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May 22, 2011

フォルクスオーパー「メリーウィドウ」プルミエレポート(1)

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オペレッタファン、フォルクスオーパー・ファンの皆様、お待たせしました。2010/2011シーズンのフォルクスオーパー、最大の関心事、名作オペレッタ「メリーウィドウ」のプルミエが5月21日に行われました。その模様を二回にわたってお伝えしましょう。ウィーンは、この週末、「ライフ・バル」を始め、行事がてんこ盛りでしたが、それは一切無視。「オペレッタにはまっている男」としては、2012年の来日公演でも上演が計画さている「メリーウィドウ」以外、考えられません。

ウィーンでは定番オペレッタの改訂は「鬼門」で、これでこけるとダイレクターの評価が急降下してしまいます。そういう意味では、マイヤーさんの真価が問われる作品と言えるでしょう。

まず、今回の新演出ですが、演出はチューリヒ出身のMarco Arturo Marelliさんです。すでに各地のオペラ座で活躍している方で、ウィーン国立劇場では「無口な女」、「ジャンニスキッキ」、「夢遊病の女」、「魔笛」、「カルディヤック」、「ファルスタッフ」などの演出を手がけています。ただ、オペレッタの演出は、今回が初めて。その点が心配だったのですが、ロベルト・マイヤーさんをはじめとする劇場側スタッフと入念な協議を重ねたようで、なかなか楽しい舞台に仕上がっていました。

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まず、プルミエの指揮は「伯爵令嬢マリッツア」などを振っているHenrik Nánásiさんがつとめました。主なキャストですが、ツェータ男爵はKurt Schreibmayerさん、ベランシェンヌはSophie Marilleyさん、ハンナはAlexandra Reinprechtさん、ダニーロはDaniel Schmutzhardさん、ニェーグシュはRobert Meyerさん、カミーユ・ド・ロションはMehrzad Montazeriさん、カスケード子爵はGyula Orendtさん、大使館員クロモフはGeorg Wacksさん、クロモフの妻オルガがClaudia Kraxnerという面々です。ほとんどが、初起用という面々なので、正直、心配なところもありました。

○役の性格付けを変えたようです
従来、ダニーロは「退廃的な伊達男」といったイメージがありましたが、正直、今の時代、ウィーンのお客さまを満足させることができるようなイメージを持った歌役者さんを探すのが難しいと思います。おそらく、その雰囲気を持った最後の歌役者さんが、お若い頃のKurt Schreibmayerさんだろうと思います。

そこで、今回、ダニーロの性格付けを変えたようです(これは確かめた訳ではありません。あくまでもFeriの感じたものです)。どう変わったか。「母性本能をくすぐるような意地っ張りの男」といようなイメージではないか‥と思います。つまり、「あなたは、私がいないとだめなのよ」とハンナが思うような人物設定という訳です。その観点で見ると、Daniel Schmutzhardさん演じるダニーロのお芝居は、見事にはまっていました。なお、歌役者さんの評価は後編でご紹介しますが、Daniel Schmutzhardさん、なかなか堂々とした歌いぶりでしたね。

また、脇役陣の性格付けを変えたため、より人物像が明確になった感じがします。このほか、ニェーグシュが「気が利く、しっかり者の書記官」(とは言っても抜けているところも残っています)になっていました。さらに、ニェーグシュが伊達男ぶりを発揮する場面が何カ所か設定されているのですが、これはダニーロを補うためかもしれません。とくにプルミエの時は、ロベルト・マイヤーさん自身が出演されたので、完全に周りを食っていましたね。

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○時代設定をあえて明確にしないテンポの良い演出
今回の新演出では、あえて時代設定を曖昧にしたようです。そのため、コスチュームはパーティ用の衣装が基本となっていました。通常、一幕はポンテヴェドロ公使館、二幕と三幕はパリにあるハンナ邸という設定が多いのですが、今回はすべてポンテヴェドロ公使館でのお話のような雰囲気になっていました。実際、二幕と三幕の場所設定ははっきりしていません。

マイヤーさんがダイレクターになってから、お芝居がしっかりする演出に切り替わりましたが、今回の「メリーウィドウ」でも、細かいお芝居を省略することなく入れているため、場面の必然性がよくわかるようになりました。上演時間が、2時間45分(休憩一回を含む)に納めているにもかかわらず、非常に内容が充実しています。その分、全体的に無駄な部分をそぎ落とし、テンポの良い展開が特徴です。

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○モダンな舞台装置
もう一つ気になるのは舞台装置ですが、今回は演出家のMarco Arturo Marelliさん自身がデザインを担当されたようです。

最近、フォルクスオーパーで上演されるオペレッタにしては珍しく、比較的立派なものでした。印象的だったのは、舞台奥にパリ市内の風景が写っていることです。一幕と三幕では夜、二幕では昼の風景に代わります。これによって時間の変化を表しているようです。

今回の演出では、暗転のために幕をいったん下ろすことはありせん。そのため、連続で次の幕に入ることができるように、壁を移動させることで場面転換を図る仕掛けでした。この壁にはドアもあり、二幕のじゅうようなセットになる四阿(パビリオン)にも転用されます。さらに、幕ではバーが重要な位置づけになるため、きれいなカウンターバーのセットが組み込まれていました。Feriの印象としては、舞台装置は前演出(オリジナルの方)に比べると、格段に良くなっています。センスの良さが光りますね。

