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June 14, 2010

番外編 ブルー・アイランド版 オペレッタ「メリー・ウィドウ」

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今日も、またまた「番外編」にお付き合いください。Steppkeさまは、フォルクスオーパーで現演出最後の「メリーウィドウ」を楽しまれたようですが、Feriは日本版の「メリーウィドウ」です。

テレビやコンサートでおなじみのブルーアイランド氏こと青島広志さんが企画構成から手掛けたている「東京室内歌劇場コンサート・オペラ・シリーズ」に、今年は「メリー・ウィドウ」が取り上げられました。

Feriは、今まで青島広志氏が企画したコンサートなどは観たことがありませんでしたが、今回はオペレッタがテーマとあって、出かけることにしました heart04

青島広志さんは、お客さまのことを第一に考えている人で、今まで劇場に足を運ぶ機会がなかったというオペレッタ初心者のお客さまにも楽しんでいただけるよう、低価格でありながら、高レベルのオペレッタ作品づくりを目指したとか。何しろ独特の世界観を持つ「アオシマワールド」がウリですから、どんな演出になるか、興味を持って出かけました。今回の会場は、東京・半蔵門にあるTOKYO FMホールでした。

まず、お話の舞台はパリではなくて、東京にある東京室内大学という架空の音楽大学で行われる創立50周年記念パーティが舞台です。創立記念パーティなので、出席者は音楽大学のOBやOG、さらに新国立音楽大学、藤原音楽大学、二期音楽大学などからも来賓が出席してきます。

もう、おわかりですね。日本の代表的なオペラカンパニー(実は、そこに出演している歌手の皆さんが、今回登場しています)のパロディです coldsweats01 。しかも、東京室内大学は財政難で経営危機状態。何とか、同音楽大学出身音OGであるハンナさんの遺産を大学に寄付してもらいたい…というのが理事長の思惑です。大学教授のダニロはどうやって、ハンナの心をつかむのでしょうかね。

低予算の場合、中途半端にオリジナルを再現するくらいだったら、思い切って設定を変えてしまった方が、うまくいく場合があります。この当たりの「割り切り」が、日本のオペレッタ公演では大切かもしれません。

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さて、指揮は大島義彰さん、演出は青島広志さん、演奏はピアノ伴奏だけで朴 令鈴さんが13日は担当されました。

連続公演なので、主要な役はダブルキャストになっていました。当日のキャストですが、ハンナ・グラヴァリ役は見角悠代さん、東京室内音楽大学理事長のミルコ・ツェータ理事長役は福山 出さん、理事長の妻ヴェランシェンヌ(東京室内音楽大学出身。在学中にツェータ理事長に結婚を申し込まれたという想定)が吉村美樹さん、東京室内音楽大学教授のダニロ・ダニロビッチ役が杉野正隆さん、新国立音楽大学教授カミーユ・ド・ロシュ役が田辺いづみさん(今回は意図的に女性が男性役を担当するズボン役にしたそうです)、二期音楽大学准教授カスカーダ役が伊東大智さん、藤原音楽大学准教授ラウール・ド・サンブリオッシュ役が根岸一郎さん、ボグダノヴィッチ役が折河宏治さん、シルヴィアーヌ役(ボグダノヴィッチ夫人)が萩原みかさん、東京室内音楽大学教授の庶務係長ニグシュ役が山田展弘さん、プリチッチュ役が村松恒矢さん、プラシコーヴィア役(プリチッチュ夫人)が堀野浩史さん(男性が女性役を演じました)、クロモウ役が阿部祐介さん、オルガ役(クロモウ夫人)が高津桂良さん、ロロ役が坂野由美子さん、ドド役が猿山順子さん、ジュジュ役が浦田佳江さん、フルフル役が富永美樹さん、クロクロ役が鈴木美也子さん、マルゴ役が武澤佳絵さん、森の妖精ヴィリア役が浅野美帆子さん、木こり役(兼、ハンナの亡き夫役)が森 靖博さんでした。なお、ソロ歌手の他、合唱団12名も加わっています。

