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August 22, 2009

フォルクスオーパー「メリーウィドウ」こぼれ話 演出編2

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今日は、「演出編の2回目」をお届けしましょう。

○最悪の結果になったリニューアル版
Rudolf Berger 時代の2004/2005シーズンに、大規模なリニューアルが行われました。プルミエは「メリーウィドウ誕生100年」を迎えた2005年の6月5日でしたが、当ブログでもご紹介したように、これが地元で angry 大ブーイング pout を浴びてしまいます。

別にこれが致命傷になった訳ではないのでしょうが、Rudolf Bergerは任期半ばで降板しました(予算不足で、嫌気がさしたというウワサですが coldsweats01 )。

リニューアル版はDaniel Dolléが演出と脚本を担当しています。今ひとつピンと来ない衣装はCathy Strubが担当していました。

旧演出(2回休憩バージョン)は、上演時間が3時間を超えていましたが、リニューアル版では、上演時間が1時間近く短縮されました。上演時間の短縮に貢献したのは、休憩の削減(2幕と3幕の間の休憩がなくなり、暗転に変更)です。しかし、上演時間短縮の関係から、お芝居が大幅に簡略化され、主人公の「いじらしいまでの心理的駆け引き」があっさりしてしまったのです crying

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Feriは、「メリーウィドウ」というオペレッタが人気のある要因は、お客さまには見え見えながら、「なかなか自分の気持ちに正直になれない主人公」にあると思います。

ここにオペレッタらしい「いじらしいまでの心理的駆け引き」があるのです。しかし、今回の新演出では、このような「心理的駆け引き」に関する描写が、あっさりとしてしまったのです think

たとえば、1幕でマキシムから大使館に戻り寝ているダニロを見つけたハンナが、ダニロをからかいながら起こすシーンや、ハンナと意地の張り合い的なやりとりが単純化され、物足りなくなってしまいました。なお、通常は2幕で歌われる「お馬鹿な騎士さん」が、時間短縮の演出のためか、1幕でハンナとダニロが出会った直後の場面に移っています。

このほか、2幕でゼータ、ダニロ、ニグシュの3人で秘密会談を「あずまや」で開くことを決める場面が省略されているため、突然、3人が「あずまや」に現れるという不自然な流れでした。

このほか、リニューアル版では、登場人物の位置づけ変わってしまいました。役の位置づけが最も変わったのはニグシュでしょう。「ちょっとおっちょこちょいの執事」から「まともな執事」(秘書みたいな感じ)になってしまいました。したがって、ニグシュがお芝居で笑わせるシーンは、ほとんどなくなっていたのです。

また、プルミエ当初は、観客席に歌手が出てきて歌う場面が2箇所ありました(1幕の「ダニロ登場の場面」と「3幕の冒頭、ゼータ男爵が歌う場面。この歌は、旧演出ではありませんでした」)。観客を驚かせる効果はあるものの、歌が後ろに抜けてしまうので、歌を味わうことができず、魅力が半減してしまいました。

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リニューアル版では、舞台装置も大きく変わりました。最近の流れを反映してか、大幅に簡素化されてしまいました。1幕では、唯一大道具と呼べそうなものは、舞台右手の大階段だけです(そもそも、大階段の上が玄関という不思議な構造の大使館です)。しかも、プルミエの頃の大階段は壁がない「工事現場の階段」のような作りでした(二枚目の写真をご覧ください weep )。

全くゴージャスな雰囲気がありません。さらに部屋の造作は省略されており、遠くにエッフェル塔が見える背景があるだけでした。シンプルと言えば聞こえは良いですが、早い話が“お金をかけずにつくりました”という感じです。そしてプロンプターボックスの上には、巨大な唇のオブジェが…bearing

驚いたのは2幕と3幕です。2幕の舞台装置は、1幕とは打って変わって「森の中」という雰囲気で、舞台前面には半透明のスクリーンが下がっていました。完全にメルヘンの正解です。

