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November 28, 2009

「チャールダーシュの女王」こぼれ話 その6 番外編

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5回にわたってフォルクスオーパー版の「チャールダーシュの女王」鑑賞記をお伝えしましたが、熱心なファンの皆さまから、温かいコメントをいただき、大変感謝しております confident 。本当にありがとうございました。

調子に乗って今日は「それ以外の劇場」で観た「チャールダーシュの女王」をご紹介しましょう。なお、一部は、以前、当ブログでご紹介していますが、「比較」という意味で、改めてまとめてみました。

Feriは、本家・ブダペスト・オペレッタ劇場ドレスデン・オペレッタ劇場というオペレッタを中心に上演している劇場で、「チャールダーシュの女王」を観る機会に恵まれました。

実は、Feriが最初に観た「チャールダーシュの女王」は、ブダペスト・オペレッタ劇場の「来日公演」(2000年)でした。現地、フォルクスオーパーで前年に観た「メリーウィドウ」によりオペレッタの魅力に取り憑かれつつあった私が、完璧に「はまった」のは、ブダペスト・オペレッタ劇場の「チャールダーシュの女王」なのです。

とにかく来日公演では、「世の中にこんなに面白い舞台芸術があったのか heart02 」と思わせる見事なエンターテイメントでした。とにかく、「来場したお客さまに心から楽しんでもらう」ということを明確なコンセプトにして、運営していますから… そんな訳で、是非現地で観たい、そして現地のお客さまの反応も確かめたい…と考えるようになり、ブダペスト行きを真剣に考えるようになりました。しかし、ウィーンとは事情が違うため、チケット手配方法の情報収集などに手間取り、実現したのは3年後のことです。

では、まず、ブダペスト・オペレッタ劇場版から。懐かしの来日公演でも、何回か観ていますが、現地では2003年5月、2004年2月、2005年6月と、都合3回観ています。まず、演出ですが、基本的に来日公演のものと同じでした。

ところで、同劇場は舞台がフォルクスオーパーよりも小振りなため、舞台装置が全体的にコンパクトにまとめられています。さすが、地元だけあって第1幕のオルフェウス劇場の雰囲気はリアルですね。また、舞台は中央ではなく、向かって左側にあり、右側が客席という設定でした。シルヴァとエドウィンの結婚式も、仲間が沢山集まり、アットホームな雰囲気で行われます。なお、第1幕の演出については、基本的にフォルクスオーパー版とさほど変わりはありません。

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フォルクスオーパー版との違いが際立つのは第2幕です。ウィーンのリッペルト侯爵邸では、突然バレエ団による 「チャールダーシュの女王」と「ハンガリー万歳」のメドレーが披露されます(冒頭の写真は、その場面です)。本来、ウィーンのリッペルト侯爵邸で、ハンガリーのダンスが披露されるのも変な話なのですが、地元のお客様を盛り上げるには最高のタイミングです heart04 。当然、地元のお客様は「手拍子の連続」…。

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ところで、ブダペスト・オペレッタ劇場の特徴は、観客と舞台の一体感なので、演奏の途中からでも、ガンガン手拍子が始まります。これは、アンコールを期待しての手拍子のようです(異様に揃った手拍子は、「共産党政権下のマスゲームの影響」という説もありますが…真相はわかりません)。

ウィーンフォルクスオーパーでは、第3幕の「ヤイ ママン」はアンコールを含めて、通常3回歌われますが、ブダペストでは、盛り上がっているにもかかわらず、なぜか2回でお終い。公演全体の盛り上がりからすると、ちょっと物足りない感じがしますが…

実は、グランドフィナーレに「大仕掛け」がスタンバイしているのですよ happy01 。なお、舞台に上がっていた楽団メンバーは演奏が終わったら、裏からオーケストラピットに戻ってくるのが見えます。とにかくメンバーの数がすくないため、掛け持ちにならざるを得ず、大変です。

さて、フィナーレです。ウィーンフォルクスオーパー版では、「踊りたい」の曲が流れ、シルヴァとエドウィン、スタージとボニ、リッペルト侯爵夫妻がカップルで、フェリ・バチ一人は、見えない相手をパートナーとして踊りながらお開きとなります。

