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July 20, 2011

番外編 佐渡 裕プロデュースオペラ2011 ナニワ版「こうもり」

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今日は久しぶりに「日本のオペレッタ」の話題です。

2008年の「メリー・ウィドウ」で度肝を抜かれた佐渡 裕さんプロデュースのオペレッタ第二段「こうもり」が7月16日から24日まで、ホームグラウンドの兵庫県芸術文化センターで上演されています。

Feriが楽しみにしていたナニワ版「こうもり」の模様をお伝えしましょう。

指揮は、もちろん佐渡 裕さんです。Feriが観た日のキャストは、アイゼンシュタインが小森輝彦さん、ロザリンデが佐々木典子さん、アデーレが小林沙羅さん、アルフレードが小貫岩夫さん、ファルケ博士が大山大輔さん、フランクが片桐直樹さん、プリントが志村文彦さん、オルロフスキー侯爵がヨッヘン・コヴァルスキーさん、イーダが剣 幸さん、フロッシュが桂ざこばさんという面々でした。

また、今回の特徴は、ゲスト奏者がウィーンから来日しPACオーケストラ(Peforming Arts Center Orchestra)に加わっていることでしょう。ちなみにゲスト奏者ですが、ヴェルナー・ヒンク(コンサートマスター)さん、ペーター・ヴェヒター(ヴァイオリン)さん、マティアス・ヒンク(ヴィオラ)さん、リッカルド・ブルー(チェロ、フォルクスオーパーの方)さん、ミラン・サガト(コントラバス)さん、マティアス・シュルツ(フルート)さんという面々です。

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スタッフですが、演出は「メリーウィドウ」も担当した広渡 勲さん、ステージデザイナーはイギリスのサイモン・ホルズワースさんです。広渡さんは、多様な文化を誇る関西圏にこだわった演出をしていました。ただ、当初、Feriが考えていたよりも、オーソドックスな演出でした。

なお、当初、休憩を含む上演時間は3時間とリリースされていましたが、最終的には3時間30分に変更となっています。

最近流行の二幕を分断するパターンで、第一部(第一幕~第二幕前半)が約85分、25分間の休憩を挟んで、第二部(第二幕後半~第三幕)が70分、そしてサプライズのカーテンコールが20分という構成でした。例によって日本語上演ですが、日本語字幕も付いています。理由は、後で…

今回、サプライズのカーテンコールがあるためか、プログラムにも舞台写真は一切ありません。日本では舞台撮影は厳しく規制されているので、今回は文章だけ。
通常通りオーケストラピットがあるのですが、客席との間に「花道」が設定され、これを有効に使った演出がポイントです。

まず、第一幕ですが、舞台装置はオーソドックスなアイゼンシュタイン邸でした。中央に大階段が設けられ、二階に寝室があるというウィーン国立歌劇場バージョンに近いものでした。ただし、シャンペンオペレッタらしく、壁紙には泡のイラストが…

基本的に演出は親切です。とくにお話を知らない人が見ても「こうもり」ワールドにすっと入ることができるように親切な展開。序曲の途中から、緞帳のスクリーンに「なぜ、こうもり博士と呼ばれるようになったのか」といういきさつが文章で表示されます。

それに加えて、ダンサー2人が蝶とコウモリに扮して、ファルケ博士がウィーン市内に取り残された場面を再現します。これはgood。そして、オープニング。のっけからアルフレードが「花道」で歌います。ご丁寧に郵便配達のお兄さんも自転車で登場し、アデーレにイーダからの手紙を届けます。これならば仕掛けがよくわかりますね。

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その後は、通常の一幕パターンで展開します。ただ、ウィーン人向きの細かい演出は省略し、テンポ良く展開します。おもしろかったのはアイゼンシュタインが自宅に戻る前にアルフレードがやってきますが、今にあるピアノで弾き語り。音楽教師役なので、これはなかなか良い演出ですね。ところが、盛り上がっている最中にアイゼンシュタインとブリントが戻ってくるという展開。アルフレードは奥に引っ込みます。

ブリントとのやりとりも定番どおりですが、なぜか助手を連れていました。アイゼンシュタインとアデーレのやりとりでは、定番になっている「お尻を触る」という演出はなし。そのため、二幕では容姿だけでアデーレではないかと疑う展開になっていました。

反面、仕掛け人のファルケ博士については、ロザリンデに結婚記念日のプレゼントと称して「ハンガリーの衣装」(手紙の中に着てくるように書いてあるようです)やオルロフスキー邸の夜会招待状を持ってくるなど、わかりやすい展開になっていました。

