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July 28, 2014

世界遺産 認定を受ける前に、受けた後に‥(その2)

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さて、昨日に続いて「世界遺産にまつわる話題」をお届けしましょう。

オーストリアの首都ウィーンの場合、インナーシュタットでは、従来どおり、シュテファンよりも高い建物の建設は規制されているので、高層ビルが建てられることはありません。

ただ、最近は再開発が活発に行われるようになり、インナーシュタットの雰囲気も変わりつつあります。2枚目の写真は、ケルントナーシュトラーセにオープンしたショッピングセンターですが、正直、周囲の景観にはマッチしない無機質なデザインですよね。ただ、5階建てで、周囲の建物と高さを揃えていることが救いでしょうか。

逆にアム・ホーフ広場に面した旧オーストリア銀行の建物を活用したホテル、パークハイアットウィーンのような例は歓迎されると思います。

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以前、このブログでご紹介したケートリンクに隣接した高層アパート建設は、厳密には旧市街ではありませんが、景観を気にする皆さまから大きな反対が出たのは、頷ける気がします。

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ところで2013年6月、オーストリアでは大雨によりヴァッハウ渓谷で洪水が発生し、メルク市街などが浸水しました。

日本だったら、こういった洪水が発生するリスクの高い場所は治水優先で、コンクリート製の堤防や防潮堤建設が行われると思いますが、世界遺産に認定されていることもあり、無粋なコンクリート製の構造物は作られません(というか、そういう発想にならないようです)。

もちろん洪水対策は行われているのですが、これが水位が増したときに設置する止水板です。当然、設置するのに人手が必要なのですが、これでしたら使わない時は景観に影響を及ぼさないので、採用されたのだろうと思います。

なお、ザルツブルク市街に隣接するザルツアッハ川にも高い堤防は建設されていません。

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もう一つご紹介したいのは、世界遺産に認定されている場所ではありませんが、Feriの住むアパートからほど近い自然公園です。

ここには小川が流れているのですが、実は周囲の景観を損なわないように、伝統的な工法で治水が行われているのです。

何でもコンクリートで固めてしまうのではなく、極力、自然を生かした工事に、こちらの考え方が良く反映されていると思います。

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さて、ザルツカンマーグートでは、観光名所でもあるハルシュタットとダッハシュタインが世界遺産に指定されていますが、景観を損なわないように駐車場の位置を湖畔から離す(湖畔から見えない場所)といった措置がとられています。

さらに自動車が通る幹線道路は、街の裏手にある山にトンネルを作って、そこを利用するようになっています。そのため、写真のように対岸からハルシュタットの街を見ると、自然に調和していることがよくわかります。

ハルシュタットに関しては、当然のことながら街の中についても、景観維持にも力を入れており、自動車の乗り入れも制限されているほか、無粋な看板などは出ていません。

ところで、現在、日本で問題になっている世界遺産が富士山だそうです。ヨーロッパの皆さまから見ると、おかしなところが沢山ある‥というのです。

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例えば大量の登山者による富士山の自然破壊(トイレのキャパシティを越えた入山者や荷物運搬用の道路など)、富士山周辺のゴミや看板、富士五湖の景観(ホテルや湖のボートなど)、三保の松原周辺の波けしブロックなどだそうです。

日本人には余り気にならないものも多いような気がするのですが、価値観の違いでしょうね。実は日本は2016年2月1日、ユネスコに対して、富士山の適切な保存状況報告書を提出しなくてはなりません。

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つまり、条件付きで世界遺産に認定されたのです。これは、今後の保存に向けた取り組みを報告するもので、それまでに対策を完了させなければならない‥というものではありません。

清掃登山に全力を注いでいるアルピニストである野口 健さんは「世界遺産にされて富士山は泣いている」という自著の中で、このような問題点をズバリ指摘しています。

つまり、「世界遺産登録」だけを目的に準備が進められてきたため、様々な問題への対処が先送りになってしまっているというのです。

実際、地元の首町さんの中には、世界遺産登録を機に新たな規制を設けられる事に対し不満の声が上がっているようです。地元の経済発展を考える首町さんから考えると、当然の意見です。

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本来ならば、こういった議論は世界遺産に登録される前に行っておく必要があったのですが、それを先送りしてしまったことが、問題を大きくしているようです。

富士山に限らず、日本では「世界遺産認定で観光客が増えて、商売になる」という発想を持っている人が多いのかもしれませんが、オーストリアやドレスデンの例を見てもわかるように、「文化を守る」ためには、住民の協力も含めて、それなりの決意と覚悟が必要だということでしょう。

遠くから見ると美しい富士山にも、色々な問題点があることがわかりました。もちろん、日本の世界遺産にも景観などに配慮しているところは沢山あります。

Feriも日本人ですから、富士山が危険遺産入りや登録取り消しになるのは残念でなりません。そのためにも、住民も含めて関係者全員が知恵を絞って早急な対策を行ってもらいたいと思っています。

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ところで、この記事をまとめている際、日本から興味深いニュースが入ってきました。題して“京都で「屋外広告」めぐり攻防激化、違反なお1万件”というものです。

内容は、古都の景観を守るため、昭和委31年に制定された屋外の看板などを規制する京都市屋外広告物条例が平成19年に大幅改正されて、市内全域で屋上広告や点滅式の照明などを全面禁止になったほか、規制区域ごとに看板類の大きさや色などを細かく規制されたそうです。

完全施行まで7年の経過措置期間が設けられたのですが、この“猶予”が平成26年8月末で終了し、9月から完全施行に移行するため、看板の掛け替えなどで自己負担を迫られる事業者から反発が出ている‥というものです。

すでに伏見区のラブホテルが、7月に違反広告物(巨大な猫の看板だそうですが)の自主撤去を行った例も紹介されていました。しかし、本当に京都という都市を気にいっている人だったら、明らかに景観を損なうような広告物を出さないと思うのですが、この当たり、考え方の違いなのでしょうかね。

しかし、妙な格好のJR京都駅や京都駅前に立つ京都タワーなどの公共施設は「例外」ないのでしょうかね。これも不思議な気がします。

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Comments

こんにちは
今年の6月に仕事でワッハウのワイナリーを訪ねました。
ワッハウで最も人気のあるDürnsteinの隣町(行政区は一つですが)Oberloibenのワイナリーです。
この時聞いた話と見た話ですが、ドナウ河の洪水対策の為、川沿いに3mの壁を造るそうです。工事も始まっています。景観もかなり損なわれると思います。
世界遺産にかかわるかどうかは尋ねませんでしたが、ワイナリー(そのワイナリーだけでなく)ではケラーが冠水して設備や貯蔵されていたワインに多くの被害を受けているので、壁の建設はむしろ歓迎している感じでした。

なので、ワッハウの景観も大きく変わると思います。
ご報告まで。

Posted by: Kino_San | July 28, 2014 at 05:19 AM

Kino_San様、コメント、ありがとうございます。

前回の大洪水では、各政党が「復旧に最後まで全力を尽くす」とアピールしていましたから、色々な対策がとられることでしょう。

このブログでもご紹介した可動式の止水壁も、この前の洪水を受けて設置されたものだそうです。この止水壁があったエリアは被害を最小限にとどめることができたそうです。

もしかすると、この手の設備が拡充される可能性があるかもしれません。

Posted by: Feri | July 28, 2014 at 10:36 AM

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