しかし、ブダペスト・オペレッタ劇場では、その後、「元チャールダーシュの女王」であるリッペルト侯爵婦人が再度登場し、シルヴィアとデュエットを披露します。また、その後も演奏が続き、客席もだんだん盛り上がってきます。いわゆる“ブラヴォー”のかけ声もあるのですが、“ウォー”という歓声や、“ヒュー、ヒュー”という口笛がでます。

そして、一度、幕が下りてから、主要な歌手が登場します。その後、再び幕が開き、お客さまの手拍子に応えてカーテンコールの演奏とコーラス、ダンスが始まります。

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カーテンコールのアンコールは、結局3回くらいやっていでしょうか。最後は指揮者が舞台に上がって、舞台の上から指揮をしていました。

とにかく、グランドフィナーレは異様な盛り上がりとなります(その後、数回訪問していますが、プログラムの違いはあってもグランドフィナーレの盛り上がりは一緒です)。同カンパニーにコンセプトである「とにかく楽しい舞台」を具現化していると思います(これも一つの見識です)。

さて、出演者の方ですが、ブダペスト・オペレッタ劇場の場合、ウィーンのような出演者リストは購入することができません coldsweats01

プログラムも全公演共通で、出演予定者がラインナップされているだけです。では、どうやって当日の出演者をチェックするかといえば、それは劇場に掲出される「出演者表」を見るしかありません。文字は比較的大きいのですが、ガラスの中なので、写真を撮りづらいのが難点です。そのため、Feriもブダペスト・オペレッタ劇場に着いては、出演者のチェック漏れがあります。

Feriが観た3回の指揮は、いずれもMAKIÁRY LÁSZIÓ(音楽監督)が務めています。来日公演でも何回か振っていますので、ご覧になった方も多いと思います。ダイナミックな指揮ぶりが印象的ですね。

次に歌手の方では、シルヴァ役は、KALOCAI ZSUZSA、FISCHL MÓNIKA、LUKÁCS ANITAと3回とも異なっています。しかし、何といってもダントツなのはKALOCAI ZSUZSAでしょう heart04 。歌唱力、お芝居、雰囲気、どれをとっても最高です。当時の同劇場のソプラノ歌手の中では、頭二つ飛び抜けているという印象を持っています。最近ではFISCHL MÓNIKAも実力を付けていましたが、当時は、まるで歯が立たない感じでしたね。KALOCAI ZSUZSA演じるシルヴァを観て、ますますはまったといっても過言ではありません lovely

エドウィン役はVADÁSZ ZSOLTが2回、VADÁSZ DÁNIELが1回となっています。こちらは、いずれも甲乙付けがたい感じですね。スタージ役は、SZENDY SZILVIとKÉKKOVÁCS MARAの2人です。ブダペスト・オペレッタ劇場の歌手は、皆さん、踊りが上手なので、ダンスシーンは本当に見事です(これは、正直、フォルクスオーパーよりも上ですね)。

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ブダペスト・オペレッタ劇場ではOszvald Marikaという有名な女性スプレッド歌手がいます。ベテランなのですが、道化役としての「技」は超一流で、現地でも非常に人気があります。来日公演では、彼女がスタージ役を演じたこともあるのですが、さすがに現地では若手に役を譲っており、Feriは観たことがありません。

ボニ役については、3回ともPELLER KÁROLYでした。若手なので、はつらつとした演技と歌がボニ役にはピッタリでしたね。演技は若干大げさなのですが、それがまたブダペスト・オペレッタ劇場の魅力でもあります。

フェリ・バチ役はVIRÁGH JÓZSEFとFÖLDES TAMÁSの2人です。VIRÁGH JÓZSEFは、来日公演にも参加したメンバーですから、ご存知の方も多いと思います。なかなか味のある歌役者さんですね。余談ですが、以前、同劇場にはHARSÁNYI FRIGYEESという役者さん出身のバリトン歌手がいました。彼は、役者さん出身だけにウィーンにカバレストに負けず劣らない見事な歌役者で、フェリ・バチにはピッタリでした。しかし、劇場の総裁が交代してから、演出方針の違いにより、退団してしまったようで、残念でなりません。

