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October 27, 2012

番外編 ウィーン国立歌劇場来日公演「小学生のためのオペラ魔笛」

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ウィーン国立歌劇場来日公演も半分が終了。後半はFeriお楽しみのグルベローヴァさんの登場です。そんな中、もう一つ注目される公演が、日本で初上演となる「小学生のためのオペラ魔笛」です。

この公演は、ご存じの方も多いと思いますが、現地ウィーンでは、毎年恒例となっているオペラ座舞踏会の翌日に行われます。

というのは舞踏会の際、平土間席の上に板を張ってステージと完全に一体化します。そこで、この広大なフラット空間を使って子供たちにオペラを体験させようと考えたのが、前音楽総監督の小澤征爾さんでした。小澤さんの功績の1つ‥と言っても過言ではないでしょう。

現地では、2003年から毎年、上演されています。外来のカンパニーが子供さんを対象とした本格的な公演を行うことは、今までありませんでした。それが今回、ついに実現したわけです。

Feriは、実は現地でも観たことがありません(現地では一般売りはなかったような気がしますが‥)。今回、原則は小学生なのですが、大人も空席があれば観賞できるという取り計らいだったので、楽しみにしていました。

当初、1公演だと思っていたのですが、実は午前中に学校貸切公演(これが現地に近いですね)も行われ、夕方に一般講演という2公演でした。会場は神奈川県民ホールに隣接した神奈川芸術劇場。2011年1月にオープンした新しい劇場で、現在、宮本亜門さんが芸術監督を務めていらっしゃるそうです。

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本公演のコンセプトと演出はディアナ・キーナストさんです。当日の指揮はパウル・ヴァイゴルトさん。主なキャストは以下のとおりです。

・ザラストロ:イル・ホンさん

・タミーノ:ヘルベルト・リッペルトさん(カルロス・オスナさんから変更)

・夜の女王:アルピナ・シャギムラトヴァさん

・パミーナ:アレクサンドラ・ラインプレヒトさん

・パパゲーノ:甲斐 栄次郎さん

・パパゲーナ:ヴァレンティーナ・ナフォルニータさん

・モノスタトス;ヘルヴィック・ペコラーロさん

演奏は、当たり前ですがウィーン国立歌劇場管弦楽団。

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そうそうたるメンバーが出演しました。なお、国立歌劇場本公演のキャストをご覧になればおわかりのように、この公演のためだけに来日したメンバーがいらっしゃいます。甲斐 栄次郎さんも、そのお一人。普段はパパゲーノを演じることがない甲斐 栄次郎さんが起用された理由‥それは「日本語のMC(マスター・オブ・セレモニー)も兼務するから」だそうです。しかし、フォルクスオーパーでハンナとして活躍するアレクサンドラ・ラインプレヒトさんがパミーナで登場とは、ちょっとビックリ。

小学生のお客さまは、ステージ上の平土間に座って観賞することになっていましたが、どのような仕組みで行うのか、興味津々。

実際に会場へ行ってみると、横浜芸術劇場大ホールは、最新の施設だけあって1階座席エリアを自由に調整できる機能があるようです。今回は1階座席の1/3程度を舞台と同じレベルにして、事実上、舞台を広げての公演となりました。

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オーケストラは舞台中央に入り、その後ろ側がAブロックからDブロック、客席側がEブロックからKブロックとなっていました。夜の部は保護者同伴ですが、保護者は椅子席、子供さんは平土間と別れて座ることになります。そのため、劇場係員の気の遣いようは半端ではありませんでした。最近はモンスターペアレントとかいう親が多いらしいですから、子供さんに万が一のことがあったら大変です。

例えば、公演中は絶対に一人で平土間の指定エリアから出ないこと、トイレなどに行きたくなった場合は手を上げると係員が誘導してくれること、終演後に親御さんが舞台へ押し寄せると危険なので係員の誘導を待って欲しいことなど、まぁ、日本らしいと言えば日本らしい風景です。

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公演は、指揮者が小太鼓を叩きながら舞台袖からオーケストラを引き連れて入場するところから始まりました。考えていますね。

その後、MCを兼ねるパパゲーノがアリアを歌いながら登場。歌い終わってからは日本語でオペラにはどれだけの関係者が関わるかなどを紹介します。子供さんのバレエなどもちょっと出てきて、平土間のお客さまも親近感がわいたかもしれません。

