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December 22, 2012

フォルクステアターの「白馬亭にて」

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その昔、まだウィーンの事情を良く知らなかった頃、フォルクステアター(Volkstheater)をフォルクスオーパー(Volksoper)と勘違いしてしまったことがあります。

フォルクステアターは、屋根の巨大な「赤い星」が目印ですね。こちらは、基本的に演劇を上演する劇場なので、今までFeriは出かけることはありませんでした。

が、12月にベナツキーの「白馬亭にて」(Im Weißen Rössl)が上演されることを、当ブログの読者の方から教えていただきました。実は、以前、市内でポスターを見た記憶があったのですが、すっかり忘れていたのです。教えていただいて、ありがとうございます。

さて、フォルクステアターの「白馬亭にて」ですが、フルバージョンのオペレッタでないことだけは事実ですが、同劇場の作品紹介には「Singspiel」(歌入り劇)と書かれています。どんなお芝居なのかは行ってみてのお楽しみ‥まぁ、どちらにしても話の筋は知っていますから、演劇でも対応可能。プルミエは14日だったのですが、Feriは二回目の公演となる20日に出かけました。

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主な出演者は、以下のとおりです。

ヨゼファ: Maria Billさん
給仕長レオポルド:Günter Franzmeierさん
弁護士ジードラー:Patrick Lammerさん
ベルリンの企業家ギーゼケ:Erwin Ebenbauerさん
ギーゼケの娘オッティリエ:Nanette Waidmannさん
ギーゼケを相手に裁判中の企業家ジェツルハイマーの息子ジギスムント:Matthias Mamedofさん
昆虫学者のヒルゼルマン教授: Thomas Kamperさん
ヒルゼルマン教授の娘クレールヒェン:Andrea Bröderbauerさん
消防隊長フランツ・エンペラー:Haymon Maria Buttingerさん
ピッコロ:Christoph F. Krutzlerさん

なお、演奏はピアノを中心とした6名編成のアンサンブルが、舞台裏で行っていました。

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さて、どんな形で始まるのか、興味津々。まず、舞台上には白馬亭の絵が描かれた緞帳が下がっており、正面の一部が窓のように開くようになっていました。

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ジャズ調に編曲された序曲でスタート。まず、緞帳正面の一部が開き、主要な出演者が入れ替わり立ち替わり登場します。顔見せといったところですね(テレビみたいですが‥)。

緞帳が開くと、そこはうらぶれたホテル白馬亭の内部。左側にフロント、右側がカフェといった感じです。フロント上に客室が二部屋ありました。劇場という性格が関係しているのか、小道具(ザルツカンマーグートのパンフレット、カフェの器具やお酒類など)も含めて、意外としっかりとした舞台装置でした。

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また、舞台奥がホテルの入り口という想定ですが、表は、時々、雨が降ります。実際に入ってくると濡れている役者さんもいるので、実際に水を撒いているようでした。すごい、こだわり。

なお、この音楽劇は、役者さんが演じているので、全員がワイヤレスマイクを付けていました(最もフォルクスオーパーでも「白馬亭にて」は、皆さん、マイクを使っていましたね)。

ストーリー展開は、人物の登場順も含めてオペレッタ版とほぼ同じです。また、各役が歌うおなじみの曲も、ほぼ、そのまま上演されました。ただし、6名編成のアンサンブルなので、演奏はジャズ風の味付けになっていた。元々、オペレッタ版の方でも、ドラムセットが入ることが多い作品なので、違和感はありません。

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ヨゼファは老眼鏡をかけないと小さい字が見えないという完全な中年のおばさんという設定です。それに対してジードラーは、いかにもハンサムな色男という雰囲気。最初から、この2人がくっつくことはない‥というのがお客さまには見え見えになります。反面、レオポルトも、何となく冴えない中年のおじさんなので、ヨゼファとは合いそうな感じです。

また、ピッコロが見習いの少年ではなく、中年のおじさんというのがミソ。このおじさん、自分の内職に熱心で、カフェに来た団体客のオーダーそっちのけで毛布などの物品販売を熱心に行っていました(アメリカ人団体の添乗員がしびれを切らす場面が愉快)。

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開店早々やってきたアメリカ人団体が、カフェでのあまりのサービスの悪さと、部屋を巡るジードラーとギーゼケのトラブルに辟易し、ホテルから引き上げようとすると、レオポルトが“皆さん、今日は、カーニバル。これはカーニバルの出し物です。これから、もっと面白い出し物がありますよ”と嘘をついて、団体客を足止めします。

