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October 11, 2009

番外編 テレビで放送されたパリ・オペラ座「メリーウィドウ」

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今日は、「テレビで放送されたオペレッタの話題」です。

パリ・オペラ座(ガルニエ宮)で1997年の大晦日に上演された「メリーウィドウ」が、以前、NHK-BS2の「クラシック・ロイヤルシート」という番組で放送されたことがあります。この放送をFeriはVHSテープに録画したのですが、最近、DVDへ焼き直す作業をした際、改めて見てみました。

ちなみに、ドイツ語では「Die lustige Witwe」と言いますが、フランス語では「LA VEUVE JOYEUSE」と言うようです(読み方が、よくわかりません)。

まず、指揮はアルマン・ジョルダン、演出はジョルジュ・ラヴェリでした。キャストですが、ハンナ役はカリタ・マッティラ、ダニロ役はボー・スコウフス、ツェータ男爵役はワルデマー・クメント、ヴェランシェンヌ役はアンリエット・ボンドハンセン、カミュ・ド・ロシュ役はミヒャエル・シャーデ、ニグッシュ役はタデーウス・ボドゥルスキという面々です。

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さて、曲順をはじめとする演出は、オーソドックスなもので、「お馬鹿な騎士さんは…」はちゃんと2幕に入っています。ただし、演奏のテンポは、全般的に比較的ゆったりとしていました。とくに2幕の男性による7重唱「女、女、女のマーチ」(最初からニグッシュが入っていましたが)は、今のフォルクスオーパー版に比べると、非常にゆったりとした出だしです。また、オペレッタ名物のリフレイン(繰り返し)は一切ありません。そいうい意味で、オペラ調ですね。

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ところで、オペレッタ上演で問題になるのは、「何語で上演するか」ということです。このパリ・オペラ座版では、歌だけではなく、お芝居も含めて「完全ドイツ語版」でした。ただし、一部のアドリブにはフランス語が混じっている場面もありましたね。台詞の多いオペレッタにもかかわらず、原語上演にこだわっているところに、劇場サイドの意気込みが感じられました。最もフランス語で上演したら、歌の部分が難しいかもしれません。

注目の舞台装置ですが、とにかくシンプルです。舞台中央が円形になっており、ここでお芝居が演じられます。1幕は白と黒のコントラストが効いた舞台で、ハンナは、なぜか舞台奥にあるレベーターで降りてきます。2幕については、同じ舞台装置の前に赤いスクリーンを下ろしただけというシンプルなものでした。そのため、1幕と2幕の間が暗転のようにも見えました。

なお、2幕の途中では、このカーテンをしまって、舞台に変化を付けていました。このほか、照明の変化を上手に使って、変化を付けていましたね。なお、2幕の前半では、舞台に近いロジェにニグシュなど出演者が陣取り、舞台上のハンナとやり取りをする場面が見られます。

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おなじみの2幕、四阿の部分ですが、バックのカーテンが開くと、そこに半透明のガラスで仕切られた部屋が登場します。これが、四阿という訳ですが、なかなか工夫していますね。そしてベランシェンヌとカミュ・ド・ロシュが入ると,電気が消える…粋な演出ですなぁ。

笑ってしまうのは、2幕の最後には、すでに舞台後方に踊り子さんがちょっとだけ登場します happy01

注目の3幕も舞台装置は一緒です。ただし、舞台中央に客席(舞台上の)があり、ショーがスタートするまでは、布がかけられています。ニグシュの合図で、布が天井に引き上げられると、ショーのスタートです。

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舞台奥がステージになっており、ここでショーが催されるという趣向です。その後、ベランシェンヌをはじめとするネズミちゃん達は、舞台上の客席に入り、本物の舞台最前列(つまり本物の客席側)へやってきて、歌うようになっています。が、本来、本場であるはずの「カンカン」は一切なし weep 。「グリゼッティンの歌」だけした。ここだけは、「えっー」という演出ですねぇ crying

その後、本国からの財政破綻の電報、ハンナとダニロの名場面へと展開していきます。二人の場面では、周りに全く人が居ないという、こちらはオーソドックスな演出でした。

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さて、最後の最後、出演者全員による合唱が終わった場面で、突然、踊り子ちゃんが大量に登場。「メリーウィドウのメドレー」に合わせてカンカンを盛大に踊り始めました heart02 。女性中心ですが、しっかり男性のカンカン・ソリストも登場します heart04