後は、MCのパパゲーノが物語の概要を簡単に説明して、各パートが聴きどころのアリアを歌うという展開です。歌は、そう言語版。字幕もありません。

なお、タミーノが森の中で笛を吹くと動物が集まってくる場面があるのですが、ダチョウや象、キリン、ゴリラ、カエル、ワニ、熊など、バラエティ豊か。平土間の子供さんが最もわいた場面だったかもしれません。

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また、途中でMCのパパゲーノが楽器を紹介する場面があります。それぞれ、奏者がちょっと演奏して楽器の特徴を知ってもらう‥という企画です。とくに木管楽器の紹介の後は、木管楽器が目立つアリアを入れるところなどは、手が込んでいます。

基本的には、ウィーン版を踏襲しているようでしたが、楽器商海自の楽曲やMCの内容などは日本向けにアレンジしていたようです。

ただ、アリアについては、通常の公演と同様、各歌手ともに真剣勝負で歌っていたように感じました。また、いつもはシリアスな役が多い甲斐 栄次郎さんが、MCとしてお茶目な面を発揮していたのが、印象的でしたね。甲斐さんのMC起用は、大正解だったと思います。なお、舞台装置はなく、背景のだけでしたが、衣装とメイクはちゃんとしていましたので、オペラの雰囲気は感じることができたと思います。

上演時間は休憩なしの1時間でした。恐らく、この公演の評価ですが、日本では分かれると思います。例えば、子供相手なのに日本語字幕もなしで言語の歌を聴かせてどうする、平土間に子供を吸わせておいてフルボイスのアリアを聴かせてもうるさいだけではないか、寝ている子がいたくらいだからもっと子供が興味をもつようにした方がいい、もっと子供向けにアレンジした方がいい‥といった大人のコメントが聞こえてきそうです。

が、Feriは、ちょっと違った見方をしています。というのは、オペラを初めて観る子供さんに一発で興味関心をもってもらうというのは、どだい無理な話。どんなに細かく説明しても、難しいでしょう。もっとも現地、ウィーンでも、小学生の子供さんに、いきなりオペラは無理です。

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それよりも、Feriは「生の音楽を感じてもらうこと」が大切だと思っています。子供さんは大人よりも感受性が豊かです。もしかするとFeriなどの大人が想像もつかないような感じ方をしたかもしれません。まず、感じること‥それがスタートだと思います。

その際、やはり本物を見聞きすることで、感じるものは大きいと思います。そういう意味で、ウイーン国立歌劇場管弦楽団の演奏、ウィーンで歌っている第一線歌手によるレベルの高いアリアを体験できるというのは、素晴らしいことだと思います。仮に寝ていたとしても、何かは感じたハズです。そして、もし親御さんと共通の話題で話が弾めば、最高の一夜になったのではないか‥と思います。

日本で、この手の公演を企画すると、子供さんの方に降りすぎてしまうような気がします。もちろん、いきなりフルバージョンを見せるのは無謀ですが、理解できるかどうかではなく、本物を体験させる、色々と感じてもらうことは大切だと思っています。

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Feriとしては、今回の企画は、非常に良かったと思っています。もちろん、Feriの考えが総てではありませんが、スケジュール調整が大変な中、こういった企画を実施した日本舞台芸術振興会をはじめとする関係各位にお礼を申し上げたいと思います。また、午前中の貸切公演を考慮して、無料のプログラムを配布したのも気が利いていると思います(写真はプログラムの中面、見開きです)。

なお、Feriは実際にお目にかかった訳ではありませんが、この企画を現地、ウィーンで立ち上げた前音楽総監督の小澤征爾さんがお見えになっていたようです。後進の育成に力を入れている小澤征爾さんにとって、きっと感慨深いものがあったことでしょう。

余談ですが、甲斐さんは、本公演終了後、直ちにウィーンへお戻りになり、11月にドミンゴさんとの共演が予定されている「シモン・ボッカネグラ」の稽古に入るとか‥あーっ、これも観たいのですが、チケットはありません。

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Comments

はじめまして、"たけ"と申します。
"小学生のためのオペラ「魔笛」"で検索してこちらにたどり着きました。

我が家も昨夜の公演を観劇しました。
とても素晴らしい舞台だったと思います。
子供たちは まさにオペラの世界の真っただ中に身を置いて1時間を過ごすことができたのですよね。

小学生でも飽きずに最後までのめりこめる よく練られた構成だなぁ と思って見ていたのですが、寝ていたお子さんもいらしたのですね

我が家の子供は幸いEブロックの一番前を陣取ることができ、まさにフルボリュームのアリアを至近距離で浴びるように聞くことが出来たようで(笑)
「隣の子は耳を塞いでいたけれど、さすがにそれは失礼だと思ったので頑張った」と。
もう本当に羨ましいばかりの体験です。