本来、第2幕はハンナが、遠い故郷の雰囲気を味わってもらおうと主催したガーデンパーティという想定です。そこで、主催者であるハンナが、今の自分の気持ちを重ねて歌うのが「ヴァリアの歌」ですね。従って、お客さまは歌をしみじみと鑑賞しながら、ハンナの心模様を感じ取る…という意図だったのでしょう。しかし、新演出では「ヴァリアの歌」の世界、そのものを再現してしまい、お客さまが自分で自分でイメージをふくらませるという場を奪ってしまいました。

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ヴァリアの歌」は、天井から下がったブランコにハンナが乗って歌うような演出でした。しかも、ブランコに乗ってから、結構な高さまで吊り上げているため、歌が安定しません(当たり前ですが)。歌の途中は妙な「着ぐるみ」を着た「森の動物」が舞台を動き回り、「森の妖精」によるバレエが歌の最中に繰り広げられます(男女のペア)。さらに、幻想的な雰囲気を醸し出そうとしているのか、一番前に半透明のスクリーンをおろしているため、歌手がよく見えません…これにはFeriも開いた口がふさがりませんでしたね。当然、慣れ親しんでいた民族舞踊のシーンは、大胆にもカット。このような凝った演出だったためか「ヴァリアの歌」はリフレインもなし。これにはお客さまもがっかりでした。

女、女、女のマーチ」については、最初から「女神様」みたいな女性2人が登場して、その前で歌う展開になっていました。そのため、“女性がいないところで、男性が女性に対する自分の愚痴を披露する”というシュチュエーションが崩れてしまい、男性陣も歌いにくそうでした。ここは2幕で盛り上がるシーンなだけに、Feriは残念でなりませんでした。

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さらにニグシュが「道化役」ではなくなってしまったため、「楽しい歌」の雰囲気が弱まってしまいました。当然、ここでもリフレインはカット…

2幕のガーデンパーティは、今まで参加者は民族衣装だったのですが、リニューアル版では普通のスーツやドレスに替わってしまったことも、ショックでした。

本来、盛り上がるはずの3幕も大幅に変わってしまいました。まず、旧演出では、3幕の冒頭、専門のカンカン・ソリストによるすばらしい妙技が観客を魅了していましたが、新演出では、それがなくなってしまいました。このカンカン・ソリストの演技が、舞台を華やいだキャバレーの雰囲気にしていただけに、これも crying ショックでしたね。

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また、旧演出では、毎回、盛大な拍手がわき上がり、ベランシェンヌ率いる合唱団による「グリゼッティンの歌」、「天国と地獄のギャロップ」によるカンカンへと流れ込んでいただけに、かなり戸惑ったものです。それ以上に、ショックだったのは「天国と地獄のギャロップ」が完全に消えてしまったことでしょう。プルミエの時、お客さまが「天国と地獄のギャロップ」がなくなり戸惑っていたのを、今も強く覚えています。

また、3幕の舞台装置も、信じられないものでした。なぜか踊り子達が、巨大な花びらから出てくるようになっていたのです。その割に、他の舞台装置は簡素で、完全にバランスが崩れていました。それから、天井部分にはなぜか「傘」がオブジェとして配置されていましたね(これは2幕から)。

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そして、3幕の白亜、「唇は語らずとも」ですが、今までは、カンカンが終わると、いったん舞台上から人が消え、ハンナとダニロの2人だけになっていました。ところが、新演出では、参加者、踊り子など、多数の人がいる中で、歌われるため、今ひとつ雰囲気が出なかったことを覚えています。

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なお、出演者については後でご紹介しますが、新演出にあわせて、出演者が全面的に刷新された点も興味深いところです。ちなみにプルミエの際、旧演出時代から出ていたのは、唯一、Morten Frank Larsenだけでした。旧演出時代に活躍した歌役者が、消えてしまったことが、マイナスに作用したのは言うまでもありません。

この結果、地元マスコミから新演出は、強いバッシングを受けました。さすがに、ここまでやってしまうと、お客さまの評価も最悪になってしまったことでしょう。

confident<続く>

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