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May 30, 2012

2012フォルクスオーパー来日公演を終えて 日本人の心意気はないのか!

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平素は皆さんが楽しんでいただける話題の提供を心がけているFeriですが、今回のウィーン・フォルクスオーパー来日公演に関して日本側の受け入れ体制でどうしても一言言わざるを得ない心境です。という訳で、今日はちょっと厳しい内容のエントリーです。

当ブログを続けてご覧の皆さまは、2011年4月11日、フォルクスオーパーが日本復興支援チャリティー(特別)コンサートを開催したのはよくご存じだと思います。

震災発生からわずか一ヶ月後に、通常のプログラムとは別にカンパニーを挙げて特別なコンサートを行うことが、如何に大変なことか‥皆さまはおわかりになると思います。

劇場とは関係なく、個人が開いた時間に行うのならばともかく、劇場の大ホールを使い、オーケストラメンバーをほぼ全員招集し、なおかつ主要な専属歌手に声をかけて、無給で出演してもらう。この交渉を日々、演奏活動をしながら行う訳ですから、発起人となった日本人歌手、奏者の苦労は計り知れないものがあったと思います。

また、それ以上に、こういった日本人メンバーの声を真摯に受けとめて、フィッシャー大統領の支持を取り付けて、公式行事にしたダイレクターのロベルト・マイヤーさんをはじめとするカンパニー幹部の皆様の心意気にも頭が下がります。

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シーズン中、毎日上演している劇場の場合、途中で特別な催しを行う(しかも大劇場で)ことは、非常に困難です。そのため、既に予定されているプログラムの名目を変更するというパターンが一般的です。これならば、出演者の了解さえ得られれば、比較的無理なく実施することができます(国立歌劇場は、このパターンで対応してくれました)。

さらに放射能の影響(こちらでは、日本以上にセンセーショナルに福島第一原発の事故を取り上げています)や大規模な余震が危惧される中、いち早く2012年の来日公演実施を表明したのもフォルクスオーパーでした。しかし、幹部が実施表明してもメンバーがついてこなければ、上演は不可能です。

もちろん、自由意思で参加・不参加を選択できるようにしていたそうですが、「参加しよう」という雰囲気をつくりあげるのは、恐らく大変だったと思います(時期が昨年だったとは言え、バイエルンでは大量の来日拒否者が発生しています)。

このような背景を考えると、Feriは、当然、今回の来日公演に際しては、プログラムに「2011年4月11日の復興支援コンサートの模様」が当日の写真入りで紹介されるものだと信じていました(確か日本の音楽評論家の方も観賞されていたと聞いていますので、レポートは可能だとと思います)。ところが、実際に手に取ってみて、愕然としました。

この件に触れていたのは、お恥ずかしい話、オーストリア共和国の教育・芸術・文化大臣クラウディア・シュミートさん(Dr.Claudia Schmied)。何と受け入れる側である日本の文化庁長官のコメントは「復興支援コンサートがあったと聞いております」という他人事のような記述。外務大臣もコメントを寄せていますが、その件は、知らぬ存ぜぬ‥(まぁ、事務方の責任でしょうが‥)

プログラムへの掲載に関して、恐らく招へい元のNBSに聞けば、「あちらから要請がなかった」(今回はフォルクスオーパーの広報部門が協力しています)という答えが返ってきそうです。それは、向こうは義援金を送った段階で使命を果たしている訳ですから、それ以上のことは言うはずがありません。

その「恩」を、どのような形で表すかは、受け手側の日本にかかっています。

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NBSさんが普通の「株式会社」だったら、そこまで気が回らないかもしれません。が、同団体は民間と同じ事業をしているにもかかわらず、国から公益財団法人(日本舞台芸術振興会)と認証されています。つまり、公共性の高さを認められているという訳です。

また、同会の実質的な責任者である専務理事の佐々木忠次氏は、著書などを拝見するとFeriもうなずける部分が多く、ヨーロッパの音楽界や文化的な背景は熟知しているはずです。このような団体が、「日本復興支援チャリティーコンサート」を震災後、わずか1ヶ月後に公式行事として開催したことに対する謝辞を表さないというのは、正直、信じられません(この程度の見識しかない団体だったら、社団法人格は不要だとも考えます)。

公演初日に来日メンバーを招いたパーティが開催されているので、その際に謝辞を伝えているとは思うのですが、はやりご来場いただいたお客さまに広く紹介することが招へい元の使命ではないでしょうか。