ブダペスト・オペレッタ劇場の場合、フォルクスオーパーよりも人数が少ないのですが、個性的な歌役者さんが多く、舞台を大いに盛り上げてくれます。ただ、全般的に歌がダントツにうまいという人が少なく、歌、お芝居、踊りというオペレッタに必要な三要素をバランス良く身につけている人(特に踊りのレベルは高いですね。スプレッド役はアクロバチックなダンスを平気で披露しますから… coldsweats01 )が起用されているようです。そして、少ないながらもオペレッタに欠かせない「歌役者」の後継者育成も進んでいるようです。

次に、ドレスデンオペレッタ劇場(シュタット・オペレッタ・ドレスデン)です。こちらを訪問するようになったのは、大変オペレッタに造形が深い「あんだんて」さまのWebサイトで、その存在を知ったからです。とにかく、現在のヨーロッパにおいて、これほどオペレッタの上演回数が多い劇場はありません。しかも、ドイツ語圏ということで、Feriも取っつきやすい場所です。という訳で、2006年に訪問しました。

こちらの劇場も、最近では方針転換によりミュージカルが増えているものの、オペラはやらないので、オペレッタの上演回数も多くなります(オペラの方は、かの有名なゼンパーオーパーがありますからねぇ coldsweats02 )。

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Feriがドレスデンで「チャールダーシュの女王」を観たのは、残念ながら1回だけです。1回の鑑賞だけで断定的なコメントをするのは危険ですが、全体的にカールマン特有の「躍動感が乏しい印象」を受けました。これは、歌手の中に踊りが得意でない人がいること、それを踏まえた演出によるものだと思います(歌手の特徴にあわせて、無理な演出を避けているきらいがあります。ただし、ワルツは皆さんそつなくこなしていました)。ただし、舞台装置をはじめとする時代設定は、オリジナルに近く、この点は安心して観ることができました。

Feriが観たときのシルヴァ役はMarianneEienbaumでしたが、一生懸命にやっている姿勢は伝わるものの、今ひとつ「チャールダーシュの女王」という雰囲気ではありませんでした。具体的には、歌や踊りの際、チャールダーシュのリズムが、完全に消化し切れていない感じがですね。また、主役の特徴となっている「感情の起伏」が十分表現されていない印象を持ちました。

フェリバチ役のHans-JürgenWieseは、地元でも人気のある歌手のようです。事実、歌、芝居とも魅せるものがありました。しかし、こちらも踊りが若干苦手なようで、この点、物足りなさを感じましたね。ただし、現在のドイツで、歌、踊り、芝居の三つを兼ね備えた「歌役者」を探すのは、非常に難しいかもしれません。また、バレエのシーンも数多く入れていますが、ハンガリー色が弱いものになっていました。

演出では、第1幕、シルヴァとエドウィンの結婚式シーンでは、バレエ団だけの参加となったため人数が少なく、ちょっと寂しい感じがしました。

第2幕のウィーンのリッペルト公爵邸ですが、舞台装置が簡素な割には、雰囲気を出していました。ここでは、ボニ(FrnkOberüber)とスタージ(MaritinaHaeger)の掛け合いが、ひとつの山場になりますが、こちらは楽しい舞台になっていました。しかし、踊りは控えめです。

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さて、第3幕注目の「ヤイ ママン」ですが、歌だけで、踊りを十分取り入れていないため、日本人のFeriとしては、今ひとつ盛り上がりに欠けてしまいました。また、舞台上の楽団もヴァイオリン1名だけと、この点でも寂しい感じがします。

第3幕は、芝居の部分が多いだけに、「ヤイ ママン」でもっと盛り上げて欲しかったという印象を持っています。なお、フェリバチとリッペルト公爵婦人がグランドホテルで、偶然再会する場面は、通常、歌はありません。しかし、ドレスデンでは、「伯爵令嬢マリッツア」で使われる「シミーでダンスを」を二人で踊りながら歌うという趣向でした。こリッペルト公爵夫人は、かつてチャールダーシュの女王(歌手)だったわけですから、これは効果的な演出でした。全般的に、踊りが重要なファクターとなる「チャールダーシュの女王」は、ドイツ系の歌手では難しいかもしれません confident

