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November 05, 2012

番外編 ウィーン国立歌劇場「アンナ・ボレーナ」  ありがとう、グルベローヴァさん

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今日はウィーン国立歌劇場の来日公演ですが、最後は「グルベローヴァさんの日本最終公演」となる予定の「アンナ・ボレーナ」の模様をお伝えしましょう。

Feriは迷ったのですが、千秋楽の11月4日にしました。本当の日本での最終公演です。オペラファンはご存じのようにウィーン国立歌劇場の「アンナ・ボレーナ」は、大変な人気を集めた演目です。2010/11シーズンのプルミエの時には、ネトレプコとガランチャが競演したことから、日ごろオペラを観ないお客さまが大挙して押し寄せた‥という訳です。

ネトレプコさんはタイトルロールのアンナ・ボレーナ、ガランチャさんはジョバンナ・シーモアを演じています。正直なところ、このキャストで日本公演が行われたら、すごかったのですが、残念ながら実現しませんでした。仮にキャスティングされていたとしても、3.11以降なので、ネトレプコさんは来日しなかった可能性が高いですね。

Feriはグルベローヴァさんのファンですが、正直、現地、ウィーンで出演したことがない「アンナ・ボレーナ」への起用は、ちょっと疑問でした。そういう意味で、昨年、バイエルン国立歌劇場の来日公演に際して、ご本人が「来年はきません」とファンに明言した理由がわかるような気がします。今のグルベローヴァさんは、ロベルト・デビュリューのエリザベッタみたいな役がピタリとはまりますからね。

結局、招へい元が拝み倒して来てもらった‥というところでしょう。何しろ目玉だった小澤征爾さんが病気で降板してしまっていますので‥

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余談ですが、日本公演のプログラムは舞台写真が入ったゴージャスなものですが、通常、タイトルロールの歌手が出演する写真が多数掲載されます。

が、今回、「アンナ・ボレーナ」に関しては、合唱シーンが中心。そう、グルベローヴァさんが出演している写真が全くないのです。まさか、ネトレプコさんが熱唱している舞台写真を載せるわけにはいきませんよね。ただ、ガランチャさんの後ろ姿が写っている写真は掲載されていましたが‥

さて、指揮は現地でもプルミエを振ったエヴェリーノ・ピド(Evelino Pidò)さんです。演出はエリック・ジェノヴェーゼ(Eric Génovèse)さん、美術はジャック・ガーベル、クレア・スターンバーグ(Jacques Gabel und Claire Sternberg)さん、衣裳はルイザ・スピナテッリ(Kostüme Luisa Spinatelli)さんという面々。
当日のキャストは、以下のとおりです。

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・エンリーコ8世:ルカ・ピサローニ(Luca Pisaroni)さん

・アンナ・ボレーナ:エディタ・グルベローヴァ(Edita Gruberova)さん

・ジョヴァンナ・シーモア:ソニア・ガナッシ(Sonia Ganassi)さん

・リッカルド・パーシー卿:シャルヴァ・ムケリア(Shalva Mukeria)さん

・ロシュフォール卿:ダン・ポール・ドゥミトレスク(Dan Paul Dumitrescu)さん

・スメトン:エリザベス・クールマン(Elisabeth Kulman)さん

・ハーヴェイ:カルロス・オスナ(Carlos Osuna)さん

余談ですが、ウィーンでのプルミエでは、アンナ・ボレーナがアンナ・ネトレプコさん、ジョヴァンナ・シーモアがエリーナ・ガランチャさん、エンリーコ8世がイルデブランド・ダルカンジェロさん、リッカルド・パーシー卿がフランチェスコ・メーリさん、スメトンがエリザベス・クールマンさんでした。

クールマンさんだけが、プルミエ組ということになりますね。

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まず、演奏ですがさすがにプルミエを振ったエヴェリーノ・ピドさん。ちょとテンポが速いような感じがしましたが、見事な指揮ぶりでした。また、グルベローヴァさんの力を十分に引き出した演奏だったと思います。今年の6月、ウィーンの「ロベルト・デビュリュー」でも振っていますから、グルベローヴァさんとの呼吸もピッタリ‥という感じがしましたね。

Feriは今回の来日公演で「アンナ・ボレーナ」は、千秋楽の1回だけしか観ていませんが、グルベローヴァさん、1回目は一幕の出だしが、2回目も中盤での調子が良くなかった‥という話を耳にしました。もしかすると、練習不足があったのかもしれません。

とは言っても、全編を通じて完璧主義のグルベローヴァさんらしく、全身全霊を傾けた役作りを行っており、高い完成度が印象に残りました。

とくに千秋楽は、近年になく気合いが十分に入っており、迫真のお芝居に心を打たれました。一幕のフィナーレは合唱になりますが、決して合唱や演奏に埋もれることなく、存在感を発揮している姿は、お歳を考えると、信じられない思いで聞いていました。そして、二幕のラストシーン、狂乱と正気を行き来する場面は、歌も含めて見事の一言。例によって広い音域、高度な歌唱技術には魅了されました。さすがに「声の艶」は衰えていますが、それを歌唱技術と持ち前の音域でカバーしているという感じですね。

ただ、今回、二幕でグルベローヴァさんにしては珍しいちょっとしたアクシデントがあったのですが、詳しいことはご本人の名誉のため、ひかえておきましょう。

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とにかく日本最終公演にふさわしい、素晴らしい歌いぶりでした。Feriはネトレプコさんの「アンナ・ボレーナ」を観たことはありませんので、比べることはできませんが、全く違うオペラに仕上がっていたかもしれません(次元の違う舞台になっていたかもしれませんね)。

