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March 31, 2012

バーデン市劇場「ヴィクトリアと軽騎兵」

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3月最後の記事は久しぶりの「オペレッタの話題」です heart04

このところ変わった演目のオペレッタを積極的に取り上げるバーデン市劇場ですが、2011/2012シーズンの注目株はパウル・アブラハム作曲の「ヴィクトリアと軽騎兵」でしょう。

よくガラコンサートなどで「私のママは横浜生まれ」が歌われることはありますが、オペレッタをフルバージョンで上演されるケースは少なくなっています。それだけにバーデン市劇場が取り上げてくれたのは、ありがたい限りです。という訳で、feriも行ってきました。

このオペレッタですが、舞台は第一次世界大戦後。プロローグがシベリアの捕虜収容所、一幕が東京のアメリカ大使館、二幕がサンクト・ペテルブルグのアメリカ大使館、そして三幕がハンガリーのドロズマイ村という設定です。

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Feriが観た日の指揮はLászló Gyükérさん。キャストは

アメリカ大使ジョン・カンライト(John Cunlight)がDarius Merstein-MacLeodさん
ヴィクトリア(Viktoria)がKerstin Grotrianさん
ヴィクトリアの弟フレディ(Freddie)がStefan Bleiberschnig さん
オー・リア・サン(O Lia San)がJohanna Arrouasさん
ヴィクトリアの小間使いリケット(Riquette)がGabriele Kridlさん
ステファン・コルタイ大佐(Stefan Koltay)がReinwald Krannerさん
コルタイの従卒ヤンチ(Janczy Barnay)が Tibor Szolnokiさん
ドロズマイ村の村長(Pal Pörkölty)がWalter Schwabさん
アメリカ大使館の執事(James)が Robert Sadilさん
ロシアの官憲(Russischer Kommissar)がFranz Födinger さん

という面々でした。バーデンは、原則としてシングルキャストなので歌手の皆さんは大変ですよね。

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プロローグはシベリアの捕虜収容所に抑留されているコルタイ大佐とコルタイの従卒ヤンチが、補償に音楽を弾かせて、その隙に脱走するという荒唐無稽なスタート。

そして、一幕の在日アメリカ大使館に場面が移ります。背景には桜と富士山。まさかバーデンで富士山を見るとは思ってもみませんでした。

アメリカ大使のジョンがサンクト・ペゲルブルクへ異動となるための送別会とヴィクトリアの弟フレディとオー・リア・サンの結婚祝いを兼ねた場面になります。

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そこへ、今はアメリカ大使ジョンの妻であるヴィクトリアの元婚約者コルタイがやってきます。ヴィクトリアはコルタイが戦死したと思ってジョンと結婚したという想定。やっとの思いでヴィクトリアを探したコルタイは、ヴィクトリアがジョンの妻となっていることを知り、ショックを受けるというオペレッタらしい展開です(どこから日本に密入国したのでしょうね?)。

ヨハンナ・アローズさん扮するオー・リア・サンは母親が日本人(父親はフランス人)という設定なので、最初は着物姿で登場。また、結婚祝いの余興ではダンサーが武士姿と着物姿で踊りを披露します。振付はフォルクスオーパーの「微笑みの国」そっくり。

基本的にお話は最後に3組のカップルが誕生するというものなのですが、ソロ歌手も含めてダンスシーンが非常に多い演出です。何となくブダペストオペレッタ劇場を思わせる演出でしたね。そのため、小規模な劇場なのに全員がワイヤレスマイクを使っていましたが、これは仕方がないかもしれません(あれだけ踊ると息が上がってしまいます)。

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有名な「私のママは横浜生まれ」は、一幕でヨハンナ・アローズさんが踊りながら歌う展開でした。

その後、二幕では舞台はサンクト・ペゲルブルクのアメリカ大使館に移ります。なぜか逮捕されるリスクを冒してまでサンクト・ペゲルブルクへ一緒にやってくるコルタイ(オペレッタらしい展開です)。ここでリケットのはからいで、コルタイとヴィクトリアが二人で密会することに。一方、リケットとヤンチも何となく良い関係に‥

ここでジョンは、ヴィクトリアが今もコルタイを愛していることを知り、離婚を決意するのですね。なお、アメリカ大使館の中が舞台なので、一幕と二幕は背景だけを変えて対応していました。