もし、Feriが関与していたら、プログラムへの掲載はもちろん、東京文化会館のロビーで当日の映像をダイジェストで紹介、写真展は当然、企画しました。また、初日にはカーテンコールの際、プレゼンターを立てて、復興支援チャリティーコンサートのことを紹介し、客席側に感謝のメッセージを記した横断幕を掲げる‥というアイデアもあるでしょう。

そうすれば、出演者や奏者、スタッフの気持ちにも答えることができたことでしょう。また、今回、来日していないメンバーもプログラムを見れば、日本人がフォルクスオーパーの支援に感謝していることが伝わったと思います。

残念ですが、日本ではNHKですら、ニュースにしなかったという大失態を演じています。そのため、フォルクスオーパーが公式に日本復興支援チャリティーコンサートを行ったこと、そして、その内容がオリジナリティにあふれた素晴らしいもの(裏を返せば1ヶ月間で準備するのは、大変な努力が必要なこと)をご存じない音楽ファンが多いと思います。

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オーストリアの少女が日本の童話を歌ったのをはじめ、カーテンコールでオーケストラの演奏のみならず、参加者全員の斉唱付きで日本国歌「君が代」を歌ったのですから、準備がいかに大変だったことか‥

フォルクスオーパーの日本に対する「思い」(深い愛情と言っても過言ではないでしょう)を知れば、今回の来日公演にご来場いただいたお客さまの公演に対する見方も、変わったものになったと思います。

ご存じの方も多いと思いますが、東日本大震災では、台湾が巨額の寄付金を提供してくれました。が、日本政府は国交のあるChinaに遠慮して、台湾には冷たい扱い。そこで、民間の皆さんが、日本で募金を集めて現地で謝礼の新聞広告、テレビコマーシャルなどを打ったという話があります。これに対して、台湾の皆さんが、本当に喜んだというニュースも伝わってきています。

今回のフォルクスオーパー来日公演で、日本人の心意気を示すことができなかったことが、日本人のFeriとしては、残念というか、恥ずかしくてしかたがありません。

ちょうど、天皇皇后両陛下がイギリスのエリザベス女王戴冠式60周年の行事に参列されるため訪英されましたが、短い滞在期間にもかかわらず、東日本大震災の際、日本支援に尽力された方々を大使館にお招きになり、国民を代表してお礼を申し上げるというお話も伝わってきています。

遠路260名の大所帯で来日されたフォルクスオーパーの面々に対して、来場したお客さまから復興支援コンサートについての感謝を伝える場がなかったことが、返す返すも残念です。

会期中、東京文化会館のロビーでは秋に来日するStaatsoperの「フィガロの結婚」のビデオを流すなど、NBSさん、チケットの販売には熱心でした。ただ、社団法人であることを忘れては困ります。関係者はご覧になっていないかもしれませんが、文化交流の原点に立ち返って組織運営に当たってもらいたいものです。


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日記・コラム・つぶやき |

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Comments

 Feri様。我が祖国は本当に偏った報道しか出来ない情けない国になり下がってしまいました。しかも、お世話になった方々、支援してくれた方々への最低限の感謝さえ忘れて、あるいは気が付かずにお金儲けだけに熱心な国。恥ずかしくてヴィーンの街を歩く事も出来なくなりそうです。せっかく手にした国立歌劇場の席に座るのもヴィーンの人々の視線が怖くて遠慮したくなります。「あっ、恩知らずの日本人だ!」と指さされそうです。日本人がヴィーンの街を大手を振って歩けるように、祖国の皆さんももっと気を使って貰いたいものです!ああ、情けない。
 こんな批判は批判する自分も気持ちいいものではありません。出来ればしたくないのですが、勇気を持って書いて下さったFeri様に賛意を示さないと日本人に心意気は無いのかと笑われそうなので敢えて書きました。

