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July 24, 2009

番外編 小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトX「ヘンゼルとグレーテル」

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この時期、本場ではオペラは「 夏休み」ですが、日本では毎年恒例の「小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクト」が上演されています。

今年の演目はフンパーディンクの「ヘンゼルとグレーテル」でした。ウィーンでは、クリスマスの頃、フォルクスオーパーで「子供向けのオペラ」という位置づけで上演されています。Feriも、今までフォルクスオーパーで2回(2008年)に観ています。

さて、今回、なぜ、Feriが観に行ったか。それは、Feriごひいきのメゾソプラノ歌手アンゲリカ・キルヒシュラーガー(Angelika Klrchschlager)がヘンゼル役で出ることが決まっていたからです 。最近、ウィーンではご無沙汰なので、ぜひ観たかった…という訳です。

Feriは、2公演目の東京文化会館へ行きましたが、オフシーズンということもあって、今回は当初予定の出演者が体調不良等で、数名交代しています。幸いアンゲリカ・キルヒシュラーガーが代役にならずに助かりました

まず、音楽監督・指揮は小澤征爾、演出はデイヴィッド・ニース、装置:マイケル・イヤーガン、衣裳はピーター・J・ホールという面々でした。

キャストは、グレーテル役がカミラ・ティリング(当初はバーバラ・ボニー、彼女は病気でキャンセル)、ヘンゼル役がアンゲリカ・キルヒシュラーガー、ゲルトルート(母親)役がロザリンド・プロウライト、ペーター(父親)がウォルフガング・ホルツマイアー、魔女役がグラハム・クラーク、眠りの精/露の精役がモーリーン・マッケイ(当初はジェニファー・ウェルチ=バビッジ、彼女はご懐妊でキャンセルだとか)でした。

オペラ「ヘンゼルとグレーテル」は、ご存知、グリム童話のお話を下敷きにした作品です。そのため、「子ども向きのオペラ」となっている訳です。以前も、当ブログでフォルクスオーパー版をご紹介しましたが、子ども達に人気が高いのはヒール役の「魔女」なのですよ。怪しげな特殊メイクで登場し、独特の演技を魅せますからね。

さて、日本版(プロダクションは「ダラス・オペラ」のものだそうです)ですが、舞台装置はなかなかしっかりしたものが準備されており、良い雰囲気を出していました。森の木々もしっかりとしたものが作られていました。

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おおむね、フォルクスオーパー版に近い感じでしたね。とくに3幕で登場する「お菓子の家」に関しては、かなり巨大なセットで、途中、二つに割れて中でお芝居ができるようになっていました。フォルクスオーパー版では、パン焼きの釜やヘンゼルが閉じ込められる檻は屋外にあったのですが、今回は全て室内側に作られていましたね。

演出も極めてオーソドックスで、安心して見ることのできるものでした。

今回は、昨年の「こうもり」と異なり、出演する歌手陣が少ないこともあり、非常にハイレベルでした。久しぶりに観たアンゲリカ・キルヒシュラーガーは、さすがにうまいですね。歌はもちろんのと、お芝居もしっかりして、舞台を魅力的なものにしていました。お相手役のカミラ・ティリングも声量があり、二人のコンビが見事でした。

コンビネーションが良かった理由としては、2公演目というのもあるかもしれません。お二人とも、衣装とメイクのせいで、子どもは無理にしても、お兄さん、お姉さんの雰囲気にはなっていました 。さすがに役者さんです。ただ、貧しい家の子どもにしては、着ているものが綺麗すぎるのが気になりましたが…

魔女役のグラハム・クラークは、例によって特殊メイクで雰囲気を出していました。ただ、演技に何となく遠慮があるようで、フォルクスオーパーで観たAdolf Dallapozzaの「怪演」に比べるとインパクトが弱かったですね(それは贅沢か )。それでも、お客さまから大きな拍手を受けていました。

「ヘンゼルとグレーテル」では、3幕で魔女に拘束されていた子ども達(ジンジャークッキーになっており、魔法が解けて元に戻るというお話)が登場しますが、今回は東京少年少女合唱隊のメンバーが起用されました。こちらも、十分な練習を積んだのか、ソリストとの息もぴったりで、良い演技と歌を披露していました。

さて、演奏の方ですが、正直、昨年の「こうもり」ではウィンナワルツ特有の「こぶし」が今ひとつだったのですが、今回はメリハリの利いた良い演奏でした。フンパーディンクの曲は変なクセがないので、オペラ演奏の経験が浅いメンバーにとっても、弾きやすかったかったかもしれません。そういう意味でも、良いプログラムを選んだと思います。また、コーチの皆さんの熱心な指導が効果を上げたのでしょう。