とにかく一幕はあっという間に終わります。ただ、通常だとアルフレードが連行されて、すぐ幕となるのですが、今回は、それからロザリンデがファルケ博士からもらった手紙を開け、プレゼントの中身を確認するというシーンが追加されていました。

暗転で二幕に入りますが、前奏曲は「雷鳴と電光」。これが終わると剣 幸さんと桂ざこばさんが、花道に登場。想定はアン・ディア・ウィーン劇場の支配人と、その妻。バブルがはじけて劇場が苦しい時、大金持ちのロシア貴族(石油成金という今風の想定)オルロフスキー侯爵からオペレッタ「こうもり」の上演を持ちかけられた…という話を始めます。

そして、オファーの条件は、2人も出演すること。その時、突然、客席からオルロフスキー侯爵が登場。花道に上がっていきます。ただ、ヨッヘン・コヴァルスキーさんを知っているお客さまが少ないので、拍手が今ひとつだったのは残念ですね。

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この口上を終えると二幕のスタートです。舞台装置は一幕とは打って変わって抽象的なもの。何と巨大なシャンペングラスでシャンペンピラミッドが二つできています。考えましたね。

二幕は定番の合唱曲「歌え踊れ」でスタートします。合唱団やバレエ団もきまっていましたね。通常、アイゼンシュタインが到着してから、オルロフスキー侯爵がウォッカ責めにしながら「私は客を招くのが好き」を歌いますが、今回はアデーレが登場する前に歌われました。これはサプライズ。興味深いのは、ヨッヘン・コヴァルスキーさんだけはドイツ語で歌っていることです。

その後、アデーレが登場し、花道でイーダとばったり。ちなみにイーダはアデーレの姉という設定でした。その後、アイゼンシュタインが登場。歌なしでウォッカ責めです。ヨッヘン・コヴァルスキーさんの“駆けつけ三杯”という日本語の台詞も楽しかったですね。

その後、アデーレが「侯爵様、貴方に教えましょう」を歌います。とにかくテンポが速いのが特徴ですね。一幕でお尻を触っていないので、ここでもお尻タッチはなし。

参列者全員がいる中にロザリンデが登場。すかさず「チャールダーシュ なつかしき故郷の歌」を歌います。すでにお客さまには「コウモリ博士」のいきさつがわかっているので、舞台上での種明かしもなく、一気に「シャンパンの歌」へ。これで第一部がお開きとなります。

しかし、さすが関西。休憩前にざこば師匠が登場し、休憩の口上とホワイエで売っているシャンペンのPR。商い上手な関西です。

25分間の休憩を経て、第二部へ。幕が開くと「友達に乾杯-君と僕」の合唱。なぜかアイゼンシュタインとロザリンデ、フランクとアデーレが良いムードになっていました。なお、イーダは女優という想定なので、踊りはありませんでした。もっとも下手な踊りができる人は少ないですよね。舞台の背景は花火大会になっていました。この花火大会をバックに花道で例のアイゼンシュタインの時計を奪取する名場面が展開します。花道に腰掛けて歌うなど、変化に富んだシーンでした。

続いてバレエ団が登場し、「皇帝円舞曲」に合わせて踊ります。その後、アイゼンシュタインとフランクがオルロフスキー邸を去って、二幕はお開き。

暗転中、酔っ払ったフロッシュが花道に登場。さすがに落語家。花道に隠していた缶ビールをお客さまにプレゼントするなど、ロベルト・マイヤーさん真っ青の怪演です。おしゃべりの中は時事ネタ満載。“最近、燗酒はのまないの。カンはイヤ”。日本にお住まいの方はおわかりになるギャグです。

その後、「ピツィカート・ポルカ」と「トリッチ・トラッチ・ポルカ」が演奏されるのですが、ここでは囚人に扮したバレエ団が登場して、愉快な踊りを披露します。おもしろいのは、この囚人グループ。男性、女性を問わず同じメイク(眼鏡をかけた男性スタイル)なのです。このあたり、目で見て楽しませる演出が光ります。

幕が開くと、フロッシュが囚人と宴会をやっているところ。舞台装置は、以外としっかりした刑務所になっていました。その後、お楽しみのフロッシュのお芝居です。色々なところからお酒が出てきます。そして、酔っ払ったフランクが帰ってきます。一人芝居が見どころですが、仕上がりはまずまずでしたね。ただし、フォルクスオーパーの熟練歌役者さんと比べてはいけません。

なお、壁のカレンダーは12月31日ではなく、公演日になっていました。まぁ、別に大晦日にこだわる必要はない‥というところでしょう。

この後の展開は通常通りですが、アイゼンシュタインが刑務所に到着したところから、舞台袖に残りの出演者が登場し、ことの成り行きを見守るという展開になっていました。

ロザリンデが奪った時計でアイゼンシュタインの浮気を暴露したところで、全員が舞台上に移動して、種明かし…というのはいつも通りの展開です。ただ、この刑務所も実はダミーで、オルロフスキー邸内の劇場だった…という展開には???