ドレスデンの場合、カンパニーの規模の問題からか、どうしても自前の歌手を使わざるを得ません。そういう意味では、「チャールダーシュの女王」は、同劇場には向かない演目なのかもしれません。難しいものですね confident

余談ですが、ドレスデンオペレッタ劇場では、今シーズン「白馬亭にて」を上演しています。ご存知の方も多いと思いますが、「白馬亭にて」はドイツで大ヒットしたオペレッタなので、どのように料理しているか、非常に興味があります。年内は12月に2公演予定されていますが、満席です(やはり人気があるようです coldsweats01 )。

ご参考までに、Feriがオーストリア、ハンガリー、ドイツで観た「チャールダーシュの女王」の出演者概要をPDFファイルで掲載しておきます。

「VOP_CSARDASFURSTIN.pdf」をダウンロード

さて、日本では「チャールダーシュの女王」という名称の方が普及していますが、英語だと「The Gipsy Princess」になります。うぅーん、何かFeriが持っているイメージが違いますねぇ happy01

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Comments

Feriさん
「チャールダーシュの女王」こぼれ話、興味深く拝見しました。もし、Volksoperの2010/11のシーズンに上演されるようなら、ぜひ観に行きたいものです。
ところで、ブダペストのオペレッタ劇場で上演される際はマジャール語なのでしょうか? もし、ドイツ語での上演なら、ウィーンから鉄道でも3時間ほどですからブダペストまで足を伸ばす値打ちはあるかもしれませんね。

Posted by: Njegus | November 28, 2009 at 11:55 AM

Njegusさま、コメント、ありがとうございます。

上演の原語について、言及せず、失礼しました。ブダペスト・オペレッタ劇場の場合、現地公演は「マジャール語」です(字幕もありません)。

また、入場料金が非常に安いのも魅力です。正に地元の皆さま向けという感じがしますね。

Posted by: フェリ | November 28, 2009 at 12:42 PM

Feriさま
度々のコメント恐縮です。ブダペストでの上演はマジャール語で英語の字幕もなしでは一寸躊躇されるところですね。Volksoperが2010/11シーズンで上演してくれればそれまで待つつもりですが、Operabaseで調べてみたら、2010年4月~6月にドイツ語圏のGraz, Essen, NürnbergでDie Csárdásfürstinを上演するようです。もし、来年4月?Volksoperの2010/11シーズンのプログラム発表で見当たらない場合には、Der Zigeunerbaron, Gräfin Mariza, Graf von Luxemburg, Im weissen Rösslのいずれかと組み合わせで観に行くのもありかな、とも思っております。ドイツの地方のオペラハウスでのオペレッタは如何なものでしょうか?(Staatsopetette Dresdenでは去年Der Bettelstudentを観ました) Feriさまのご意見を伺えれば幸甚です。

Posted by: Njegus | November 29, 2009 at 05:10 PM

Njegusさま、コメントと情報提供、ありがとうございます。

Njegusさまでしたら、筋をご存知ですから、ブダペスト・オペレッタ劇場で十二分にお楽しみいただけると確信しております。実際、私もブダペスト・オペレッタ劇場が初めというオペレッタ(メアリー中尉)がありましたが、楽しい雰囲気に飲み込まれました(言葉はまるっきりわかりませんでしたが、舞台の進行と見事なお芝居で、だいたい筋はつかめました)。

私は、現時点では、ウィーン以外でオペレッタを鑑賞したのは、ブダペスト・オペレッタ劇場とシュタット・オペレッタ・ドレスデンだけですので、他の劇場については情報を提供できないのが残念です。

余談ですが、カールマンのリズムを見事に再現できるのはハンガリーだと思います。また、行ったことはないのですが、かつてブダペスト・オペレッタ劇場で活躍されたカタリン女史が、別の劇場に移ってオペレッタを中心に上演しているそうです。ただ、場所が東寄りなので、行くためにはそれなりの準備が必要だと思います。

Posted by: フェリ | November 29, 2009 at 06:26 PM

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