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December 13, 2009

どこへ行くのか? 国立歌劇場「マクベス」

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今日は「オペラの話題」です。

先日、「謎のマチネ」で取り上げた「マクベス」。あれだけで本物を見ないのは、ちょっと欲求不満が残ります。というわけで、急遽、安い席が取れたので、見てきました。という訳でYさん、ご希望の「マクベス」のご紹介です。

さて、今回の「マクベス」、指揮はGuillermo García Calvo(代役だから気の毒ですよねぇ)、演出はVera Nemirova(マチネにも出ていた女性)でした。

当日の出演者は、マクベス役(Macbeth)がSimon Keenlyside、バンコー役(Banquo)がStefan Kocán、レディ・マクベス役(Lady Macbeth)がErika Sunnegårdh、マクダフ役(Macduff)がDimitri Pittas、マルコム役(Malcolm)がGergely Németi、スコットランド王ダンカン役(Duncan)がPeter Leutgöb、医者役がAlfred Šramek(ちょい役でもったいない感じですねぇ)という面々でした。

さて、最近の国立歌劇場のプルミエ、だいたい珍妙な演出が多いのですが、案の定、悪い予感が当たってしまいました 。一応、お話の筋はオリジナルを踏襲していますが、舞台設定がハチャメチャ。コンセプトがはっきりしません。

第1幕の魔女が乱舞しているシーンは、確かに幻想的な雰囲気は出ているのですが、全体的に品のない演出に見えてしまいます(ボディペインティングのバレリーナ3名出ます)。マクベスとバンコーは、近代戦でおなじみのボディアーマーを装着して出てきます。何やら特殊部隊のリーダーのような趣ですねぇ。当然、周りの男性はおなじみのスーツ姿。マクベスが領主に任命されるや、その場で歌いながら軍服からスーツへ変身。歌う方も大変でしょうねぇ。

ところで、今回の特徴は、奈落によるジャッキダウン、ジャッキアップを場面転換で多用している点です。第1幕第2場、レディ・マクベスが居城で待つシーンは、寝室と浴室が一体となったセットがジャッキアップで登場しました。当然、ベッドの上にはレディ・マクベスが艶めかしいお姿でのっています。

ここは、ダンカン王の殺害をマクベスにけしかける場面など見所が多いですね。オリジナルどおり、妻にそそのかされてマクベスがダンカン王を殺害しますが、マクベスへの働きかけが弱い感じでしたね(気の弱いマクベス…という感じではなかったので)。マクベスが短剣を持ったまま国王の寝室から出てきてしまうため、証拠隠滅を図るため、レディ・マクベスがマクベスの手から血にまみれた剣をとりあげ、殺害した王の従者の側に置きます。また、衣服に付いた血を浴室で洗い流すシーンがあるのですが、本当に水を使っていました。とにかく、血が出てくるシーンだけが、やけに生々しいのですよ

マクベス夫妻が、バンコーとその息子を殺すために差し向ける刺客は、なぜか大人数。まるでテロリストの趣です。バンコーは大人数の刺客に囲まれて、フルボッコされて息絶えるという展開でした。このあたりも品がないのですよね。

第3場の晩餐会では、レディ・マクベスの「乾杯」が有名ですね。この場面で出てくるバンコーの亡霊は、これまたリアルでした。亡霊に触発されてマクベスが、テーブルをひっくり返すシーンなども入っていました(ちゃぶ台替えしウィーン版)。ところで、マクベスの警備兵はなぜか機関銃を手にしており、最後は、刺客をマクベスがピストルで殺害してしまう展開になっていました(やけに近代的です)。

「魔女の予言」が中心の第3幕では、劇仕立てで予言が伝えられるようになっていました。何か凝りすぎのような感じがしましたが…

第4幕、レディ・マクベスが精神を病み場内を徘徊する場面が前半の見所ですが、レディ・マクベス役のErika Sunnegårdhは歌唱テクニックが今ひとつで、狂乱する場面で観客を魅了することはできませんでした(少なくともFeriは白けて聴いていました)。

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マルコムがマクベスへの反乱を実行する場面では、本来はバーナムの「森の木」を伐り、その枝葉を用いて擬装を行うようになっていますが、今回、兵士は木こりが使う斧を持って進軍するようになっていました。服装は近代的、装備は斧。ミスマッチですねぇ。当然、その斧でバーナムの「森の木」を切る訳ですが…(実際、舞台上の木は上に上がっていき、一応、切り株だけが残ります)。

その後、マクベスとマルコムの軍勢が戦闘を繰り広げるのですが、本演出では、圧倒的な人数を誇るマルコム軍にマクベス一人で立ち向かうような展開になっていました。そして、一騎打ちで終わるのではなく、軍勢に袋だたきになって息絶える…という展開に見えました。

さて、マクベス役のSimon Keenlyside、バンコー役のStefan Kocánは声量もあり、なかなか良かったですね。また、マルコム役のGergely Németiもなかなかでした。

ただ、マクベス役のSimon Keenlysideですが、奇妙な演出のおかげで、バスダブの上に立って歌う、着替えながら歌うといった場面が、あり気の毒な感じがしました 。オペラの場合、歌手のお芝居がうまくないことが時々ありますが、これは歌手本来の演技力以上に、演出家が色々と細かい指示を出す結果だそうです。今回も、演出のVera Nemirovaが「これで良い」と判断したのでしょう

一方、レディ・マクベス役のErika Sunnegårdhですが、高音は比較的出るもののコロラトゥーラなどの歌唱テクニックが今ひとつという感じです。Erika Sunnegårdhについては、カーテンコールの際、ブーとブラアヴァが拮抗していましたね。レディ・マクベスは難しい役ですが、もっとアクが強い方が良い感じがしますね。

これからご覧になる方は、正直、演出は期待されない方がよろしいかと思います。

ちなみに、地元新聞の評はボロクソだったとか…何となく、新聞評が納得できる舞台でした。ちなみに本表題の「どこへ行くのか…」は、新聞評に出ていた言葉の引用です

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