さすがに本場だけあって、カンカンは見事。つまり、ハッピーエンドになって、カンカンでお祝い…という演出なのでしょうね。さすがフランス、考えましたなぁ。そのためか、ハンナとダニロが、ここで踊る場面が設定されていました。また、この場面では、舞台後方の壁にたいまつが灯り、舞台が引き立てます。

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その後、歌手の皆さんが、順次出てくる「本来のカーテンコール」となっていました。
改めて見てみると、チープな舞台装置よりも、シンプルなデザインの舞台装置も、歌手が引き立って良いですね。演出家のコンセプトがしっかりとしている感じがしました。

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衣装デザインはフランスらしい,洗練されたものでした。ただし、バルカン風の民族衣装はありません。ところで、さすがフランスというか、「ヴァリアの歌」のバックダンサー2名(「森の妖精」をイメージした役)はトップレスでした(芸術作品とは言え、NHKさん、良くそのまま放送したものです delicious )。
ハンナですが、1幕~3幕まで、すべてドレスで登場します(デザインと色が異なります。色は1幕と2幕は黒。3幕は赤)。

テレビ版なので、歌手の実力は判断できませんでした。興味深いのはお客さまの反応で、有名なアリアではちゃんと拍手が出るのですが、お芝居の場面では「笑い」が全く出ません。まるで、オペラのようです。これはドイツ語上演のせいでしょうかね。

この作品、10年以上前の公演ですが、シンプルな舞台装置と演出であるためか、あまり古さを感じません。

それにしても、最近、NHKさん、オペレッタ作品を、 tv 衛星放送のBSも含めて放送しなくなりましたねぇ bearing

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Comments

オペラは偶に観劇に行きますが、オペレッタはこれまで行く機会がありませんでした。

日本ではミュージカルは盛んなようですが、オペラはそこまでではないようです。オペレッタはほとんどやっていないのではないでしょうか。ざっくりと分けてオペラは芸術、ミュージカルは娯楽として(そんな分け方をして良いか問題ではありますが)、オペレッタの位置するところが難しいのかもしれませんね。

オペラ、オペレッタ、ミュージカル、3つとも歌と芝居(と踊りも?)が一緒になったものですが、違いはどこにあるのでしょう?
オペラとミュージカルは違うとは思いますが、オペラとオペレッタは境界が微妙なような気もします。

Posted by: QQ | October 11, 2009 at 10:54 AM

QQさま、コメント、ありがとうございます。

いずれ当ブログで詳しくご紹介しますが、オペレッタがアメリカに渡り、ミュージカルに変わっていきました。

そのため、ミュージカルの「古典」は限りなくオペレッタに近くなっています。逆に、「オペレッタの末期」の作品は、ミュージカルの雰囲気が漂っています。

ちなみに、オペラとオペレッタの違いを厳密に定義づけるのは非常に難しいようです(歴史的な経緯もあるため)。

「大衆娯楽を目的にしたオペラの一様式」と考えるのが妥当かもしれません。とは言っても、オペレッタの歌にも芸術性が高いものもあり、大衆娯楽=低俗なもの、芸術性が低いものという評価には賛成しかねますが…

このあたりのお話は、オペレッタの盛衰とともに、いずれご紹介する予定です。

Posted by: フェリ | October 11, 2009 at 11:31 AM

フェリ・パーチ様、私もちょうど同じテープをDVD化していたところで、同じようなことをしているなとニャリとしました。パリオペラ座管の演奏と音はウィーンとは異なる洒脱なもので、ハハァこれが当時で言う都会・パリ的な演奏かとあらためて認識、節回しもハンガリーやウィーンの香りよりもパリの香りがはっきりと出ていますね。でも優雅なパリ調のDie lustige Witweは充分楽しめました。録画が1/3速VHSだったため同期ズレや画像の劣化があり再生に四苦八苦しましたよ。

Posted by: どてら親父 | October 11, 2009 at 11:38 AM

どてら親父さま、お久しぶりです。

実はVHS-DVDデッキが故障し、修理が完了したためDVD化を進めた次第です。

「Die lustige Witwe」は、一応、パリが舞台ですから、本家・お膝元ということになりますよね。そう考えると、なかなか興味深い公演でした。今となっては、貴重な映像資料かもしれません。

