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March 23, 2014

フォルクスオーパー「伯爵令嬢マリッツア」プルミエレポート(その1)

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Feriにとって、今シーズン、フォルクスオーパーで「最大の期待」はカールマンの名作「伯爵令嬢マリッア」の新演出上演です。

これまで2006/07シーズンにプルミエ(2006年12月17日)が行われたバージョンはブダペスト・オペレッタ劇場から、Miklós-Gábor、 Kerényi Bühneなどの演出家を招聘したことにより、極めてオーソドックスな演出に戻りました。ハンガリー色を前面に出していたので、なかなか楽しめる演出でFeriも気にいっていました。

このブログを長年、ご愛読の方はご存じのようにFeriは、フォルクスオーパーの「伯爵令嬢マリッツア」のプルミエは、これで3回目です。第1回は忘れもしない2002年12月15日に観たものです(詳しくはこちらから)。従来のイメージを根本から覆す非常識な演出で、落胆したことをよく覚えています。何しろジプシー楽団が、カリビアンバンドですからねぇ…

第2回目は2006年12月17日。前作の演出がひどかったために、不安もありましたが、ブタペスト・オペレッタ劇場の全面協力もあり原点回帰を果たしました。この時は、マリッツアなどの歌手はブダペストから招へいしたゲストでしたね。それだけにハンガリー情緒が色濃く出ていました(プルミエレポートはこちらから)。

そして、迎えた2014年3月22日。いよいよ3回目のプルミエです。演出を変えた理由は、前演出が、ブダペスト色が強かったことによるものだと思います。そういう意味で、今回の新演出は期待もありますが、不安も…何しろオペレッタの新演出は「当たり外れ」が混在していますから。

余談ですが、フォルクスオーパーのオペレッタでプルミエを3回体験するのは、本作品が初めてです。

まず、今回、演出を担当したThomas Enzingerさんと舞台装置・衣装担当のTotoさんは、2011/12シーズンで「ウィーン気質」の新演出を担当したペアです。振付はBohdana Szivaczさん、合唱指揮はHolger Kristenさんというスタッフです。

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指揮はAlexander Rumpfさん。この方はチロル州立歌劇場の主席指揮者。さて、プルミエの主なキャストは、以下のとおりです。

-伯爵令嬢マリッツア:Astrid Kesslerさん
-ポプレスク公爵:Toni Slamaさん
-コローマン・ジュパン男爵:Boris Ederさん
-タシロ・エンドレディ・ヴィッテンブルク伯爵:Carsten Süssさん
-リーサ:Anita Götzさん
-カール男爵Nicolaus Haggさん
-ボジェナ侯爵夫人:Helga Papouschekさん
-ペニジェク:Robert Meyerさん
-チェッコ:Michael Gempartさん
-マニャ:Annely Peeboさん(当初はAdrineh Simonianさんの予定でしたが、当日、交代)
-Primas:Gregory Robersさん
―謎の女の子:Leonie Darebさん(子役)

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タイトルロールのマリッツアを担当するAstrid Kesslerさんは、マンハイム歌劇場所属の方。オペラ畑の歌手ですが、「ルクセンブルク伯」などにも起用されているようです。

タシロ役のCarsten Süssさんは、現在、ケルン歌劇場に所属していますが、2011/12シーズンにはフォルクスオーパーの「チャールダーシュの女王」でエドウィンを演じています。フォルクスオーパーでは、カールマンものは2作目‥ということになります。ただ、残念ながらFeriは、Carsten Süssさんのエドウィンは観たことがありません。

ボジェナ侯爵夫人のHelga Papouschekさんは、何と、前々演出、前演出でも同じ役に起用されています。つまり三つの演出に起用された希有な方…ということになります。

なお、当初のキャスティングでは、チェッコにはSándor Némethさんの名前が挙がっていました。ハンガリーのご出身だけに、Sándor Némethさんのチェッコ…ちょっと観てみたい気もしますね。

Feriとしても思い入れの多い作品なので、数回に分けてプルミエレポートをお届けしましょう。オペレッタ・ファン以外の方は、つまらないかもしれませんが… 今日は、全体の総括から…

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○比較的オーソドックスな演出と舞台装置
演出で、大きく変わったのは、前演出ではカール男爵とジュパン男爵が同一人物(カール男爵がタシロと口裏を合わせて、マリッツアに一泡吹かせようと考えた訳です)でしたが、今回はオリジナル通り、別の人物になりました。

