々日は、またHarlekinという具合。
この人は(同姓同名の別人でなければ)、3年ほど前、Jesuitenkircheのミサに参列した際にバスを歌った人です。
多分、学生か駆出しの頃のボランティアかアルバイトだったのでしょうが、Volksoperで重用されるのは素晴らしいことです。
今回、発見した1人です。
同じミサでは、Cornelia Horakがソプラノでした。
こちらは(やはり別人でなければ)、Ariadne auf Naxosで傑出した作曲家を歌いました。
(はっぱさんも書かれていたように、ヒゲはう~んでしたが..) 大注目です。

しかし、最近のVolksoperは、犬を多用しますね。

Die lustige Witweに話を戻しますが..
ハンナはCaroline Melzerが歌いました。
私はこの人を初めて聴きましたが、よく声が通り、姿も美しく、ハンナにぴったりです。
ただ、第1幕の幕切れで階段を駆け上がるところでつまづいたせいか、第2幕以降、少し精彩を欠いた感がありました。(Wienに着いた日に行ったので、こちらの体調のせいかも知れません)
ダニロのDietmar Kerschbaumは、Feriさんも書かれたように、歌が駄目でした。
演技を含めても、ハンナは惚れないな、という感じ。
Martina Dorakは、相変わらず可愛くて、歌も踊りも良く、昔からのお気に入りです。
でも、初めて出会ったのが1993年..やはり、ちょっと年齢が見えるようになってしまったでしょうか。

Posted by: Steppke | July 10, 2009 23:13

Steppkeさま、お帰りなさい。

ウィーン滞在中はお天気が悪くて、大変だったのではないでしょうか。

さて、「メリーウィドウ」のご感想、ありがとうございます。定番ものほど、色々な歌手を起用しますから、逆に「当たり、ハズレ」が出るというリスクもありますね。

それから、アットルは、何でも振ることができる器用な指揮者なので、重宝されているのかもしれません。ただ、自分のペースを守ることをポリシーとしている感じがするので、舞台とのズレが若干あるような気もします。

実は、私が今までにフォルクスオーパーで観てきた「こうもり」と「メリーウィドウ」の出演者をチェックしていて、色々と面白いことに気づきました。こちらは、後日、ブログでご紹介する予定です。

余談ですが、フォルクスオーパーの「アリアドネ」は観たいのですが、どうしてもスケジュールが合わないのですよ

Posted by: フェリ | July 10, 2009 23:25

Feriさん

VolksoperのAriadne auf Naxosは、おすすめです。

正直、行く前は、VolksoperのAriadne..まあ、どんなもんでしょうかねぇ、という感じだったのですが、予想をはるかに超えた出来でした。
今回、2回行きましたが、いろいろな意味で、大変面白かったです。

1回目は、アンサンブルが良く、素晴らしかった。
半分近くがそれまでの公演から代わって、Volksoperでの初役にも拘らず、ピタリと決まっていました。
(演技は、微妙にぎこちないところもありましたが..)
特に、ニンフ3人は全員初役なのに、声も揃って絶妙なバランス..美人だし、聞き惚れ、見惚れてました。(特に、EchoのMara Mastalirが可愛い)
オケも、Volksoperのオケって、こんなに水準が高かった?というところで、特に管とチェロが印象に残っています。
平土間の1列目左寄りだったので、開演前に羽ボウキで掃除もしてもらいましたし..

ところが、2回目は、アンサンブルがばらばらで、各歌手が声を張り上げること..
Zerbinettaを除き、指揮も含めて1回目と全く同じ配役なのに、たった4日後でこんなに違うの?という感じでした。
(この辺り、はっぱさんが詳しく書かれているので、知りたい方はそちらへ..)

もう一度(とは言わず)聴きたいのですが、来シーズンは9月下旬~10月初めしか無く、9月は初旬に行くので、無理です。
更に次のシーズンに期待するしか無いようです。

Posted by: Steppke | July 11, 2009 00:55

Steppkeさま、たびたび、コメントありがとうございます。

話の内容が「アリアドネ」に移ってしまいましたが、Feriは当初、2008/2009シーズンのプルミエを狙っておりました

が、日本ででスケジュール指定の仕事が入ってしまい、泣く泣く断念した次第です

フォルクスオーパーの場合、シーズン終了前にプルミエを迎えた演目は次シーズンは上演するものの、その次は???稀なので、ちょっと心配です。

>9月は初旬に行くので

Feriも「小鳥売り」を観に行きますので、もしかしたら、フォルクスオーパーでお会いするかもしれませんね。おっと、その前にメルビッシュがありますが…

Posted by: フェリ | July 11, 2009 08:50

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