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December 21, 2012

国立歌劇場「ナクソス島のアリアドネ」プルミエレポート

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今日は久しぶりに「国立歌劇場の話題」です。

Feriにとって、国立歌劇場のオペラで思い出深い作品は沢山ありますが、その一つに「ナクソス島のアリアドネ」があります。かのカールベームを唸らせたという伝説を持つグルベローヴァさんのツェルビネッタの印象があまりにも強く、残念ながら、その他の歌手では今ひとつ満足度が上がりません(贅沢なFeriですが‥)。

ちなみにグルベローヴァさんがツェルビネッタを演じた公演は、ウィーンで都合5回、観ています。今回は新演出なので、前のツェルビネッタのイメージを引きずらずに済むのが幸いです。

プロダクションはザルツブルク音楽祭のものを、一部使っているとのこと。プログラムにも「Koproduktion mit Salzburger Festspielen」と入っていました。演出はSven-Eric Bechtolfさんによるものです。

指揮は、来日公演を直前でキャンセルしたFranz Welser-Möstさん。怪我でドクターストップがかかったという公式発表でしたが、プルミエでは元気はつらつで振っていました。当日の主なキャストは、以下のとおりです。

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執事:Peter Maticさん
音楽教師:Jochen Schmeckenbecherさん
作曲家:Christine Schäferさん
アリアドネ:Krassimira Stoyanovaさん
バッカス:Stephen Gouldさん
ツェルビネッタ:Daniela Fallyさん
道化師ハルレキン:Adam Plachetkaさん
トルファルディン:Andreas Hörlさん
スカラムッチョ:Carlos Osunaさん
ブリゲッラ:Pavel Kolgatinさん
ダンス教師:Norbert Ernstさん

Daniela Fallyさんは、フォルクスオーパーで上演された「ナクソス島のアリアドネ」にツェルビネッタで出演していますから、昇格といって良いでしょう。ただ、Feriはフォルクスオーパー版の仕上がりを見ていないので、コメントできず‥残念。

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新演出は、バイエルンほど奇抜ではありませんが、オペラの部分は、個人的に首をかしげるところが多かったですね(あくまでも個人的な感想です)。

プロローグは旧演出では、一貫して「舞台裏」で繰り広げられましたが、新演出はピアノが置かれた邸宅の大広間からスタート。バックに森が広がっています。白を基調とした広々とした舞台で、シンプルながら良い感じ。ここで作曲家が悩んでいるところに、喜劇劇団一座がやってきます。食事の準備に余念がない執事など、なかなか楽しませてくれます。

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途中で、メーキャップルームに場面転換。ここで作曲家とテノール、プリマドンナ、アリアドネ率いる喜劇劇団とのやり取りが行われます。プロローグに関しては、まぁ、納得できる演出でしたね。

休憩を挟んで、劇中オペラへ。従来の演出では、ここからは通常の「オペラ形式」でしたが、今回は、大きく変わった。まず、舞台後方、階段状に客席が設けられ、ここに観客が座っています。そして、手前が「劇中オペラの舞台」という想定で、壊れたピアノが積み上げられているという変わった劇中オペラの舞台装置です(まぁ、最近、多いですよね)。

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さらに、よく見るとプロローグでお役御免になったハズの執事や作曲家、さらに一部のオペラ出演者の姿が舞台上の客席に‥おいおい‥しかも、途中で作曲家やダンス教師がオペラの舞台に乱入します(歌はなし、お芝居だけ)。

「劇中オペラ」での目玉は、何と言っても中盤、ツェルビネッタが「去った男を忘れれば、新しい愛に巡り会う」と切々と歌う場面。従来は、ツェルビネッタの歌が際立つ演出だったので、お客さまも歌に集中できました。

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が、今回は、ツェルビネッタが、作曲家のピアノ伴奏(ダミーですが)で道化師と絡み合いながら歌います。しかもアリアが良いところに来ると、アリアドネが“自分の立場が台無し!”とばかりに怒り狂って、身振り手振りで指揮者や作曲家に猛抗議。ついには舞台袖に引っ込んでしまいます。そのため、ここで客席から笑いが‥