また、三幕でポプレスク公爵が、マリッツアの邸宅で昔の恋人であるボジェナ侯爵夫人とバッタリ会うのですが、いきなり結婚する運びになっていました。

実は劇場に入ると防火壁、緞帳ともにあがっていて、白いカバーが掛かった舞台装置が目に飛び込んできました。正直、この瞬間は「嫌な予感」が…

序曲の前に、この白いカバーがかかった状態でマニャとジプシーヴァイオリニスト、謎の少女とチェッコが登場。マニャが一曲歌ったところで、序曲になり、ダンサーが登場して白いカバーが外されます。すると、比較的オーソドックスな邸宅の内部。これで一安心。

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以降、基本的にオリジナルに近い演出でお話は展開しますが、「謎の少女」がポイントで必ず登場し、チェッコとの掛け合いで物語の進行をリードします。これも今回の特長でしょう。3枚目の写真が「謎の少女」です。

演出についての印象ですが、比較的オーソドックスな展開ですが、同じペアが担当した「ウィーン気質」と同じく、大人数が出てくるところで、皆が乱舞する展開(ドタバタシーンという感じ…)が見られます。

舞台装置はシンプル(要するにお金をかけない)で、回り舞台によって邸宅内部と外部を表現し、後は小道具で変化をつけていました。

また、前演出の舞台装置がカラフルだったのに対し、今回はモノトーンになっています。衣装もオーストリア・ハンガリー系の人は白、ジプシーは黒と区別されています。

一つ気になったのが、マリッツアの smoking 喫煙シーン smoking が多いこと。今の日本で、こんな演出をしたら過激な禁煙団体から大変な抗議を受けると思います。

とにかく、何かあるたびにタバコに火を付けるマリッツア。比較的喫煙に寛容なオーストリアらしい演出かもしれませんが、スポンサーがタバコ会社…ということはないでしょうね。そう言えば、オーストリアタバコの親会社は日本のJTIでしたね。

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さて、一幕、タシロがマリッツア歓迎の宴の最中、外で歌う場面がありますが、ここは雷鳴が鳴り響き、雨の中で歌うという展開。ちょっと雨の音がうるさい感じがしましたが…

二幕のタバリンの場面は、邸宅の外側に別の舞台装置を付けることで、再現していました。中央にシャンペンタワーを設置するなど、雰囲気づくりに務めていました。

一幕から三幕まで、基本的に同じ大道具で、付帯施設を付けることで雰囲気を変えています。なお、衣装については、若干、ハンガリー色を弱めていましたが、雰囲気は出ていました。

このほか舞台の背景には大きなバラの絵が描かれていますが、これは「ばら色の肌のハンガリー娘」にイメージしたものだと思います。こういったセンスは良いですね。

また、第2回で詳しく紹介しますが、出演者の性格付けが、前の演出から変更されているようです。

カーテンコールでは、指揮者を含む全員が舞台上に揃ったところで「一緒にヴァラシュディンへ行きましょう!」を全員で踊りながら歌って華やかなフィナーレとなります。

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プルミエでは、演出家、舞台装置・衣装などのスタッフもカーテンコールで舞台に上がりますが、今回は、ブーイングはありませんでした。基本的に地元のお客さまには受け入れられたと考えてよさそうです。

○想像(回想)シーンをビジュアル化
「伯爵令嬢マリッツア」では、昔のことを思い出して歌うシーンがあります。代表例はマリッツア邸で突然再会したタシロと妹のリーザが、子供の頃を思い出して歌う名デュエット「楽しかった子供の頃」。

今回、邸宅の中にタシロとリーザの子供の頃のセットが設営され、実際に子供のタシロとリーザがおもちゃで遊んでいる中で、歌うという演出でした。ごていねいにぬいぐるみなどは、ダンサーが中に入っており、歌っている最中にも子供と一緒に動きます(右の写真が、そのシーン)。

言わば、通常はお客さまが頭の中で想像するシーンをビジュアル化している訳です。

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度肝を抜かれたのは、ジュパン男爵が突然現れて、マリッツアに「一目惚れした」と迫る場面です。この時、ジュパン男爵の情熱を再現するかのように、多数の分身(男女のダンサー)が登場して、歌いながら群舞を披露します。

