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December 14, 2010

Sándor Némethさん登場が「ジプシー楽団のリーダー」

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13日からウィーンでは、クリスマスツリーの販売が一斉に始まりました。朝からツリーを買い求めて、自動車で自宅などに運んでいる人を見かけました。

さて、オペレッタ欠乏症にかかっていたferiですが、「オペレッタ特集 第二弾」は、バーデン編です。

今年のバーデン市劇場で注目されるオペレッタ作品はカールマン作曲の「Der Zigeunerprimas」です。定番の日本語訳がないのですが、「ジプシー楽団のリーダー」といった趣でしょうか。オペレッタファンのferiとしては、こういった珍しい作品は見逃すことはできません。

しかも、劇場のWebサイトを見るとタイトルロールをferiが尊敬してやまない歌役者Sándor Némethさんが出るではありませんか heart04

さて、このオペレッタですが、ほとんど資料がない作品で、あらすじを探すのも一苦労です。また、全曲版のCDなども見たことがありません。

内容は、年老いたジプシー楽団の座長(伝説の大スター)一家の世代交代に恋物語をからめたお話です。1912年10月に、ウィーンのヨハン・シュトラウス劇場で初演されたそうです。

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さて、feriが見た当日の指揮はLászló Gyükérさんが務めました。主なキャストは、ジプシー楽団の座長Pali Rázcs男爵がSándor Némethさん、息子のLacziがAlexander Pinderakさん、娘のSáriがGabriele Kridlさん、姪の歌手JuliskaがLuisa Albrechtovaさん、Jean Estragon伯爵がJosef Forstnerさん、伯爵夫人IriniがGaby Bischofさん、伯爵夫人の甥GastonがRoman Martin、Francois de CadeauがBeppo Binderさん、Ferdinand MoserがWalter Schwabさんという面々でした。なお、基本的にシングルキャストで回すようです。

三幕構成で、第一幕は楽団のパリ公演を前に、プローベに余念のない一座が舞台です。Pali Rázcs男爵は、今はジプシー楽団の座長ですが、かつては名ヴァイオリニストとして一世を風靡していました。

Pali Rázcs男爵はプローベで、伝統的なジプシー音楽のスタイルが決まらないメンバーを見て、厳しい指導を行っています。なかなか仕上がらないのでマネージャーも気をもむ一方です。ちなみに二枚目の写真は第一幕のプローベシーンで披露される踊りです。

そんな中、彼の息子でヴァイオリニストのLacziは、ジプシー音楽スタイルを継承することを嫌い、父親の反対を押し切って音楽アカデミーへ進学してしまいます。困ったPali Rázcs男爵ですが、最終的に姪の歌手Juliskaやダンサーを引き連れて、パリへと出発します。

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第二幕はパリのJean Estragon伯爵邸です。Jean Estragon伯爵は女好きですが、嫉妬深い一面も持っています(三枚目の写真は、Jean Estragon伯爵をたたえるシーンです)。ここにはPali Rázcs男爵のかつてのファンである伯爵夫人Iriniが居ます。

パリへ到着したPali Rázcs男爵は、伯爵夫人Iriniを訪ね旧交を温めます。ここで「チャールダーシュの女王」の「踊りたいの」が演奏されます。ただし、熟年バージョンですが…若い頃を思い出しながら、スローペースで歌う…これが、また良いのですよ。

一方、娘のSáriは伯爵夫人の甥Gastonといい仲になってきます。このあたり、「チャールダーシュの女王」のスタージとボニみたいな感じですね。二幕では二人のデュエットがあるのですが、リフレインが入っているなど、「オペレッタの王道」を行く演出です。

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さて、Pali Rázcs男爵はパリで偶然、息子のLacziと再会しますが、冷え切った親子関係は修復できません。しかし、公演を前に老いを感じたPali Rázcs男爵は、伯爵夫人Iriniのアドバイスもあり、演奏スタイルは気に入らないものの、座長の座を息子のLacziに譲ります。

第三幕の舞台は、パリから戻った一座です。人払いをして、一人、伝統的なジプシースタイルのヴァイオリンを演奏するPali Rázcs男爵。そこへ伯爵夫人Iriniがやってきて、彼の演奏に聴き入ります。Pali Rázcs男爵は老いたとは言え、未だに高い演奏技術を持っていたのです(なお、実際にはSándor Némethさんはヴァイオリンを弾けませんので、専門の奏者がステージ裏で弾いていました)。

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伯爵夫人を追っかけてきたJean Estragon伯爵やJuliska、Laczi、Sári、Gastonなどが集まり、Pali Rázcs男爵のドラマチックな演奏を聴き、改めて伝統的なジプシースタイルのすばらしさを再認識します。最後は、JuliskaとLaczi、SáriとGastonが結ばれて幕となります。まぁ、「ハンガリー音楽万歳」といった終わり方ですね。