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青島さん自身、プログラムの解説で“「メリーウィドウ」はつまらないオペレッタだ”と書いています。しかし、これは逆説的な意味で、オリジナルを大変良く研究していることが、本公演を見てよくわかりました。というのは聴かせるアリアについては、しっかりとした歌手を起用するなど、本オペレッタの魅力を熟知していることが良く伝わってきます。

ただ、オリジナルのままだと、日本人の感受性に合わないので“「メリーウィドウ」をモチーフに誰でも楽しめるアオシマワールドを展開しました”というニュアンスなのでしょう。実際、今までの公演で上演された「魔笛」は舞台が学校の夜間部と昼間部の争いなどにアレンジ(というか作り替えて)上演しています。

本公演は、いわゆる演奏会形式のオペレッタですが、ちゃんと舞台の上で、お芝居やダンスを披露してくれますので、舞台装置がないだけという感じです。全3幕ですが、休憩は1幕の後(15分間)だけで、2幕と3幕の間は連続(ただし、青島さんのお話で場をつないでいましたが)でした(公演時間は休憩を入れて2時間40分)。時と場所、役の設定以外は、意外とオーソドックスな演出で、曲順もほぼオリジナル通りでした。途中、本来の「メリーウィドウ」で使われない曲が挿入されているのですが、これは公演日によって違っていたようです(これがわかっていれば2回観るのでした…)。

1幕が始まる前、演出の青島広志さんが舞台に立ち、今回の演出意図と出演者の簡単な紹介を行いました。これは、なかなか良い企画でしたね。とにかく青島さんはお話が面白いので、ここだけで客席は爆笑の渦に巻き込まれました(とにかくサービス精神にあふれる方です。脱帽です wink )。

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とにかく、音楽大学出身の「オペラ歌手の生活」を下敷きにしているので、まぁ、お話の面白いこと。“オペラに出ることができないので、結婚式場の聖歌隊に入っている”、“出番が少ないので市民オペラに出ている“、“生活するため銀座のキャバレーでバイトをしているなど”のエピソード(もちろんフィクションでしょうが)がちりばめられています。

また、1幕では、ダニロが登場する前、ヴェルディの名作「椿姫」の「乾杯の歌」を皆で歌うシーンが入っていました。1幕は例によってハンナとダニロが踊るシーンでお開きとなります。

ところで、通常、「メリーウィドウ」は主立った役以外は、ソロパートはないのですが、せっかく本格的なオペラ歌手に来ていただいていることを考慮してか、青島広志さんは粋な演出をしました。実は、2幕の冒頭は、「大学の創立記念パーティの翌日、同じ大学構内でハンナが主催したパーティが行われる」という設定なのですが、余興としてOBやOG達が持ち前の歌を披露するのガラコンサートを入れたのです。

当然、歌は「メリーウィドウ」とは一切関係のないオペラのアリアなどですが、設定も不自然ではなく、よく考えたと思います。ちなみに、シャンソンの「愛の賛歌」(オルガ)、グノー作曲の「ロミオとジュリエット」から「恋に生きたい」(ロロ、ドド、ジュジュ、フルフル、クロクロ、マルゴという踊り子の皆さん)、プッチーニ作曲の「ジャンニ・スキッチ」から「私のお父さん」(シルヴィアーヌ)、ビゼー作曲の「カルメン」から「闘牛士の歌」(ボグダノヴィッチ)などでした。当然司会は、青島広志さん。しかも、ガラコンサートのピアノ伴奏も青島さんが、引き受けていました。まぁ、多芸な方です。

そして、2幕のハイライト「ヴァリアの歌」が、実は興味深い趣向になっていました。通常は、ハンナのソロなのですが、今回は、ハンナが出だしだけ歌い、それを森の妖精ヴァリアが引き継いで歌うという展開だったのです。ヴィリア役の浅野美帆子さんが歌うのは、このパートだけなのですが、非常に良かったですね。さらに、途中から木こり(森 靖博さん)が「ヴァリアの歌」に加わり重唱に変化します。この演出は、ちょっと変わっていますが、非常に聴かせる歌に仕上がっており、キャスティングの妙と言えるでしょう。
「女、女、女のマーチ」は通常通り、男性、ソロ歌手が勢揃いして歌いますが、全体的に短くまとめるため、リフレインは一切ありませんでした。