公演の1カ月以上前から DVDやらyoutubeやらで何度も何度も魔笛を観、すっかり魔笛ファン(特に夜の女王のアリアの虜)になっていた娘にも "本物"の迫力は驚きだったようです。


甲斐栄次郎さんは 普段シリアスな役柄が多い方なのですね。パパゲーノの弾けぶり、名進行ぶり、とてもお上手で楽しかったので驚きです。

Ferilさんのこちらのページで昨夜の興奮が蘇りました。
どうもありがとうございました。

Posted by: たけ | October 27, 2012 18:50

すみません、お名前を間違えました。
Feriさんですね。
大変失礼いたしました

Posted by: たけ | October 27, 2012 18:56

Feriさん、ご無沙汰しております。Steppkeです。
やはりFeriさんも行かれたのですね。会場でお探ししましたが、お会いできませんでした。
私は3階席だったのですが、どなたかを連れて行かれて1階席だったのですか?

演奏は、短くて欲求不満になった点を除き、素晴らしかったですね。歌手は、一部の方が少し弱い印象もありましたが..
オケは、弦が6-5-4-3-2の編成だったと思いますが、やはりヴィーンの音がして鳥肌ものでした。メンバーのノリが面白く、トロンボーンなどは紹介でピンクパンサーのテーマを吹いた時、しっかりとピンクパンサーのぬいぐるみをぶら下げていました。私の席からは遠くてよく分からなかったのですが、一部のメンバーは頭に鳥の羽根のようなものを付けていませんでしたか?
ところで、クラリネットの首席にシュミードルさんが座られていたように見えました。本公演もですか?(私は、すべてパスです..)

私も、やはり原語で字幕も無いのは、ちょっと無理があったように思います。ヴィーンなら、当然、ドイツ語で理解されます(子供が歌詞を聞き取るのは結構難しそうです)が、日本では、物語の概要だけではなく、これから歌われる内容を簡単に説明しておくとか、もう少しの工夫があっても良かったと考えます。甲斐さんも歌詞はきっちりドイツ語でしたし、例えば、パパゲーノの首つりの場面で数字を日本語にしたら、子供たちも盛り上がったかも知れません。
そのせいか、一部だけだと思いますが、ずっとざわついており、あまり熱心に拍手もしていなかったように見えました。3階席は大人用で、ごく一部に多分中学生くらいの子供が座っていましたが、反応は早かったですね。
ヴィーンの舞台はテレビ(例えば小澤征爾さんの紹介番組)で一部を見ていますが、子供たちとやり取りする場面が結構あったように記憶しています。昨晩は淡々と進められている印象で、やる方も手探りといった感じでした。

帰り道に、親子でメロディーを歌っているのを、何組か見掛けました。
やはり、この企画を実現されたことは素晴らしいです。次回の来日公演でも、実現すると良いですね。

Posted by: Steppke | October 27, 2012 19:02

Steppke様、お久しぶりです。

残念、いらっしゃっていたのですか。私は連れが平土間にいたので、2階R側にいました。

>一部のメンバーは頭に鳥の羽根のようなものを付けていませんでしたか?

はい。その通りです。結構、お茶目な皆さま。今回、甲斐 栄次郎さんも入って、色々と工夫したようですが、初めての試みでお客さまの反応が見えなかった面もあると思います。

ただ、本物の持つ迫力や魅力を感じることができた子供さんもいると思います。

そう言えば、ドミニク・メイヤーさんもいらっしゃっていましたね。

Posted by: Feri | October 27, 2012 19:38

とても素晴らしい企画だと思います。
本物を生で体験する事の大切さは、
大人でも沢山の発見や感動を得る事ができます。
感受性豊かな子供達には、尚更の事でしょう。
小澤さんもいらしていたのですね。
この公演の足掛かりを作られた功績はとても大きいと思います。
体調が万全であれば、御自身で指揮、進行を
なさりたかったでしょう。

Posted by: necchi | October 30, 2012 01:18

necchiさま

翌朝のNHKニュースで紹介していましたね。小澤征爾さんのコメントもちょっとだけ入っていました。

ただ、金曜日の夜で会場が横浜‥ということで、見せたくても物理的に難しかった親御さんもいると思います。本公演との関係もありますが、土曜日か日曜日ならよかったのですが‥(もっとも学校貸切公演もありましたから、その調整が難しいとは思いますが)。

Posted by: Feri | October 30, 2012 07:38

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