この作品、カールマンらしいところは、ハンガリーの伝統的なダンスのリズムと、ウィーンのワルツが作品の中でもぶつかり合うということです。正にカールマンの世界です。

今回のPali Rázcs男爵は、元大スターながら、今は年老いた座長という役柄なので、Sándor Némethさんにぴったりでした。お歳を召した姿が、逆にリアルな感じがしましたね。バーデンは劇場が小振りの分、オケの人数も少ないので、声量が多少弱くても何とななります。そういう意味では、向いていたかもしれません。

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とくに踊りのステップなどには、軽やかに踊っていた往年の面影があり、実像と役柄が重なって見えました。渋いおじさまの魅力爆発…と言ったところでしょうか。伝統的なジプシースタイルを伝承させたいと思う父親と、伝統に縛られたくないと考える息子との確執などは、見事に表現していましたね。

また、お相手役の伯爵夫人IriniのGaby Bischofさんも、渋めのおばさま役で良い味を出していました。

若い二組のカップルの恋愛模様も気になりますが、このオペレッタは、Pali Rázcs男爵と伯爵夫人Iriniとの熟年カップルが、実は主役です。ご年配のお客さまが多いバーデンだけに、お客さまの反応も上々でした。

全体的には歌手の仕上がりなどに不満がありましたが、演出が良く、きれいで楽しく、ホロッと来るオペレッタに仕上がっていました。

フォルクスオーパーとはひと味違った雰囲気のオペレッタです。お値段も手頃なので、オペレッタファンの皆さまには、是非お勧めしたい作品です happy01

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Comments

Feriさん、ご無沙汰しています。Steppkeです。
そちらは寒く、雪も続いているようですね。

Badenのレア物オペレッタに行かれたこと、いつもながら、うらやましいです。
しかし、Sándor Némethさんが主役とは、素晴らしいですね。最近、急に老いが目立つようになって来て(あのFeri bácsiが..)寂しい限りですが、このように活躍されるとうれしくなります。
Badenは、やはりWienに近いせいか、Volksoperで活躍されている方もよく出演されるようで、Peter MinichさんがFrühjahrsparade(Stolz)の皇帝役で出演されたこともありました。(2005年夏)

ところで、Der Zigeunerprimasの全曲CDは、2種類出ています。
1つは50年ほど前の録音で、Galaレーベルから出ている放送録音のCD化です。
もう1つは2003年の新録音で、Münchenでのライブ録音(cpoレーベル)です。JuliskaはVolksoperでも活躍されているEdith Lienbacher、PaliはStaatsoperのWolfgang Bankl、他にZoran Todorovic、Roberto Saccàと録音することを前提にした、なかなか豪華な配役です。
cpoレーベルは、レア物オペレッタの新録音を出してくれるので好きなのですが、数が結構あって追いかけるのが一苦労なのと、やはり忘れられた作品にはそれなりの理由があるものだと納得してしまうことも多く、Der ZigeunerprimasもBadenでの上演が分かるまで、聴いたことがありませんでした。

Posted by: Steppke | December 18, 2010 at 12:59 PM

Steppkeさま、ご無沙汰しております。また、コメント、ありがとうございます。

正直、観るまではどんなオペレッタなのか見当も付かなかったのですが、なかなか味のある作品でした。

「熟年の恋」がテーマになっており、ある種、バーデン向きかと思います。カーテンコールでのSándor Némethさんの笑顔が最高でしたね。やはりオペレッタがお好きなのでしょう。

今後もバーデンで隠れた逸品を上演してくれるとありがたいと思っています。

また、CD情報、ありがとうございます。今度、探してみます。

Posted by: feri | December 18, 2010 at 11:18 PM

Feriさん、こんばんは。Steppkeです。

"Der Zigeunerprimas"の最終公演に行って来ました。

Sándor Némethさんの役どころを含めて、"Die Csárdásfürstin"の二番煎じのような感じが無きにしも非ずでしたが、埋もれたままにしておくには勿体ないオペレッタで、舞台もBadenらしくアンサンブルを重視した、手堅く好ましいものに感じられました。
確かに、Némethさんは、今のお歳ではFeri bácsiよりもこの役の方が似合っており、無理なく演技され、歌われていましたね。
しかし、往年の姿からすると、やはり少し寂しいものがありました。(ちょっと、ポパイに似た感じ?)

また、Volksoperでお馴染みのJosef Forstnerさんが、爆笑ものの元国王を演じられていました。彼も結構なお歳のはずですが、まだまだ身軽で、声もよく響いてました。
Roman MartinさんとGabriele Kridlさんのペアは、Badenの定番と言ったところで、舞台が締まります。
それに比べて第1のペアは、ちょっと弱かったように感じられました。

ところで、Volksoperの"Die Csárdásfürstin"で、BoniとStasiが歌う"Hajmási Péter, Hajmási Pál"が、こちらでも結構重要なメロディーとして使われてましたね。
"Die Csárdásfürstin"には元からは無かったと思われますが、こちらが原曲なのでしょうか?