分身で情熱を再現しようということらしいのですが、これもイメージを具現化した場面でしょう。それなりに面白い演出でしたが…(右の写真がジュパン男爵の分身の皆さま)。

他にも後半、タシロとマリッツアがダンスをしながら歌う場面がありますが、ここでもバレエ団が登場して、一緒に踊ります。

このように、イメージをビジュアル化するという手法には賛否があると思いますが、Feriは、歌に集中できないので、ちょっと余計な感じがしましたね。

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○演奏は、なかなか見事
Alexander Rumpfさんの指揮ですが、なかなかメリハリのあるもので、オーケストラの力を良く引き出していたいと思います。また、譜面を見ずに暗譜で振っていたようなので、十分な稽古を積んで本番に臨んだのでしょう。

また、今回の特長はハンガリーの伝統楽器であるチェンバリンの音色を目立たせるように編曲している点です。そのため、演奏からもハンガリーの雰囲気が良く出ていました。これは、Feri個人としては、気にいっている点です。

○ダンスシーンの増加
シュタット・バレエになってから、フォルクスオーパーの新演出や再演では、ダンスシーンを増やす傾向があります。これはダンサーに出演チャンスを増やすという意図だと思います。

今回も冒頭からハンガリー風の激しいダンスが入っていますし、上記のジュパンの分身、マリッツアの邸宅で行われる宴会、タバリンなどで、独立したダンスを入れています。宴会やタバリンでのダンスは、必然性もあり、観ていて楽しいので、この演出は成功と言えるでしょう。なお、当たり前ですが、三幕はダンスシーンはありません。

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○グルグル回る舞台
これも観る人によって感想が異なるかもしれませんが、歌っている途中に舞台が回転するシーンが非常に多いと言うことです。歌い終わって場面転換で舞台が回るのではなく、歌っている際、邸宅の中と外を行き来するため、舞台が回る…というイメージでしょうか。

また、完全に回転させるだけでなく、角度を付けることで、舞台に変化を持たせるというパターンもあり、舞台がよく回ります。

ちょっと回りすぎで、お芝居や歌に集中できない気もするのですが…とにかく「舞台がグルグル回る」…これが今回の特長です。

○鬼門の三幕はMeyerさんの起用でクリア
「伯爵令嬢マリッツア」は三幕が歌の場面が少なく、基本的にお芝居中心です。そのため、盛り上がった二幕までと異なり、三幕は冗長な感じになりやすいのが鬼門。

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そこで、2002/03シーズン版では、三幕を意味不明のテレビショー仕立てにしていました(これは最悪…)。そして、2006/07シーズン版では、タシロがマリッツアの邸宅からウィーンに戻るため駅へ行くのですが、ボジェナ侯爵夫人が手を回して列車を止めて、タシロとマリッツアの再会が実現するようになっていました。

そのため、エンディングではビリヤード台が反転すると、そこに鉄道模型(レーマン製)がセットされており、これが走り出すようになっていました。

今回、本来は端役のペニジェクにRobert Meyerさんを起用し、お芝居(まぁ、実質的にはギャグですが)の充実を図りました。そのため、三幕の「影の主役」は、ズバリ、ペニジェクです。ペニジェクのギャグにお客さまも大いに盛り上がります(当たり前ですが、地元人)。そのため、冗長な感じがなくなりました。少なくともFeriは、「伯爵令嬢マリッツア」の第3幕で、こんなに客席から笑いが絶えなかった公演は観たことがありません。

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さらにポプレスク公爵が、昔の恋人であるボジェナ侯爵夫人とバッタリ会い、昔を懐かしむ…という展開から、いきなり結婚の段取りまでしてしまうのはビックリ。

しかも、リーザとジュパンの結婚も同時に行うというころで、ペニジェクも加えた5人で「一緒にヴァラシュディンへ行きましょう!」を踊りながら歌う展開になっていました。

ちなみに三幕の歌は、「一緒にヴァラシュディンへ行きましょう!」に加えて、ポプレスク、ジュパン、マリッツアによる三重唱「ばら色の肌のハンガリー娘」と、タシロとマリッツアの二重唱「恋人よ、はいと言っておくれ」の3曲です。

notes明日の「その2」では、舞台進行に沿って、新演出の「見どころ、聴きどころ」をご紹介します。

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