その後、通常のカーテンコールが終わってから、大サービスのアンコールが行われました。まず、主演者全員でパートを分けて「ウィーン、我が夢の街」を歌います。いいねぇ。

続いて、バレエ団を率いて宝塚ばり、剣 幸さん「ただ一度の恋」を歌います。このあたりは、佐渡さんならではのスペシャルゲストに対する配慮でしょう。

さらに、ロザリンデとアイゼンシュタインが、それぞれ舞台袖から登場し「友達に乾杯-君と僕」を歌います。歌い終わると舞台中央のベンチへ移動。このベンチが空中へリフトするというカーテンコールにしては凝った演出でした。そうそう、このとき、空を自転車が走っていました。そのため、カーテンコールが20分ほどかかっているのです。

コンセプトとして、オペレッタ初心者のお客さまにも十二分に楽しんでもらうような工夫が、随所に見られました。なお、「こうもり」の場合、日本語の歌はかなり厳しく、メロディを優先すると、正直「何と言っているのかわからない」場面がありました。そのため、日本語版ながら、日本語字幕が良かったですね。

歌手陣の出来ですが、佐々木典子さんは、さすがでしたね。お芝居も含めて安定感は抜群でした。反面、小林沙羅さんはかわいらしいのですが、一幕は調子が出ていなかったですね。その後、後半になるに従って調子は上がってきましたが、コロラツゥーラが今ひとつ。今後に期待しましょう。

男性陣については、比較的、安定していましたね。しかし、宝塚出身の剣 幸さんは華がありますね。自然体のお芝居も光ります。こういったキャスティングができるのも関西ならでは…と言えるでしょう。

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さて、コヴァルスキーさんですが、雰囲気は良いものの、歌に関しては衰えが目立つようになりました。カウンターテナーという特殊な領域ではありますが、非常に残念でした。実は、今回、彼だけが常時、ワイヤレスマイクをつけていましたが、それでも十分カバーはできなかったようです。やはりお歳を召しても、高いレベルを維持するのが、いかに大変かを改めて実感した公演でしたね。

全般的に佐渡さんらしいサービス精神旺盛なオペレッタに仕上がっていました。キャスティングや話の展開も含めて、日本の場合、オペレッタは関西の方が向いているような気がします。24日まで上演していますので、お近くの方は、是非、ご覧ください。楽しい一時を過ごすことができますよ。唯一残念なのは、神戸公演限定ということでしょうか。できれば東京公演があれば、もっと多くの方に楽しんでいただけると思うのですが‥

また、例によって楽しいグッズも多数販売されていました。とくに佐渡さん人形」は爆笑。ぜひ、またオペレッタを上演してもらいたいのですが、日本での定番2作品をやってしまったため、次は演目のセレクトが難しそうですね。


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オペレッタ |

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Comments

一昨年に佐渡さんのカルメンを見ましたが、演出が何よりも理屈っぽくて楽しめませんでしたね。

で去年はキャンディードでしたっけ?
言わずと知れた師匠の作品ですが、ストーリーがついていけないのと、演出にイヤな予感がしてパス。

そして今年のこうもり。
何故か震災云々以前に東京での公演が元々予定に無かった様で、新幹線と夜行バスを駆使して西宮まで行って帰ってきました。
結果として僕のブログに書いたとおり、満足な出来でしたけどね。

ただ幾ら演出の方の誼とはいえ、コヴァルスキーはもういいでしょう。他のオルロフスキーが得意なメゾの方を呼んだ方が良かったと思ったのは僕だけでしょうか。

Posted by: ジャンボキ | July 22, 2011 at 10:11 PM

ジャンボキさま、コメント、ありがとうございます。

コヴァルスキーさんに関しては、Feriも同感です。

ところで、この公演は、兵庫県芸術文化センターでの上演が基本で、昨年の「キャンディード」が例外だったみたいですね。なかなか日本国内のカンパニーで引っ越し公演は難しいのでしょう。

Feriは、同カンパニーの公演は「オペレッタ」しか観に行きませんが、今後は、しばらくオペレッタの上演はないと思います。

Posted by: Feri | July 23, 2011 at 07:37 AM

ワイヤレスマイクは、コヴァルスキーだけじゃなくて、全キャスト+合唱も何人かつけていましたよ。実は。

Posted by: | July 27, 2011 at 04:27 AM

ワイヤレスマイクの件、ありがとうございます。気がつきませんでした。

Posted by: Feri | July 27, 2011 at 08:02 AM

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