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February 15, 2010

壮絶新演出 グラーツ歌劇場「チャールダーシュの女王」(その3)

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今日も引き続き、グラーツ歌劇場「チャールダーシュの女王」(その3)をお届けしましょう。

第2回までで、公演の概要をお伝えしましたが、シュタットオペレッタ・ドレスデンでお客さまが途中で席を立った理由が、何となくわかりました think

ご存じの方も多いように、ドレスデンは第二次大戦中、連合軍の空爆により大変な被害が出ています。ドレスデン・ゼンパーオーパーに来場されるお客さまの中で、地元の方は、戦争を経験している方も多いですから、一幕はまだしも、二幕に入ったら、その恐ろしい実体験と重なってしまうと思います(一応、脚本の想定としては第一次大戦らしいのですが…)。

しかも、地元にお住まいの方の中にはご家族を戦争で亡くした方も多いでしょう。お芝居だから…と言って観ているには忍びなかったことと思います think

あえて言えば、お客さまの気持ちを無視した演出は「演出家の自己満足」に過ぎません。これでは、出演する歌手や合唱団、バレエ団の皆さんに失礼ではないでしょうか(なお、プルミエ後のオーストリアでの新聞評は、真ん中当たりだったようです。プルミエ時のお客さまの反応は、まずまずだったという情報もあります)。

ペーター・コンビュチュニーさんが、業界で評価の高い気鋭の演出家であったとしても、Feriは、今回の「チャールダーシュの女王」の演出に関しては、高い評価を下す気持ちにはなりませんでした。ちなみに、ドレスデンで1999年年末に初上演された際の模様が紹介されているサイトを、いつもコメントをお寄せいただくSteppkeさまからご紹介いただきました。このサイトの記事を読むと、現地の反応がいかにすごかったかがわかります bearing

グラーツ歌劇場が奇才ペーター・コンビュチュニーさんのプロダクションを持ってきたのには、話題作りという理由があるのかもしれません。余談ですが、シュタイヤマルク州は、「変わったモノが好き」という気風があるようです。確かにグラーツの市内では、なかなかユニークな建物や芸術作品を見ることができます coldsweats02

ただ、演出家の言いたいことはわかる面もあります。というのは、カールマンは第二次大戦中、ナチスの弾圧を逃れるため、ヨーロッパからアメリカに渡ったという経緯がありますから、戦争のむなしさを十分承知していた作曲家だと思います(しかも、親友であったらレハールがナチスから守ってくれると思ったら、裏切られていますからね)。

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結局、戦争は人々の人生を崩壊させる」というメッセージを伝えたかったのかもしれません。でも、それでしたら「自分でオリジナルの作品」を創った方が良いと思いますがね…(ちなみに、この写真に出ているのがヒトラー風の「謎の軍人さん」です。そして後ろには痛々しい姿のバレエ団が… weep )。

さて、演出に関する話題が多くなってしまいましたが、歌手で一番残念だったのが、シルヴァ役がÉva Bátoriさんです。冒頭の「登場の歌」でガッカリしてしまった(ただ、これは演出上の問題もあります)ことも影響していますが、最後まで“なぜ、このおばさんにエドウィンが惹かれるのだろうか”という疑問がぬぐい去れませんでした。

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もちろん、オペラやオペレッタの場合、ご年齢の高い方が、若い乙女の役を演じることが多々あります。が、グルベローヴァさんなどを観ると、大変失礼ながら、あのお歳でもツェルビネッタやルチアの雰囲気を見事に具現化しています。これは、お芝居、とくに役に対する深い理解により、さりげない仕草で若い女性のイメージを出している訳です。

ですから、すばらしい歌役者さんならば、できないことはありません。後半は衣装の関係もあって、多少、違和感は薄くなりましたが、最初の「おばさんイメージ」を引きずってしまいました。また、シルヴァはハンガリー女性ですから、感情に起伏が激しいという理解は正しいのですが、単なるヒステリーと感情の起伏が激しい…は違います。この点を監督さんが、ちゃんと指導しくれていない感じがしますね(左から二番目の方がÉva Bátoriさん。三幕だけ単独で見ると、コスチュームの関係もあり、そんなに変な感じは受けないのですが… catface )。

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今回、一番の拾いもの(といってはご本人に失礼ですが)は、スタージ役がSieglinde Feldhoferさんでしょう。彼女は歌、お芝居、踊りと三拍子そろった「歌役者」さんで、今後の活躍が期待されます。ちなみにグラーツ歌劇場では「サウンド・オブ・ミュージック」のマリア、「マイ・フェア・レディ」のイライザ、「こうもり」のアデーレなどに出演しているようですが、いずれもすばらしい出来だと思います(カーテンコールでは、ウェディングドレス姿で登場です heart04 )。