そう、季節設定はカーニバルの時期なので冬。そのためお客さまは、皆、冬の服装で、オッティやジギスムントはスキーを楽しみ似ているという設定になっていました。

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ジードラーとオッティは、比較的早い段階でひかれあって、ジードラーの部屋にしけ込んでしまいます。それを知らないのはヨゼファ。なお、最初はザルツカンマーグートが好きになれなかったギーゼケが、この地を気にいってしまい、民族衣装に着替えてヨゼファと踊る場面もしっかり入っています。

ギズムントに続いて、昆虫学者のヒルゼルマン教授と娘クレールヒェンが登場。ギズムントは、ちょっと小柄な「おたく風」です。到着早々、ヒルゼルマン一家に部屋を斡旋して、クレールヒェンをサウナに誘います。

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ここからが、お芝居のオリジナル場面。この場面だけが、唯一、劇中、舞台転換がありました。緞帳が下り、中央の部分が開くと、そこはサウナになっているという設定です。サウナの中でもニット帽をとらないギズムント。クレールヒェンに促されて、帽子を取ると‥これはオリジナルと同じ展開です。でも、タイミングとしてはオペレッタ版より早いですよね。

このサウナでの出来事を通じて、ギズムントとクレールヒェンは意気投合し、すでに愛し合う関係に。

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サウナの場面が終わると、再び舞台は白馬亭のカフェへ。アメリカ人観光客の皆さん、カーニバルの仮装パーティーに備えて動物のお面を付けています。このお面、デザインが意外と怖いのですよ‥

そこへ、町の消防隊長が部下2名を引き連れて、制服姿で一杯やりにやってきます。ビアを注文して、豪快に飲んだところ隊長の顔のまわりに泡がつき、まるでヒゲのよう。何とかジードラーを部屋から追い出したいレオポルトは、ここで、奇抜なアイデアを思いつきます。

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厨房からモップを持ってきて消防隊長の帽子に乗せると、「泡のヒゲ」と合わせて雰囲気はカイザー。レオポルトはカフェの観光客たちに向かって“この方は、カイザーです。皆さん、歓迎しましょう。カイザーは、今日、ここにお泊まりになります”と言います。騙されたアメリカ人団体が、消防隊長に敬意を払ってカフェは大盛り上がり。

この勢いに乗ってレオポルトは、ジードラーに部屋を代わってもらうため、渋るヨゼファを部屋に行かせます。ところが、そこではジードラーとオッティが愛し合っている真っ最中。激怒したヨゼファは、レオポルトに首を宣告します。

そして、ジードラーの部屋に消防隊長扮するカイザーが入ったところで、前半は幕。ここまでで1時間50分。オペレッタ版より台詞が長い感じがしますが、テンポが良いので見ていて飽きませんでした。

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20分の休憩の後、後半へ。後半は翌朝という想定(これはオペレッタ版と同じですね)。

仮装パーティーで早朝まで盛り上がっていたようで、カフェではアメリカ人団体が、ぐったりしています。そこへ部屋でぐっすりと休んだ消防隊長が登場。アメリカ人添乗員が、ヒゲがなくなったのに気づいて、“皇帝閣下。立派なおヒゲは今朝、剃られたのですか?”という質問を‥。これを適当にあしらう消防隊長。

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消防隊長が朝食の場面で、ヨゼファに諭す場面は、歌も含めてオペレッタ版と同じです。オペレッタ版では、その後、クレールヒェンの吃音を直すトレーニングの過程で、ジギスムントに“愛している”と言うことになりますが、こちらのクレールヒェンは積極派。消防隊長が出た後の部屋にジギスムントを誘い、ここでジギスムントに“愛している”と言わせてしまいます。そしてベッドイン。

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ベルリンでジェツルハイマーと特許の件でもめていたギーゼケですが、この場でジギスムントと話がついて裁判は解消します。そのため、ギーゼケも敵対していた弁護士ジードラーとオッティの結婚を認めることに‥