その前日は、"Schwarzwaldmädel"でした。
(この時期に行ったのは、2曲が2日続きで聴けるのが他には無かったのと、更にその前日にMünchenでGarančaのコンサートがあったからです)
あまり舞台にかかることが多くない点は同じですが、非常に有名で、私は昔から大好きな曲です。

こちらでは、主にStaatsoperで活躍されているPeter Weberさんが、老け役として大活躍でした。
また、Volksoperにもたまに出演されているようですが、Badenの顔の一人といってよいStephan Wapenhansさんが、ブッフォとしてよい味を出してます。
ここでも、Badenのアンサンブルの良さが感じられました。是非おすすめです。(もう予定に入れられているとは思いますが..)

Posted by: Steppke | February 02, 2011 at 12:03 AM

Steppkeさま、お帰りなさいませ。

バーデンにいらっしゃったことは、風の便りで存じ上げておりました coldsweats01

確かに"Die Csárdásfürstin"に似ている面はありますが、私は伝統的な演奏法にこだわる座長の心情にひかれました。オペレッタの場合、女性が事実上の主役になるケースが多いですが、これは、そういう意味で珍しいですね(まぁ、実際には伯爵夫人が重要な役割を担うわけですが)。

>BoniとStasiが歌う"Hajmási Péter, Hajmási Pál"が、こちらでも結構重要なメロディーとして使われてましたね。
そうそう。これは私も意外でした。ただオペレッタの場合、曲の使い回しは比較的多く行われているので、どちらが先だったのかは、私にもわかりません。ただ、ご存じのように"Die Csárdásfürstin"は"Der Zigeunerprimas"の3年後に発表されたオペレッタですから、こちらが先だった可能性はありますね。

"Schwarzwaldmädel"の方も、バーデンらしい良い仕上がりだったようですね。

実は、先日、VolksoperのWebサイトをチェックしていたら、3月に再演となる"Die Csárdásfürstin"の指揮に巨匠Rudolf Biblさんが起用されることがわかりました。久しぶりですよねぇ。なお、この公演ではシルヴァはシュタット・オペレッタ・ドレスデンでご活躍のIngeborg Schöpfさんが起用されるようです。客演というのがちょっと残念ですが、Rudolf Biblさんの指揮とあっては、観ないわけにはいきません。"Schwarzwaldmädel"の方も合わせて観ようかと考えています。

ところで、MünchenのGarančaさんはいかがでしたか?

Posted by: Feri | February 02, 2011 at 09:31 AM

Feriさん、Steppkeです。

そうですね。"Der Zigeunerprimas"の方が先ですね。
3年しか離れてないので、後の"Gräfin Mariza"や"Die Herzogin von Chicago"などよりも、響きなども近いように感じられたのですね。
老Primasの姿は、Némethさんの演技もあって、私も惹かれました。
ただ、演出もVolksoperの"Die Csárdásfürstin"と同じRobert Herzlさんでしたし、NémethさんのFeri bácsiはさすがにちょっと無理な感じもあって、同じような役でBadenに引っ張って来たのかな、などと勘ぐってしまいました。(Herzlさんが芸術監督ですしね)

Münchenの方は、Garančaのコンサートではなく、本当は、Riccardo Muti指揮バイエルン放送交響楽団・合唱団の特別コンサートでしたが、私にとってはMutiはどうでも良くて..
ポルポラ、ヴィヴァルディ、ヴェルディの宗教曲というプログラムで、Garančaの声は深く響き、このような曲にも合ってました。(まあ、どうせ贔屓目でしか見られません) ただ、ヴェルディは合唱のみでソロは無い(ごく一部にソプラノ・ソロがありますが、これは合唱団の日本の方が歌いました)為、登場は前半だけで、ちょっと残念でした。
BarcelonaでのGruberovaとの"Anna Bolena"の合間を縫ってなので、結構強行軍だったはずですが、キャンセルされなくてほっとしました。(最近キャンセル魔と化しているところがあるので) ただ、Muti御大なので、よほどのことでもない限りは、とも思ってました。
バイエルン放送がテレビの生中継をしてましたから、どこかにupされているとは思います。(私が行った翌日のコンサートですが)

風の便り..どちら方面から吹いたか丸分かりですね。

Posted by: Steppke | February 02, 2011 at 10:38 PM

Steppkeさま、お忙しい中、Münchenのレポート、ありがとうございます。

>ポルポラ、ヴィヴァルディ、ヴェルディの宗教曲

なかなか興味深いプログラムですね。

このところ、バーデンもがんばっていますね。このようにフォルクスオーパーと違う演目を上演してくれると、オペレッタファンとしては楽しみが広がります。

ところで、最近、ウィーン国立歌劇場の方が若干低調なので、Barcelonagaが気になっています。が、さすがに遠いですね coldsweats01

Posted by: Feri | February 02, 2011 at 11:21 PM

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