このほか、脇役になりますが、リッペルト侯爵役のGerhard Balluchさん、リッペルト公爵夫人役のUschi Plautzさん、フェリ・バチ役のGötz Zemannさんなども、良い歌手の方だと思いますが、この演出で良さが半減していた点が惜しまれます。

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なお、エドウィン役がLadislav Elgrさん(この人は長身なので、舞台上でも存在感がありましたね)、、ボニ役がMartin Fournierさんも、なかなか身のこなしが軽く、オペレッタでも期待できると思います。

また、オーケストラは大変よくトレーニングされているようで、見事な演奏でした。このほか、合唱団やバレエ団のレベルも高く、他のプロダクションをぜひ観てみたい気がします。

実際、カンパニーの規模が小さいため、メンバーも限られていると思うのですが、多彩なプロダクションに対応できるところは、さすがオーストリアです。今後も、興味深い演目があれば、ちょっと浮気をしてグラーツ歌劇場にも出かけていきたいと思っています happy01

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オペレッタ |

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Comments

Feriさま
Oper Grazの"Die Csárdásfürstin"のご紹介、まことに興味深く拝見いたしました。なかなか大変な演出のようですね。
私、3月20日にPremiereがあるEssen Aalto Theaterでの,7月9日のシーズン最後の公演を観に行く予定にしておりますが、こちらは演出はMichael Sturmingerという仁のようで、Konwitschnyさんの演出とは違って、オーソドックスな演出の"Die Csárdásfürstin"であることを期待しております。

Posted by: Njegus | February 15, 2010 at 10:08 AM

Njegusさま、コメント、ありがとうございます。

まぁ、ペーター・コンビュチュニーさんの演出意図はわからないでもないのですが、「オペレッタ」らしい楽しさがなくなってしまったのがねぇ。少なくとも私は、終演後、愉快な気持ちにはなりませんでした。

フォルクスオーパーでプルミエを迎えた「ハワイの花」の演出家もドイツ人だったようですから、劇場の考え方が影響しているのでしょうね(どんなに演出家ががんばっても、劇場側がOKを出さなかったら上演できませんから)。

しかし、オペレッタとオペラは明らかに違う舞台芸術なので、オペラ中心の劇場でオペレッタを上演するのは、色々な意味で難しいということを実感しました。

まだ、時間がありますが、後日、Essenの様子もお教え頂ければ幸いです。

Posted by: Feri | February 15, 2010 at 10:44 AM

ペーター・コンヴィチュニーがオペレッタの演出をしたとは知りませんでした。例によって好き勝手をやらかしてるようですね。彼は騒ぎが起こる事を期待している確信犯のような所がありまして、その話題性ゆえか或る種のファンが結構居る事も事実です。
このような風潮を反映した新しい(奇抜な)演出の流れがありますが、繰り返しの鑑賞に堪えられるのでしょうか?新しいものは直ぐ古くなる、古くなっても良いものは残る~コンヴィチュニーが後世どのように評価されるか興味のある所です。オペラにしろオペレッタにしろ音楽が純粋に楽しめないような演出を私は認めません。コンヴィチュニー擁護派のかたのご意見をおききしたいものです。

Posted by: Unicorn(ユニコーン) | February 15, 2010 at 11:59 AM

Unicornさま、コメント、ありがとうございます。

>彼は騒ぎが起こる事を期待している確信犯のような所がありまして

そのようですね。彼に限らず、最近、奇妙な演出が増えている背景には、お客さまが集まらなくなっていることがあるようです。つまり、“オーソドックスな演出は飽きた(もう見た)”。でも、変わった演出だったら“ちょっと見てみようか(怖いもの見たさ)”という地元のお客さまもいるようです。オペラの場合、極めて高い評価を得ている歌手が出演すれば、「演出は二の次」というケースが多々ありますので、それも拍車をかけている可能性もあります(オペレッタは、この人が出ればお客さまを呼べるという歌役者さんがいないので、厳しいですが)。

「美術の世界」のコンテンポラリーアートは、基本的に「完全な創造作品」なので、それはそれで評価できるのですが、「古典」をいじりまくるというのは、私自身、好きになれません。

Posted by: Feri | February 15, 2010 at 12:40 PM

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