その他の出演者もそれぞれ、良い味を出していたと思います。個人的にはスメトンのエリザベス・クールマンさんが良かったですね。ズボン役もなかなかピッタリしていました。

アンナと対立する関係になるジョヴァンナ・シーモアのソニア・ガナッシさんも、なかなか見事な歌いぶりでしたが、この役はガランチャさんで観たかったところですね。

男性陣では、ロシュフォール卿のダン・ポール・ドゥミトレスクさんが良い味を出していました。リッカルド・パーシー卿のシャルヴァ・ムケリアさんもがんばっていましたが、グルベローヴァさんとしては共演回数が多いホセ・ブロスさんの方がやりやすかったかもしれません。

来日公演の千秋楽に加えてグルベローヴァさんの日本最終公演ということで、カーテンコールの凄まじかったこと。トップ写真のような横断幕も準備されていました。このほか、4日の公演では珍しく拍手のフライングがほとんどありませんでした。Feriも、これには感激。やはり、この方が良いです。

また、ウィーン国立歌劇場のグルベローヴァ公演でお目にかかるグルベローヴァ・ファンクラブの皆さんも来日されており、これにはビックリしましたね。当然、出待ちの行列も最近になく長くなっていました。

さらにファンクラブの日本メンバーが気を利かせたようで、楽屋口に花道を用意していました。そして、楽屋口から出てきたところで、一斉コール。改めて日本にファンが多いことを実感しました。

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ところで、日本国内でも余り大々的に報道されませんでしたが、今回、グルベローヴァさんが天皇皇后両陛下からお茶会へのお招きを受けて、皇居を訪問しています。以下、産経新聞「皇室ウィークリー」からの引用です。
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両陛下は10月29日、皇居・御所でのお茶に、来日公演中の世界的オペラ歌手、エディタ・グルベローヴァさんをお招きになった。世界トップクラスの美声と技巧を持つソプラノ歌手と、どんなお話をされたかは分からないが、側近によると、部屋の外に美しい歌声が漏れ聞こえたという。お茶の席では、ささやかでありながら、世界一の“ミニ音楽会”が行われるシーンもあったのかもしれない。

グルベローヴァさんは旧チェコスロバキア(現スロバキア)のブラチスラバ生まれで、1968年にデビュー。数々の栄誉ある賞を受賞し、日本でも1980年の初来日以来、熱烈なファンを増やし続けてきた。しかし、最近、引退宣言をし、今回の来日で行われている「アンナ・ボレーナ」が、日本最後の公演となる。

両陛下は、そんなグルベローヴァさんと、音楽の話をされたという。お会いになったのは初めてだが、陛下がチェロ、皇后さまがピアノの奏者として音楽を大切にされてきたこともあり、楽しいひとときとなったのではないだろうか。
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ぜひ、天皇皇后両陛下とのお茶会の写真が見たかったのですが、残念ながら公表されていないようです。しかし、オペラ歌手が単独で天皇皇后両陛下とお目にかかるというケースは希だと思います。「最後の来日公演」となったグルベローヴァさんにとっても素晴らしい思い出になったことでしょう。

実は、Feriが本格的にオペラにはまったのは2000年の来日公演でグルベローヴァさんの公演を観てからです。それ以来、ウィーンを中心にグルベローヴァさんが出演するオペラなどを40公演以上、観ていますが、日本ではこれが最後の姿かと思うと感慨深いものがありました。

さて、次回のウィーン国立歌劇場来日公演は、4年後の2016年であることが千秋楽に公表されました。グルベローヴァさんも引退していますし、世代交代が進むことでしょう。

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Comments

ネトレプコさんのアンナは歴史上の人物に近い年齢です。
ただ表現はグルベローヴァさんに比べると甘い、浅いと思います。見た目はいいのですが何かアザトイ、私はネトレプコにいい印象持っていません。去年メットのキャンセルでフリットリさんがミミに移動したため同情すべき歌手に代わったこと、準備不足で満足な歌唱でなかったことを非難できないから。しかしネトレプコさんベルカント向きの声でなないのに、人気ありますね。2016年に来日予定ですが果たして東京に地震がないことを祈ります。関西から2回もアンナボレーナを無事に聴いて安心しています。来年もスカラ座やトリノは東京公演だけ。聴きたいが地震が心配。

Posted by: 朝田 | November 05, 2012 15:29

朝田様、コメント、ありがとうございました。

アンナ・ネトレプコさんの人気(評価ではなく)は、日本では考えられないぐらい高いですよね。ウィーンでも彼女が出る公演は、普通にチケットはとれません(日本の方がとりやすい)。ただ、出産後は体型が変わってしまったこともあり、ザルツブルクで評判をとった「椿姫」のヴィオレッタのような妖艶な魅力は半減したと思っています。

また、正直、グルベローヴァさんと比較するのは、グルベローヴァさんに失礼なので、あえて比較はしませんでした。私はネトレプコさんが出演したオペラはウィーンで一回だけ「ルチア」で観ていますが、グルベローヴァさんの「ルチア」とは雲泥の差‥というのが正直な感想でした。

なお、来日公演に関する雑感もあるので、こちらは後日お伝えします。

Posted by: Feri | November 06, 2012 10:29

今回の来日公演に関する報道がウィーンでも行われています。

今回、KURIER紙では音楽評論家を独自に派遣してレポートをしています。気合いが入っていますね。

「子供のための魔笛」に出演した甲斐 栄次郎さんもしっかりと名前入りで紹介されています。

http://kurier.at/kultur/4517500-japan-tournee-jubel-fuer-bolena-gruberova.php

http://search.salzburg.com/news/artikel.html?uri=http%3A%2F%2Fsearch.salzburg.com%2Fnews%2Fresource%2Fsn%2Fnews%2Fsn3008_30.10.2012_41-43155643

Posted by: Feri | November 07, 2012 08:03

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