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May 24, 2011

フォルクスオーパー「メリーウィドウ」プルミエレポート(3)

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Feriの思い入れが強いオペレッタなので、レポートが三回にわたってしまいました。今日は最終回です。

○歌手の皆さんは‥
今回は、今までのオペレッタ同様、全員がマイクなしで担当していました。「チャールダーシュの女王」でマイクを使用するようになったので、ちょっと心配していましたが、これで一安心。そのため、歌手の実力がよくわかります。

指揮のHenrik Nánásiさんは、従来からフォルクスオーパーで「伯爵令嬢マリッツア」なども振っているため、オペレッタの勘所を押させている感じがしました。オーケストラとのコンビネーションも良かったと思います。

ツェータ男爵のKurt Schreibmayerさんは、ベテランなので文句なし。さすがにお歳を感じるようになりましたが、まだまだ歌でも十分勝負できますね。何と言っても、ウィンナオペレッタの勘所を押さえている方ですから、舞台が締まりますね。

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ハンナのAlexandra Reinprechtさんは、堂々とした歌いぶりで、存在感も抜群でした。お芝居も上手で、役柄をよく理解した上で、ご自分のキャラクターを前面に出しながら演じていたように感じました。こちらの新聞評でもブリリアントと評価されているようです。彼女は若干、太めなのですが、その分、良い意味でかわいらしさがあります。恋の駆け引きにたけている女性‥という感じが出ていましたね。

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当初心配したダニーロのDaniel Schmutzhardさんですが、実際には非常に歌がうまく、お芝居も見せるものがありました。彼はテノールではなく、バリトンなので、歌に力強さがあります。「伊達男カラー」を弱めた今回の演出では、合っているのかもしれません。まさに21世紀のダニーロという感じでしょうか。

ベランシェンヌのSophie Marilleyさんは、今回がフォルクスオーパー、初出演。三幕では見事な踊りも披露してくれました。実は踊りだけではなく、歌もなかなかうまく、カミーユ・ド・ロションのMehrzad Montazeriさんとのコンビも抜群です。今後が期待できますね。

カミーユ・ド・ロションのMehrzad Montazeriさんは、以前にも同じ役で出ていたことがありますが、今回の演出の方が、のびのびと演じているように感じました。また、歌は例によって張り切っていました(男性でソロパートがあるのは、ダニーロを除くとロションだけなので、気合いが入るのはよくわかります。若造には負けないぞ‥というライバル意識があったのかもしれませんね。わかりますよ)。

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その他、脇役陣も含めて、役の性格付けがしっかりしており、従来よりも厚みを増した感じがします。今回のプルミエ・メンバーで、極端に水準が下がる歌役者さんは、いませんでした。これは、最近の公演では珍しいです。ずばり、キャスティングの勝利‥と言えるでしょう。

○事前公演、プルミエの二回を観て‥
今回、事前公演、プルミエでキーマンとなったのは、当然と言えば、当然ですが、Robert Meyerさんが演じるニェーグシュです。八面六臂の大活躍で、「ニェーグシュのためのメリーウィドウ」みたいな雰囲気になりました。

恐らく、定番の改訂ということで、成功に向けてダイレクターの強い思いがヒシヒシと感じられました。とにかく属人化している技をふんだんに出しているため、観ているお客さまは大満足でしたが、セカンドクルーが対処できるかどうか疑問が残ります。もちろん、これが杞憂に終われば、申し分ないのですが‥ ただ、2012年の日本公演でのキャストは、まだ発表されていませんが、マイヤーさんのニェーグシュは決まりでしょう。

ところで、「メリーウィドウ」は、通常、ハンナとダニーロの恋模様に焦点が当たりがちですが、実は、公使館員の女性たちは浮気をしており、男性陣は妻の不倫に疑心暗鬼。結構、水面下で皆様、男女関係を楽しんでいることがわかります。やはりパリに来ると人は変わるのでしょうかね。

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さて、気になるのはダニーロの性格付けを変えたことです。実際、プルミエでも演出家のMarco Arturo Marelliさんに対して、一部ですがブーイングが出ました。これは、“私のイメージしているダニーロとちゃうで!!”というニュアンスだったのかもしれません。

来年の日本公演でも、「伊達男ダニーロ」のイメージが強く持っていらっしゃる古くからのオペレッタファンには評判が悪いかもしれません。ただ、今の歌手を探しても、伊達男ダニーロに雰囲気がぴったり合う人は見つからないと思います。そう考えると、出演者の持ち味(個性と言っても良いでしょう)を生かせるような性格付けというのも、Feriとしては「有り」だと思っています。少なくとも、今回はそれが成功したと思います。古いものを古いまま上演するという考えもありますが、広く多くの人たちに楽しんでもらう舞台芸術に仕上げるというのは、本当に大変なことだと痛感しました。

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こちらの新聞評ですが、好意的な論評が目立ちます。たとえばdie Presse紙では、「Volksoper: Auf ins lockende Maxim!」(魅力的なマキシムで‥というニュアンスでしょうかね)というタイトルで評論をしていました。2005年のプルミエの際はボロクソに叩かれましたからね。また、すでに2012年の日本公演を意識したコメントを出しているところもありました。