最後は戻ってきたレオポルトにヨゼファが自分の気持ちを伝えてハッピーエンド。ここに3組のカップルが誕生という展開はオペレッタ版と同じです。

前半が延びたのか、後半に無理があったのかはわかりませんが、休憩を挟んで2時間30分の予定が、実際には2時間50分(後半が40分)の上演時間でした。

カーテンコールで舞台裏で演奏していた奏者6名も登場しました。さすがに役者さんだけあって、お芝居は見事。歌については歌手ではないので、音域は狭いが音程がしっかり取れているので、失礼ながら予想外の仕上がりでした。

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オペレッタでもない、ミュージカルでもない、ちょっと変わった音楽劇でした。「上品な味付けにした吉本新喜劇ウィーン版」と言ったところでしょうか。お芝居らしくキャラクターが立っていたこともあり、Feriはもう一度見たくなってしまったね。

ただ、このフォルクステアターの「白馬亭にて」ですが、どなたにもお勧めできるか‥というと微妙なところ。何しろお芝居が中心ですから、劇のストーリーを知らないと厳しいかもしれません。

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もちろん、ドイツ語が堪能な方は、その場で腹を抱えて笑えます。Feriは、全ての台詞が理解できる訳ではありませんが、オペレッタ版を良く知っているので、本当に楽しめました。

余談ですが、当日、開演前、劇場関係者が、“今日はバングラディシュの子供達のために寄付金を募っています。ロビーに募金箱がありますので、よろしくお願いします”という案内があったのですが、終演後、ロビーに出ると、何と、ヨゼファやレオポルトなど主要な出演者が募金を入れる帽子を持って待機中(左の写真は募金係になったヨゼファ。しっかりポーズをとってくれました)。

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これではお財布の紐も緩みます。もともと寄付に熱心なお国柄。10ユーロ、20ユーロのお札も含めて、結構、入っていました。

ところでフォルステアターは歌劇場ではありませんが、客席の構造は歌劇場に似た馬蹄形です。劇場内の感じはアン・ディア・ウィーン劇場やバーデンに似ている感じがします。同じ、「Volks」でも、Feriのホームグラウンド、フォルクスオーパーに比べると内装や装飾もゴージャスです。

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実は、この劇場、2階に客席を備えた立派なバーがあります。バーには小さな舞台も設置されており、この小さな舞台を使った出し物もあります。

ご来場者はご年配のお客さまが多かったですが、若い方の姿もチラホラ。こちらでは有名な出し物ですから、ご年配の方が多かったのはわかりますね。

演劇の場合、オーケストラピットがないので、平土間よりは、2階正面当たりがベストポジションかもしれませんね。


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オペレッタ |

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Comments

Feri さん、こんばんは。

Volkstheater の Im weißen Rößl に行って来ました。
いや~、面白かったですねぇ。

もともと、Im weißen Rößl には、今回のプログラムにある通り Singspiel in drei Akten と書かれており、版の違いは無いと思われます。
アメリカ人の団体が最初から最後まで居たり、消防隊長が皇帝に扮したり、2組の恋人は女性の方が積極的だったりと、いろいろアレンジはされていましたが、非常にうまく筋を運んでいました。

音楽はかなりジャズぽい編曲でしたが、もともと1920~30年代のベルリン・オペレッタはジャズの影響をかなり受けており、全く違和感はあまりせんでした。
歌は、役者でもなかなか聴かせる感じ(マイクを通しているのはクラオタとしては残念でしたが、仕方ないですね)で、良かったです。
アメリカ人の団体は合唱団のメンバーで、普通は1場面か2場面にしか出て来ない団体客がずっと舞台上に居たのは、歌を補強する為でもあったのだと思われます。この点でも、うまく工夫されていました。
普通は省略されるナンバーも、歌われていましたね。

Feri さんが書かれていたように、時間的には結構長かったのが、テンポの良さや音楽を挟むタイミング(これはオリジナル通りかも知れませんが)などの為か、全く長さを感じませんでした。
Der Rosenkavalier 第1幕には間に合いませんでしたが、これなら納得でした。(しかし、Denoke はもっと長く聴きたかった..)

Posted by: Steppke | January 19, 2013 at 08:55 PM

Steppke様

Volkstheater の Im weißen Rößl‥お楽しみいただいたようで、何よりです。

若干、今風にアレンジしてありますが、私も非常に気にいった舞台です。恐らくSteppke様がご覧になった時も、地元のおばさまやおじさまで盛り上がっていたのではないでしょうか。

時々、こういった演目を取り上げてくれると、オペレッタファンとしては嬉しいのですが‥

Posted by: Feri | January 20, 2013 at 08:41 AM

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