オリジナルではヴェランシェンヌが落として騒ぎの元となるセンスは、今風にデコレーションを施した携帯電話に変わっていました。そして、その携帯電話に「ハートのイラストと“あなたを愛している”」というメールが入っているという想定でした。ヴェランシェンヌとカミュ・ド・ロシュがしけ込む四阿は、大学構内にある「立派な化粧室」に変わっていました。そのため、「四阿での密談」という設定は削除されており、ツェータ理事長が化粧室を使うためにやってきて、密会がばれる…というストーリーになっていました。しかし、ニグシュの機転でハンナと入れ替わるという設定は、オリジナルどおりです。

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そして、パーティ参加者の前で、ハンナがカミュ・ド・ロシュとの結婚を宣言し、怒ったダニロがその場を去ってから、今度は女性歌手全員で「女、女、女のマーチ」の替え歌「男、男、男のマーチ」を歌うというひねった演出になっていました。

2幕終了後、出演者がコスチュームの準備をする間、青島広志さん(左の写真の方です)が舞台に出てきて、「唇は語らずとも」の解説とともに、3幕のダンスシーンでは、“お客さまも皆さん、ハミングをしましょう”と提案し、全員で練習タイムとなります。オペレッタ協会さんなどでは、全員で歌うようになっていることが多いのですが、ハミングの方が抵抗が少ないので、皆さん、おもしろがって練習していました。しかもお客さまの載せ方がうまい happy01 (“海外でも、「唇は語らずとも」のメロディーでダンスをする場面で、お客さまがハミングをするケースが増えていますよ”というお話)。

3幕のスタートは、「グリゼッティンの歌」です。低予算ながら、銀座の踊り子さんたちは、ちゃんとカンカンのコスチュームで登場。ヴェランシェンヌも踊りながら歌います。「天国と地獄のギャロップ」こそありませんが、歌手の皆さんも精一杯の踊りを披露しながら、「グリゼッティンの歌」を披露してくれましたね。ところで、歌詞がオリジナルとは異なり、“私はギンザジェンヌ”になっていました happy01

そこへ文科省からのFaxをニグッシュが持ってきます。「事業仕分けで、東京室内音楽大学の補助金が大幅に削減される」という情報です。ツェータ理事長は、“ハンナの莫大な遺産(何しろ東京都の予算に匹敵する額という想定ですからね)がないと、大学がつぶれてしまう”と頭を抱えます。

その後、ハンナが亡くなった旦那が気に入らない相手と再婚すると、遺産は親族間で分割贈与になるという話をパーティ参加者に披露します(この時、なぜか、亡き夫が舞台の後ろに登場)。そしてハンナの方から“私はダニロを愛しています”と告白します。亡き夫がガッカリして、引き上げると、それを合図にパーティ参列者が、それまでハンナにプレゼントした品々を返すように求め、ハンナは裸足で立ち尽くすことに…ここで「唇は語らずとも」の重唱になります。

通常の演出だと「唇は語らずとも」の後に、ヴェランシェンヌの浮気がばれ、ツェータがハンナに結婚を申し込むという場面がありますが、話を単純化するため、この部分はカットされていました。

そして「唇は語らずとも」の後は、一気にフィナーレになりました。フィナーレは、参加者全員が「女、女、女のマーチ」(さて女というものは)に合わせてラインダンスを披露するという、これまた普通のオペラ歌手にとっては非常にハードルの高い設定です。相当練習されたのでしょう。日本のオペラ歌手というハンデキャップを乗り越えた見事なダンスでしたね(終わった後、息が上がってしまった人が出たのはご愛敬。演技かもしれませんが coldsweats01 )。

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今回、「メリーウィドウ」の歌は全て日本語バージョンでしたが、演出を極端に変えているため、歌詞も青島広志さんが演出に合わせてアレンジしたようで、非常に適切な歌詞になっていました。オリジナルとは、歌詞の内容が変わっている部分もありますが、逆に聴きやすかったですね。正直、Feriは「メリーウィドウ」の日本語版は今までダメだという認識だったのですが、今回で見方が変わりました。