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アリアドネが退場し、調子に乗って歌うツェルビネッタですが、歌の後半の楽譜が用意されていないという想定なのか、途中で作曲家が隣に立ち、即興で書いた楽譜を渡して歌い終えるという、コミカルなお芝居がふんだんに盛り込まれた場面になっていました。

そのため、舞台を観ていると、お客さまは歌に集中できません。反面、お客さまの気が散る分、歌のレベルが格段に高くなくてもクリアできる感じが‥ まさか、これが狙いじゃないですよね。

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演出の趣旨としては、タイトルロールであるアリアドネ(プリマドンナ)にスポットライトを当てることを意識しているのでしょう。実際、オペラ前半と後半のアリアドネのアリアは、逆に十分聴かせるような演出になっていました。

今までツェルビネッタのアリアの後は「おまけ」みたいな感じだったのですが、今回の演出では、ツェルビネッタのアリアだけでは満足できない感じが強かったですね。

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旧演出では、プロローグにしか出演しない執事、作曲家、音楽教師、ダンス教師などもオペラにお芝居だけで(歌なしで)出演しているため、カーテンコールにもしっかり登場します。

カーテンコールではプルミエなので、演出家などの制作スタッフも登場。今回、ブーイングは少なかったような気がします。

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さて、今回、注目は執事にPeter Maticさんを引っ張り出してきたこと。やはりお芝居は見事で、舞台を締めていましたね。オペラでも舞台後方の客席でコミカルな演技を見せてくれます。

歌はプロローグだけの作曲家Christine Schäferさんは、小柄な方だが、はつらつとした演技と歌で好感が持てました。ただ、クライアントからの要求の板挟みになって悩む場面では、若いためか、苦しむ感じが弱い感じだった。今後に期待。

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アリアドネのKrassimira Stoyanovaさんは、さすがにKSだけあって、見事な歌いぶりでした。歌でツェルビネッタに負けてしまうケースが多いのですが、今回は“小娘に負けてなるものか”という気合い十分。オペラのアリアは、本当に見事でした。また、お芝居も上手で、申し分なし。

バッカスのStephen Gouldさん。ワーグナー歌手なので声量は申し分なし。いかにもテノールです‥という感じの堂々たる歌い方でした。体格も良いので、舞台上でも存在感がありますね。

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ツェルビネッタのDaniela Fallyさん。今回の新演出は、彼女の起用を前提にしているかのようで、役のイメージにピッタリと合っていました。オペラの奇抜な衣装も彼女ならばピッタリ。ただ、演出上の問題だとは思いますが、オペラのアリアは残念。歌だけを純粋に聴くと‥以下、コメントは控えます‥

演出の趣旨だから仕方がないとは思いますが、ツェルビネッタのアリアを楽しみにしている人にとっては、消化不良になる舞台かもしれません。

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最も、今までアリアドネとツェルビネッタは、歌では主従逆転しているケースが多かったですから、これで良いのでしょうね。

Feri個人の感想を押しつけるつもりはありませんが、ツェルビネッタの聴かせるアリアが、事実上、なくなってしまったのは寂しい限りです。

○オマケ
さて、国立歌劇場ですが、今シーズンから開演前に「公演中の注意」がドイツ語、英語、日本語でアナウンスされるようになっています。ただ、オーケストラが個別にチューニングをしており、お客さまも客席内を動き回っているタイミングで行われるため、まるっきり効果なし(事実上、聞こえませんでした)。

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また、今回のプログラムは演出のSven-Eric Bechtolfさん、指揮のFranz Welser-Möstさんのインタビュー記事が掲載されていましたが、今まで各国語で入っていた「あらすじ」がなくなりました。ドイツ語の「あらすじ」は残っていますが‥これも方針転換でしょうかね。なお、お値段も4.8ユーロになっていました。

それから舞台上の防火壁。新版ができましたが、毎年、デザインが妙になってくると感じるのはFeriだけでしょうかね。


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