そういえば、パリ・オペラ座の「こうもり」も放送していますね。これは、またいずれ…

Posted by: フェリ | October 11, 2009 at 12:35 PM

Feri様

>このあたりのお話は、オペレッタの盛衰とともに、いずれご紹介する予定です。

楽しみにしています。

Posted by: QQ | October 11, 2009 at 08:04 PM

Feriさん、saraiです。

意外な話題でびっくりしました。
実は何を隠そう、この《メリー・ウィドウ》こそ、saraiが秘かに?、一番、大事にしてきた《メリー・ウィドウ》です。マッティラとスコウフスのワルツのロマンティックなこと、この上もありません。これを見て以来、すっかり、カリタ・マッティラのファンになってしまいました。明後日もNHKのHi-VisionでMETの《マノン・レスコー》が放映されますが、マッティラがタイトルロールを歌いますので、楽しみにしています。
NHKがまた、きれいな画像でこの公演を再放送してくれればいいのですが、まあ、無理でしょうね。
NHKはオペレッタの代わりに?、バレエの放送が多くなっているので、それはそれでいいのですが・・・

Posted by: sarai | October 11, 2009 at 10:49 PM

saraiさま、お久しぶりです。また、コメント、ありがとうございます。

>マッティラとスコウフスのワルツのロマンティックなこと、この上もありません。

確かにウィーンとは違った「独特の雰囲気」がありますね。

Feriも、当時はDVDレコーダー、HDDレコーダーなどありませんでしたから、録画はどうしても3倍速のテープ weep そのため、画質は惨憺たるものです。しかし、今となっては貴重な一本になってしまいました。

Posted by: フェリ | October 11, 2009 at 11:44 PM

Feriさま

先日はトラムや中古レコード店の情報ありがとうございました。

昨日ツアーから帰ってきたばかりのところです。ウィーンではフィルハーモニーの「英雄の生涯」、フィルハーモニカの「プロコフィエフの5番」や歌劇場の「フィデリオ」などを楽しむことができました。

ツアーで一緒になった音楽に詳しい方にオペレッタに詳しいFeriさんのことを話したら、ドイツ語に詳しくないとオペレッタは楽しめないと言われました。オペラよりも物語の展開を楽しむところが多いからでしょうか?

そうそう、トラムのことをせっかく教えていただいたのに、オペラ座前から2番に乗り下車駅を乗り過ごし、危うくとんでもないところまで行くところでした。

Posted by: QQ | October 21, 2009 at 05:37 PM

QQさま、お帰りなさいませ happy01

今週あたりはちょっとお天気が悪かったのではないですか? もう冬の装いかと…

さて、オペレッタですが、確かにお芝居の部分があるので、言葉がわかれば「より楽しめます」。が、予めお話の筋だけを頭に入れておけば、言葉がわからなくても十分楽しいですよ。

音楽もワルツなどオペラよりは軽い感じの notes 曲が多いですし、重唱もたくさんあるので、楽しめます。

定番の「こうもり」「メリーウィドウ」「微笑みの国」あたりでしたが、全く問題はないでしょう。

実際、私が最初にフォルクスオーパーで「メリーウィドウ」を観たときは、いくつか知っている曲はあったものの、お話の筋すら十分理解していませんでした。が、一発ではまったほど「楽しい舞台」でしたからね。そう、 happy01 楽しい舞台…これがキーワードでしょうかね。

次回、ウィーンへお越しの際には、ぜひフォルクスオーパーへも足を運んでいただきますよう、ロベルト・マイヤーさんに代わってお願いしておきます heart02

Posted by: フェリ | October 21, 2009 at 05:50 PM

Feriさま

早速のお返事ありがとうございます。

ドレスデン・ライプティヒ・ベルリンと雪が降るような寒いところを回ってウィーンに着いたせいか温度の割に暖かく感じました。
これがウィーンが最初だともっと寒く感じたのではないでしょうか。
成田に到着した時、東京は25度を超える猛暑日でそちらの方がきつかったです。

上の三都市からウィーンに入ると、建物の色が明るくて瀟洒であり、気持ちが和みました。

今回は予定外の海外旅行だったため、しばらくはウィーンに行けそうにもありませんが、次回ウィーンに行ける時にはフォルクスオーパーに是非行ってみたいと思います。「フィガロの結婚」が好きな私にオペレッタは相性が良さそうですから...

今回参加したツアーはトレイド・ウィンズ・アソシエイツという小さいですが良心的な会社が企画したものです。  
http://www.tradewinds-japan.com/tour091013.html  
クラシックの好きな方なら食指が動く組み合わせだとは思いませんか。

Posted by: QQ | October 21, 2009 at 07:26 PM

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