Posted by: ハンドルネーム:ウィーン | May 30, 2012 at 08:19 PM

Feri様
 5年前の旅行以来ウィーンが大好きになり、このブログや、はっぱさんのブログを楽しみにしているものです。昨年4月のフォルクスオーパーのチャリティーコンサートについては両ブログで知りましたが、さらに昨年12月にBS放送で「日本、オーストリアがつなぐ復興のかけ橋」という番組を、たまたま観ることができたのですが、その中でフォルクスオーパーのチャリティーコンサートの模様が紹介されていました。
その時すでに来日公演初日の「こうもり」を観ることに決めていた私は、きっと公演の際には何らかの紹介があり、観客も謝意を示す機会があるのでは、と思っていましたが・・・。当日まったくのスルーだったのでびっくりしました。さらに私もパンフレットの文化庁長官の人ごとのような文章にはあきれかえり、一言もふれられていない外務大臣の通り一遍のあいさつ文を読むにつけ、「なんて情けない」と怒りを覚えておりました。そんなわけでFeri様に、こんな思いで東京から大阪の帰路についた者もいたことを知っていただきたく書きこみさせていただきました。

Posted by: | May 30, 2012 at 09:48 PM

Feriさま

 はっぱさんのツイッターから飛んできたものです。初めまして。今年はじめごろまでグラーツに在住していたものです。
 日本に帰国してこの方、私も似たような違和感を禁じえません。何かしてもらったら、「ありがとう」と一言かけることができないか?と思うことが日常茶飯事の中、この記事を読み言いようのない悲しみを覚えてしまいました。また、昨今「市民の生活が第一」と謳い、某関西の首長をはじめ、国と地方が一体となって文化政策の取り潰しを行っています。すでに例えばクラシック音楽だけでなく、無形文化財級の能楽なとが関西ではいくつも支援の道を絶たれ、また税金浪費のとがで排撃を受けつぶされたとの報道も耳にしています。根本的には、現在この国の抱える精神的なよりどころへの深刻な無理解とそのような気配りができなくなってしまった社会全般に原因があるのかもしれません。
 もちろん帰国してから「日本は驚くような気配りもできて、工夫されていてすごい!」と感じることも多いのも事実ですが、このような精神の闇を感じるのもまた事実です。
 余談ですが、さかのぼること数年前、私は高校生当時に当時の小遣いを数か月分はたいて買ったドレスデン国立歌劇場の来日公演で、「タンホイザー」の公演が予想を大きく裏切る失敗に終わって悔しい思いをした招聘主もNBSでした。

Posted by: うぇるてる | June 03, 2012 at 03:44 AM

皆さま、コメント、ありがとうございます。

微力ながら私は直接、ダイレクターのロベルト・マイヤーさんに感謝の意を伝えました。

ただ、多くのファンからのメッセージを伝えられなかったのが、残念です。日本のマスメディアは、どうもフォルクスオーパーを軽視する傾向があるのも残念なところです(何かというとウィーンフィルになってしまいますので‥)。

Posted by: Feri | June 03, 2012 at 08:04 AM

復興支援コンサートについて、ウィーンにおられた日本人の方からいろいろ意見が出ているようですが、日本在住の者としては、これは当時日本でほとんど報道されなかったから、今回の来日に当たってスルーされても仕方ないという感想を持ちます。今回、Feriさんを始めとする皆さんが憤っておられることに、むしろびっくりというか、狼狽えます。私自身、どっかで一行程度読んだかな、という程度です。その意義など、ほとんど見当がつかないというのが、大方の日本人なのではないでしょうか。

また、今回の来日公演にしても、事前にあまり宣伝されていなかったような気がします。私は5月になってから、地下鉄の電光掲示でフォルクスオーパーが来ているのを知りました。あわててメリー・ウィドウの券を買った次第です。こうもりの入りが芳しくなかったとすれば、事前のPR不足ではないかと思います。

Posted by: ウィーン大好き | June 09, 2012 at 12:02 AM

ウィーン大好き様

お返事が遅れて申し訳ありません。日本の場合、日ごろからコンサート会場に足を運んでいると「チラシ」が大量に配布されています。

音楽ファンの中には、このチラシから情報を入手している方も多いようです。

NBSさんは、かなり前からPRをしていましたので、オペラファンの方には、今回の来日公演は知れ渡っていたと思います。

ただ、おっしゃるとおり、日ごろからコンサートにご縁が少ない方の場合、情報が入らなかったことはあるかもしれませんね。

なお、日本は不思議な国で、外国のオペラの引っ越し公演は新聞社がスポンサーになるため、他のメディアには出ないことが多いようです。

ちなみにNBSさんは日経ですね。あと、今年は秋に国立歌劇場が来日しますので、両方は手が出ない‥というお客さまも多かったと思います。

Posted by: Feri | June 12, 2012 at 02:49 AM

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