新聞評を抜粋すると、「演出の巧妙さ、レベルの高い主役と脇役たちは歌唱力だけでなく演技もうまい。バレエの振り付け、歌手たちの動作も洗練されている。成功した理由のひとつはダニーロを、これまでのへースタースやセラフィンといったタイプから脱皮したことと、女性が強くなった現代風にしたこと。それがアールデコ調の舞台装置とうまく調和」という内容が見られました。さらに、「ニェーグシュは天下一品」だそうです heart04

いずれにしても、Feriとしては、最近のフォルクスオーパー新演出で、成功したオペレッタの一つだと思っています。こういった落としどころを、気鋭の演出家と組んで実現したロベルト・マイヤーさんに脱帽です。オペレッタファンの皆様、日本公演の前に、是非、是非、フォルクスオーパーへ足を運んで頂き、「メリーウィドウ」を味わってください。ダイレクターのマイヤーさんに成り代わりまして、自称フォルクスオーパー・ファンクラブのFeriからのお願いです。

なお、今回のプルミエ当日、劇場のロビーには公演記録が紹介されていました。

・1959年11月12日プルミエ 演出:Paul Walter Jacob 1973年6月までに合計204回上演
・1973年11月16日プルミエ 演出:Otto Schenk 1985年4月までに合計166回上演
・1987年12月25日プルミエ 演出:Jérôme Savary 1992年までに合計94回上演
・1992年9月27日Neueinstudierung 演出:Robert Herzl 2004年6月までに合計181回上演
・2005年6月5日プルミエ 演出:Daniel Dolle 2010年6月までに合計82回上演

このほか、海外公演では日本が圧倒的に多く、1979年、1982年、1985年、1989年、1993年、1999年の計5回、フォルクスオーパーによる「メリーウィドウ」が上演されています。

Feriが「オペレッタにはまる」きっかけとなったのが、Robert Herzlさんの演出によるバージョンですね。しかし、こんな演出をされてしまうと、Feriのフォルクスオーパー通いも、まだまだ続きそうです。秋は「ウィーン気質」が呼んでいます happy01

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Comments

Feriさん、こんばんは。Steppkeです。

3回にもわたる詳細なレポート、いつもながら有難うございます。
こちらで指をくわえていなければならない者にとって、雰囲気もよく伝わり、少しでも参加したかのような気になれます。

実は、プレミエの日(日本では22日早朝)、ネットで舞台を覗くつもりだったのですが、駄目でした。
VolksoperのサイトにあるBlick auf die Bühneで、小さい画面だし解像度も低いのですが、少なくとも舞台装置は分かります。
普通はプレミエでも見えており、前回2005年の時はずっと見て画像をキャプチャしていましたし、好きな演目、例えば一昨年のFra Diavoloなども楽しんでいます。
が、今回は開演45分前で固まってしまい、全く更新されませんでした。(わざと止めたのでしょうかね?)
もちろん音は聞こえないし、元々お話にはならないのですが..やはり行け(来い)ということでしょうかね。

ところで、最後にあった公演記録の紹介に、ちょっと疑問があるのですが..
Robert Herzlさんの演出は「1992年9月27日プルミエ」とありますが、私が最初に行った1985年の来日公演もHerzlさんのものでした。その前2回の来日はTVで中継されており、同じ舞台だったように思います。第1回目の来日は30年以上前なので記憶はあやふやですが、少なくとも1982年にライブ録音されたLP/CDのクレジットには、演出家にHerzlさんの名があります。(音だけなのに演出家や舞台装置・衣装まで載っているのは面白いですが)
劇場ロビーのデータは、ちょっとずれていませんか?

Posted by: Steppke | May 24, 2011 at 10:16 PM

Steppkesさま、コメント、ありがとうございます。

ご指摘の件ですが、ロビーに出ていた記録の写真を再度確認したところ、1992年2月27日から上演されているバージョンは「Premiere」ではなく、「Neueinstudierung」という表記になっていました。
私も1985年3月から4月にかけての来日公演データーを調べて見ましたが、ご指摘のように演出家はRobert Herzlさんになっていますね。
ところで、1985年当時、現地では1973年版(Otto Schenkさん演出)のものが上演されていたことになりますが、その後、1987年12月まで2年間ブランクがあることになります。私はフォルクスオーパーの全記録を持っている訳ではないので、現時点では確認できませんが、当時、「メリーウイドウ」が2年間も上演されないというのは考えにくいですよね。
そのように考えると、1973年のOtto Schenk版と1987年のJérôme Savary版の間に、Robert Herzl版があったのが、何かの都合で記載漏れになった可能性が考えられます。
もし、そうだとすれば、1992年2月27日から上演が始まったバージョンが「Neueinstudierung」という表記なのも頷けますね。

Posted by: Feri | May 25, 2011 at 08:08 AM

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