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そして、三幕のハンガリーのドロズマ村へ。ワインの「収穫祭の日」には、3組のカップルが結婚式を挙げるという習わしがあるということで、ヤンとリケット、フレディとオー・リア・サンの2組はOK。残る1組をコルタイとヴィクトリアにしようという動きが‥

実は、この村にジョンが恩赦になったコルタイを連れてきており、ジョンが身を引くことで、3組のカップルが誕生するという「オペレッタ定番のエンディング」です。しかし、「チャールダーシュの女王」もそうですが、最後に男が1人あふれてしまうケースが多いですね。

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ところで、三幕では花嫁が新しい wine ワインを飲む儀式があるのですが、盛大にワインを飲むリケットに対して、妊娠しているという想定(実際、大きなお腹で出てきます)のオー・リア・サンは、指でワインをなめるだけという芸の細かい演出が‥そうそう、妊娠中の飲酒は注意しましょうね‥という示唆なのでしょう。

とにかくタップやフォックスロットに代表されるアメリカものに加えて、ハンガリーものが加わるなど、ダンスのバリエーションは豊富でした。

最後、ジョンが執事とともにドロズマ村を去る場面は、「引き際の美学」でホロッときますが、基本的には楽しいオペレッタに仕上がっていました。時代設定もオリジナルに近く、ご年配のファンにも楽しんでもらえる内容だと思います。

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また、オーケストラピット前部に花道をつけ、これを上手に使い、舞台を通常よりも広く見せていましたね。その関係で、客席から合唱団などが出入りする場面も多くなっていました。

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ところで、興味深かったのは、花道の後ろ、オーケストラピット側に転落防止ネットがかけられていたことです。ブダペストやドレスデンでも花道はよく使いますが、転落防止ネットを見たのは初めて。もしかしたら転落事故でもあったのでしょうかね。

バーデンの場合、小規模な劇場ですから、オーケストラや歌手のレベルを突っ込み出すときりがないですが、とにかく「楽しい一夜を過ごすことができる」点だけは高く評価したいですね。

最近、バーデンには一人はフォルクスオーパーの方が出演することが多くなっているのですが、これからもフォルクスオーパーと演目が重ならないようにしてもらえると、オペレッタファンとしてはありがたいところです。


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オペレッタ |

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Comments

Feri さん、こんにちは。Steppke です。

相変わらず日本と中国を混同して気色の悪いところもありましたが、なかなか楽しめる舞台でしたね。
好きな曲なのに録音/録画でしか聴いたことがなかったので、初めて生の舞台に接することができ、感激でした。

1930年に初演されただけあって、レビューの要素が多く、有名なアリアや二重唱の後に続けてその旋律をバレエ(ダンス)にして盛り上がるようになっていましたね。
私の周りはお年寄りばかりでしたが、"Pardon, Madam, ich bin verliebt" や "Reich mir zum Abschied noch einmal die Hände" などのアリアは、一緒に口ずさんでいるのが聞こえました。(私も歌ってましたが)

歌手では、Volksoper からの Johanna Arrouas さんと、Baden でおなじみの Gabriele Kridl さんの女声2人が、特にキレが良く、素晴らしかったです。男声陣もなかなかで、やはりオペレッタはアンサンブルだなと思わせるものでした。

ブダペストのオペレッタ劇場を思わせる演出と書かれていますが、1992年に同劇場で収録された DVD と観較べると、確かに似ています。
ブダペストは舞台が狭く大道具を途中で変えられない為か、回り舞台と幕をうまく利用して効率的に場面転換を行なう印象がありますが、バーデンは更に規模が小さいので、コーラスが客席を利用するなど、いつもながら非常にうまく工夫しています。

Volksoper がなかなかオペレッタらしいオペレッタを出せなくなっていますが、バーデンはまだまだ健在で、うれしく思います。

Posted by: Steppke | April 01, 2012 at 12:58 PM

Steppke様

コメント、ありがとうございます。私よりも一足先にご鑑賞になったようですが、バーデンの場合、出演者が一緒ですから、ある意味、安心です。

しかし、ウィーン近郊とは言え、あのクラスの都市で独立したオペレッタ劇場を運営しているというのは、私などからすると驚異ですね。

オーケストラやコーラスのメンバーも少ないので、大変だとは思いますが、是非とも「古き良き伝統」を守り続けてもらいたいと思っています。

フォルクスオーパーの場合、劇場の稼働を上げなければならないので、ある程度、演出も目新しくせざるを得ない面があるので、大変だとは思います。

Posted by: Feri | April 02, 2012 at 11:33 AM

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