病気で休養中だった小澤征爾さんですが、元気な姿で登場し、万雷の拍手を受けていました。若いメンバーが相手なので、小澤流の指揮ぶりが光りましたね。

全般的に、昨年の「こうもり」よりも仕上がりは良く、夏の一夜、久しぶりに楽しめるオペラでした。なお、今回、18時30分開演、21時前終演と、時間が早かったのですが、これは3幕に子ども達が登場する関係でしょうね。

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Feriは「小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクト」の鑑賞は2回目だったのですが、このように若手の育成を主眼にしたプロジェクトはすばらしい取り組みだと思います。ただ、出演者の親族以外で来場されたお客さまは果たして、この公演がどういう位置づけなのか十分理解しているのだろうか…という疑問が湧いてきました。

正直、お値段はウィーン国立歌劇場並みの料金です。歌手はプロですが、奏者の多くはカンパニーに所属していないセミプロ(もちろん、オーディションで選抜された優秀な若手奏者ですが)ですから、この値段は疑問です。しかし、「若手演奏家に活動の場を提供するための寄付」と考えれば納得できる部分もあるでしょう。

そう考えると塾長の小澤征爾さんが、開演前に音楽塾の趣旨を舞台上で説明して、お客さまの支持を集めるといった工夫を加えた方がよいのではないでしょうか。

もちろん、有料のプログラムには、趣旨が十分記述されていますが、じゅくちょうご本人が生でお話をすることで、お客さまの共感を呼ぶと思います。また、奏者の皆さんも、より自信を持って演奏ができると思います。このあたりは、全体をプロデュースするスタッフのお仕事かもしれませんが…

今後、7月26日に滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール、29日に愛知県芸術劇場、8月1日にアクトシティ浜松で上演される予定です。

最後にオマケの情報です 。今回、演出を担当したデイヴィッド・ニースですが、2009/2010シーズン、ボストンでオッフェンバックの名作「ジェルロシュタイン大公殿下」の演出を担当するそうです。アメリカ版「ブン大将」。オペレッタファンのFeriとしては、どんなものか観てみたい気もしますが、アメリカですからちょっと考えてしまいます。

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Comments

Feriさん、saraiです。
私は初日の神奈川県民ホールに行きました。
キルヒシュラーガーとティリングのコンビは良かったですね。でも、バーバラ・ボニーでなかったのは残念です。バーバラはキルヒシュラーガー以上にsaraiのお好みの歌手だからです。
演出はサプライズはないものの随処に美しい場面もあり、まあ、よかったのではないでしょうか。
問題はオケです。セミプロの俄か仕立てだから、仕方がないかも知れませんが、合奏力に乏しく、アンサンブルがまだまだでした。Feriさんのお聴きになった2日目で少し改善されたのでしょうか。
オペラはまずは歌手の力ですが、オケの存在も大きいことを悪い意味で思い知らされました。こんなことなら、今後はあまり聴きたくない気持ちになっています。

次は9月のスカラ座のフリットリに期待です。最近、スカラ座は沈滞気味だと聞いているので、心配ですが、フリットリを聴くだけでも満足です。
フリットリは来年のトリノの来日公演でもミミをやるそうで、今から、それも期待しています。
では、また。

Posted by: sarai | July 25, 2009 00:03

saraiさま、コメント、ありがとうございます。

確かにFeriもバーバラ・ボニーは楽しみにしていましたが、病気ではどうしようもありませんね。逆に体調不良の中で来日しても、お客さまを魅了できなかったでしょう。

オーケストラのアンサンブルですが、Feriの聴いた限りでは、かなり改善されていたように思います。初日に比べると緊張感が和らいでいたのかもしれません(両公演を観ていませんから断言はできませんが)。

ただ、開演直前まで、木管グループはコーチの元でアンサンブルの調整を行っていたのが印象的でした(そのため、劇場内に入るのが10分弱遅れました)。このあたりは、如何せん、オペラやオペレッタばかり演奏しているカンパニーと比べるのは、厳しいかと思っています。

ただ、次回はモーツァルトですから、またハードルが上がりますね。

スカラ座来日公演ですが、思ったよりもチケットが売れていないようですが、これも時代の流れでしょうか。

Posted by: フェリ | July 25, 2009 08:00

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