ピアノ伴奏だったこともあり、歌手の皆さんの歌い振りは、声量も含めて見事でした。とくに日頃、ダンスをしながら歌う、お芝居を単独で行うという経験の少ないオペラ歌手の皆さんに、よくここまで演技とダンスができるようにしたものだと思います。ハンナ役は見角悠代さんは、声の綺麗な方ですが、ちょっと中音域の声量が足りないような感じがしました。

この当たり、演出を手がけた青島広志さんの手腕(人徳もあるのでしょうかね)によるものだと思います。実際、体中が痛くなって大変だったそうです。皆さん、それほどの熱演でした。また、お芝居の部分も、「オペレッタ慣れ」しているオペレッタ協会の皆さんと比べても、遜色がないどころか、上回る部分も多々ありました。

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ヴェランシェンヌ役の吉村美樹さんが京都弁でセリフを言うところが、面白かったですね。ところで、今回、ちょっとしたハプニングがありました。プラシコーヴィア役の堀野浩史さんは非常に背が高い方なのですが、実は1幕の途中で、舞台袖に引き上げる際、鴨居に頭をぶつけ、負傷してしまいました weep 。そこで、急きょ、1幕の途中から青島広志さんが代役としてプラシコーヴィアに扮して登場しました(そのためプラシコーヴィアがソロで歌う場面が差し替えられました)。

1幕の終了時、青島さんから事故の説明がありました。幸い軽傷だったようで、カーテンコールでは、堀野浩史さんがプラシコーヴィア役のコスチュームで登場しました(ただし、頭には治療の跡がありましたが…さすがプロ)。

ちなみに会場となったTOKYO FMホールは300席ほどの小ホールだったので、舞台の熱気が良く伝わってきましたが、年に1回、わずか4公演(12日は昼夜2回公演)というのが本当に残念です。また、千秋楽は満席になりましたが、十分告知されていないのも残念です。Feriも「Austria-fan.com」さんの公演情報で知ったくらいですから bearing 。クラシックファンではない方にも「敷居が低い」公演だったので、多くの人に観ていただきたかったですね。お値段も手頃でしたので…

バレエ団こそ入っていませんが、お客さまに喜んでもらうことを第一に考えているブダペストオペレッタ劇場の公演を彷彿させるものがありましたね heart02 。Feriも次回はオペレッタではなくても、顔を出したいと思っています。

なお、東京室内歌劇場のスタッフがブログを運営していらっしゃるようで、結構楽しい裏話が載っています。


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Comments

ご来場ありがとうございました!!
ロロ役のユミユミです。
ブルーアイランド版お楽しみいただけましたでしょうか・・・。

赤いリンゴの武井さんとも仲良しです!

またこちらのブログに遊びに来させていただきます!!

Posted by: ユミユミ | June 14, 2010 at 11:20 AM

ユミユミさま、ご出演者からコメントを頂き、感激です。

白状すると自由席だったので、最前列で観ていました。皆さん、本当に練習が大変だったのではないかと思います。本当に楽しい一時でした。
しかし、A組とB組で曲目が一部違うことが最初からわかっていたら、連日、行ったのですがね。来年の演目が何になるか楽しみです。

お差し支えない範囲で結構ですから、公演の演目などが決まったら、お知らせいただければ幸いです。姉妹サイトのAustria-fan.comでもPRしてもらいますので heart04

Posted by: Feri | June 14, 2010 at 11:35 AM

以前、テレビ東京で青島さんを追っている番組を見て親しみやすい作り方をされているなぁと思っていました。
メリー・ウィドウをそんなに変更されていたんですか!
今更ですが、見たかったぁ

Posted by: いづみ | June 22, 2010 at 06:07 PM

いづみさま、たびたびのコメント、感謝 happy01

Feriも青島さんの舞台は初めて観ましたが、とにかくサービス精神が旺盛な方です。そして、よくお客さま心理を押さえていますね。それにしても、普通のオペラ歌手にあそこまでやらせるかねぇ…という感覚を覚えましたが、これは青島さんのお人柄によるものだと思います。
とくにオリジナルを知っているFeriからすると、久しぶりに楽しめる舞台でした。

通が唸る…そういう演出ですね。

Posted by: Feri | June 22, 2010 at 08:28 PM

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