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November 11, 2012

番外編 オペラ引っ越し公演雑感(その2)

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今日は、昨日に引き続いて「オペラ引っ越し公演雑感」をお届けします。

○キャスティングも色々
来日公演の場合、キャスティングも現地と異なるケースが多いですよね。特に以前は「来日公演でなければ実現できない夢の組み合わせ」というキャスティンが見られましたが、最近はそういうケースが減ったように思います。

これは、今回のウィーン国立歌劇場来日公演の際、現地、ウィーンでも結構、重量級のオペラを上演していたことからもわかります。もちろん、メンバーは期間中、ずっと日本に滞在している訳ではなく、担当公演終了後、直ちに戻っている訳ですし、演目が違うので問題はないとは思うのですが‥

また、以前だったら、日本公演で初めて演じる(ましてや歌劇場デビュー)‥というケースはまず考えられなかったのですが、最近では、そういったケースも増えています。考えすぎかもしれませんが、日本のお客さまがなめられているのかな‥という気もしますが‥

ちなみに今回、「アンナ・ボレーナ」に出演したグルベローヴァさんも、同演目はウィーンでは歌っていません。「アンナ・ボレーナ」を歌っているのは、バルセロナ、ミュンヘン(ここが一番多いようです)、チューリッヒです。まぁ、レベルの高い歌手の場合、共演者がしっかりしていれば、長時間の稽古をしなくても演じられるそうですが、ウィーン国立歌劇場では日本初演というのは珍しいケースだと思います。

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グルベローヴァさんに関しては、2000年公演では、「シャモニーのリンダ」と「ナクソス島のアリアドネ」の2演目に出ていた訳ですから、これは魅力的でしたよね。当時、すでに50代に入っていたグルベローヴァさんを、よく2公演に引っ張り出したものです。これはホーレンダーさんの手腕でしょうかね。

それから、アンナ・ネトレプコさんが出演する場合、ウィーンでは定価でチケットを購入することは、まず不可能ですが、日本の方が簡単に手に入ります。これは珍しいというか、何と言うか。

ところで、キャスティングで興味深いのは、日本人歌手の起用です。来日公演の場合、専属歌手に日本人が所属していても、あまり連れてこない傾向がある‥というウワサを耳にしたことがあります(合唱団やバレエ団は別ですが)。というのは、日本のお客さまは外国の歌手を見たがっているから‥というのですが、これは本当なのでしょうかね。

そう言えば、今シーズンで国立歌劇場の専属になって10年目を迎える甲斐 栄次郎さんも、同カンパニーと一緒に来日したのは、2008年公演が初でした。

○限られる演目
これも集客を考えるとしかたがないのかもしれませんが、引っ越し公演の場合、上演される演目が本当に限定されますよね。初期のウィーン国立歌劇場来日公演では、「ランスへの旅」、「ヴォツェック」といった演目も上演されましたが、最近は「おなじみの演目」が多くなったような気がします。

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2013年に来日公演が予定されているミラノ・スカラ座でさえ、「リゴレット」と「ファルスタッフ」ですからねぇ。当然、知名度の低いカンパニーの場合、といった定番オペラのオンパレードになりがちです。

今回、フォルクスオーパーが持ってきた「ウィンザーの陽気な女房たち」、前回の「マルタ」などは、珍しい方だと思います。

オペラ以上に悲惨なのはオペレッタ‥今では、「こうもり」と「メリーウィドウ」以外、日本では観ることができなくなってしまったような気がします。新国立劇場ですら、定番オペラが多い現状を考えると、これは、やむを得ないのでしょうね。

○熱心なオペラファンは現地観賞にシフト?
ウィーン国立歌劇場が初来日した1980年代、海外まで出かけてオペラなどを観るというのは一般的ではなかったと思います。最大のネックはチケットの入手だったかもしれません。チケット入手の前提となる公演プログラムを入手するのも郵便を利用するしか方法がなかった訳で、情報の入手すら大変でした。

余談ですが、Feriは、その頃、ある出版社に勤務し始めた頃だったのですが、海外からの情報入手は本当に大変でした。また、取材のためのやり取りも総て郵便で行っていたので、準備に数ヶ月を要したこともあります。

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それから30年以上が過ぎて、状況は一変しましたね。今日では航空運賃の下落(ヨーロッパ線の場合、オペラ公演が山場を迎える冬のシーズンはお値段が特に安い)、インターネットを使った情報やチケット入手などにより、気軽に現地で観ることができるようになり、熱心なオペラファンが来日公演を避けるようになった気がします。

もちろん、海外へ遠征している人でも、来日公演を観賞している人もいらっしゃるようですが、正直、チケットの値段と劇場の雰囲気などを考えると、現地で観た方がお得感が高いような気がします。

○3.11‥そして今後‥
海外からの引っ越し公演を取り巻く状況が一変したのは、ご存じ2010年3月11日に発生した東日本大震災です。ヨーロッパは、もともと地震が少ない(イタリアは別ですが)地域なので、あちらの皆さんは大きな被害がなくても地震を怖がる人が多いようです(日本人も地震は嫌いですが‥)。が、地震以上にヨーロッパの皆さんを震撼させたのが、例の福島第一原発の事故による放射能汚染です。

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彼らはチェルノブイリの風評被害を体験していますから、日本に行くことで、実際の健康被害以上に風評被害に巻き込まれることを懸念しているようです。事実、ヨーロッパでは日本からの食料品輸入を現在でも禁止しているところもあります。

特にネトレプコさんをはじめとする若手の場合、日本に行って自分のキャリアを失いたくない‥という想いが強いと思います。

実際、フォルクスオーパーの来日公演では、スタッフも含めて、来日するかどうかは、総て本人の意思に任せたそうです。幸いフォルクスオーパーの場合、日本人メンバーも多いこともあり、公演は無事、成立しましたが、今後、若手トップスターの来日が激減する可能性は高いと思います。

思いつくままに綴ってきましたが、オペラの引っ越し公演を取り巻く環境は、この30年間で大きく変わったと思います。クラシック音楽を志す若い方も多いと思いますが、クラシック音楽が本当に文化として日本に定着しているのかどうか、Feriにははっきりわかりません。

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