○前半は‥(一幕から二幕中盤まで)
一幕は約50分とテンポが良いのですが、マイヤーさんらしくお芝居のポイントを押さえているため、見ていて疑問を感じることがありません。これは見事です。気になる曲順、お話の筋は前演出と同じでした。

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今回、序曲が本来のメドレーに切り替わるかと思ったのですが、これは通常どおりでした。ただ、最初は男性陣がスロットマシンに興じている場面から始まります(スロットマシンが出てくるのは、ここだけ)。どうやら男たちはお金に目がない‥そんなイメージなのでしょうかね。その後、祝宴のダンスへと移る展開です。

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前の演出では、ハンナは大階段から降りてくるような演出でしたが、今回は舞台奥から登場です。

公使館にいないダニーロを探しに出かけたニェーグシュは、公使館のロゴが入った自転車で戻ってきます。お国の財政事情を反映している演出なことは明確ですが、小道具としてはおもしろいですね。もっともマイヤーさんが乗っているから‥という面もありますが。

興味深いのは「ダニーロ登場の歌」です。酔っ払って帰ってきたダニーロが舞台上の椅子から転げ落ちながら歌うという、かなりアクロバティックな演出でした。これは歌手に負担がかかりそうです。その後、ハンナとダニーロの再会、ツェータ男爵からハンナと結婚するように言われて拒否するダニーロ、ハンナに群がる男たちを女性たちを駆使して引き離す、ハンナとのダンスの権利を売り出して残った男たちを遠ざける‥といった展開は従来通りです。

興味深かったのは、一幕の最後で、ダニーロとハンナが踊った後、ハンナが踊りの順番を書いたメモをダニーロに投げつける場面です。つまり、“あなたの思うようにはいかないわよ”というハンナのダニーロに対するメッセージでしょうか。

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二幕への転換は暗転ではなく、舞台上の壁を移動させるため、すぐに始まります。これには少し驚きました。しかし、無駄な時間が少ない分、内容が充実しています。

二幕前半は、ハンナが企画した答礼の祝宴ですが、バックは全く同じ。しかし、凝っているのは、「故郷の国を思い出すために、皆さん、郷土の帽子と髪飾りを付けましょう」という流れになっており、参列者が一幕と同じ衣装ながら、舞台上で帽子(男性)と髪飾り(女性)を付けて、雰囲気を変える点です。これもお話の流れとしては、必然性が高いですね。そして、バックのパリ市街は、一幕の夜から、一転した昼間の風景になり、昼間のパーティという設定で明確に示されます。

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何と言っても二幕前半のハイライトはハンナが歌う「ヴィリアの歌」ですが、ここは変な小細工をせずに直球勝負でした(そういえば、昔はブランコに乗って不安定な中で歌っていたこともありましたね)。

演出で変わったところと言えば、ハンナが「ヴィリアの歌」でダニーロにアタックするというコンセプトになっていたことでしょう(周りの参列者の反応も含めて)。実際、ダニーロの頭を膝に乗せて歌うところもあります。ただし、お客さま期待のリフレインはありませんでした。このほか、舞台上に小さな舞台(移動式) を持ち込み、変化を付けていましたね。

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「ヴィリアの歌」と前後してダンスがありますが、ここではバレエ団だけではなく、合唱団も加わり、全員で故郷ポンテヴェドロ国を思いながら踊る展開でした。

その後、壁が移動して舞台右側にバーが登場します。バーテンは当然、ニェーグシュです。ここで、ハンナがツェータに“ダニーロが街に出かけても、今日は彼の好きなグリゼッティンはいないのよ。今晩、マキシムからグリゼッティンたちを、ここへ呼んでいるので、お楽しみにね”と語りかける場面があり、三幕への伏線となっていました。こういったお芝居が良いですね。

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また、ツェータがダニーロに「私を愛している」と書いた扇子の持ち主を捜すように命令する場面も当然、バーです。さらに、ダニーロはバーにやってくる女性たちに、扇子のことを尋ねるという展開になっているなど、バーが重要な位置づけになっています。このカウンターバーですが、舞台天井まで酒瓶が並べられており、非常にきれいで、センスの良さを感じさせます。

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二幕前半のフィナーレは、予想通り男性七重唱の「女、女、女のマーチ」です。今までは、“自分の妻にちょっかいを出すな”という口げんかから始まるのですが、今回は、とっくみあいのけんかになっていました。それをダニーロが仲裁して、バーでハードリカーを飲みながら女性談義をしているところへ、ツェータたちが加わり、酒を飲みながら歌う展開です。

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バーテンのニェーグシュが歌っている途中に酒をついで回るという凝った演出。ただ、今まで恒例だったリフレインなしで、幕となります。お客さまが、「えっ、リフレインはないの?」と、ちょっとあっけにとられている感じがしましたが、その答えが休憩後の二幕後半のスタート時に隠されています。

なお、ここまでの時間は1時間20分と、短いのですが、中身が詰まっている分だけ、充実していましたね。

後半の模様は、明日、お届けしましょう happy01

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